元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「必殺ベント人」:kipple

2011-09-23 20:19:00 | kipple小説

必殺ベント人」


              ☆  昔々  ☆

その昔、琉球にて、夜中に聞得大君加那志と共に砂浜に寝ころび、星空を見た。

夜空はそれは美しく星々の光で暗黒の輝きを、私と聞得大君加那志に照射し続けた。

子供だった私は聞得大君加那志が現人神だと信じ込んでいて、お願いした。

“あの綺麗な輝く夜空をボクに下さい”


              ☆ 2011年 ☆

2011年、8月。原発の事ばかり考えていたオレは、聞得大君加那志に会いに琉球に行った。

現人神であらせられる聞得大君加那志(きこえおおぎみがなし)は子供の頃からオレの親友だった。

誰も知らない首里城の隠し鏡をオルフェの如く通り抜け、オレは久しぶりに聞得大君加那志に会った。

聞得大君加那志は相変わらず凛々しく美しく首に下げた勾玉と共に緑色に輝きながら、うっすらと笑った。

聞得大君加那志は当然、オレが来ることが分かっていた。

彼女は言った。

“きっぷる殿。参られたな。言うてみい。大和の国はいったん混沌に飲み込まれ滅し、その混沌から新たな天地開闢が始まろうぞ。混沌に沈んだ後、そなたが「あめのみなかぬしのみこと」となりて出でて、隠れる。そうじゃな?”

オレは分かってはいたが驚愕した。全て御見通しという事か。さすがだぜ、聞得大君加那志。

オレは聞得大君加那志の余りの美しさに少々勃起しながら言った。

“さすがでございます。聞得大君加那志様。日本は滅び、再度、混沌に入ります。そして日本受胎が始まるのです。受胎後、一旦、日本は世界を映す鏡の裏側で滅びます。混沌に沈みゆき、その後、再度、天地開闢から猛スピードでやり直さねばならぬのです。仰せのとおり、わたくしめが、この身を捧げ混沌の中から「あめのみなかぬし」となりて現われなければ、なせませぬ。どうか御理解と協力を”

聞得大君加那志は薄っすらと緑に輝く笑みを浮かべ、

“覚悟は宜しいか?最後の禊とし、悪を裁いて、この世の穢れを落とすと言うのがそなたのやり方じゃな?では、ついてまいれ。”

と言うと夜の海辺に向かって歩いていった。

そして、オレは子供の頃と同じように聞得大君加那志と共に真夜中の砂浜に寝ころび、星空を見た。

再び夜空はそれは美しく星々の光で暗黒の輝きを、私と聞得大君加那志に照射し続けた。

オレは聞得大君加那志に、お願いした。

“あの綺麗な輝く夜空をボクに下さい。そしてオレを原発人間にして下さい!”

聞得大君加那志は頷くと砂浜から宙に浮いてゆき、天空の星々の光を凌駕せんばかりに輝き始め、地上を眩しき世界に変えるや否や、全宇宙が瓦解するかと思える程の念と共に、夜空に光る砂浜をぶつけた。

すると満天の星空に皺が入ったようになり、夜空全体がスルスルと降りてきて、あたかも黒い銀紙で包装されるかのように、オレは夜空に身体中を包み込まれ、星空人間になった!

けけけー!これで、オレは誰が見ても風景に星空の穴が開いているようにしか見えまい!さあて!東京に帰るぞぉぉおお!
その時、聞得大君加那志が怒りに満ちた声でオレに言った。

“このドアホがぁ!うんじゅいっぺぇやなかぁーぎ!おぬしは原発人間になりたかったのではないのかぁ!ばしっ!星空人間はまだまだ、原発人間への第一歩に過ぎぬわい!宇宙と一体化した己は、今、最も、そのオツムを占めている何者かに化身するのじゃ!おぬしの本心が試されるのじゃ!まさかスケベな目的で原発人間をだしに星空人間になって、そのまま世闇に紛れて下着泥棒でもしようと言うのではあるまいなぁ!びしんっ!”

オレは、聞得大君加那志に怒られた・・・神様に怒られた・・・ち・違うんです、つい調子に乗っちまい。。。ええい!己を信じよう!オレは、2011.3.11以来、原発の事ばっか考えてたんだぁー!
原発人間になりたいのですぅぅぅぅううっ!

そう、心から思いました。

すると、星空になったオレの身体は伸びて縮んでまた伸びて、全宇宙になったり超素粒子になったり大きくなったり小さくなったり広くなったり狭くなったり、を繰り返し、ついに、ついに、原発人間になったのであります!

シュシュポッポ~!シュッシュポッポォ~!シュッポッポ~!

オレの名は「原発人間きっぷるマークⅠ」だぁ!

気づくと聞得大君加那志はいなくなり、そこは琉球でもなくて、新宿駅に立っておりやした。

何だ、今のは夢か幻か?果ては、オレはついに狂ったか?と思いきや、おお!オレの表面は元の人間だが内部は立派にGE社の原発!マークⅠ!そのものじゃないかぁ!

オレは原発人間きっぷるマークⅠ

福島第一原子力発電所で稼働していたのはマークⅠだ。いいか?格納容器が小さいんだよ!欠陥品だって事は30年以上前から分かってたんだい!だから水蒸気を放出しなきゃなんねぇから後からベントつけたんだい!

原子炉の格納容器が小さいからベントしねぇと水蒸気がジルコニウム合金と化学反応起こして水素爆発しちまうんだ!

怖いぞー!オレはなぁ、原発人間きっぷるマークⅠなんだぞ!悪い事してると爆発しちまうからなぁ!

・・・いや、爆発する訳にゃいかねぇなぁ。どうするかなぁ・・・こうして原発人間きっぷるマークⅠであるという秘密をだ、誰にも知られずに、この世の悪を闇に裁くにゃ、どしたらよかろ?

この原発人間きっぷるマークⅠであるというオレの身体、オレの真の姿を、何か、かりそめの姿に変えるもの・・・

ベント・・・ベント・・・ベント・・・この言葉がさっきっからオレのオツムで回っていやがる!

そうか!オレは弁当屋になろう!

ベント!ベント!弁当屋のきっぷる! なぁ~んちってよぉぉおおおっ!

そして、オレは首から弁当用の箱を下げ、弁当屋になり、中央本線や新幹線に出没し、必殺ベント人「原発人間きっぷるマークⅠ」として、悪を裁いたのである!

“ベント!ベントー!弁当は、いかがっすかぁ?”

はい、そこのオネーちゃん!とか言いつつ弁当を売りさばきながら、オレは並み居る痴漢やかっぱらいや恐喝やら悪事を働くヤツに向かって、ベントしたぁ!

オレの脇腹からベントして、ぶっかけたぁ!プッシュー!

ほらぁ、そこで盗撮してるヤツ!ベントだぁ!プッシュー!

ほらぁ、そこでケータイでデカい声で喋くりまくっとるヤツ!

くらえぇっ!ベントだぁー!プッシュー!放射能物質をたんまり浴びやがれぇ!

ベント、いかぁっすかぁ!?プッシュぅぅぅぅー!
髪の毛抜けるぜ!歯茎から血が出るぜ!全身怠いぜ!下痢が続くぜぇ!高濃度のベントくらえば急性白血病で御臨終っとなぁっ!

ふっふっふ! けけけのけー!

オレは必殺ベント人!
弁当屋の原発人間きっぷるマークⅠだぁ!


のさばる悪をなんとする!天の裁きは待ってはおれぬ!

この世の正義もあてにはならぬ!闇に裁いてベントする!

          南無阿弥陀仏!


てか、オレ、神道だし、祟り!だろ?てか、これが禊の為の穢れ作りなのかぁ!日本受胎!天地開闢の祖神!我が身を捧げ!天之御中主神となりて混沌から現われ日本を再創造するという話は、どこさ行ったぁ!

そもそも、禊の為に必殺ベント人になって悪を裁いて、この世の穢れにたっぷり塗れる必要があったのかぁ!?

あの時!聞得大君加那志に禊をしてもらって、混沌の中に現われる「あめのみなかぬし」として身を捧げれば良かったのではあるまいかぁー!オレは、この世でもう充分に穢れきっておるではないかぁー!

ああ~、しかし、闇の裁きは楽しいなぁ~♪ベント!ベント!ベントプシューー!

ああ!日本はどこへいくー!この混沌から抜け出す道は再天地開闢による日本国再起動以外にあるのかぁぁああぁ!

ああ!ベント仕置き!楽しいな!たのちーな!

分かっちゃいるけど、やめられまへんわぁ!

かくして、オレはベントして、小悪党どもに放射性物質をぶっかける必殺な日々を、いつまでもいつまでも送り続けるのであったぁ!



     原発人間・失格!




                   おしまい


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「線香花火」:kipple

2011-09-01 01:56:00 | kipple小説

線香花火


昭和十九年の十一月の中頃から空襲が酷くなってきましたので、ボクのうちはお母さんの実家のある長野県のあららき村というところへ疎開する事になりました。

ボクのうちは東京の武蔵野市にあったのですが、米軍が近くの中島飛行場を狙って攻撃しているので危ないから、という事でした。

ボクはグラマンの機銃掃射を避けるのも、空のずっと高いところを飛んでるB29の爆弾を避けるのも得意でしたので、ちょっと残念でした。

コツがあるんです。グラマンの操縦士はたいていバカだから銃弾の道筋がすぐに読めるんです。横跳びでひらりとかわせば簡単なのです。

操縦士は本当に鬼畜米兵で、何度も目があいました。彼らはたいてい狂ってました。大口を開けて、ゲラゲラ笑いながら撃ってくるんです。

何度も、ボクの事を撃ち殺し損なって、低空飛行しながら操縦席でゲラゲラ笑ってこっちを見ている鬼畜米兵に、“あっかんべぇ~!”をしてやりました。

B29の場合は間が肝心なんです。B29は空の高いところから爆弾を落としますので、地面に落ちるまでけっこう間があるんです。

その間を読むんです。落下してくる爆弾を見てるとだいたい落ちる場所が分かりますので、分かったら思いっきり走って逃げるのです。慣れてくるとB29が落とした瞬間に完璧に落ちる場所がわかっちゃうんです。

そういう毎日がボクは楽しくて楽しくて大好きだったので、疎開すると聞いた時、残念に思ったわけです。

結局、十二月になってからボクのうちはお母さんの実家に疎開したのですが、途中の汽車の中で、ボクはなんだかおかしくなりました。

最初、ボクはトンネルのせいだと思いました。

汽車がトンネルに入って、窓から黒い煙が入ってきて煤をいっぱい吸い込んじゃったので、そのせいだと思いました。

みんな、すぐに窓を閉めましたが、ボクはたっぷり煤を浴びちゃって飲み込んじゃって、随分気持ちが悪くなったのです。

汽車がトンネルを抜けると、おとうさんとおかあさんと妹はボクの煤のついた顔を見て、へのへのもへじみたいだとお腹を抱えて大笑いしてましたが、ボクは身体中がどろどろと溶けるような変な気分になって、ぐっすり寝込んでしまいました。


目が覚めた時は、もうあららき村のおかあさんの実家についておりまして、ボクは厚い布団の中におりました。

夜になっておりました。

おかあさんの実家は昔、庄屋でもっと立派だったとおばあさんは言いますけど、今でも入り口には大きな門があって、他のあららき村の人の家より、ずっと広くて大きいです。

ボクが布団から出て、いい匂いのする綺麗な畳の上を歩いて襖を開けると廊下に座敷わらしのアキちゃんがにんまり笑って待ってました。

“久しぶり!もう来ないんじゃないかって心配してたんだ!でも、よかった、又、会えて。又、いっぱい遊ぼうね!”
とアキちゃん。

ボクは、今までに二度、ここに来たことがあり、そのたんびにアキちゃんや近所の子供たちと思いっきり遊びまわっていたのだけれども、今度は何だか身体の調子が悪いようなので、あまり遊べないかなぁと顔を曇らせていると。

“どうしたの?そういえばちょっと元気ないみたいだねぇ。大丈夫?”
とアキちゃん。

ボクはここに来る途中、トンネルの中で汽車の煤を吸いこんでから、気分が悪くなって、それからずっと、眠ってたんだよ、気が付くとここにいて、起きて障子を開けるとアキちゃんがいたんだ、それで今も何だか気分が悪いんだ、と広間に向かって廊下を歩きながらアキちゃんに説明しました。

すると、アキちゃんはボクの身体に抱き着いてきて、ボクの頭に頭をくっつけて神妙な顔をしました。

“どれどれ?う~ん・・・”
と言いながら、アキちゃんはアキちゃんの頭で、ボクの頭をごりごりやるので可笑しくなって、プッ!と吹きだしてしまったのですが、アキちゃんは何だかきょとんとした顔つきになり、ボクから身体を離すとこう言いました。

“ねぇ、眠り時計のカチカチがおかしくなってるよ。これはまずいかもしれない・・・”



(・・・妄想完結済: ↓ 以下、この後の展開)

広間で駅から、あららき村に来るまでの木炭バスや薪バスの話。

気分が悪いので医者が往診。病院で精密検査を受けるように言われる。

病院で「昼寝カリエス」と診断され、あららき山の隔離病棟に。

「昼寝カリエス」の症状は夜、眠ることができない。眠れるのは昼間だけ。太陽が出ている間に決して起きることができない。

「夢結核」を発病。「夢結核」は周囲の現実に影響を与える。感染する。

隔離病棟では個室で、先生の名は“まらき先生”看護婦が二人いて、“かむろぎさん”と“かむろみさん”

夜中に先生が診察にくる。狐のお面をしている。看護婦の二人も狐のお面をしている。

お面を取ると、顔には何にもなくて、卵形のもちみたいで真っ白。触るとういろうみたい。

ボクも鏡を見ると髪の毛も耳も目も鼻も口も、つるんと何もなくなっている。

先生が狐のお面をくれたので、それを被る。

年が明けて、三月十日の東京大空襲を病院の近くの高台に上がって、みんなで見物。

東京の空が赤く光っているのを見て、綺麗だね。

みな、お面を取る。何もない真っ白なもち顔が皆、赤く染まる

みな巨大化していく。どんどんどんどん巨大化していく。

空に頭がつっかえたが、赤く染まった頭はそらを貫通し、空の上にでる。

空の上に登れると知ったみんなは、空の上に登り、空が床になり、空の上に広がる星々の中から空のしたを眺める。

アキちゃんとの別れ。

・・・2011年3月10日が来る。東京大空襲から66年経っていた。

次の日、みなで線香花火をすることになる。

空の上から巨大化したみんなで線香花火のぐつぐつ溶けた玉を空の下に狙って落とす。

線香花火の火花が盛大に出てる時、タイミングを見計らって、ぐつぐつの熱い玉を落とす。

夕陽の滴がたらりと落ちた。ビルがジュージュー溶けてった・・・





                   おしまい


主題は「祟り」。

現在の日本、日本人に対する、過去から、ご先祖様から、本来の日本、日本の神々による「祟り」。

途中で大東亜戦争末期から敗戦後の台湾と満州の話を挿入。原爆と原発の幻想描写は二重構造。イメージとして覆い尽くすのはグツグツ煮立つ巨大な線香花火の玉と目玉。裸電球。

This novel was written by kipple

(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)