元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「さよなら日和」:kipple

2006-11-27 01:28:00 | kipple小説


     「さよなら日和」
         (大きな声で朗読)


夕焼け染まる墓場では、すべてのものが、さよならさ。
砂の舞いうつ血の海じゃ、輝く朝日も、さよならさ。
落伍者いっぱい、燃える街。  皆が皆に、さよならさ。
  僕も、あなたも、さようなら。

すべてのガイゴツ大好きな、子供の十字架、舐めながら、
道で、うめく赤い花を、どうか、そっと、しときましょう。

さらさらさらさら。サラサラサラサラ。サッサッ サラサラ サッサッサッ。

   こらこら嘆くな大文豪。
生きてるからにゃ、お前さんも皮をかむった卑しいキモだぁあ!

ほらほら、手を振れ、大きく扇形に手を振れぇぇええ~!

大空を手で切る、破壊感! 満足したかい?これで君もさよならよ。

ヘッヘッ ヘッヘヘ ヘヘヘヘヘヘヘヘヘ
 うへへへへへっへへっへへへひゃへひゃへへへーーー!

       完

            (KIPPLE絶叫朗読会)


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


『御先祖様御落下』:kipple

2006-11-25 02:33:00 | kipple小説

未完小説
   ほぅらっ!全世界の天辺だよ!マミィィッ~~!な未完小説!
 そんな未完の事は分からねぇ!そんな未完な事は憶えちゃいねぇ!
    いつまで続くんだ!はぐれ未完! 第五弾!!


  “今!世界創世の真実が明かされる!! 
   史上空前のSFはぐれ未完大作遂に出現!”


     『御先祖様御落下』


 紀元前 3万年頃  地球出現

 荒い粒子が遠ざかるにつれて、色が形を現わし、風景が形成されていった。

 あちこちに、くすんだ岩肌が現われ、それを眩しい青空がつつんでいた。

 「地球」という長いホログラム・ムービーがオンエアされた。

 「地球」は、ここから始まった。

 「地球」は、いつか、どこかで「善」という監督が作った。

 しかし、その演出には「悪」というプロデューサーの影響が強かった。

 今、ホログラム・ムービーを再生しているのは「無」である。



 紀元前 2万年頃  生命出現

 ある日、海と共に地球に、いっせいに生物と生物の死骸が現れた。

 目に見えぬ微生物・プランクトン・魚類・爬虫類・哺乳類・鳥類・植物・昆虫などなど。

 そして、それらの死骸や化石類。

 しかし、まだ人類ほどの知的生物はいなかった。

 地球は、いっせいに騒々しくなり、生命と、その死骸であふれかえった。



 紀元前 1万年頃  人類出現

 その日、どこかの大海原に「彼」が落下してきた。ドッブ~ン!

 「彼」は考える知的生命体だった。

 正確にいうと「彼」は生物ではなく、高度な情報タンクだった。宇宙のあらゆる情報を蓄積させた超微粒子の集合体だった。

 「彼女」(海)は、待っていた。そして言った!

カモォ~ン!カモォ~ン!レッツ!ファァァック~~!

 「彼」は、それに答えて言った!

ベイベー!OK!OK!OK!レッツ!ファァァック~~!

 「彼」は、(海)「彼女」の中で「彼女」(海)の中にビンビンに屹立したポコチンから宇宙のあらゆる情報を蓄積させた超微粒精子を次から次へと、うほうほうほうほ、大量に射精し撒き散らしまくった!

オー!マイ!ゴッォォォォド!♪女は海ぃ~~!♪

 そして、海から、ポンポンポンポンと大勢の「男」と「女」が生まれ母なる大地に放り出された。

 人類が出現した・・・。

ポ~ン!ポ~~ン!ポン!ポン!スッポ~ン!ポ~ン!

一万二千年くらいして、「彼」は言った。

“なぁ・・・もう、俺、疲れたよ・・・もう、いいだろ、ヤツラ勝手に繁殖してるしぃ・・・”

“なによ!だめ!ずいぶん待ったんだから!あなた!逃げようったって、絶対に放さないわよ!”

     





                   未完!


未完小説。それは最初から未完として!未完を目指して書く小説!

必ず未完で終わらせる事・・・・・・決して完成しては・・・・・・・・・・・


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


『川狩無人の仕業』:kipple

2006-11-23 00:30:00 | kipple小説

未完小説
   ああ!完全にあっしの妄想日記と化した未完小説!
   この世には!2種類の未完小説がある!
 ドアから入る未完小説と窓から入るはぐれ未完小説だ!
ああ!復讐のラッパの音が聴こえてきたぜぇ!はぐれ未完小説!第4弾!


  “この世には2種類の未完小説がある!
  銃を構える未完小説と、穴を掘る、はぐれ未完小説だ!”


     『川狩無人の仕業』


 プロローグ

 ・・・・・・ここ数ヶ月、雨が降り続いている。

 雨は地面に吸い込まれ続け、地面は水びたしになり、どんどん雨は地中に吸い込まれ、地核まで水浸しになり、地球はビチョビチョのスポンジみてぇになっちまった。
 ビルや家々は水の中に沈んでゆき、不気味な植物が生え、あちこちで大災害が起きた。

 人々は、この現象を様々に論じ合った。環境破壊による地球滅亡説から宇宙人侵略説まで飛び出した。だが、真実が見つかるとは到底、思えなかった。天文学的にも気象学的にも、ありえない現象なのであった。


 エピソード・1

 ジョニー・クース・30才、トニー・ジョーンズ・27才、は、砂漠を彷徨っていた。飛行機が墜落し、LOSTな砂漠に落ちてしまったのだ。乗客は、2人を残して皆、死んだ。

 彼らの頭上には、カンカンと照り続ける熱い熱い太陽があった。そして歩けど歩けど、彼らの前方には、だだっ広い砂漠が地平線を包んでいるだけだった。

 ジョニーは悲鳴をあげた。 「水!喉が、からからだ!」

「おい!トニー。俺たち、もうダメなんじゃないのか?どうせ死ぬんなら、ほら、このピストルで・・・・・・」

「おい!ジョニー。まだ、分からんぞ!何が起こるかわからんぞ!」
 と、その時である。

 見る見る間に黒く厚い雲が、空一面をおおい隠し、とどろくような雷鳴と共に雨がいっきに降りはじめたのである。

「おい!ジョニー!見ろ!見ろよ!ほっ・ほらぁっ!何が起こるか分からんだろー!世の中はぁっ!はっはー!ジーザス!オーマイゴッドッォォオオオ!」

 二人とも空に向って口を開け、精一杯の雨水を飲み込んだ。二人は、ホッとした。

 が、次の心配が襲ってきたのだ。
 それは、いつまでたっても雨が降り止まないということだ。

 その日から彼らは豪雨を浴び続け、何も食わず、三日間だけ生きた。

 だが、死ぬ前の3分間だけ、彼らは見たのである・・・雨空一杯に広がる巨大な二つのマヌケな顔を・・・。
「あれは何だ?蜃気楼なのか?もしかしたら、これが復活の日なのか・・・」


 エピソード・2

 月面有人小型探索宇宙船・ソケット8号は母船とドッキングしたところだった。

 ソイスチョフは他の乗組員たちに充分に休むように言いわたし、自分は展望室に向かった。

 この母船は全面的に地球上にある国連の巨大AI「LOGOS」の1ユニットによって管制されていた。

 彼は展望室の「LOGOS」ユニットの端末に向って話した。
「・・・ああ、妙に湿っぽい・・・ああ、湿っぽいぞ。俺は生まれた時から、ひとりぼっちだった。俺は捨て子だったんだ!俺は孤児だったんだ!お前は俺の気持ちが分かるか!俺は他人と接するのが怖いのだ!だから、この宇宙空間にいる時だけが安らぎなんだ!こうして一人で展望室で凄まじいカラッポの宇宙を眺めている時だけがな!・・・・・・と、俺は思っていたんだ。だが、どうだ?今、俺は早くあの青い地球に戻りたい!帰りたがってるんだ!人間が、いっぱいいる、あの青い地球になぁっ!・・・え? あの青・・・?青・・・・・・ど・どうしたんだ、おい!何が起きたんだ。お・俺たちの地球は・・・?ななんだ・・・おい・・・「LOGOS」・・・通信を切りやがった・・隠してたのか・・・地球と何ヶ月も連絡がとれてないじゃないか・・・いや、こ・壊れたのか?・・・この湿気のせいだな・・・」

「LOGOS」・“ジジジジジジジジ・・・・・・・”

 その黒い空間に浮ぶ太陽系第三惑星も、又、より黒く深く真っ黒だった。


 エピソード・3

 川狩無人とkippleは五鳥プラネタリウムで掃除のバイトをしていた。職員は皆、帰り、館内には、2人以外、誰もいなかった。

 川狩無人は真面目に一生懸命に働いていたが、kippleはプラネタリウムを勝手に起動させて、リクライニング・チェイスに、だらんと寝そべって全く働かずに、場内に展開される宇宙のあちこちを指差し、ゲタゲタと笑って、“バッキュ~ン!バッキュ~ン!”と指鉄砲で次々と星々を破壊する妄想の中で恍惚としていた。

 川狩無人は待合室のトイレの床にホースで水をかけ、モップをかけていた。

 声をかけられたので振り向くと、kippleがホースを持って、深刻な顔をして立っていた。

kipple「いいか、あっしは重大な事に気づいたっすよ。黙って俺の言う通りにしてくれって!頼むっすよ!川狩クン!」

 きょとんとしている川狩に、kippleはホースを握らせ、場内に連れて行き、場内一杯に広がる宇宙空間の中の一つの星を指さした。

kipple「あれが地球っすよ!ずいぶんと汚れちまってるぜ!テロに内戦に北朝鮮は核保有っす!モラルも低下する一方っす!どうです?徹底的に綺麗に洗い流してやろうじゃないっすかぁっ!」

 kippleは、疲れて頭がボウっとしている川狩に有無を言わさず、ホースを握らせ、天のスクリーンに映ずる地球に向けて力強く方向を固定した。

川狩「おーい、何するんだよ。俺、こうして立ってんの?」

kipple「そうともさ!そのままっすよ!そのまま!絶対に動いちゃダメッすよ!位置がずれるっすから!」

川狩「ちょっと待てよ。また、クダラナイ事を考えてんだろ、俺、やだよ!」
 と、言う川狩を一切相手にせず、kippleはすばやくトイレに飛んで行って、ホースの繋がった蛇口を全開にした。

じょばばばばばばぁぁぁあああっ~~!

 川狩が手にしたホースから勢い良く水が飛び出して、天のスクリーンの地球に当った。

 川狩「あっ!」
 と、川狩が叫んでホースの位置をずらしかけた時、またまた素早く背後からkippleが川狩を押さえつけた。

kipple「だめっすよ~!地球を洗ってあげるんですから。大変ですよぉ。」

 疲れ果てていた川狩は、ああ、又、クビかなぁ・・・と思いながらも、もうkippleに抵抗する気力を無くしていた。

 ホースから飛び出した水は、半球スクリーンの中の小さな地球を見事に直撃し続け、夜明け近くには、ついにポッカリ穴が開いた。意外と、もろかった。

 川狩の握り締めるホースから飛び出した水は、宇宙に、地球と言う穴をあけたのだ。

kipple「あーあ、地球が宇宙の穴になっちゃったぁ~!知ぃ~らねぇ~っと!川狩のせいだー!うひょひょひょひょ・・・」


 エピローグ

 ある夜、ノーマン・ベイツのモーテルで女が殺された。

 女はシャワーを浴びている最中に滅多刺しにされ、殺された。

 シャワーから噴出し続ける水は、女の血と共に排水口にどんどん吸い込まれていった。

 排水口は、どんどん吸い込んだ。どんどん、どんどん、吸い込んだ。

 水は、くるくる、くるくる回りながら、いつまでもいつまでも、穴に、くるくる、くるくると吸い込まれ続けて、

          くるくる くるくる くるくる くるくる くるくる~!
               
          くるくる くるくる くるくる くるくる くるくる~!






                   未完!


未完小説。それは最初から未完として!未完を目指して書く小説!

必ず未完で終わらせる事・・・・・・決して完成しては・・・・・・・・・・・


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


『風と共にしやがれ!完結編』:kipple

2006-11-20 01:14:00 | kipple小説

未完小説
   全世界・・・否、殆んどあっしの妄想日記と化した未完小説!
    あんまり夜中に妄想ばっかしてるとトッポジージョになっちゃうジョー!
       はぐれ未完小説!第3弾!


  “映画を愛する自分のために限りない情熱を
     未完小説の巨匠kippleがつづる
           はぐれ未完小説の極致!! ”


     風と共にしやがれ!完結編』


 さて、ここで僕は携帯DVDプレーヤーをサランラップで包装して、大友克洋の「アキラ」のDVDを観ながら浴槽に入り、キャメルマイルドをくわえた。(本当は漫画と葉巻でいきたかった)

 もちろん、これは「気狂いピエロ」のフェルディナンだったが、女には分からなかった。
 僕はイライラした。何故、女はこうも何も分からないのだ。

 およそ、人類の敵は女なのだ。僕がスターウォーズ・エピソード7を作るんだったら男VS女の(帝国軍は女だ)永久闘争にしあげてやる。
 それも、ロメロも真っ青の血みどろリアリティーでだ。だってさ、女は血を愛するのだ。

 さて、僕はそうして湯船に浸かりながら黒メガネをかけてシルクハットを被った。もちろん、こうすると「81/2」になる。

 さてさて、やはり女には分からないのだ。女は営業的なすまし顔で歯ブラシに歯磨き粉をたぁっ~ぷりと乗せて、僕に勧めてくるのだった。

 何故、ソープランドでは、たぁ~っぷりの歯磨き粉で歯を磨かなねばならないのか。僕には分からない。これは果して業界の事業主達や指導員が考えた事なんだろうか?女が本能的に男に与える自然発生的な行為なのだろうか?

 とにかく僕は頭にきたので、女に「アキラ」のDVDが入ったままのDVDプレーヤーをぶつけて、歯ブラシで胸を突き刺した。澄まし顔で。

 分かりづらいと思うか?これは「クレイジーズ」の1シーンなのだ。バアさんが編み棒でガスマスクマンを刺し殺すとこだ。ちょっと言わせてもらえば、「クレイジーズ」は音楽がロメロ演出の足をひっぱっていたよ。むしろ無音の方が効果を盛り上げただろう。

 とにかく僕は女を殺ってしまうと「ローリング・サンダー」でウィリアム・ディベインが着々と軍服に着替えるように、ジーンズと格子縞のポロシャツを身につけ、ポケットに手の甲の半分を突っ込み「タクシードライバー」のトラヴィスと化してソープランドを早々に抜け出した。

 ついに僕は人殺しになったのだ。

 しかし、そんな事実はどうでもいいことだった。見つかるとヤバいとは思ったが、僕の内宇宙にしてみれば、ごく小さな出来事に過ぎない。
 スクリーンでは無数の殺戮が行われ、それが罪に問われる事はないのだ。

 僕はトラヴィスだ。社会のゴミの小さな一片を片付けたに過ぎない。これから僕のすべき事は全社会の浄化と再構築なのだ!美しい日本を作るんだ!

 僕は歌舞伎町の群集に紛れ込んだ。今夜はやけにブルーにデカダンしてらぁ、らぁ。何が?風景が、だ!

 この風景は何だ?僕には明らかだった。分からない奴は死んでしまえっ!

 これは、決定的に「ブレードランナー」だった。ここで、ちょっと言わせてもらおう。大方、「ブレードランナー」を評するバカは原作より良く出来ていると言う。

 サノバァビィィ~ッチ!

 僕はディックの原作の方がずっと好きなんだぁ!原作の主題は、「キップル」にあるんだ!それなのに、映画じゃぁ全然出てこない!死ねぇぇ~!リドリー・スコットォォォオオオオっ!

 しかし、僕は、いつの間にかロイ・ベィティ役のルトガー・ハウアーになっていった。

 僕は黒いレインコートが絶対に必要だと思い、身につけている奴を探しだした。候補は十人ほどいたが、僕は、その中から、もっとも弱そうな奴を見つけ出し後をつけた。
 体形が僕に似てやがった。そう思うと悔しかった。僕は弱そうなのだ。

 サノヴァァァ~ビィィィ~ッチィッ!!

 さて、ウッディ・アレン風のそいつは大久保駅方面の人気のないホテル街に向って、大柄な女と一緒に「モダンタイムス」のラストシーンのように歩いて行った。

 僕は何だか泣けてきてしまった。

 「道」のアンソニー・クィンのように夜の砂浜で、わんわんと心の底から思いっ切り泣きたくなった。

 「道」・・・

 僕は、いったい何百回この映画を観ただろう・・・。最高の映画だ!これを超えるものなんてない!

 どんなものだって何かの役にたっているのだ。僕だって、そうだ。

 僕は街を浄化するのだ。あっと、黒いレインコートの事を忘れるところだった。

 さっきのウッディ・アレン風の男はラブホテル「アランド・ロン」に大柄な女と一緒に入ってっちゃったんで他を探そうと酸性雨の中で、“雨の中の涙のように・・・”なんて、つぶやいてると、「言っちゃうぞ!」と後ろから声をかけられた。

 振り向くと小柄なギャングが兇暴な顔をして睨んでいた。ジェームス・キャグニーだ。僕は、すぐに分かった。
 奴だ!コーディ・ジャレットだ!

 僕は、あわててコーディの口を塞ごうとしたが遅かった。

「マミィィィィ~~!!トップオブザワールドー!」

   どっかぁぁぁ~~~ん!
            

 僕とコーディは雨降らす夜空に向って新宿ごと、吹っ飛んだ。





                   未完!


未完小説。それは最初から未完として!未完を目指して書く小説!

必ず未完で終わらせる事・・・・・・決して完成しては・・・・・・・・・・・


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


『おばあちゃん危機一発!』:kipple

2006-11-19 00:38:00 | kipple小説

未完小説
   全世界に向けて!マタマタはぐれて狂い咲く!
   未完小説シーズン1 と シーズン2
   の狭間に飛び出てジャジャジャジャ~ン!
     はぐれ未完小説!第2弾だ!


   “さよならだけが人生さ!
      それなら、こんちは何なのさ!
     運命の糸にあやつられ禁じられた再会が
      一瞬の時間の涙の中にくずれ落ちてゆく!”


     『おばあちゃん危機一発!』
            又は、『ひとりぼっち(ある時間遡行者の人生)


 さら さら さら さら ・・・ 

 わからなかった。

 何もわからない。

 僕?・・・そう、僕というんだ。

 僕は突然、眠りから醒めると全く見た事のない世界にいたのだ。

 僕は僕の手を見た。手?しかし、手という事はわかっていても、僕の手は、まるで見た事の無い手だった。

 僕は、とてもとても、混乱していた。

 いったい、ここは、どこだ?僕とはなんだ?

 さっぱり、わからなかった。

 しだいに、あたりが光に包まれていった。光の中にいろいろなものが見られたが、それが何なのか、僕には見当もつかなかった。

 僕は動かずにいた。じっと、聞き耳をたてていた。

 さら さら さら さら さら さら さら さら ・・・

 何らかの音がしていた。サラサラと流れるような音だ。

 僕は動いた。動くという事がそれでわかった。

 そして、歩いた。歩くという事がそれでわかった。

 白い部屋。白い部屋という言葉が突然、頭の中(頭という事も、その時わかった)に浮び、僕が今いるのが白い部屋だということもわかった。

 とりあえず僕は、そのサラサラいう音を探して歩いた。そして窓を発見し、窓の外をも発見した。音は窓の外にあった。

 僕は窓のはるか下で蠢くいろいろなものを、ひとつひとつ確かめてゆき、その中から、その音を探し出そうとした。

 しばらく、そうしているうちに僕は時間というものに気づいた。様々なものが滅びてゆき、消滅してしまう過程を時間というのだ。

 僕の中で、この世界がパッチパッチとジグゾーパズルのように嵌めこまれていった。

 僕は、この世界が、どんなところか、だんだん理解できるようになったが、ジグゾーパズルは延々と嵌めこまれ続けるだけで、その完成した姿は混沌としていて全くわからず、また無数の嵌めこまれ方があるようだった。

 おそらく僕の意識の中では、この世界は、たぶん、不可逆的で、可変長で、とらえようのないバラバラな構成で成り立っているのだろう。

 さて、そのサラサラという音だが、どうも、その音は時間の音だったらしい。この世界がサラサラと静かに崩れている音だ。

 しかし、僕が、この世界に次第に同調してゆくにしたがって、その音は小さくなって消えてしまった。

 僕は窓から離れ、僕のいる白い部屋を見回した。

 部屋は広く、ゆったりとした配置で様々な黒色の家具が、染みのように並んでいた。

 小さな鉄の机と椅子。プラスティックのパイプで組み立てられた巨大な本棚・・・・・・・・・と続いてゆく・・・

 そして、僕は、理解した。僕は、今、ここで生まれたのだ。突然、僕は自分の年齢が35才であることが分かった。

 なるほど、あらかじめ35才の知識を持って、僕は、生まれたのだ。
 だから、このような思考が可能で、次第に様々知識があらかじめ備わっているわけだ。その35才分の僕の知識を引き出すのにジグゾーパズルを嵌めこんでいくような作業がなされたのだろう。

 それが、35才で、この世界に生まれるという事なんだと、僕は、はっきりと理解した。

・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・

(概略的解説
 この物語は35才で生まれ、11才で死んだ男の遠い遠い昔、あるいは、遠い遠い未来、あるいは遠い遠い現在におこった人生という出来事です。主人公は時間を逆行してゆきます。彼の未来は彼を除く全ての人々の過去なのです。彼は彼を除く人々の未来の社会の姿を知っており、他の人々は彼が最後を迎える彼にとっては未来の社会の姿を知っているのです。彼は単に三十五歳で生を受け、十一歳にして寿命をまっとうするのです。彼は同じこの世界の誰ともストレートにコミュニケーションをとる事はできません。たった一人で生きていくのです。だって彼は時間を逆行して生きているのですから。彼は全ての人々にすでに起ってしまった過去に向って生きているのですから。愛も希望も無く。
 彼はどうしてそんな事になったのでしょうか?彼は実在しているのでしょうか?彼にとって、この世界や彼を除く全ての人々は逆さまに動いて見えます。人々は後ろ向きに歩いて食事を吐き出して生きているように見えます。建物も人々も動物も全て滅びて消滅してゆきます。時間です。人々は、どんどん若くなり赤ん坊になって消滅します。立派な建物も建築途中になり消滅し、更地になり、違う建物が現われたりのっ原になったりします。
 彼にとって、この世界は私達と同じようにリアルです。生きている実感たっぷりです。しかし、彼はおそらく精神体のようなもので、食事も排出もありません。でも、精神病者が見る妄想に時としてリアルな物理的な実感があるように、彼も自分の身体や世界の全てに対してリアルな物理的な実感を持って過去へ向って生きているのです。彼も、他の人々と同じように、どんどん若返ってゆきます。鏡には実際に彼の姿が映るんです。
 しかし、いくら実感があっても彼は自分の身体以外は、物理的に触れる事ができません。全てを素通りしてしまいます。そして、ここが大事なところです。彼からは、世界の全てが見えるのです。全ての人々を逆さまの時間で見る事ができるのです。我々と同じくらいの感覚で歩いたり走ったりできます。素通りしますが。しかし、彼以外の時間を普通に生きてる人々には彼の姿が見えません。前にも述べましたが、ですから、彼は誰ともコミュニケーションを取れません。
 でも、唯一の方法を彼は見つけます!それは夢の中です!夢の中でだけ、彼は他者に逆向きのメッセージを送る事ができたのです!
 さぁて!彼はいったい逆さまの時間の人生の中で何を見るのでしょうか!?さぁ!彼の運命は!何故、そんな事になったのでしょうか!?
 ・・・未完ですので、お教えする事ができないのが作者は残念で仕方ありません。。。)


・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・

 ああ!何て事だ!この寒いクリスマスの雪の夜。路上の真ん中で老婆が一人凍え死んでいるじゃないか!

 どうして逆さまに歩いてる人々は楽しく笑い語らいながらも誰一人、彼女を助けようともしないのか!いや、しなかったのか!

 僕はボロ布のように世界の全てに見捨てられて死んでいる、そのホームレスのおばあさんを見て涙をボロボロこぼした。

 僕の時間の世界は、僕だけ!僕たったひとりなのに!おばあさんのいる時間の世界は、あんなにいっぱい人がいるじゃないか!何故だ!何故、皆!助けようとしなかったんだ!

 僕は物理的には、その死んでいるおばあさんの身体を触れられずに貫通しながらも、必死に抱きしめ愛おしんだ。
 何故だか僕は涙が止まらなくなって、悔しくて悔しくて、このお婆さんを何とか助けなきゃいけない、そんな気になった。

 何時間たったか、お婆さんは薄っすらと目を開けて生き返った。ボロボロの毛布の中で微かな息をしはじめた。空気の中に白く滲んだ息が、お婆さんの口の中に吸い込まれていく。

 助けたい。。。助けたい。。。

 世界中にいっぱい同じ時間を生きる人間がいながら、ひとり淋しくクリスマスの夜に路上で凍え死ぬ、このホームレスの老女はいったい、どんな人生を送ってきたのだろうか?
 どうして、こんな事になってしまったのか。

・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・

 僕は通信を試みた。
 僕と逆向きの時間の世界で後々、一人淋しく路上で凍え死ぬホームレスの老女に向けて。

 僕は何度も何度も、必死に、彼女の夢の中に映像を送った。逆向きの映像だが、お婆さんは僕と逆の時間の世界において、「生きろ!精一杯、生きるんだ!」というメッセージを受け取ったはずだ。

 しかしだ・・・そう、そうして彼女は生きて凍え死んだのだ。
 僕は彼女が彼女の世界の時間の中で先にどうなるかを、もう見てしまったのだ。しかし、何とか、お婆さんの未来を、僕にとっての過去を変える事はできないだろうか・・・。

 彼女は公園で生活していた。
 凍え死んだ時には、高熱で肺炎で飢餓状態で身体中傷だらけで、相当の高齢に見えたのだが、彼女はまだ、50代の女性だった。

 僕は彼女の人生を逆に見てゆくのがとても楽しみになった。

 僕の姿は誰にも見えやしない。たとえ見えたとしても、逆向きに歩く男の姿なんて誰も気にしない。
 だって有り得ないけど、一瞬だけ見えたとしても、次の瞬間に僕は他の人々の過去になり、僕にとっては他の人々が僕の時間の過去になるわけだから。

 それは見てはいけないものなのだ・・・ところが、ある






                    未完


未完小説。それは最初から未完として!未完を目指して書く小説!

必ず未完で終わらせる事・・・・・・決して完成しては・・・・・・・・・・・


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


『ツィゴイネルワイゼン妄想』:kipple

2006-11-17 01:57:00 | kipple小説

未完小説
   全世界に向けて今夜!再び!はぐれて突如と狂い咲く!
  未完小説シーズン1とシーズン2の狭間に出現!
     その名も!はぐれ未完小説!だ!

  
   “妄想もと→ 鈴木清順監督「ツィゴイネルワイゼン」
     その妄想もと→ 内田百聞「サラサーテの盤」
        巨匠たちに堂々と突きつける戦慄の物語!”


     『ツィゴイネルワイゼン妄想』


 その時、私は帰り道にいつも通る小さな墓地の横の路地におりました。

 その声が、はっきりと私に向って発せられていると分かった時には、私はもう踏切りのところまできておりました。
 私は、踏切りで一たん立ち止まると、何だか気味が悪くなり、もう一度、さっきの墓地のところに引き返しました。
 もう、先ほどの様な声は聞こえませんでした。
 きっと気のせいだと思って、その日は帰りました。

 二日後、例の墓地の横の路地を通った時、再び、私は、その声を聞きました。

 その声は、“川狩君じゃないか。”・・・そう聞こえました。はっきり、そう聞こえました。
 確かに、私は、川狩無人という名なのです。

 私は道に立ち止まり耳をすませました。
 “死ぬ・・・”
 今度も、はっきり聞こえました。私の他に誰一人、犬猫の気配さえしません。
 まことに薄気味の悪い声です。誰かがケータイを置いてイタズラしてる・・・そんな声じゃありません。

 私の脳味噌に直接、話しかけて来るような明瞭でおぞましい声なのです。
 それきり、私は、その場所を通るのを止めました。

 それから十日程、経ちました。
 私は、その墓場の横道で聞いた声の事を友人のkippleに話してみました。
 部屋の中は、ベトベトする汚いテーブルを挟んで座る、私と、友人のkippleの二人だけでした。柱時計の音が妙に大きく響いておりました。

 kipple「それだけか?死ぬ・・・って言ったんだな・・・」

 私「そう。それだけだ。俺は何だか堪らなく恐いんだよ。なぁ、昔、観た「ツィゴイネルワイゼン」って映画の中に似たようなシーンが無かったか?あったよな。まるで、あんな感じだ・・・」

 何だか、友人のkippleは難しい顔をして黙り込んでしまいました。

 かちっ。かちっ。柱時計の音だけが響きます。

 私も次に発する言葉を失い、黙り込んでしまいました。

 kippleは奇人で、天井裏に住んでいます。

 彼の家は二階建てで、一階はkippleの奥様がごく普通の生活を営んでおります。しかし、kippleは二階の上の天井裏に自分の居城を築き、裸電球をあちこちに点灯させ、家具を詰め込み、バス、トイレまで作って住んでおります。

 kippleの部屋に居ると、まるで大正時代か明治時代に逆戻りしたように感じます。アンティックを通り過ぎて埃や垢だらけでボロボロになった家具や書物やゲームソフトの数々。柱時計もその一つです。まあ奇人だから、しょうがありません。

 奥様は、ごく普通の朗らかな方で、よくこんな奇人と一緒になったなと不思議でなりません。おまけにkippleは、奥様に命じて、決して二階より上に入らせないようにしているのです。つまり、奥様は一階だけしか、この家の出入りが許されていないのです。

 そして何故、私には、このようにして天井裏の部屋にまで入る事を許しているのに、奥様は立ち入り禁止なのか、その理由がさっぱり分からないところが、また不思議なのです。ただ汚い家具や書物や玩具のようなものがたくさんあるだけで、特に立ち入りを拒む理由が見当たらないのも不思議なところなのです。

 と、柱時計の音だけをBGMに私が延々と想いにふけっていますと、突然、kippleが絶叫したのです!

 kipple「ぶぎゃぁ~ははははっ~!ぶるっ!ぶるっっ!おいっ!今!何か聞こえなかったかぁぁああああああああっ~!えー!おいっ!おいっ!ぶごぉぉおおおおっ!後ろだぁぁあああっ!

 そう言いますと、kippleは突然、自分のうしろを振り向きました。

 私はkippeの突然の絶叫に腰を抜かしそうになりましたが、気は確かです。kippleの後ろには誰もいません。何もありません。ただの天井裏の空間です。
 あちこちに点灯している裸電球がけっこう見通しよく、この天井裏を照らしているだけです。

 kipple「ふう・・・ちょっとトイレに行ってくる・・・」

 私「ああ。」

 後ろに誰もいなかったので気が抜けたのか、kippleは、そう言うと何だか淋しげな顔をして、天井裏の北の隅に設置されたトイレにヨロヨロと歩いて行ってしまいました。

 天井裏のぺったりした裸電球だらけの部屋には、私一人、残されました。

 こちっ。 こちっ。 こちっ。

 柱時計の音が、まるで太古の昔からずっと、そこで時を刻み続けているように他の音を一切排除して鳴り続けています。

 静かです。

 柱時計の音だけが、この宇宙の唯一の音であるかのように、宇宙が出現して以来、たった一つの音で有り続けるかのように、静かに静かに鳴っています。

 こちっ。 こちっ。 こちっ。 こちっ。 こちっ。

 kippleは、いつまで経ってもトイレから出てきません。この世に存在する音は柱時計の“こちっ、こちっ、、、”だけです。

 こちっ。 こちっ。 こちっ。 こちっ。 こちっ。



ギャァー!ぶぎゃぁぁああああああっ!
 と、突然、トイレからkippleの悲鳴が轟きました。

 私は脳天をハンマーで、ぶっ叩かれたように驚いて思わず立ち上ってしまいました。

 トイレからは、kippeの凄まじい悲鳴が続いています。恐ろしくなりました。

 でも、私は意を決すると立ち上がり、天井裏の北の端にあるトイレに向ってつんのめるようにダッシュして、奇怪な家具に躓いたりしながらも、やっとの事で、トイレのドアの前に辿り着き、ドアを開けました。


 ズゴゴゴゴッゴォォォォッ!

 トイレのドアは凄まじい音をたてて開き、蒼白になったkippleが土石流のように転がり出てきました。

 私は、その余りの迫力に後ずさりました。

 しかし、kippleは、白目をむき出して顔面蒼白で、ぶるぶると顔の肉を震わせながら、床を這いずり回って意味不明の絶叫を続けながら私のところまで、物凄い形相でやってきました。

 kippleは私の足もとに這いつくばって、“ぎゃぁぎゃぁ”と手足をバタバタさせ、全身を痙攣させ、黒っぽい緑色になった顔をキチガイみたいに振り回して、もがき続けました。

 私は、kippleを何とか立たせてやりました。すると絶叫しながらですが、kippleは何とか意味のある言葉を発しました。

おおおおおおおぉぉおっ~~!(ゴクン、ゴクン)おぉおおおいっぃぃい!おいぃ~!(kippleは涙を怒涛のように流し鼻水を怒涛のように垂らし恐怖に震えているようでした)便所でぇぇー!へんなヤツラがぁー!俺を!俺を殺そうとしたぁー!へんなヤツラがぁ~ぁ~ぁあっ!俺を!俺の身体を!ひっぱってぇー!ひっぱって!ひっぱって!ひっぱってぇ!うぎゃぁぁあああああ~~っ!こ・こわぁ~~いぃぃいっ!ぶぎょぉぉぉおおお~!ふぅ・・・ふぅ・・・

 kippleは、そう言うと私に抱きついてきました。き・汚いんです。涙と鼻水の他に、kippleは緑色のゲロを私に吐きつけました。

 kipple「うっ!う・動けないー!う・う・う・う・動くと・・・死んでしまうぅぅうううううっ~!ハァハァ・・・オエーッ!

 私「おい!大丈夫か!いったい、どうしたんだっ!?便所に人なんかいるわけないだろう!」

 kipple「違~~う!。。ううっ、オゲェッ!に・人間じゃないんだぁぁああああ!ヤ・ヤツラは、おおおおおおおおおおお・・・げぇへっへっへっへっへぇ~~~・・・ぶぅえぇぇ~!し・・・しに・・・・が・・・・

 私「し・しにが・・・?ま・まさか・・・・・・」

 kipple「おおおおおおう!お前、声、聞いた・・・し・・・に・・・が・・・み・・・の・・・・ハァハァ・・・うぎゃぁぁああああああああっ~~っ!

 kippleは絶え間なく、私に緑色のゲロを吐きかけて奇怪な絶叫を続けました。ああ、汚い、汚い。

 私はkippleに緑色のゲロと涙と鼻水をかけられながら一応、便所を調べてみましたが誰もいません。おかしなところは何もありませんでした。

 私はバカみたいに突っ立ったまんまになりました。頭、真っ白でぼんやりして、どうして良いのか分かりませんでした。

 kippleは絶叫し、もがき続け、しまいには硬直状態になって固まり、小さくブルブル全身を震わせ、泣きながら目玉を上下左右にグルグル廻し、緑色のゲロと共に、真っ赤に白いブツブツの入った舌を凡そ人間業とは思えぬくらい長く伸ばし、自分の脳天や耳や顎や肌けた自分のシャツから覗く乳首をベロベロ舐めくりながら絶叫し、うめき続けるのです。

 耐えられません。

 私は恐ろしさとオゾマシサの余り、逃げました。kippleの家から逃げる時、ちょうど買い物から帰ってきたkippleの奥様が、
“まあ、もうお帰りですの?晩御飯を用意しようと思って・・・”
 と朗らかに私に言うと、買い物籠の中を見せました。

 こんにゃくが一杯詰まってました。私は小さく悲鳴を上げると脱兎の如く走りました。



 私は、kippleのあまりの物凄さに動揺してしまい、てっきり彼は気が狂ったのではないかと思いました。奥様もちょっと変だと思いました。
 実際、彼は、あの日から少し変になりました。誰も居ないのに一人で、ぶつぶつ話をしていたり。大声で目を吊り上げて、誰も居ない道で怒鳴り散らしていたり、、、それを私は、遠くから目撃しました。気づかれないように、そぉっと。



 十日くらい過ぎました。

 私は偶然、例の墓地の横の路地を通ってしまいました。習慣とは恐ろしいものです。ここは、もう通るまいと決めたのですがね。
 そして、ああ、また、ここを通っているなと気づいた時、私は、再び、あの声を聞きました。

 “川狩君じゃないか。”

 あの声でした。しかし、今度は、はっきりと後ろから聞こえてくるのが分かりました。

 私は思い切って、振り向いてみました。

 小さな墓地の横の小さな細い道のずぅっと向うの高架線の近くの暗がりに、kippleが立っておりました。
 kippleの姿は、ぼんやりとしていて、よく見えないのですが何だか、じぃ~っと私を睨んでいるようでした。

 私は、頭を一振りして、恐怖を払拭すると大声でkippleに向って叫びました。

 「おい!kipple!どうしたんだ!」
 と叫び終わると、あたりが急に静まり返り、この世の底で一人で叫んでいるようでした。

 kippleは、静かに無言で立っていて、相変わらず、私を、じぃぃ~っと見つめていました。
 私は、彼に近づいてゆきました。もう一度、私は声を出しました。

 「お・おい!kipple!悪ふざけは、よせ!」

 するとkippleは、ふわぁ~っと浮くように踵を返すと、小さな高架線の下のトンネルに続く道に曲がって行ってしまいました。

 すぐに私は、彼を追いました。
 高架線の下の小さなトンネルは薄い闇をゼリーみたいに、たぷんたぷんと漂わせているだけで、kippleの姿はありません。

 私は、その高架線の下の小さなトンネルを抜け、(一本道なのです)、大通りに出るまで懸命に探しましたが、kippleは、どこにもいませんでした。さっきの、トンネルの薄い闇のゼリーの中に、じゅわじゅわと溶け込むように消えてしまったかのようです。



 その日の夕方。

 私は、kippleの奥様からケータイに電話をいただきました。
 いつもの朗らかな奥様の声とは違っていました。

 私は、奥様から、kippleが今日の朝、心臓発作で急死したという事を聞きました。

 それでは・・・私が見たのは、いったい誰なのでしょうか?

 私のケータイの着信音は「ハイフェッツの演奏したツィゴイネルワイゼン」です。

 私のレコードからPCの音楽ファイルに落として、ケータイに転送してあるんです。

 何だか雰囲気が、たっぷりと出てきちゃいました。

 私は、何かに引き寄せられるかのように、まるでケータイから流れる「ツィゴイネルワイゼン」に無意識のうちに導かれてでもいるように、例の小さな墓場に向って歩いておりました。

 すっかり、あたりは夕闇に包まれて参りました。

 あれ?この「ツィゴイネルワイゼン」、着信音のはずなのに、まだ鳴ってる。

 もう、すっかりあたりは闇に包まれて参りました。

 あれ?これは、私がケータイのミュージック・プレーヤーに特別に落とした「サラサーテの盤」でわ、ないですかぁ?いつの間にか切り替わっていました。

 そう、あれですよ。「サラサーテの盤」。

 サラサーテの録音した「ツィゴイネルワイゼン」の中に誰とも知れぬ奇妙な声のようなものが混じってるっていう、一種の奇盤とでも申しましょうか?

 あ・・・いつの間にか、私は、例の小さな墓地の中に入っておりました。あたりには薄っすらと幾つかの夜光灯が点き、ぼんやりとした、ほら、あの高架線の下のトンネルで見たゼリーみたいな闇に包まれているんです。

 「サラサーテのツィゴイネルワイゼン」が一曲ループし続けています。

 ほら・・・ここだ。あの、声が入っているのは。

 「サラサーテの奇盤のツィゴイネルワイゼン」のその箇所にくると、その「サラサーテの盤の声」と同時に突然、背後から声がしました。

“川狩君じゃないか。”“川狩君じゃないか。”

 驚いて振り向くと目の前に・・・いた・・・


うひょひょ~!うひょひょひょ!
ふんぎゃぁぁぁあああああっ~~!

 ♪ちゃらぁらぁ~~らぁらぁ~らぁ~らららぁらぁららら♪






                    未完


未完小説。それは最初から未完として!未完を目指して書く小説!

必ず未完で終わらせる事・・・・・・決して完成しては・・・・・・・・・・・


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


『吐き捨てたガムに』:kipple

2006-11-12 00:50:00 | kipple小説

未完小説
   荒野の果ての隅っこにそぉっと咲いた徒花群!未完小説!
   惜別の涙にぬれる花一輪!シーズン1ここに終了!


  “さよなら ぼく・・・
     僕の喜び・・・心地良い暮らし・・・
       僕の信じたものは美しい夢だったのか?”


     『吐き捨てたガムに』


 何の感動も無く、ある十一月の夜に僕は二十歳を迎えた。

 窓の外で巨大な樹木が細かい葉をごっそりと夜風に震わせているのが見えた。

 夜が呼吸をしているようだった。

 僕は深夜の都会の樹木が大好きだ。

 特に微風にごそごそと葉を揺らす大きなやつが好きだ。

 何故かは知らない。

 僕は仮眠室から出て静かなエレベーターで地下2階の白くて広いオペレーション・ルームに下りていった。

 室内では延々とハンマープリンター群がやかましい歯音をたてている。

 それは火災保険の伝票類を





                    未完


未完小説。それは最初から未完として!未完を目指して書く小説!

必ず未完で終わらせる事・・・・・・決して完成しては・・・・・・・・・・・


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


『妄走アフォリズム』:kipple

2006-11-11 00:35:00 | kipple小説

未完小説
   全世界に向けて今夜も狂い咲く魅惑の未完小説!
 未完が跳ぶ!未完が燃える!噴出する狂気の第十六弾!


  “くるくるにして耽美・・・・・
  未完小説史上空前の描写をもって迫る!
 渦巻く!この狂気の世界!!あなたは耐えられるか! ”


     『妄走アフォリズム』


【アフォリズム】(aphorism)
 簡潔で鋭い評言。警句。金言。処世訓。
 (要は小妄想・・・・・・・短いデタラメ。)
―――――――

 その言葉は長い間、僕をブルつかせてきたのでございます。何かの時、ふいに思い出され、僕に果てのない不安を突きつけるのであります。
 永久に全てから突き放された感じで、ゾォォォオオ~っとするのでございます。
 その言葉は、プロブエインディアンという未開人の、ある奇妙な発想なのでございます。
 いえ、別に奇妙では全然ないのかもしれません。
 ただ彼らは、こう言います。
「狂った人間だけが頭で考える」


 ・・・それでは参りますか!
 めくるめく妄想の妄走アフォリズム・・・明鏡止水!無になり、思い浮かんだ言葉の羅列・・・

●“廃車場のクズ鉄お山のてっぺんで
   ぐるぐる遠近みわたせば
    この世は、キチガイばかりなり ”
   ♪どですかで~んι(◎д◎)ノヾ ♪
   ♪どですかでぇぇ~んっ♪
 拝啓 黒澤明監督 様
  「どですかでん」が出てきちゃったよ。正しかったんだよ、今も昔も変わりなし。さらに小ずるくツールは変われど保身に隠蔽に虚偽報告にと人間の陰湿さ無自覚な凶悪さは何一つ変わらずでございます。
 傲慢迷妄知ったかぶり。ホントの事には一切目を向けずヒャクパーセント蓋をして、みんなで隠し、表に出るのは全部、嘘。


・・・アフォリズム・・・オリジナルで次々、行ってみよー!

●“金メッキされた十字架のペンダントに針でキリストの絵を描く、メッキを剥がしながら、先っぽで目を入れる。”

●“五日市街道の、どす黒い象の皮のようなアスファルトを突き破って、まるで芽が出るように、一本の角がゆっくりと生えてきた。どろどろの曇りの日の事。”

●“とてもピュアなセミの抜け殻。”

●“0才の赤ん坊から、100才の老人を順番に並べる。写真を撮り人間が老化する様を、まざまざと!認識させられる。”

●“俺の若き魂は枯れた子供である俺を残して抜け出てしまった。俺は枯れた子供、セミの抜け殻である。”

●“ドビュッシーの「遊戯」をぉぉぉおぉおおおお~~っ!”

●“男だって、女だって、いやったらしい。若い女の子はみんな同じ。”

●“鳥かごか、ダンボール箱を抱えた人間たちが、うろつく町。生ぬるい風の吹く町。空はどんより雲ってらぁ。”

●“深夜、一人で道を歩く時、ふと見る塀の上に生首があったり、壁に気持ちの悪い死人が貼り付いていたりしませんか?”

●“深夜、一人で自分の部屋のドアを開ける時、部屋の中で醜い皺だらけの自分が振り向いて笑っていたりしませんか?”

●“暗闇の中に白い老婆の顔が漂っていたりしませんか?僕の回りでは、夜になると、いつもそうなんですよ。”

●“白い顔が赤い花を咥え青い水の中で青い瞳を持った老人が僕を見てる。”

●“白い顔の上半分から3重に重なった太陽が、尾っぽのような光を放って、のぼってくる。”

●“クラブで踊りつかれて帰ってくるとお母さんの首がなかった。ようするに誰かに首を切られて殺されたんだ。復讐を考えると嬉くて射精した。”

●“おれは、ビニールに包まれた きちがい だ 文句あるか”

●“都市でゴロゴロしてる若者たちの物語を抜けて旅に出たのは風太でしたねぇ。”

●“コーヒーの中から一枚の写真が滲んで出てきて、その写真の女の子に一目惚れしたからだ。”

●“目玉の仲人。よろしくござ候。”

●“それは音楽室5号で雨のドシャドシャ降る日でした。”

●“我、歓喜す。終末の喜び。”

●“川狩無人!登場!”

●“川狩無人は、もう何年間も人生の何たるかを考えてきた。川狩無人はブタだ。卑俗で高慢でよこしまで我が儘で。形式だけ見かけだけ見栄だけのためにしか生きてゆけなかった。技術や資格や流行、力に囚われた。個人の人生の最も貴重なものに気づいたのは川狩無人の心の1000の部分のたった一つに過ぎないのだったぁ!”

●“ああ、窓から覗く顔、顔、顔!”

●“チンケなゴミ溜めのような、何やらちっとも整然としない濁った精神の中心で、音楽室の午後は、警鐘のように響き渡り、ピンと張りつめた不安の中で何度も!何度も!僕をぶるつかせた!”

●“夕暮れに合わない音楽はない!”

・・・アフォリズム・・・アフォリズム・・・アホリズム・・・あほリズム・・・阿呆リズム・・・

♪えらぁやっちゃぁ、えらぁやっちゃぁ~!あ~ら、えっさっさぁ~!踊るアフォ~に見るアフォ~!同じアフォなら踊らにゃソン!ソン!っとくらぁっ!えらぁやっちゃぁ、えらぁやっちゃぁ~!よ~いよ~いよ~いよ~い!あ~ら、えっさっさぁ~!アフォ~!アフォ~!♪



                 
 「第三の男」で、
“イタリーじゃボルジア家三十年の圧政の下に、ミケランジェロ、タヴィンチやルネッサンスを生んだ!スイスじゃぁ五百年の同胞愛と平和を保って何を生んだか。鳩時計だとさ”
 と、ハリー・ライムは言った。



 「赤い河」で、
“この世に拳銃よりいいものが二つある。スイスの時計と若い娘だ”
 と、ジョン・アイアランドがモンゴメリー・クリフトと空缶を撃つシーンで言った





                    未完。


未完小説。それは最初から未完として!未完を目指して書く小説!

必ず未完で終わらせる事・・・・・・決して完成しては・・・・・・・・・・・


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


『燃える犬と脳の穴掘り』:kipple

2006-11-10 01:21:00 | kipple小説

未完小説
   全世界を華麗な話題に包み込むオシャレな未完小説!
    暴走する技術革新と市場経済がもたらした近未来!
                       戦慄の第十五弾!


  “独裁者「ヨシマ」の支配する大「プロウズ国際連合」に!
   たった一人で挑んだ男!グィオリッテ!!
   肉体も精神もNETに融合させ!
       時空間を駆け巡り奴は闘い続ける!
    過去から甦った時間屋「パル」は敵か味方か?!”


     燃える犬と脳穴掘り


「シューベルト・ピアノコンツェルト   第2番・2楽章」

 頭蓋に7つの穴をあけ、受信用の超微細セラミック結線をはめこみ、脊髄から中枢神経にインターフェイス(グロテスクな黒い突起物)を通し、自作の反プログラムをひっさげ国連の巨大AI「LOGOS」の深海メモリに自宅のRAMモニタ回線から侵入し、そのまま意識野を剥奪され脳死状態で抜け殻生体として内幸町にある情報衛生省のコールドルームに入って、5年間出てこない私の親友「カミユ」は8年前、私の前で鋭角的な眉をひょいと上げ、キャメルを燻らせながら言った。

“ジョン・レノンのアクロス・ザ・ユニバースの中には、人類と世界の秘密について実にたくさんのヒントが隠されているんだ。あれは究極的な歌だ。少なくとも俺にとってはな。あの歌詞のとおり、誰も俺の世界を変えることは出来ないんだ。俺は俺自身に合わせて、俺の世界を変えていくんだ。”

 その通りだった。
 彼は自分に合わせて世界を変え、自分だけの幸福な世界を作り上げ、その中の住人になってしまった。
 私は何度か彼のもとを訪れ、話をした。もっとも私が話をしたのは彼の擬似精神の構造物だった。
 彼は抜け殻生体として静かに眠り、擬似記憶と擬似思考性向を与えられたチップ・チ・チップが彼の精神として私の相手をする。
 チップ・チ・チップは天井から吊り下げられた「カミユ」の抜け殻生体の下に設置され、蝉の殻みたいなかんじで赤い受像機を光らせている。チップ・チ・チップの受像は中央管制室に送られ監視されている。
 彼(チップ・チ・チップ)は、私が訪れるたびに自分と彼女の幸福な結婚生活について嬉々として語るのだった。
 彼の世界では彼女は生きていて、彼を愛し子供を生み、誰も傷つくことのない平和な日常を送っている。
 私は、ほぼ完璧に、彼、「カミユ」の精神はチップ・チ・チップに移植されたと思っている。しかし、それは嘘だ。彼の精神、意識野は、「LOGOS」の深海メモリに幽閉されているんだ。永遠に。

 我々の物質世界においては「カミユ」の彼女は七年前に私の友人だった「パル」という時間屋に惨殺されてしまった。
 時間屋とは、かなり奇妙な職業だった。今ではもう時間屋という職業自体は全面廃止され、彼らの仕事の内容は、ごく一部の精神内時間生理学や多元物理学などの観念上の理論としてしか扱われなくなってしまった。
 時間屋の扱っていた仕事は主に時間の入力と出力、そして加工と削除だった。彼らの扱う時間とは、もちろん外部ではなく内部時間なのだが、実際、内部時間が外部時間に微細な損傷を与え、秩序だった時空連続体の因果関係に歪みをもたらしてしまうという奇怪な現象が出現したのだ。

 その現象は、結果的には時間屋によって内部時間を加工された個人の偏執的な異常心理によってひきおこされると見なされていたが、いまだもって、はっきりとした解明はなされていない。
 むしろ、そこには宇宙全体のバランスを、粉々にしてしまうような危惧が含まれているというような理解のされ方をしていた。ひょっとして時間屋という職業が永久廃業の措置をとられることがなかったら宇宙は消滅していたかもしれない。私は何となくそう思う。

 彼女は、それらの歪みの犠牲者の一人だった。
 「パル」は患者の内部時間を出力させているうちに知らず知らずのうちに自己の内部時間に入力してしまい、時間過剰の状態におちいり、数万光年を行ったり来たりして自分が絶対閉回路の中におちいってしまったと思い込み、たまたま、そばにいた彼女の全細胞に過剰時間を注入しようとして彼女を、細胞レベルで切り刻んだのだ。
 「パル」は実に原始的な肉体分解を彼女にほどこした。
 すなわち、彼女にクロロフォルム-ÅA1を注射して動物実験用の高密度デジタル裁断機に放り込んだのだ。彼女は10Å単位に細かく裁断され、遺伝子単位のデジタル信号と化した。
 「パル」は完全に状況判断力を失い、そのデジタル信号を分散させて、その中に自己の過剰時間を放出したのだ。彼女はアナログ化される以前にプロメテウス的な細胞の永久ループに落ち込み、大気中に放散され消滅してしまった。「パル」は、それによって完全に時間を失ってしまった。
 「パル」は瞬時にして、その一瞬に、貼り付いてしまったのだ。

 「パル」は今でも七年前の、その空間に、まるでアンディー・ウォ-ホールのポップアートのように貼りついているのだ。

 時間をいじる事が永久に禁じられてしまってから、世界は急速に秩序をとりもどし、悪夢のような時間と空間の混乱を逃がれ、まるで二十世紀のような落ち着きを取り戻していた。
 しかし、まだ、非合法に時間屋の活動は、この惑星上のあちこちで氾濫している。主にそれは二十世紀の中毒性薬物のように蔓延し、又、今や圧倒的な支配力を持つに到った「プロウズ国際連合」へのテロ行為として威力を発揮している。
 「プロウズ国際連合」は、日本の民間企業ブロウズが世界中の政治を制圧下においた怪物的なコングロマリットで、他惑星への移住事業に手をつける事によって巨大な人類のリーダーシップとなり、国ごとの権勢をすべて圧してしまい二十世紀にあった国連などは、またたく間に無力化させてしまい、営利目的の超政治統率機構と化してしまった。

 「プロウズ」は一人の独裁的な人物により運営されている。「ヨシマ」という男だ。
 実質的に彼は全人類を独裁する地位に昇りつめていた。私は「ヨシマ」に昔々、何度も会った事がある。
 「ヨシマ」は私の幼年時代の家庭教師の一人だったのだ。彼は私に「閉塞関数」や「反プログラマブル」の基礎をしっかりと教え込んでくれたのだ。
 私の、この現実社会における経済的基盤は彼によって養われたものだと言える。私は現在、「反プログラマ」としての職業生活を営んでいる。

 そして、この話は時間屋「パル」によって体内時間を破壊された、彼女を愛していた、私の唯一の友人「カミユ」が5年ぶりに抜け殻生体を克服し、退院しようとする時に始まる。



「ハイドンのサラバンド」

 私を紹介する。
 私は四十歳前後の男だ。正確な年齢は戸籍バンクを調べてみれば判明するだろうが、今の私には、そうする気も無い。おそらく四十ニ・三歳だろう。
 私の職業は「反プログラマ」だ。
 「反プログラマ」とは既存のプログラムを現状自体にはダメージを与えずに、細かく細かく破壊していく仕事だ。要するに二十世紀に、いったん建造してしまった高層ビルを、ぶっ壊すのに、建造する時の数倍の手間と費用がかかったというのと同じようなものなのだ。
 超緊密化され、現在進行形で利用されているプログラムは、いったん作りあげたものより、取り壊す方が何倍もの金と労力が費やされるのだ。

 ***反プログラマの仕事とは?***

 「LOGOS」という「国連にあるマスターコントロール」により世界中にはりめぐらされた制御システムに矛盾させる自然言語を入力し、永久ループさせる。「LOGOS」は自分の支配下(ネットワーク)にある無数のユニット・プログラムの一ヶ所でも消されてしまうことを嫌っている。永久ループは、そのユニット・プログラムがまだ存在し活動しているふりをさせるもっとも効果的な方法だ。現在「LOGOS」のような傲慢さを排除した、自我に対する強力な制御装置が搭載された新しい究極的なAI「ベル・エ・ベット」が殆んど、完成段階に入った。「LOGOS」に、じきに入れ代わる。国連は反プログラマを総動員し、世界中にある「LOGOS」のユニットを永久ループさせ続けている。最後にはマスターコントロールのニューロ・スピンを永久ループさせて、この作業は終わるのだ。



「ガニメデから来た友人」

 空は一片の雲も無くキラキラと磨き上げられていた。

 その日は私も回りも信じられないような平穏さに塗り潰されていた。
 隣の老人夫婦も(もっとも、いたるところ老夫婦であふれかえっていたが)朝早くから日溜りに出て、のんびりと過ぎ去った時間を懐かしむような目をして、狭い庭に水をまいていた。水飛沫が黄金色にはねていた。
 全てが平和で輝いて見えた。私は今、出てきた自分のアパートを振り返った。私のアパートは、卵型の七階建てで、窓が全て排除され真っ黒に塗装されていた。
 私のアパートは、まるで風景の中にポッカリと口を開けた底無しの穴のように見えた。その穴は途方もなく深く、きっと地獄へとつながっているのだ。

 私は細い路地を抜け、駅への1Kmの行列に加わった。人々は、押し黙ったまま陽光きらめく朝のLONG STATION WAY(行列道路)をゆっくりと進んで行った。
 私はボリス・ヴィアンの「北京の秋」を読みながら駅までの約一時間をつぶした。
 半球ドームの転送ボックスにたどりつくと私は駅員装置の口に定期転送カードを差し込み、暗証番号を入力してから生体DNA読み取り判定機に手のひらをかざして、ボックスの灰色の回転ドアを押した。
 回転ドアを一回りすると五十Km離れた「トリスタン」駅に転送され、「トリスタン」駅の回転ドアから外に出た。再び私は駅員装置の口にカードを挿入し暗証番号を入力した。
 駅員装置の目が赤く光り、私は排出されたカードを引き抜いて、DNA判定機に手のひらをかざしてから、会社へと続く行列道路に並んだ。そして三十分後に会社についた。
 私の会社は「トリスタン」駅から、とても近くにあるのだ。五十m程だ。その五十mの三十分間で、私は「北京の秋」を読了した。次は阿部公房の「箱男」だ。

 会社に着いて、仮設ユニットの前にすわり、自然言語入力の作業に入ろうとすると、上司の「ルグラン」部長から呼び出しがかかった。
 用件は想像がついた。私の作業が当初の予定より二十三時間分、遅れているのと、私のやり方が一般的な「閉回路誘導理論」の基準から少々外れているということだ。案の定、そうだった。

「グィオリッテ君。転送システムの反プロのカットオーバーは、もう一ヶ月もないんだよ。君はわかっているのだろうが、仮設ユニットに、これだけ手間取っていれば、本番の時に何十倍もの危険がともなってくる。君は、やり方を、おそらく間違えているのだろう。何故、ちゃんと「ディクスンの誘導論」を実践せずに「アキレスの亀」だとか「パラドックス」を持ち出すんだ?」
 部長は小さな白い個室に私を呼び出し、小さな黒い丸椅子に座らせて、葉巻をゆったりと吸いながら唇の半分を歪めて笑いながら私に尋ねた。

「部長、申し上げますが、事は慎重を期さねばなりません。私に言わせてもらうなら、すでにディクスンの理論は、日々成長をとげ、自我を拡大させている「LOGOS」には対応できない段階にきています。・・・・・・・・」

   (中・・・・略)

          
          
          

 「カミユ」は退院するさいに自分の妄想の中の彼女との結婚生活がうそっぱちだったということに気づいている。
 チップ・チ・チップを「カミユ」の脳に移植した結果、「カミユ」は擬似記憶を持った精神コピー体として復活する。
 「カミユ」は「パル」がばらばらにした細胞の遺伝子レベルのデータから彼女を復元する。

    (中・・・・断)・・・


*物語の続きの、あらすじ

 1.時間屋「パル」が過去の一点を抜け出し、現在に戻ってくる。
   しかし、精神コピー体の「カミユ」に再び今に固定されるが、「カミユ」のこれからの失敗を予言する。(「LOGOS」の深海メモリから意識野を奪還するのだ!それと、チップ・チ・チップを融合させる。助かる方法はそれだけだ。)と「パル」は最後に言い、瞬間に固定されてしまう。その後、「パル」は過去から夢の中でだけコピー体「カミユ」に通信してくる。

 2.精神コピー体「カミユ」は転送装置を死界につなぐ。安楽死のためだ。一時は、それによって商売繁盛し細胞から復元した彼女と幸福な生活を送るが、次第にチップ・チ・チップと





                    未完。


未完小説。それは最初から未完として!未完を目指して書く小説!

必ず未完で終わらせる事・・・・・・決して完成しては・・・・・・・・・・・


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


『シンクロニシティ-仕置人-』:kipple

2006-11-09 01:31:00 | kipple小説

未完小説
   全世界を震撼させ続ける恐るべき未完小説!
  すさみきった現代をあぶり出す必殺!の第十四弾!


  “たとえ地獄に堕ちようと・・・
     死よりも辛い目を見せて・・・・
        俺たちゃ必ず奴らを殺す!
   ひと殺しは許さねぇ!全てを捨てた復讐が始まる!”


     『シンクロニシティ-仕置人-』


 月も星も全く無い夜が明けて、太陽も雲も全く無い夏の空が一団の遙か上から蒸し暑い空気を降らしていた。

 一団は野営の後始末を終え人質の3人に、2・3言あくたれながらピッタリと横に並んだ3台の白いライトバンに破裂しかけたゴミ袋を投げ入れた。

 青二才が銃を光らせて人質の1人、老婆に言った。
「俺たちは文明の汚物を垂れ流しにはしねぇ。空き缶だって捨ててあったら必ず拾って決まった場所に捨てるんだ。」
 仲間が一斉に相槌を打ち、美しい瞳を虚空に据えて、“そうだ!”と言った。

 リーダーの彫りの深い思索的な男が、全員車に入るように指示を出したので整然と一団は従った。
 リーダーを除いた一団はライトバンにきちんと納まり、一斉に瞳を輝かし、リーダーを飢うように見つめた。

 リーダーはパナマ帽を人差し指で、ひょいと上げ、鋭い目で人質の一人、中学生の男の子を見た。老婆は、その時、リーダーの削げた頬に悲しみと恍惚の混在した波が刻まれているのを見逃さなかった。
「田中さん。その男の子を連れてきてください。」
 田中と呼ばれた背の高い女は、てきぱきと行動した。彼女と男の子はリーダーの前に直立した。
「田中さん。第三番目の処刑だ。わかっているね。」
 田中は上目越しにコクリと承諾し、男の子は骨抜きになり座り込んだ。彼女は男の子の背後から首の付け根を狙って撃った。
 ライトバンの中で、老婆と、もう一人の人質、27才の工員が青ざめ、目をむいた。

 3台のライトバンはピカピカ光りながら青い風景の中を滑った。

 正午を過ぎてライトバンは廃車処理工場に着いた。場内は金色に光った土煙が炎のようにたち込めていた。
 モーターと破壊音が、ひしめいていた。作業員たちは全て寡黙で、一心に仕事にうち込んでいた。
 彼らのライトブルーの作業服は、どこかの空軍の修理技術者のようにみえた。

 一団は整然と行動した。
 一台のライトバンに屑、すなわち死体を、3ヶ詰め込み、山となって重なる廃車たちの群れの中に放擲した。
 そして静かに2台のライトバンは廃車処理工場を後にした。
「どうだ。俺たちは、きちんとやるだろう。」
 青二才は再び老婆に自慢した。仲間たちも合槌を打った。

 午後一時。ラジオが事件発覚の報を告げていた。一団は報を知ると同時に四囲をパトカーに包まれた。
 警官は、けたたましく、あちらこちらから湧き出した。
 そして一団の要求を聞いた。
 一団はライトバンから出て行くと、人質二人を前にして整列した。人質は二人とも放尿していた。

 リーダーが、口を切った。
「俺たちは何も要求しない。ただの通り魔だ。俺たちは無差別に民衆を拉致し危害を加える。何故だかは知らぬ。あなたたちには何も理解できない。俺たちも3日前までは健康で朗らかで明るい勤勉実直な普通の国民だった。しかし俺たちは避けがたい無意識の力によって誰ともなく結束した。全員、何も相談する事なく一団となって今回の犯行に及んだ。俺たちの意志は最初から寸分と違わず一致していたのだ。」

 警察は不可解という表情を一斉に、その緊迫した表情に刻んだ。しばし、先ほど後にした廃車処理工場から聞こえてくる機械音だけが一帯に篭もっていた。
 リーダーは黒メガネをかけ、目の前の老婆の心臓を背後から撃ち抜いた。間を入れず青二才が、工員の胸を登山ナイフで深々と刺した。
 老婆は血の池の中で息絶え、工員はエビのように跳ねながら路面に血を吐いた。

 警官たちの顔色が変わり、彼らは身構えた。
 一団は速やかに2台に分乗し、包囲網に突進していった。一台は銃弾の嵐の中で横転し標識に鼻先をなぞられ錐揉みに回転しながら爆発した。
 パトカーは炎上する路面を突破したもう一台を連なって追いはじめた。その際の死者は十人、重軽傷者は八人だった。

 疾走するライトバンには、リーダーと田中と青二才と美貌の青年ナオトがいた。
 ナオトは運転しながらオルガスムスに達し、ズボンの中に射精した。田中も大きく口を開け、自慰を始めていた。
 リーダーと青二才は窓から野次馬を標的に発砲していた。野次馬はボーリングのピンのようにコロコロと倒れた。

 午後三時近くに、青二才が後方からの狙撃に目玉をえぐられ、しばらく苦しんでいたが、そのうちリーダーが彼を撃ち殺した。
 死体は、あんぐりと開いた口から噴水のように血を吹き出していた。

 午後三時半にライトバンは市街に入った。ナオトは車を横転させ映画館に突っ込んだ。
 三人は速やかに車を捨てて、パニックと化した観客の中に紛れ込んだ。三人はちりぢりになった。
 観客は逃げ出し、一挙に場内は閑散となった。観客は戸外に猛スピードで退散し、道路に扇形の模様を作った。
 警官たちは統制がなされていず、やっと対処に出た時には、あとから這い出てきた老人や病人、障害者を包囲しただけだった。

 リーダーは静かになった場内で、一人スクリーンを見つめていた。

 一番新しいリメイク版の「スーパーマン」が今や、彼一人だけのため上映されていた。彼は、つくづく、つくづく、しみじみ、しみじみ、感動していた。
「彼は何て強いんだ。そして勇敢で健全だ。俺に彼と同じ能力があれば地球を一つにしてやる。人々が愛し合い、いたわり合う素晴しい世の中にしてやるのになぁ。」
 リーダーは泣いていた。彼は、ゆっくりと銃口をこめかみに当てて引き金を引いた。
 断末魔の一瞬に彼の脳裏に、昔の「スーパーマン」でスーパーマンがゾッド将軍を氷の下に突き落とすシーンが映じた。

 その頃、田中は中央線に揺られていた。服の汚れが人目を引いたが誰も彼女に干渉しようとはしなかった。
 彼女は武蔵小金井で下車し、トイレで汚れを落すと、自宅に向って歩いた。
 途中、今夜の食事の材料を買い、いつものように元気良く、長男を除いた子供たちの待つ明るく笑いの絶えない家族のもとに帰宅した。
“ただいまぁ~!ママ、帰ったわよ~!”


 ナオトは歌舞伎町を一人で歩いていた。いつものように、これからマンガ喫茶に泊るつもりだった。
 ナオトは夜のドギツイ繁華街を歩きながら、一人ぶつぶつと、つぶやいていた。
“・・・ふざんけんなよ・・・いつまで綺麗ごとばっか並べてやがんだよ・・・実感も相手の気持ちも実態も分からねぇのは、おめぇらじゃねぇかよ・・・TVの学者や政治家やキャスターやコメンテーターや活躍する元・不良先生だ?・・・お前らホントのバカかよ・・・いじめはいけません、てぇのか?・・・何言ってんだよ、言葉で誤魔化しやがって・・・人殺しじゃねぇか・・・集団で一人を寄ってたかって死に追いつめる・・・もっとも卑劣で陰湿で人間の行う最も最低の所業じゃねぇかよ・・・双方の家庭に問題があるだと?・・・糞め、問題のない家庭なんかねぇんだよ・・・やられる方が悪いだと?・・・ふざけるな完全に狂ってて善悪の区別もつかねぇのかよ・・・死に追い詰める方も傷ついてるだと?・・・バカかぁ?皆、傷つきながら生きてんだよ・・・あれは、人殺し以外の何モノでもないだろが・・・いじめっ子って呼ぶんじゃぁねぇ!・・・ひとごろしって呼べよ、糞マスコミ・・・・・追いつめられても死ななかったから良かったねだぁ?・・・ふざけんな!殺人未遂だろ・・・殺人未遂も、ひと殺しも放置かぁ?・・・ええ?・・・外道どもめ!・・・・・・死刑にもならなきゃブタ箱へブチ込まれもせずに、のうのうと、この世を生きてやがる・・・リーダーは、あの元・教師の老婆の扇動によりに娘を死に追いこまれた・・・ひと殺しババアめ・・・中学生のガキは田中さんの長男を集団で自殺に追いつめた・・・その中の一人だ・・・ひと殺しのガキどもめ・・・全員を殺すのは無理だった・・・しかし、おめぇらは、もう一生涯、ひと殺しの烙印は取れねぇんだよ・・・おめぇらは、ひと殺しなんだよ・・・わかんねぇのか・・・どいつもこいつも、こんな当たり前の事が分かんねぇのか・・・青二才は中学の時に、あの工員を含む大勢の同級生や地域の人間たちに死に追いつめられた・・・首を吊り幸いにも助かったが、あいつらはせせら笑ってやがった・・・リーダーや青二才は車の中から無差別に野次馬を撃ち殺していたわけじゃねぇ・・・あの地域のヤツラだ・・・あいつらは青二才を全員で殺そうとしていた・・・ひと殺しどもめ・・・俺のは最初に果した・・・ひと殺しを何故放っておくんだ・・・何年・・・何十年・・・かかっても、死ぬまで諦めず、復讐せよ!・・・絶対に諦めるな!・・・間違っても自分の命を絶つんじゃねぇ!・・・老人になっても・・・決して恨みを・・・忘れるな・・・報復は正当だ・・・正義はこっちにある・・・社会が理解しないと言うなら・・・やられた方が勝手に、やるしかねぇだろ!・・・俺は、これからマンガ喫茶に篭もり、強力な恨みのシンクロニシティ電波を一晩中かけて日本中に送り続ける・・・そして、再び、明日になれば、この日本のどこかから仕置人が立ち上がるんだ・・・”

 能力者ナオトはマンガ喫茶に入って一晩中真剣に、必殺シンクロニシティ電波を送り続けた。
 夜が明ける頃には、へとへとになっていた。確実な手ごたえを確信していた。

 ふらふらした足どりでオナトがマンガ喫茶を出ると、急に声をかけられた。
 人の良さそうな、しけた顔した中年男が1人。ナオトの前に立った。
 男は言った。


“お呼びで?

あたしは必殺仕置人。

中村主水と申します。


それで、今日は、どこのどいつを殺ってくれとおっしゃるんで?


 次に背後から声がした。



“あ~ちくしょう!ゾクゾクしてきやがったぜぇぇっ!”



 そして、本格的な、ひと殺し(いじめ)狩りが、大虐殺が・・・始まった


“地獄へ堕ちろぉぉぉおっ!

 ゴリッ!”




                       未完。


未完小説。それは最初から未完として!未完を目指して書く小説!

必ず未完で終わらせる事・・・・・・決して完成しては・・・・・・・・・・・


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)