元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

秋の夜の手紙(白痴宣言!)

2021-04-30 08:27:15 | 夢洪水(散文・詩・等)

「秋の夜の手紙」
(私は、ついに到達した!新たなる白痴宣言!)

-壱-

 親愛なる君よ、もう秋だね。秋の月夜ってのは、夏の肉体を、だらだらと苦しめる、あの蒸暑の無いせいか、頭が、やけにはっきりしていて、不思議な妄想が生まれるよ。月夜に犯罪が多いってのは面白いよ。

 冬を予感させる、やけにヒヤッとした空気を、月夜の街で、路で、窓を放った部屋で、私は何か霊感を受けたように感じる。

 そんな時、やけに体は寒く萎縮して、頭の方は氷をブチ割った時みたいにカーンと冴え渡たり、今まで無関心だった些細なものが、全て明確な鋭い線を描いて、私に迫ってくるんだ。恐ろしいくらいに、殆ど強迫じみて近づいてくるのだ。

 石ころの影、ゆれる電線の縄、地面、ヘッドライト、たたずむ人々、ケータイの光、全てのもの、いっさいのものが、はっきりと存在をしめし始めて、ぐんぐん私に迫って来る。

 そんな時、私は、とてつもなく、こわいのだ。身の毛もよだつのだ。全てが、ほんのちょっとの音や光が、私を、ひたすら脅かす。君には経験ないかい?

 アパートの窓にうつる人影や、人けの無い辻の蛍光灯の光の輪と、その奇妙な影の小世界。家々の冷たい死灰のような様相。私は、それらが自分の内に入ってくるように感ずる。

 かと思えば、それらの作った、この月下の世界から、私は物凄いスピードで、誰も行きつけぬ、限りなく広く、薄暗い荒野に引っ張られ、永遠に放擲される。

 私は誰もいない、どろどろと暗く、無限に空漠である薄気味悪い廃墟に、一人、閉じ込められる。

 その不安だ。私は走らずにはいられなくなるのだ。特に酒に酔った時、その不安は特別だ。月に体が、引き上げられそうになるのだ。

 目にうつる世界が全て、手にとるように、はっきり感ぜられ、それが体内に感ぜられ、次第に、その果て、極限に至って、肺の下あたりが、ぶるぶる震え出し、月の引力を感じるのだ。

 私は蜘蛛の巣のようにへばりつく引力を、払い払い、気違いの如く、メチャクチャに夜を蹴る。

 光が、びゅんびゅん、後方へ流れ、遥か前方に、はっきりした小さな映像が見える。まるでセンターフォーカスレンズを目に嵌め込んだ感じだ。遥か遠くの中心だけが、(たいてい、それは家の灯なのだが)やけに、くっきりと絶対のように不動で、私をして、ゴール位置に定まっているのだ


-弐-

 さて、私は、今、秋の夜長、慣れ親しんだ部屋の中で、これを書いている。曇り空で、月なんか、どこにも見出せない。そういえば、月の夜の影ふみなんてのは、したことない。あれは楽しいらしいぜ。

 月夜といえば、「Kの昇天」という梶井基次郎の話を思い出す。

 Kは、月夜になると必ず、誰もいない海浜で、自分の影(電灯ではなく月の影)と戯れる。何度も繰り返しているうちに不思議にも、影と自分の区別がつかなくなり、とうとうK君は、影が実像化し、自分になってしまい、要するに自我分裂をおこし、ドッペルゲンガーとなって月に向かって昇天してしまう。次の日、Kの溺死体が見つかる、という話だ。

 私も、自分の影を、じっと見つめていると、なんだか、それが、はっきりと自分の顔を持ち、体を持ち、本物の自分自身と見つめ合っているように思えてくる。ふいに、ゾッとしたりする。

 何だか、それが、逃れよう逃れようとしても、決してなせぬ、もう一人の自分、死へと導く悪霊の如き自分に思えてくる。そして、よく見ると、もう一人の自分は、私に向かって、勝ち誇った冷たいせせら笑いを、やっているのだ。

 プロブエ・インディアンという未開の人たちは、こんな考えを持っている。

「狂った人間だけが、頭で考える」

 彼らは肋膜あたりで考えるのだそうだ。秋の月夜の涼しい空気の中で、私は、やけに頭が、はっきりしてくる。そして影の中から、もう一人の自分が現れてくる。

 肉体の持つ思想は、その時、いっきょに、ひえびえとしてしまう。頭の思想が、無限に触手を伸ばす時、すべてのものを頭の中で、とらえてしまう時、そんな時、現れたもう一人の自分が、私を荒野に誘う。どこまでも沈鬱で静かな世界。

 あの月の地に

 秋の月夜に、一人、私は気が狂うに違いない。

 生き物は淋しい。個体である事が、苦しくてしょうがない。肉体は触れ合う事ができる。手で触れる事ができる。言葉を交わす事もできる。他の人と供に行動する事もできる。会話もメールも、全て肉体的次元の触れ合いだ。

 しかし、魂は永久に孤立している。触れ合うことは無い。肉体と魂は本来、完全に分裂している。中途半端な妥協は苦しいだけだ。きっと人は心の触れ合いを求めてはいけないのかも知れない。それは求めるだけの空しい恣意だからだ。

 私は、このごろ毎日、なんとかして、こうして空々しい言葉を書きつける事によって、魂を少しでも外に広げたく、そんな虚妄の意力のようなものを考えている。私には、それしかできない。

 私は、腕や足が意志によって動くっていうのが奇妙でならない。ふと考える。ある結論が、そうに違いないと、私を確信させ、ひとまず安心して、体を動かせる。

 それは、こうだ。

 この不思議な気の遠くなるような統合性を持った物質、すなわち肌。すなわち皮膚。その下には体中、くまなく、いたるところに、みっちりと何千億、何千兆ものウジ虫の如き、小さい虫が棲息しているのだ。

 それが頭から、湧き出ていて、意志の命令を、例えば腕の虫たち、足の虫たちに伝達するのだ。そのウジ虫の群れなし、統一された蠢きによって、我らが筋肉たちは動くのだ。そうに違いない!

 我々は皮膚の下のウジ虫群のうごめきによって動いているのだ。意志の命令によってウジ虫たちは、いっせいに、ウヨウヨ、ゾロゾロと皮膚の下を這いまわる。

 ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ   

 静かな夜の下で、唐突に笑う。


-参-

 どうだい?こんな話は。私は、いよいよ世俗的な話が、つまらない。こないだの結婚生活のような話は、ちっとも面白く無い。少しも興がない。ひっちゃぶいて丸めて、ポイだ。

 人の生活の話。苦しい生活の話。生活のための努力の話。仕事が苦しい話。将来の生活設計。幸福な家庭の話。それに見合わせた低い動物的思想。あっ!なんて、つまらないんだ!

 私の心は、カラーンとなる。家で寝っ転がりたくなる。一人旅したくなる。自分の生活の事を考えただけで、もう、げっそりとして虚脱状態になるってのに、それが他人の事となれば、いよいよもって何の事だ?

 ただ装飾にして訴えるだけで、実のところ中身は生活の顕示だ。苦行の優越だ。エディプスコンプレックスの捌け口だ。閉口する。でも嫌いではないのだ。実は自分が、その最下層のように思える。他人に憚って抑制せざるをえなくなっているように思えたりする。

 私には、そのつまらない苦行の顕示が、ひたすら内面の「白日の下」化を、さけてるように思える。情けない。魂の奴は、私の中で、ますます、淋しく、げっそりとして顔を背けるのだ。

 実生活のNEWSは、ちょぴっとで、たくさんだ。集約された事実の披露に、とどまる限り、その存在は有益で新鮮なのだ。その披露の冗舌なへドロのような拡散、広がる苦体験の押しつけは、カラ笑いしか引き出せぬ。

 私は病んでいるのか?平気で楽しく語り聞き合える君らが、私は何だか薄気味悪い。もっとも平気のつらを装っている自分の方が、もっと逼迫して常軌を逸した異常者なのかも知れぬ。どちらも、何とも気味の悪い生き物だ。 

 書き始めると長くなる。秋の夜長の退屈しのぎだ。君も、この手紙を“もし”退屈なら、しのいでいただきたい。

 思考の脈絡の無さ、転じて、アフォリズム・・・

 

●ここ一ヶ月、煙草を一日百本以上吸い続け、何百本も折った。

●性欲が怠惰になって瓦礫の下にくすむ火のように侘しい。

●不眠症。

●心臓が抜かれてしまいそうな気に、ふとなる。

●窓から他人の私事を万華鏡で覗きたい。

●ブリジット・フォンテーヌの音楽が、やはり快い。

●私は、いつでも笑える。カラカラ、クツクツと。

●たしか、この前、メールくれと言ったね、ほら代わりに手紙。

●君になら安心して私は書ける。

●話すより書いた方が、それもアナログなる手紙で書いた方が、よく通じる。

●戦争は壮大で美しい、世の中にあれほど豪奢で感傷的なものはない。

●と、坂口安吾は書いていた。

●呪われた美だと。

●満開の桜の下には死体が埋まっているに違いないんだとさ、梶井。

●満面、明るい奴の面の裏には腐った死体が一杯つまってるんだとさ。

●でも、自覚は無いそうだ。

●スポーツもの競争モノは嫌だね。

●だって勝敗が、ほんの小さな時間や出来事で、はっきりと決めつけられるのだから。

●それほどの人間蔑視は無い!何という侮蔑だ!

●人間には失墜しても、その下に無限の余地が必ずあるはずだ。

●だから私はスポーツもの努力、苦難成功物語は、ちっとも感動せぬ。

●空しく、絶望的にさえなる。

●不快だ。

●わかるだろう?

●白日の下では処世用に平気をつくろっていなければ。

●こういうのを二日酔い的な駄文と言うのだ。

●明日、又、日が昇り、私を照らすようにと・・・

●せめて私を呆れ返らないようにね。

●今は、旅と、野垂れ死にに、憧れる。

●一人で見知らぬ土地を旅してて、日が沈み泊まる所も支えになる友人もいない。

●宿を探し果てしない、両側は畑ばかりの道を行く。

●あたりは薄い青をまじえつつ橙色に塗りたくられ、影が長く伸びる。

●そんな時、全てが、とても懐かしく、とてもイジらしく、体は訳の分からぬ喜びにうち震えるのだ。

●この大きなパノラマ。

●空という、現われ、突然消え、不可思議に様子を変える大きなドーム。

●私は、とても充実するのだ。

●内に果てしない、生への意志と、生への憂愁を感じる。

●宿を、今日の食事に向かって今日の生へ向かって、ただそれだけに一心に意志は向かう。

●自分を確信できる唯一の瞬間の連続が、そこにある。

●君も、そうに違いない。

●私は、今、次の小説を妄想し続けている。

●何に出すという目的は未だ持ってない、唯、魂を書き続ける、その意義の重さによるのだ。

●主題と言えば結局行きつくのは「白痴化」なのだ。

●選ばれた人々だけが、白痴化できるのだ。

●彼らは自己と世俗の感情、それの思想を完全に追放し精神の完全な自由、

●又は、感情の完全な自由、いわゆる、白痴を、めざすのだ!

●私は、名づけた、これを、 白痴主義 と言う!


ブハハハハハハハハハハハ ハハハ

超ハクチズム宣言!

白痴化して、いーっすかぁ!


 

 

いーともっ!



kipple

野良犬顔した純な奴!

2021-04-29 07:47:31 | 夢洪水(散文・詩・等)


都会だぁあ!

人混みだぁあ!

青空だぁあ!

 



「野良犬顔した純な奴!」

 



白い広場に10才くらいの少女が立っていたぁあ!

少女は大きな口を開けていたぁああ!

少女は、薄目で街灯のハトを見つめていたぁあ!

ハトが飛び立ち、影が少女をかすめたぁああ!

暖かい、のどかな午後だったぁあああ!

ベンチに青白い顔をした青年が寝ていたぁあ!

青年は26才だったぁあああああ!!!

青年は黒い背広姿だったぁあああ!

青年は白いくしゃくしゃのワイシャツを着ていたぁあ!

青年の髪型はアフロなパーマだったぁあああ!

「遊戯シリーズ」の松田優作みたいなアフロだったぁあ!

まるで死にかけた野良犬みたいだったぁあああ!

青年は起き上がって煙草を吸ったぁああ!

ハイライトだったぁぁあああ!

“プファァアアぁああああああああ!!”

タバコの煙がゆっくりと空に昇って行ったぁあああ!!!

青年は、それを見つめている少女に気づいたぁあ!

青年は、笑みを浮かべて少女を呼び寄せたぁああ!

少女は、このこのと、やって来たぁああああ!

青年は優しく少女に話しかけたぁあああ!

「君は何を、していたんだいぃいいいいい??」

そして、少女は、

「とりっ、とりっ、とり!!!」

っと言って笑ったぁああああああ!!!

その少女の余りの美しさに青年は虜になったぁあ!

輝く少女に魅とれながら青年は再び話しかけたぁあ!

「おかあさんは?」

すると少女は森の方を指差して言ったぁあああ!

「あ~、あーっ、あ~っ!」

青年は何だか、おかしいなと感じたぁああ!

青年は少女の身元を確かめようと彼女のポケットを探ったが、

何もなかったぁぁあああ!

それから、しばらく青年と少女は話したぁあ!

そして青年は少女が少し知恵遅れだと気がついたぁあああ!

青年は少女を手放したくなくなってきたぁああ!

青年は少女を自分の小さなアパートに連れていったぁあああ!

そして青年は少女と一緒の生活を始めたぁあああ!



青年は世の中が嫌で、殆ど働かないで、

涼子という女性の世話になっていたぁあああ!


青年は少女を豊島園に連れて行き、いろんな事を話したぁあ!

新聞を変える度に貰った優待券がいっぱいあったぁあああ!

毎日、毎日、青年と少女は、豊島園に行って遊んだぁああ!

ぐるぐるぐるぐるメリーゴーランドに乗って回り続けたぁああ!

少女はグルグル回るメリーゴーランドが大好きになってしまったぁあ!

2人で毎日ぐるぐる回っていると、まるでトラルファマドール星

動物園の檻の中で宇宙の終わりまで一緒にいるみたいだったぁあ!

青年も少女も幸せだったぁああ!

今までの人生で一番、幸せな時間だったぁあああ!

毎日2人で笑い合って、永久にぐるぐる回っていたかったぁあ!


ある日、涼子は回り続ける2人に、もう耐えられなくなり去って行ったぁあ!

青年は、ぐるぐる回って帰って来ると涼子の置き手紙を見たぁあ!

“さよなら、あなたはもう絶対に私の人生に関わらないで下さい”

と!書いてあったぁああああああああああ!あああ!

豊島園の優待券も尽きてしまっていたぁあああ!

青年は家財道具を全て売り払い、知人に借金をしまくったぁあ!

青年と少女は再びメリーゴーランドでグルグルまわったぁああ!

だが、何だか・・・何だか・・・気持ちよくなかったぁああ!

何故だか・・・何故だか・・・幸せな気分になれなかったぁああ!

青年は、少女に言っぁああ!

「僕たちは少しグルグル回り過ぎたんだよ。人生に疲れ気味なんだよ。

 しばらく都会を離れて、海に行ってのんびりしよう!」

翌日、青年は少女を連れて伊豆の海に出掛けたぁああ!

2人は海のすぐ近くの旅館で、のんびりと暮らし始めたぁあ!

今度は浮き袋でグルグル回ったぁああ!

毎日、毎日、浅瀬で波に揺られて、お互いを回し合ったぁああ!

少女は無邪気に喜んでいたぁああ!

幸福そうだったぁああ!

しかし、青年は何だか浮き袋でグルグルと回れば回るほど、

憂鬱な気分になっていったぁああああ!!

暗く重く、回りながら砂の中に沈み込んでいくような気がしたぁあ!

ある夜、青年は少女に暗い目をして話したぁあああ!

“もう、お金がない、だからもうすぐ僕たちは死ぬんだよ”っ!

それを聞いて少女は、キャッキャッとはしゃいでいたぁあああ!

そして“メリーごぉおおお!”と、叫んだぁああぁぁ!

次の日、青年は旅館で精算し最後の金で豊島園に少女を連れてったぁあ!

2人は再びメリーゴーランドに乗ってグルグルまわったぁあ!

無邪気に喜ぶ少女を見て青年の目からはポロポロと涙が落ちたぁああ!

メリーゴーランドから降りても青年はグルグル回り続けたぁあああ!

空も地べたも、辺り一帯もグルグルグルグル回っていたぁああ!

そして、ふと気づくと青年は少女を雑踏の中に見失っていたぁああ!

大変だぁあああああああ!

青年は何時間も血眼になって少女を探し続けたぁあああ!

しか~し!青年は次第に

“この方がいいんだ!この方が良いんだ!”とつぶやきだしたぁあ!

そして、青年は、少女を探すのを諦めて、遊園地を出たぁあああ!

青年はトボトボと外の大通りを歩いていったぁあああ!

すると!車道の向こう側から青年を指差して、

“きゃぁあああーーー!きゃぁああああーーーー!”

と、叫ぶ少女を見つけたぁああああああ!

少女は青年に向かって車の流れの中に飛び出したぁああ!

青年もすぐにダシュし、車の流れから少女をかばったぁあ!

青年は清掃局の車に足を踏み潰され、気絶したぁああ!

が!

その瞬間、血だらけの彼を見つめる天使のような少女をみたぁあああ!

青年は、“ああ、自分は幸福だなぁ”と思って意識を失ったぁあああ!

そして青年は、その少女と2度と会うことは無かったぁあああ!




それから数ヶ月が過ぎたぁあああ!

義足になった青年は田舎の両親のもとで、静かに暮らしていたぁあ!

来る日も来る日も、夕暮れに、彼は海浜を散歩して過ごしたぁああ!

ある日、青年は突然、東京へ出掛けたぁあああ!

そして豊島園のメリーゴーランドに乗ってぐるぐる回ったぁああ!

天使のような、あの少女の事を思い出して回り続けたぁあああ!

ぐるぐる回りながら彼は思ったぁああ!

“俺は出来るだけ「純」な人間になりたいぃぃぃい!”

“俺は知恵遅れになりたぁぁあああいぃぃぃいいい!”

“俺は死んだ人間と子供しか愛せないぃぃぃぃいい!”



再び青年は田舎に戻り単調な生活が続いたぁああああ!

青年は散歩の途中で元気に遊ぶ子供たちと知り合ったぁああ!

そして次第に青年は、その子供たちと仲良くなっていったぁああ!

青年は散歩の途中で、その子供たちと遊ぶようになったぁああ!



ある日、青年は子供たちと鬼ごっこをする事になったぁあああ!

子供たちは逃げて逃げて、岬の突端にある灯台に昇っていったぁああ!

子供たちは灯台の梯子を昇って一番上の見晴らし台に到着したぁああ!

義足の青年は死にそうに息をつきながら昇ったぁあああ!

そして、やっとの事でそこに到着したぁあ!

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁぁああ!

子供たちは、疲れて座り込んでる青年を取り囲んだぁああ!

そして無抵抗な青年の義足をいじりだしたぁあ!

子供たちは、ついに義足を外して、下の海に投げ捨てたぁあ!

ポイッと簡単に投げ捨てて天使の様に笑ったぁああああ!

日が暮れて、子供たちは青年を一人残して、去っていったぁああ!

次第に薄暗くなる中で青年は降りる事ができずに、もがいたぁああ!

そして、青年は灯台の最頂上の見晴らし台で一人夜を迎えたぁああ!

真っ暗だぁ!真っ暗だぁ!!

真っ暗な闇の中、何かが灯台から落ちる音がしたぁああ!

何かが海の中へ、

「ボッチャン!」

と落ちる音がしたぁああああああ!







海だぁああ!

青空だぁあ!

都会だぁあああ!

 





おわり

 


KIPPLE(叫ぶ痴呆の会)


kipple

白痴の叫びぃいいいいいい!

2021-04-28 07:49:30 | 夢洪水(散文・詩・等)


田舎道だぁ!

太陽だぁ!

大樹だぁ!



男が立ち上がったぁ!

「さあ-、いらはい、いらはい

今宵の月は、よく切れそうだ!

そうだ!

あの太陽が近づき、大地の底がじわじわと熱くなってきた

あの頃の文化的円熟は、どうなってしまったんだぁあああ」


男は太陽に向かって話しかけたぁあ!

「おい!太陽!よぉく聞け!

熟した僕たちは、そのまま腐り落ちたんだ!

ザマアミロ!

そのまんま、腐って、冷たいアスファルトの大地に、べっちゃり落ちて、

からからに干からびて、風に飛ばされ消えちゃったぁ~!

ヘッヘッ!!!

もう、そんなものは亡霊でしかありゃしねぇや!

現在は過去の歴史によって築かれるだとぅ!

けっ!

過去なんてのは今が過去になった瞬間に死んでしまった今の亡霊でしかない!

ああ、すると僕が死んだ時!

僕の人生はすべて現在の亡霊なのなら、死んだ僕、

現在を持たない僕は、いったい何なのだぁああ!

きっと僕は、何でもない!

最初から僕は存在しないんだ!

だから亡霊も存在しやしねぇえええええ!

わかるか!

そこの、ほおずきを、噛む女!!!


男は、ほおずきを噛んでる女を指差したぁ!

女は、眩しそうに陽を見、ほおずきを鳴らし続ける!

キュッ、キュッ、キュッ!



「わかるか!このてて殺し!

だから俺は、何をやっても良いのだぁ!

存在しない俺が何をやろうと、誰も気にしやしない!

わかるかぁぁぁああ!」


女は、ほおずきをクチュクチュしながら立ち上がり、

すすきの枝を振り回しながら男に近づき指差して言ったぁあ!

「あんた。あたしの、指に触れて・・・」


男は、無言で女の指に触れたぁああ!



「ほら!あんた、今は存在してるでしょ!

あたしの血を感じるでしょ。

太陽の熱い日差しを感じるでしょう。

それは、あんたが存在してるからよ。

だから、あんたは何でもしていいわけじゃない。

あんたは、いつまでたっても私の奴隷よ。

私の言う通りに動く、私のお人形よ!


ほおずき女はニコリと笑ったぁああ!

男は、「うん」と、うなずいたぁあ


うん?

男と女は道の遠方から、

ゆっくりやってくる1台の車に気がついたぁあ!

車の横窓には、風鈴が下がっていて、

それが、けたたましくゆれているぅうう!

 




「白痴の叫びぃいいいいいい!」

 



車は、ゆっくりと2人の前で止まったぁあ!

ドアが開き、男の手が現れたぁあ!

それは、義手だったぁああああああ!

「おい!あんたら、乗せてやるよ。

乗りたいんだろ。乗りな!」

男と女は無言のまま、その車に乗り込んだぁああ!

そして車は出発したぁあああああ!


運転手が木製の義手をコツコツ鳴らしながら言ったぁあ!

「運転手は、一つの義務を背負っている人間だ!

それはヒッチハイカーを助けてやるという事だ!

この俺でもね!義務は守るんだ!

それが車を持った人間の社会モラルだ!

それは俺が片腕でも、ちゃんと2本腕のそろった人間でも

同じ事だ!同じ事なんだ!

いいか!お前ら!

片腕だろうが、かたわだろうが、そんなものは見かけだけなんだぜ!

みかけさ!えっ!くぅえっ!ぷわっ!

えっ、おい、何が大切か?

精神さ!モラル!

心の正しい道徳が一番素晴らしいものなんだ!

俺が、かたわだって、そんなものは、

精神の崇高さに比べたら何でもない!

俺は崇高な精神を持ってるんだ!

ええっ、そうだろ!そりゃ肉体だってあった方がいい!

でも肉体なんて、たかが知れてるんだぜ!

肉体は滅びる!

だが精神は、違う!

肉体は動けない!

だが精神ってやつは、どこへでも行けるんだぜ!

この車みたいにな!

はっは!


ほおずきを噛む女

「Mr.シフレット!」


運転手=シフレットは驚いたぁあ!

「・・・何故、俺の名を知ってやがるんだ!」


「かたわで変質者の乳母捨てシフレットって言ったら、

もうそりゃ、カルトな文学少女の間じゃ有名ですわ!

何が道徳だよ、てめえ!

自分の母親も、女房も捨てておいて!

この、かたわもん!

あんたの母さんはブタの様に臭いんだ!


男と女は車のドアを開けて路上に飛び出したぁあ!

ドアを開け放したまま車は疾走していったぁあ!


Mr.シフレット涙を流しながら言ったぁあ!

「ぢぐじょう!神サマ、今の世の中、まったく腐ってる!」


車はスピードを上げて、どんどん遠のいていったぁああ!



女は、けたたましく笑って立ち上がり石を蹴とばしたぁあ!

「ぎゃはははは!バカ糞野郎!」


男は怒った顔で女を見上げて地べたにしゃがみこんでいたぁあ!

「あんた・・・ひどい女だよぅ」



「へっ!ひどいって?だからって何だよ!

あんたに何ができる!?

あんたは、いつも何も出来ないんだ!

何故?

何かやりゃ、すぐ自分に責任が付きまとって、それを追求される!

そう思って、それが、怖くて、

お前にゃ、何もできやしないんだよ!

この弱虫野郎!いじけ野郎!糞袋人間!


男は、泣き出したぁああああぁああ!

「でも、あの、せっかく乗せてくれた人に、

あんな事、言うなんて!

あんな・・・ひぃぃいいい-!


男は、もっと激しく泣き出したぁああ!



「ちぇっ!まったくバカだねぇ!

さっきの元気は、どうしたのよぉぉぅぅぅうう!

あいつにゃ、あれくらい言った方がいいのよ!

そうじゃなきゃ、あいつは一生、自分だけしか愛せないわぁぁあ!


太陽だぁああ!

空だぁあああ!

緑の木々だぁああああ!


2人は歩き続けたぁああ!


しばらく行くと、木陰で、ポカンと口を開けて、

すわってる白痴の少女がいたぁあああ!



「なんだ!あの娘!アホみたい!」


「きっと、本当にアホなんでしょう!」





そして、それから男は、激しいほおずき女に見切りをつけて、その白痴の少女に、そのイノセンスに惹かれてゆくのでした。2人は恋に落ちました。その後幸せに暮らしたと伝え聞きます。

そして、それから女は、数年後に、さっき罵ったMr.シフレットに恐ろしくも残虐な復讐を受けたのでした。内蔵を引きずり出されて灼熱の大地にハリツケにされ死んでしまったとさ。



おわり



(この話は私の大好きな作家 Flannery O'Connor:A Good Man is Hard to Find をおちょくったものです)

KIPPLE(叫ぶ痴呆の会)



kipple

「ああ懐かしきかな20世紀」と素浪人は思ったんだよぉおお~

2021-04-27 07:54:38 | 夢洪水(散文・詩・等)

だよぉぉおおおお~!

だよぉぉおおおお~!

だよぉぉおおおお~!

 




「ああ懐かしきかな20世紀」と素浪人は思ったんだよぉおお~




闇の中に、赤い、SENKO-が走ったんだよぉぉ~!

血しぶきだったんだよぉぉお~!

刃は肉を縦にひきちぎり、血の噴水を作ったんだよぉぉ~!

悲鳴は殆ど聞こえなかったんだよぉぉぉお~!

カエルを金槌で叩き殺したような声が、

一瞬!闇の中に拡がっただけだったんだよぉぉお~!

刃は、自ら上気した魂の如く、光ったんだよぉぉお~!

赤いSENKO-となって血しぶきを照らしたんだよぉぉ~!

静寂が続いたよぉぉぉおお~!

だよぉぉぉおお~!

どこかで風鈴の音がしたよぉぉおお~!

そして!

古く!懐かしい!ダンスミュージックが、

闇の最深部から流れてきたんだよぉぉぉおお~!



踊りましょう     今夜は

踊りましょう     今夜だけでも

明日になれば     あたしたち

明日になれば     あたしたち

夜が明ければ     あたしたち

あたしたちの  若さは  失われる

いつわりの   若さは

いつわりの  老人となって  全てに見捨てられて

・・・・・ だから ・・・・・

今夜だけでも   楽しく

踊ろうよ



そして残酷な朝が、

ゆっくりと冷たく頭上に染み込んでくるんだよぉぉお~!

刃はサヤに納まり、

赤い血潮は、砂の上に黒い醜い染みとなりて、

カサカサと風に溶かされてゆくんだよぉぉぉおおお~!



藩州浪人は砂の上を歩いてゆくんだよぉぉおお~!

どこまでも続く石灰質の白い砂の上にポツンと赤い風車が、

夏の鋭い陽光を受けて、キラキラと宝石の様に輝きながら、

ぐるぐるぐるぐる回っているんだよぉぉおおお~!



時代は、すでに一素浪人「きっぷる」の理解を遙かに越えて、

爆発しつつあるのだよぉぉぉおおお~!



だよぉぉおおおお~!

 



PS.

知ってるかい?

昔から、

人々の会話は、

全て

「知ってるかい?」

もしくは、その変形

の繰り返しだったん

だよぉぉぉおおお~!



知ってるかい?

ウェヘヘ、ウハハハハハハハハ。



歴史ってのは人々の虚栄そのものだって事は、

誰もが知ってるんだよぉおお~!

果たして虚栄が文明を進展させるんだよぉぉおお~



だからね、

文明から、なるべく離れるべき人。

それはね、人間離れした虚栄だよぉぉぉおおおお~!



だよぉぉおおおお~!

だよぉぉおおおお~!

だよぉぉおおおお~!


だよぉぉおおおお~!

だよぉぉおおおお~!

だよぉぉおおおお~!



だよぉぉおおおお~!

 


KIPPLE(叫ぶ“だよぉぉ~”の会)


kipple

透明な月と蒸発高校生

2021-04-26 07:32:00 | 夢洪水(散文・詩・等)

透明な月と蒸発高校生


 幼い頃、僕の回りは全部、透明だった。僕の世界は全部、本物で本当の事ばかりだった。世界は全て美しく透き通っていた。そして、僕は不死身だった。僕の事を何か神聖な、神様だか何かが絶対に守っていてくれている、そんな気がして、それを確信していた。

 夏の夕暮れそして夜、秋の夕暮れそして夜、冬の夕暮れそして夜、春の夕暮れそして夜、僕の家には風呂が無かったから、僕はお母さんと手を繋いで近所の銭湯に通った。行きは夕暮れ、帰りは夜、僕の中では思い出はそうなっている。思い出の中で、いつも月が出ていた。

 行きは真っ赤で物凄く透明で綺麗なお月様。帰りは真っ青で物凄く透明なお月様。お母さんと僕を行きも帰りも物凄く透明なお月様が追ってきた。ゆっくり歩いても早く歩いても月はどこまでも追っかけてきた。

「ほら、追っかけて来るから追いつかれないように逃げるのよ!」ってお母さんが言った。

 透明な月は、逃げても逃げても追っかけてくるので、僕は怖くなって泣いた。それを見てお母さんがゲラゲラ笑った。僕は泣いたけど、とっても楽しかったんだ。


 それから時が流れて、僕は高校生になった。僕の回りは全部、不透明になった。僕の世界は全部、偽者で本当の事は何一つ無くなった。世界は全て醜く濁っている。

 僕はすぐに壊れた。僕の事を何か邪悪な、悪意だか何かが絶対に傷つけ、もっともっと壊そうとしている、そんな気がして、それを最近、確信している。

 家に風呂があるせいで、夕暮れの月も夜の月も最近は滅多に見ない。たまに見ても月はぼんやり赤かったりぼんやり青かったりで、淀んで見える。濁った月が追いかけて来る。僕はちっとも楽しく無いし、嫌な気しかしない。

 

 毎日毎日、僕は授業が終わり、校舎裏の茂みから伸びている細い道の途中にある祠に行く。そして、その時、とてつもない妄念が僕の頭を横切る。

 人間社会で人間として暮らすために、本当は人間の生活において全く不必要であるに違いない、偽善への認識と嘘と蹴落とし合いの受容と全てに対する疑惑だ。妄念はどんどん膨張してゆき、巨大な淀みきった暗雲となって僕の回りをグルグル回って取り囲む。

 そして一服する。タバコを吸う。すると、その忌まわしい妄念の暗い渦は僕の回りからしばらく消え去り、しばらく忘れる事ができる。そして、又、僕は偽善と嘘と猥褻まみれの醜い腐敗しきった世界へ戻る。



 それは現在の日本にとって、苛めや猥褻や虐待、虚偽と悪意と蹴落とし合いの陰湿な汚濁の連鎖が相変らず続く、とてつもなく平凡な日であった。しかし僕にとっては、とてつもなく重大な日なのだ。

 僕は前日、その前の日と続けてきた通りに、カバンに教科書をつめ込んでいた。開いた引出しの中には、この間の30点のテスト用紙とNETで引き出したアンチョコのコピーが見えた。僕は口を曲げてバタンと閉めた。そして、いつものように家を出た。

 家を出て、100mばかし歩くと、僕は石ころに、つまずいて転んだ。僕は、いつものように駅に着いた。僕は学校とは反対側の電車に乗った。

 それきり、僕は蒸発した。
 


 気持ち良い強い風が吹いてくる。僕は口笛を吹いて、ずぅーっと続いてる草野原と花々の中を、タッタカタッタカ、歩く!僕は口笛を吹いたまま、突然、倒れる。ずっと口笛を吹いている。

 草花の上に大の字になって、寝転んで空を見ると、とてつもなく青く澄んでいる。透き通っている!

 しばらくして僕は、ゆっくりと腕を立てて、ゴロンと座り込む。花をくわえて、目を閉じる。僕の回りから淀んで濁りきった黒いタールのような雲がすっかり消え失せているのを確信する。

 こうしていると思い出す。そう、幼い頃、お母さんと銭湯へ行ってた頃の事。行きの月は物凄く透き通った赤いお月様で、帰りの月は、物凄く透き通った青いお月様だった。僕は無敵で、とても楽しかった。

 こうして、しばらく目を閉じていよう。口笛を吹いていよう。風に吹かれていよう。夕暮れになればカラスの声が聞こえるだろう。そうしたら目を開いて月を探そう。きっと幼い頃、銭湯の行きと帰りにお母さんと一緒に見た、あの物凄く透明な美しい月が見つかるに違いない。

 綺麗な真っ赤な透明な月を見つけたら、僕は、どこまでも走ろう。そうしたら、きっと、どこまでも月は僕を追いかけて来るだろう。そして夜になったら、きっとお月様は真っ青で物凄く透き通った月に変わるだろう。

 そして僕の回りは再び全て透明になり本当になり美しくなり、僕は不死身になる!



 天にいる誰かさんは、

あんたを気に入ってくれてるぜぇ!



kipple

銀幕、絶叫!

2021-04-25 07:23:24 | 夢洪水(散文・詩・等)
銀幕、絶叫!

 現実に、つばをかけろ!現実は糞溜めだ!

 映画こそ表層意識をひっぺがす深層の幻実だ!心の憩いだ!心の刺激だ!心の活力だ!注目せよ!発見せよ、目ん玉かっぴらいて、発見せよ!我を忘れよ!

 映画は絶え間無く訴えかける!人の数だけ真実があると!思考は無駄だと!抵抗は無駄だと!

 現実は無意味なコラージュだと!現実はメチャクチャなモザイクだと!しかーし!戦えと!

 古い映画も観ろぉぉぉおおおおおお!ピアノ線が見えてなんだ!白いシャツが何時の間にか黒くなっていてなんだ!平安時代に高層ビルが見えてなんだ!細かいことを気にするな!考えずに感じろ!心で受けとめろ!

 映画は個人的な内宇宙の刺激物だ!だから共同で楽しむ事はできない!不可能だ!共同体的な映画の楽しみ方は完全に決裂している個人どうしの決して相容れない、内宇宙のぶつけあいにあーる!感性のキャッチボールだ!たかが映画だ!こんな最高の楽しみを生活の重みから逃す手はない!あなたは映画にトリツカレル!



 天にいる誰かさんは、

あんたを気に入ってくれてるぜぇ!

(「傷だらけの栄光」の原題:「SOMEBODY UP THERE LIKES ME」:監督ロバート・ワイズ:主演ポール・ニューマン主題歌ペリイ・コモ、主演のボクサー役はジェームス・ディーンが死んじまってポール・ニューマンになっちまった。ボクサー役のポール・ニューマンが最後に言うセリフのもじりだ!)


kipple

シナリオ的な、あまりに、シナリオ的な、 「オレンジのゼライス」

2021-04-24 08:16:44 | 夢洪水(散文・詩・等)
 
 
シナリオ的な、あまりに、シナリオ的な、
「オレンジのゼライス」
 



 
♂(N)ナレイション男  ♀(N)ナレイション女

 白黒の粒子の飛び交う画面。

♂(N)「その日の夕焼けは、地球最後の夕焼け。父(てて)殺しの血まじりの涙の色。狂った弟のグローブに書いてあった一つの詩の色。生まれた時にちらっと見た何やら恐ろしげな地上の光。そして僕が20年間暮らしてきた、人生の美しくも惨めな部分の総集体だ。その日の夕焼けは。」


 
PART①

 新宿西口駅の前。待ち合わせの人の群れ。女1人。男2人。ガードレールで人を待っている。

 ガードレールにガムを噛みながら腰掛けた男が言う。

「小夜子ちゃんてば、小夜子ちゃん!ねぇっ。ちぇっ、なんだよ。」

 小夜子は唯、じっと夕陽を凝視したままだ。立ってタバコを吸っていた男、京介は、タバコを落とす。時計を見、空を見上げ言う。

「もう、そろそろ来るだろ。」

 夕焼け空。雑踏。オレンジ色した空間だ。

 中央線。電車から吐き出される人ごみの中に千絵子がいる。千絵子は改札を出て、地下街を抜け、待ち合わせの場所へ向かい、階段を上る。

 千絵子は手を上げて、彼ら3人に挨拶する。そろった4人は、そろそろと歩き始める。

千絵子「神山君、何なの?今日、急用なんでしょ。それなのに?何なのよ。」

 神山は顔をしかめる。そして小さい声で言う。

「小夜子を見ろよ、変だろ。おいっ、あんまり露骨にやるなよ。

 千絵子は小夜子を見る。小夜子はポカンと夕陽を見つめている。しばらく沈黙して4人は歩く。

千絵子「小夜ちゃん。ねぇ、どうしたの?何でさっきから空ばかり見上げてるのよ。」

 しばらくしてから小夜子。

「・・・あのね。みんな汚物なのよ。あたしも、あんたも、あいつらも、そいつらも、みんなね。でも夕陽は汚物じゃないわ。」

 泣きじゃくるような声で彼女は言う。

小夜子「わたしはね、人ごみが汚物に見えるの。胸が悪くなるのよ。胸の中に睡蓮の花が咲いて枯れていくの・・・」

 小夜子は涙を流し、地面にしゃがみ込む。神山と津山京介、そして荻野千絵子は、神山の妹の小夜子を立ち上がらせようとする。

 夕陽。ビル群のガラスに反射し、狂気のように鋭くも鮮やかだ。夕陽と人ごみの対比。

 



PART②

 上野駅のプラットフォーム。人ごみの中を一人の青年が膨らんだ旅行カバンを下げて、ゆっくり歩いていく。時計を見る。タバコを買い、階段のところの鉄柱にもたれて、煙草を吸う。

 階段を下りたり上ったりする人々。青年は再び時計を見る。指定席券2枚を取り出して時間を確かめる。

「ちぇっ、何してんだ。あと5分だぞ。糞バカめ。」

 青年は煙草を捨て、足で揉み消す。

「行きたいって言ったのは、そっちじゃねぇかよ。」

 青年は位置を変え、カバンの上に腰を降ろし、再び煙草を吸う。ベルが鳴り出したので青年は電車に入り込んでいく。青年は車内を歩く。

 そして青年は彼の指定席の隣に、すでに座っている萩野千絵子に気がつく。青年は千絵子の隣に無言のまま座り、彼女を無視して暫く煙草を吸い続ける。

 電車は出発する。車窓から朝日が射し込む。千絵子は窓の端の羽虫を見つめている。

青年「僕が約束の7時にタバコを持っていたとしたら君は僕に10本は吸わせた事になるぜ。まあ僕は7時30分に買ったから、これで4本目だが。」

千絵子「ごめんね。昨日、ちょっと変な事があってね。」

青年「ふん。」

 青年は乱暴にタバコを叩く。青年は千絵子の前の席へ移る。沈黙。

千絵子「ほんと、ごめんね。」

青年「何だよ変な事って。言ってみろよ。」

千絵子「うん、あなたも知ってるでしょ。小夜ちゃんって。神山君の妹の。あの子。」

青年「ああ、知ってる。それが、どうした。」

千絵子「彼女ね、どうも頭が・・・。何て言ったらいいのか、突然、性格が変貌しちゃったとでも言うのかしら。何か、もの凄く真剣なのよ、彼女。」

青年「ふん。あの娘、大学辞めて遊び回ってんだろ。何考えてんだかわからんよ、まったく。」

千絵子「あなた、彼女の事嫌いなの?そうでしょ。」

青年「バカ。俺は、ああいった神経質な女は嫌なだけよ。」

千絵子「へぇ。そう。自分が鈍感だからって・・・フッ。」

青年「なんだ!このやろう!遅れてきやがって!ふてぶてしい事ほざきやがってぇええ。ふざけんなよ。」

 青年は千絵子の頭を左手ではらう。沈黙。青年は再びタバコを吸う。

青年「ちぇぇっ!頭に来るぜ、まったくよ。」

 千絵子は、うつむき、じっと自分の指を見ている。そして千絵子は上目づかいに青年を見る。

♀(N)「頭に来るのは、こっちよ。まったく、あんたはバカなんだから。この自己中のエゴエゴエゴイスト!他人の細かい感情なんか全然わかりゃしない。」

 時が過ぎ、太陽は真上、そして斜めに・・・。千絵子は寝ている青年を見ながら。

♀(N)「何故あたしが、あんたなんかと旅行したいなんて言ったのか、この人は全然わかりゃしないのよ。全然ね。あんたは死ぬのよ。」



PART③

 夕暮れ。オレンジに染まった公園。小夜子がブランコに乗って歌っている。神山が京介と供にやって来る。京介は「やあ」と言って、ブランコのそばに腰掛ける。

神山「小夜子。どうだろう、千絵子の奴。少しは考えてくれたかな?」

京介「俺も彼女のノートに小さく書いてあった、あの詩を見た時にゃ驚いたよ。」

小夜子「さようなら僕のにせともだち。君もあなたもあんさんも皆様、そろって皮をかむった卑しいキモだ。道で蠢く赤い花。そっとしときましょ。あたしは勝手に死ぬんだから。そっと、しといて偽友達なら。あたしの一番の偽友達が道連れ。あんた、覚悟しなさい。ってね。」

 小夜子のブランコは大きく揺れる。

京介「小夜ちゃん。君の演技は凄かったよ。あれは本当に演技なのかい?」

小夜子「半分はね。」

神山「おいおい半分は本気だなんて、止めてくれよ。お前まで死ぬなんて言うんじゃ、こっちが死んじまうよ。」

京介「千絵子君、真剣に小夜ちゃんを心配してたけど、ああして彼女、自分より重症な小夜ちゃんを見て、本当に自殺を止めてくれるのかなぁ。」

神山「どう思う?これは小夜子、お前の計画だぜ。」

小夜子「あたしたち3人。千絵ちゃんを救うために精一杯やったわ。精神的に危険な状態にある彼女に、もっと精神的に危険な状態で、今にも発狂しそうなあたしの姿を見せる事で、彼女をその危機の中から救い出せると私は考えた。私は精一杯、彼女を騙そうとした。千絵ちゃんは、自分の危険な精神状態のもっと悪化した型の私を見て、不思議な感を抱くだろう。そして、それが果たして彼女に自分の心を、より客観視できる余裕を与えるだろう。そして、その余裕が彼女の心の崩壊に何らかの形で役立つに違いないと、私は考えた。そして実行した。しかい・・・・・・・・。」

 小夜子は、ブランコを止める。

神山「ダメだったというのか?」

小夜子「わからない。彼女、私を見抜いたかもね。人間が、あんなに急変するんだもん。不信感を抱かない方がおかしいけどね。」

京介「しかし小夜子君。君は千絵子君みたいな危険な状態におちいった事があるんだろ。どうやって君は抜け出したんだ?」

小夜子「あなたたちだって考えた事は、あるはずよ。

自己の不在感。
他人や社会への嫌悪。
純粋である事への憧れ。
徹底したエゴへの憎悪。
真実とは何か?
死の誘惑。
過剰な性欲への憎悪。
凡俗さに対する嫌悪感。
自尊心への不安。
信じる事への強い信頼と不信。
これらが全て、混じり合って不思議な、何だかわけの分からない精神的混乱におちいるのよ。そして、それが、ついには自己否定、また他者、社会全体への否定となり、要するに消えたくなるの。私の場合も、私より重度な人間を知る事によって救われる事ができたのよ。」

神山「お前にも、そんな時期があったのか。俺には全くわからない。いや、わかろうとしなかったのだろう。誰なんだい、小夜。お前を救い出したのは。」

小夜子「あたしの場合は、まだ軽かったのね。こんなもんでケロリと治っちゃうんだもの。治ったというか、それらを遠くから見て、あまり気にせず、生きる事の意義を他に見出したの。」

 小夜子は、ブランコを揺らし始める。

小夜子「あたしの助けになったのはね。へっへ、くだらないんだけど、何冊かの本の主人公たちなのよ。」

京介「あっ昨夜、千絵子に渡した、あの本か。」

小夜子「そ、そうかもね。とにかく、ちょっと遅すぎたわ。千絵子、富沢君、あの嫌な奴を連れて旅行に行ったのよ。この旅行、変よ。私たちのやった事が、彼女の救いになったとしたら、彼女はちゃんと旅行から帰って来るわ。でもダメだったら、もう彼女には会えないでしょうね。たぶん。」



PART④

 電車内。窓から夕陽が差し込んでいる。千絵子は膝の上に、昨夜、小夜子に貰った「フラニーとズーイー」をふせて、うとうと眠っている。

 富沢はタバコを吹かし、窓外の暗くなる景色を見つめている。千絵子は薄く目を開ける。

千絵子「・・・起きたの?今、何時?」

富沢「今、4時半だ。もう、そろそろ着くぞ。」

千絵子「ふう。わぁ綺麗な夕焼け。やっぱり東京とは違うわぁ。・・・夕焼け。」

富沢「おい、やっぱりさっきの話、聞かせろよ。神山の妹が、どうしたんだよ。」

千絵子「うん。昨日の夕暮れ時にね。あたし神山君たちに呼ばれたの。急用だってね。それで、まあ、あたしもぼちぼち行ってみたんだけど。もう小夜ちゃんが、おかしいのよ。何か、とてつもない様な事で悩んでいるらしくて、気が狂ったみたいなの。突然、泣き出したりしてね。それで私たち「ピノキオ」で飲み始めたんだけど、小夜ちゃん一人でブルブルと震えてるの。寒いの?って言うと、怒ったような目で私を見たりしてね。あたしは、とても困ったわ。神山君と京介君は小夜ちゃんを何とかして助けて欲しいってんで女友達である私を呼んだらしいの。でも私、本当に彼女の気持ちは、わかったのよ。わかったわ。そして、話しているうちに、私の方が重症だって事もね。」

 千絵子は、ポカンとしてる富沢に笑いかける。富沢は、顔をしかめる。電車は夜の駅へ到着する。富沢と千絵子は、北陸の町へ出ていく。


2人は能登半島から永久に帰って来なかった。

 






kipple

恐山・異化

2021-04-23 07:27:53 | 夢洪水(散文・詩・等)
恐山・異化


 恐山。透き通ったガラスのように冷たそうな無生物湖、宇曽利山湖、その湖畔に広がる荒れ果てた白い地肌。

 赤い風車が、血のような夕陽に照らされて、くるくると回り始める。灰白色の大地にポツンと一滴、赤い血が落ちた。空に地にカラスが舞い、硫黄の煙は白く白く景色を染めて、卒塔婆の車輪がカタコト、カタコトと静けさを深める。

 あまりにもバラバラな景色が、あまりにも調和を持っているのに震える。美しさが既存の概念から、かけ離れているのだ。

 夕陽が強酸湖を赤らめ、ひからびた湖岸は煙が立ち込め、血の池地獄の風車が回る。やがて太陽はマスマス赤くなり、線香花火の火玉の様になって、ポトンと山並に姿を消してしまう。

 闇が、やってくる。風呂小屋から湯煙が立つ。カラスの声が闇夜に響き渡り背後に不思議な気配を感ずる。ゲタの音が宿坊の近くを通り過ぎ、冷えびえとした湯上がりの肌に硫黄まじりの風が、生暖かく吹きつける。遠くから老女の笑い声が聞こえる。

 湖はあくまでも静まり返っている。死んだ土地の死んだ湖。死とは、この世ならぬ美しさを持っているのでしょう。

 私はビールを飲んだ。普段の効用はなく、気分は湖と同じ様に無常であり、虚無であった。しかし一沫の恐怖感はあった。それを溶かして、破烈させてくれるはずのビールであった。カラスの鳴き声が、又した。

 

 コン、コン。 コン、コン。何の音でしょう。こんな夜中に、こんな場所で・・・。

 

 なんて事はない。私の意識の産物である。恐山の個々の事物を結集して、ひとつの音として表現すると、このようになったという訳である。別に何の意味も無い。頭の中で響いた音が、これだったのである。

 俗念は、もう、どうしようもない。恐山だろうが何だろうが私の俗念を打ち負かす事なんか、できやしないのだ。呪われた私は、私を変えるしか方法が無いのだ。私で。

 ちょうどコンクリートの道路が残骸と化した様な地面、チョークのような地面、山も平地も灰白色のハイキョ。

 地球も数億年のちには海に生物はいなくなり、陸の生物も死に絶え、コンクリートとアスファルトの残骸地面、ボロボロにくずれた灰色の地が死んだ海を包む。焼け果てた陸地には、カザグルマの代わりに、機械の歯車がコロコロと回っている。無数の化石化したICチップが陸地を白く染める。

 

 恐山は絶滅した地球の箱庭的モデルなのでしょうか。

 

 フ  ヘ  ヘ  ヘ  ヘ  ヘ ヘ

 


kipple

あるマッドサイエンティストの顛末

2021-04-22 07:24:50 | 夢洪水(散文・詩・等)
あるマッドサイエンティストの顛末


1.イントロダクション


 皆さん!20世紀も、やっと終わろうとしております!さて、世紀が移り変わるとき、歴史は、ある事実を残してきました。

 世紀の変わり目に出現した偉大なる人物、ベル、マルコーニ、エジソン、ニーチェなど数え上げれば、きりがありません!

 そうです!彼らは天才なのです!世紀末には必ず天才が出現する!もうこれは人類の常識と化してしまいました。

 さて、20世紀FOXが21世紀FOXに改名するのは、明日か、明後日か、何て賭けが流行する現在、東京小金井市のS大薬学研究所に一人の天才が出現しました。

 しかし彼は、その偉大な頭脳を、世間に公表しようとはせずに、唯、ひたすら己の快楽、欲望、我欲のみに使っているのです。


2.1990年→∝


 研究所の特別研究室Q号では、アル博士が興奮を隠しきれず、よだれを流したまま、口をVの字にひん曲げて含み笑いをしていた。

 Q号室はアル博士専用の個室で、彼以外の出入りは殆どなかった。今日も8畳程のスペースの室内にアル博士、一人きりだった。彼の脳内では様々な思考波が飛び交っていた。

 

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 へへへ、やったぞ!ひひひ、俺は天才だ。オレ以外はみんなバカだ。くきき。

 京子のヤツ、何してるかな?へへ~、俺は世紀の大発明をしたんだ。でもなぁ、でもよぅ。

 でもな皆が使っても俺はちっとも面白くねぇ。絶対、一人で服薬して、誰にもやるものか!

 京子め、ざまあみろ!ブタのケツ!糞女!妻だと!早く死ね!天才を理解せぬ者は死すべし!

 俺は200才は生きるのだ。長寿の薬。やはり俺は天才だ!人生を楽しんでやるぞ!

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 アル博士は試験管に入った夜の海水のような液体を飲んだ。それから彼は他人の3倍以上の人生を送る事になったのだ。

 アル博士は何と言っても金策の天才でもあったので金を作るのには苦労しなかった。莫大な財産ができた頃、例の悪妻が死に、彼は金に物を言わせて豪遊した。

 まだ、70才だった。彼は天才ではあったが、それは全て現実的な技術や論理的思考や発想においてであり、心の面では相当な世間知らずだった。

 彼は金で買った遊び人生と金で買えぬ真の人生の区別がつかなかった。彼の人生は、外見だけのカラッポな物だった。モノだった。

 しかし彼は、死ぬまで、いや金がなくなるまで、それに気がつかないだろう。だが金は運がいいのか悪いのか、尽きることはなかった。

 彼は思い切り快楽人生を楽しんで250才で他界した。ミイラのような容姿だった。


3.死後


 目を覚ますと天界だった。天界では死んだ時の容姿のままで、250才のおぞましい老醜をさらし、長寿薬を独り占めしたアル博士を相手にする者は誰もいなかった。


 孤独のために彼は発狂した。



kipple

ストロボ・マン

2021-04-21 07:49:46 | 夢洪水(散文・詩・等)
ストロボ・マン



ストロボ!フラーッシュ!ストロボ!フラーッシュ!

バシャッ!バッ!バッ!バッ!フラーッシュ!

フラーッシュ!ストロボ!ストロボマン!

オレの名前はストロボマン!たくぜ!ストロボ!押すぜ!シャッター!
 

夜闇を照らす強烈白光!一瞬剥がれる闇のベール!そこにあるのは真実!

闇の中から浮かび出る一瞬の真実!

 

きゃー痴漢!なんだ今のは!てめぇー!何してんだ!

 

真実は闇に隠れ、一瞬の白光は嘘を暴き出すぜ!脱兎逃げろ!

フラーッシュ!ストロボ!ストロボ!フラーシュ!

真実は知られたくないもの、一瞬の白日晒しに人は驚き怒るぜ!

フラーッシュ!ストロボ!ストロボ!フラーシュ!
 

オレは正義のストロボマン!たくぜ!ストロボ!押すぜ!シャッター!
 

暗黒に投じる激烈瞬光!一瞬たじろぐ悪の一味!そこにいるのは悪党!

闇の中から繰り出される痛恨の一撃!

 

こら、きさま、何すんじゃ!殺すぞ、こら!いてまうぞ!

 

暴力はオレは苦手、一瞬の発光は悪を牽制すんだ!脱兎逃げろ!

フラーッシュ!ストロボ!ストロボ!フラーシュ!

暴力にはかなわないもの、一瞬の正義の光撃が悪をフィルムに収めるぜ!

ストロボ!フラーッシュ!ストロボ!フラーッシュ!

 

バシャッ!バッ!バッ!バッ!フラーッシュ!

フラーッシュ!ストロボ!ストロボマン!

オレの名前はストロボマン!たくぜ!ストロボ!押すぜ!シャッター!

 

放電管にクセノンガス!高圧直流!一瞬発光!

買ってくれぇ~!講談社!文春!買ってくれ~!投稿エロ雑誌!

 

 


kipple