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「雨族」
断片21-焼却場Ⅴ~F・クラウネン②
僕は何も言わずに、お棺に近づき、死体の顔を見て鼻をすすると深呼吸を三回して気分を落ち着かせた。
しかし、あまりにも、F・クラウネンの印象が腹立たしいものだったので、僕の、黒い綿をいっぱい胸に詰め込まれたようなムカムカする気分はおさまりそうもなかった。
そこで僕は、D・クラウネンの獅子と豚をまぜた様な死に顔を見つめながら、本日43本目のサムタイムを取り出して火をつけた。
そして、それはもっと悪い結果を招いた。
F・クラウネンが重く静かに激しく言った。
「俺の目のとどくところで、煙草を吸うな!消せっ!一刻も早く消せっ!」
僕は指先が震えるのを感じた。
彼は僕の怒りにとどめを刺した。
僕は空想した。
空想の中で、F・クラウネンの顔面をフレディ・クルーガーから借りてきたカミソリで、1ミリ単位に切り刻み、タイソンから借りてきた腕力で百万回ぶん殴り、首から下を巨大なシュレッターに押し込んだ。
僕は、空想の中で完全に彼を始末すると、静かに微笑み、すっきりとして煙草を窓際にあった平凡なブリキ製の灰皿の中で揉み消した。
僕は自分の感情を空想の領域で抑制する傾向がある。
素直に煙草を揉み消した僕を見て、F・クラウネンは、さらにぶつぶつと喋り続けた。
「俺は煙草は好かない。アルコール飲料も飲んだことはない。それらは、人間の本来の神秘的な能力を破壊し堕落させる。物質社会に呑み込まれ自己を見失う。いけないことだ。俺は兄貴の友人だったお前だからこそ、忠告するのだ」
驚いたことに彼は僕に気を使ったようだ。
兄貴の友人として僕に何らかの評価をしているようだ。
僕は、どうしてD・クラウネンを殺したのか?、聞きたかったが気持ちを押さえた。
落合さんがいるし、死体を目の前にしては聞きづらかった。
僕は、お棺を離れて、落合さんの方に近づきながらF・クラウネンに向かって、
「ご忠告、ありがとう」
と言うと彼は、再び、三十七人の女を強姦し皆殺しにしてきた様な恐ろしい笑みを浮かべて不愉快なセリフを吐いた。
「こいつの死に様はみものだったぜ。全身から凄まじい恐怖の雄叫びをあげやがった」
断片21 終
This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)