元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

音楽室5号 第5章

2021-06-22 07:23:00 | 音楽室5号

 


第5章
(FORCEだよ。ルーク。ホースだ!。はぁ馬ですか?馬の口から水を撒くんですかい?)


 一日中、歩き続けたキーホーは自律神経に疲労感をプレゼントされました。

 交感神経に副交感神経が爆撃を受けている模様でした。

 さて、そこで、キーホーは黒いバスを待つ事にしました。

 キーホーは、とろんとしました。

  すると、

   キーホーは

    小さな停留所で

     隣のベンチで船虫の様に丸まった、

      カエルに似た、おばあさんに話しかけられたのです。


「あたしゃ処女でね。」

「僕はDO ̄TEIでね。」

「え?何でっしゃろ。あたしゃ英語は、わかりましょぇん。ひぃぃ。」

 沈黙が続きました。その一掴みの時間が、あの夕暮れの淡い、もの悲しい、奇妙な、ひとときであった事を、記しておきましょう。

   ヒュ───────────────ゥ。

(汚れなき?七十五才と、汚れなき?十九才の出会いだぁ。

 す・て・きじゃないか。

 でも、どうして僕は、このようなワンダフル~なゾーンの中にいても、寂しくて寂しくて仕方がないのかなぁ?

 きっと僕にも世界にも、なぁんにも意味が、ないからじゃないのかなぁ。

 あぁ。

 でも、今の僕と、おばぁさん、ステキだなぁ。

 感動的だなぁ。爆裂ロマンチックだなぁ。

 夕陽が雰囲気(むぅど)を盛り立てるなぁ。)


《 そして、恥じらいながらも二人は、しだいに、

  しだいに、寄り添ってゆくのであったぁ。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チン! 》


 キーホーは、とってもセクシーな、おばあさんを感じています。

彼女の肌を、その下の血潮を、魂のうごめきを、感じているのです。

彼女の方も、キーホーに感じているらしいのです。

それに、この信じがたいリリカルな風景。

まるで夏のオレンジ・ジュースの、ひと雫の内部(なか)に入っているみたいです。


 キーホーは、やさしい声で言いました。

 頬を赤くし、モジモジして。

「あのぅ。僕は今、とても、あぁ、なんて言うのか、その。胸が、張り裂けそうで・・・・・」

「まあ。・・・あ・あたしも、なんだか息苦しゅうてなぁ。
 あんたのよぉな人、・・・あたしゃ今まで感じたこたぁないねんよぅ。
 ぁあ・・・あたしゃ、あんたを、心の底から愛してしまったぁ。」


 おばあさんは、まっ赤に染まり、キーホーは、いとおしさが一杯です。

ついにキーホーは、おばあさんをベンチに押し倒して抱きしめて、

KISS、KISS、KISS。


 敏感な、おばあさんの身体に、余計に刺激され、ついに、キーホー・・・は・・・

 キーホ・・・・・は、二人は・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・結合してしまったのです。ハート


   チャン! チャン! ※

 注。あとの方のチャン!に、アクセントを置く事。


 冷たい風がオレンジの時間を運び去り、バスが恐ろしい程、非情な感じで、やって来ました。

キーホーは、冷蔵庫のようでした。

老婆は、萎れて隅でクシャッと縮こまってやがります。

そのうち、老婆は、冷たい風にコトンとベンチから吹き落とされて、枯れ草玉みたいにコロコロと、遥かな山の方に飛んで行ってしまいました。

(ああ、まただ。僕は淋しくてたまらない。

 そうだ、またスカートめくりを忘れていた。

 僕は、どうして、こんなに辛いのだろう。)



 キーホーは、しょんぼりと背を、くの字形に丸めて、シュウ、シュウと音をたてている氷のような黒バスのタラップを、一段、一段、昇って行きました。

汚れてしまった?七十五才と十九才は別れました。

運命の冷たい風が引き裂いたのです。

キーホーは、もう、おばあさんの事など、すっかり忘れてしまって、唯、黒バスの硬質の冷たさに恐怖しているのでした。

淋しい・・

 

(何かが僕から遠いところへ去ってしまった。

 なんて寂しいんだ。

 いったい僕は何のために動いたり考えたり感じたりしているんだろう。

 答えが、ずっと、ずっと遠くにある様な気がする。

 だから、こんなに悲しいんだ。きっと、そうだ。)





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