ちょっと昔、ベートーベンに劣らぬ、ピカソ以上の、アインシュタインを遥かに上回り、
ドストエフスキーなんか足元にも及ばない天才少年が、おりました。
彼は中学生で、その才能を遺憾無く、発揮し、頭蓋の中に、ぷるんと不安定に納まった、
その脳みその中で、スゲェ曲、スゲェ絵、スゲェ発見・発明、スゲェ文学、
世界を全て解き明かす大理論を構築し、ニヤニヤしていたのですが、
まだ、文字が読めなかったので、高校に通えず、皆からもバカと思われ、
低脳の人のいく特別施設で働かされ、それでも人より動作が、数10テンポ、
並外れて遅いので仕事にならず、大不況の波の中で解雇のメに合い、
それで、やっと読めるようになった字を、鉛筆、使って大文学作品を書きました。
天才的構成力、天才的論理、天才的魅力、
宇宙を吹き飛ばしかねない天才的カルチャーショック、
その他、凄まじい天才が、みっちりと詰まっておりました。
しかし、あまりにも字が汚なく、コネもなく、中学しか出てなく、社会の仕組みに、
まるっきり適合できないので相手にされません。
物理化学科学の世界も、絵や音楽の世界も、そうでした。
しかるべき場所へ、自分の作品を持っていくための社会性が全く欠けておりました。
ケータイいじれませんでした。固定電話も使うことができませんでした。
もちろん不器用でパソコンいじれませんし、インターネットも使えません。
だいたい、キーボードが打てません。汚い鉛筆文字だけでした。
電車にも乗れませんでした。郵便物を出す事もどうしていいかわかりませんでした。
決定的なのは他人とのコミュニケーションが、
「こんにちわ」「はい」「いいえ」「そうですね」「ありがとうございました」「さようなら」
以外は出来なかった事でした。
結局、彼は、カセットテープを分解して、磁気テープを自分の内臓に通過させようと、
口から肛門までテープを少しづつ飲み込んでゆき、テープの端と端を、
口のほうと肛門の方とを、くっ付けて自分の肉体を音声再生機にしようとして、
失敗して、呼吸が止まり、死にまして、気狂いの自殺と、一件落着しました。
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