元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

さすらい少女2004夏 目次

2021-08-09 06:18:24 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004 夏

-目次-

     

   10 11 12
















「ぶぉぉぉぉぉぉぉ、ぶごごごぉぉぉぉぉぉっぉぉおおっ、オイラはフォームデストロイヤぁぁぁぁぁぁあっーーーーーー、オ前はぁぁぁオ前のぉぉぉぉ存在はぁぁぁぁ存在はぁぁあぁだぁめぇだぁぁぁぁ、だぁめぇぇだぁぁぁ、うううう宇宙がぁぁぁ許さねぇぇぇんだぁぁぁぁ、喰ってやるぅぅぅうっぅうぅぅ、オイラはぁぁぁぁ、オイラはぁぁぁぁ、どぉぉぉこぉぉぉまぁぁでぇぇもぉぉぉどぉぉぉぉこぉぉぉぉまぁでぇぇもぉぉぉぉぉ、いつぅまぁでぇもぉぉぉぉぉぉ、オ前を追ってぇくぅぅぅぅぶぉぉぉおぉぉぉぉ・・・・・」
 



KIPPLE


さすらい少女2004夏 12

2021-08-08 06:35:25 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-12-


 私は公民館の戸口のところで不安そうに待ってる弟のところに直行して、ギュッと腕を握って引っ張って、さっさと公民館を出てったよ。相変らずカンカン照りで暑い暑い、霊安室はひんやりしてたので余計に、むわ~っと感じるわ。気づくと、まだマスクとかしてたんで全部取って、ポイって道路に投げ捨てた。さて、どうしようって、私の手を強く握り締めてる弟の顔を見ると、けっこう泣けてきて、いとおしくて抱きしめた。そんで青い顔して汗だくで震えている弟の耳元で、そっと、でも物凄く力強い小さな声でささやいた。

まっかせなさい!このお姉ちゃんにまっかせなさい!親戚縁者なんて最近は、お年玉もケチる嫌なやつばっかだ!引き取られるなんて、まっぴらよ!ねぇ!あんたも、そうでしょ!

 って弟は、こくんと、うなづいたよ。やっぱ感じてたんだな、親戚なんかに引き取られたら、それこそ、生命保険でもかけられて殺されるのがオチだ。私は死んでるから、えへへ、いいけどさ、何たって弟は本当にまだ生きてるわけだし、独りぼっちの天涯孤独だ。よしよし。まかせないさい!たとえ幽霊だろうが何だろうが、あんたを全力で守ってやるからさ、立派な男に育ててやるぞ!そして、さらに物凄く力強い小さな声で私は弟に囁いた。

ど~んと、お姉ちゃんの豊満な小さな胸に飛び込んで、大船に乗った気持ちで、まーかせなさい!あったしはねー、幽霊になって旅に出て、スーパーウルトラ・ハイパー・ブースターを装着してきたのよ!見てよ、この私の身体を!うりうり!活力に満ち満ちてるんだからさ、一つ一つの細胞がチョー活性化して亀石の上で神のゴールデン・スーパーエナジーを受けて、死んでいようが幽霊だろうが、もう関係ないから!とにかく、ここに!あんたの目の前に私はちゃんといるよ!全身全霊でお肉の塊1つで、100万馬力で、チョッパーバイクで、あんたと一緒に荒野の人生ハイウェイ、大爆走だ!思いっきり充実して生き抜いてやろうよ!ケータイもパソコンもTVゲームも、そんなもんもう、いらなーーーい!生身で勝負だ!ドンとこいっ!何故、ベストを尽くさないのかぁ~!

 やっと弟が笑った。ふぅ~よしよし、良い子だ、うしっ!

 ねぇキャプテン、あんたに影響受けたせいで、私は生きてる幽霊になっちゃったよ!本当なら焼け死んで昇天してたんだね。弟たった一人残してさ。よしっ!キャプテン!あんたに宣言してやるわ!

 私は、キャプテンみたいにゴミ屑みたく殺されたりしませ―ん!

 私は、死にましぇーん!

 だってもう1度、死んでるし、しかも、このスーパーウルトラ・ハイパー・ブースターを装着した私は、今、限りないエナジーに満ち満ち、人生を!全身の細胞から湧き出す生命力!身体中に刻み込まれた、この黄金のド活力で全力を振り絞って乞食でもなんでもやって、このダイヤモンドの絶対に傷つかない図太い神経と無敵の内臓と!カツ丼と!不屈の精神で、人生を!人生を!絶対に生き抜いてみせる!何が何でも幸せになってやる!肉肉幽霊として幸福に生き切って見せる!気合ダッシュと根性ラッシュ!

 私は炎天下の中、座り込んで弟を思いきり抱きしめると、タオル地のハンカチで汗を拭いてやって、それから、すっくと背筋を伸ばして立ちあがり、ピッカピッカに輝く大空に向けてバッと両腕を広げガニマタで地面にどっしり足をつけ、腰を落として、涙こらえて、ふんばってふんばって、拳を握り締め変身したてのハルクみたいに雄叫びを上げたよ。

「うがぁー!キャープテーン!あんたはゴミ屑みたく死んでったけどさー!あったしは死んでも死なない100万馬力のウルトラ少女だーい!キャプテーン!あんたの得た自由ってなんだったのさー!ホントは死にたがってたんじゃないのー!あったしは思いっきり、これから自由に生き抜いてみせるよー!キャプテーン!あんた、やっぱし、ダッセーよ!時計を捨てて手にしたのは自由じゃなくて、そりゃ死だよー!わかってたんでしょー!キャプテン!私はケータイや掲示板を捨てて本当の自由を手にしてムチムチの肉肉エナジー満載幽霊として爆裂ダッシュで生き抜いて見せるぞーーー!

それが私!それが私の幽霊道!

 

 さよなら、キャプテン・アメリカ!

 そして、有難う、キャプテン・アメリカ!生身の幽霊はキャプテンさまさま!

 いいかーキャプテン!私の名は!今から!

 ゴースト・キャプテン・ジャパーーーン!略してG・C・J!

 何が何でも生き抜いて、本物の自由の旅にでる幽霊なのだー!参ったかー!

 

 これで、話は終わりにするね。何たって、これから私のケータイ・メール・掲示板、神経いらいら糞くらえ!の本物の人生がはじまるからだよ。でもさ、ちょい、気になるっていうか、う~ん、幽霊って本当に死ねないのかなぁ~?って!死んでたまるかぁ~♪成仏なんてヤナこった~♪

 

 じゃね、ばいば~い!たぶん、もう会う事もないね!

 今まで聞いてくれて有難うね!そっちは生きててね!

 あーばよ!

 

 

 

 ニカッ!





さすらいの幽霊








KIPPLE


さすらい少女2004夏 11

2021-08-07 06:27:52 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-11-


 フワーっと冷気と供に、引き出しみたいのから現れたのは、ズバリ、透明なビニール袋に入れられて、名札を付けて前から順に横向きに並べられた黒焦げの死体が3つだ。ニコニコが、いちいちビニール袋についたチャックを開けてるよ。焼死体丸出しにしやがった!

 うぅ、覚悟はしていたものの、うえ。げろげろ!げろげろ!なぁんてね!ふん!輝く鋼鉄の心臓とダイヤモンドの神経を手に入れた私はもう何があっても堂々だ!こい!来るならこい!なんでもこい!だ!とは言うものの、お父さんにお母さん、グチャグチャだけど全然分かるじゃん!げー!うぅっ!うわぁ~ん!ううわぁ~ん!何で私は、こんなに辛い目にぃ~ひぃ~!あんまりぃ酷すぎます~!この世は地獄ですか~!骨が突き出てるよ~、マスクしててもオエオエなこの臭い、何?これ、喉に引っ付いてくるような、げほげほ!だー!うが!うが!しっかりするんだ!キャプテン!キャプテン!見守ってくれー!

 そして、私。

 私だった。間違いない。実に私で。ちゃんと私で。私が見ても私だった。私が言うんだから本当だ。役所や警察はさすがだ。私は真っ黒け。身体は半分くらいしか残ってなくて下半身は無いし、胸も黒いくすんだ色の骨が突き出したりしてメチャクチャで、両腕は酷く焼け焦げた感じでメチャクチャな胸の上で両手を合わせるようにしてる。顔っていうか、頭は黒焦げで無い。穴が開いてて脳味噌みたいのが黒ずんでぐにょぐにょ見える。目や耳や鼻も溶けてくっついたみたいになってる。けど、私だ。全体はハッキリしてる。私以外の何物でも無い。そして隣りにニコニコがいるのも忘れて私は絶叫したよ。

「ぎゃぁーーー!なんなのよーーー!私は今、生命力バリバリで身体の底からボウボウと細胞が活性化して燃えてるのよぉぉぉ!なによぉおおお!死んだくらい!死んだくらいぃぃぃいいい!死んだくらい、なんだってのよぉぉおお!いいわ!私は幽霊だったんだ!家を出る前に焼け死んでたんだぁー!だからなによ!シックスセンスまるだしじゃん!死んだのに気づかずに思いを遂げたんだぁー!じゃ、このムクムクと湧き起こってくる生命力はなによぉぉおおお!この生命力は!私を!ちゃんと!生身の幽霊として!ちゃんと!生かしているじゃないのぉぉーー!」

 あんまりにも堂々と絶叫するもんだから、隣りにいたニコニコはさすがに驚いてたよ。あはは、実は私は幽霊だったんだ。そんで、それを目の前にして、目をむいてるよ、無理も無いや。あったしだって、気が狂いそーだー!で、なんだっけ、私は何?幽霊なんだ、生きてる、あはは、世の中にはそんな事もあるんだねぇ、これからどうしよー、キャプテン!隣りのニコニコは面食らって遺体と私を見比べて、さすがにこれだけ損壊した遺体でも目の前で生身で絶叫してる私自身そのものだとハッキリと確認したようで、ぶつぶつと、もう分かりました、もう、いいでしょうって、私の腕を握って引出しを閉めようとするんで、 ちょっと待ったぁー!気になるのは遺体の私の握り締めた両手!黒焦げのボロボロの私は絶対に何か握ってる!私は、それを確かめるまで絶対に引き出しを閉めさせない!

 私はバッとニコニコの腕を振り払うと、自分の遺体に飛びついたよ。飛びついたって言っても比喩だけど、だから、ガッと自分の黒焦げの両手を幽霊の私が手袋した手で掴んで、思いっきり開いてみた。意外と固くてべりッと折れるように遺体のメチャクチャな胸の上で組まれた両手は剥がれて、あ、あ、やっぱ、

 出てきたのはケータイだよ。

 死ぬまでケータイを握り続けた私。そして幽霊になってケータイを捨てた私。うん、これは確実に私のケータイ。そう、この黒焦げ遺体はキャプテンの捨てた時計だよ。過去の煮詰まってた私、ケータイ・メール・掲示板・いらいらいらいら、いっつも気にしてストレス・バリバリの私!この私はケータイとともに死んで!ケータイ捨てたさすらいの幽霊の私は、リセットされて、旅でウルトラ生命を得たのよ!

 そうか!ニカッて笑った、あの駅員、あの旅館の老人や亀石のお婆さんたち!分かった!ニカッ“おや、あんたもかい”だ!なんだ、みんな、生きてる幽霊だったんだーーー!仲間だったんだー!だっからさ、あんなに優しかったんだー!あははは、世の中、捨てたもんじゃないかもねー!あはは、あいつ、あの亀石で会ったオッサン、キップルとか言ってたな、あのオッサン電波系ってやつだ、幽霊が見えたりすんだよ!だからか!私が幽霊だって見抜いて絡んできたんだよ!オールOK!自分が幽霊だって自覚した途端に色んな事がわかってきたよ。

 それから私は胸を張って霊安室を後にしたよ。ニコニコは、うろたえていたけど、私には何となく分かったよ、彼女、以前にもこんな事があったんだね。世の中には不思議な事があるって知ってんだ。なるほど、そっかだから私を規則破って連れてってくれたんだな。以前、ニコニコが経験したのは誰の幽霊なのか、ちょっと気になるけど、もう、どうでもいいわ。





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さすらい少女2004夏 10

2021-08-06 06:29:40 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-10-


 それから私は、その女の人に連れられて、公民館の霊安室という嫌な名前の場所に行くことになったんだ。まず、市役所に戻った。弟さんには、なにせ親族として遺体を判別できる唯一の生存者だったため仕方なく1度確認してもらったけど、それ以来ずっと、状態が悪いので入れることはできないっていうので、ああ、と私にしがみ付いて震えてる弟を見て、同感だと思った。それに同意すると、今度は遺族リストというのを出して、そこに署名だ。何とか何とかに同意します、もしも何らかの不都合が生じた場合は自己責任と伝々、ショックを受けて頭がおかしくなったりしたら、あなたの責任ですよって事らしい、じゃ弟のこの状態は弟の責任なのかよ!って何だか面倒な手続きをいくつか済ませると、こんな時にも事務的なニコニコ笑う、その実は結構親切な女の人と一緒に近くにある公民館に向かったんだ。弟は一緒に来たけど、霊安室の前で待つことにした。

 公民館に入ると警官がけっこう沢山いて、あーそうか、テロリストが爆弾を誤って爆発させたんだっけ!まったくどいつもこいつもドジばっかね!そこで、今度はマスクとビニールの上っ張りと手袋を渡されたよ。そんで、また署名。ハンコ持ってないから指で捺印だ。ペタ、ペタ。指が赤いわ。じゃ弟は、ここで、待っててねと不安がるのを不憫に思いながらも、マジ、ヤバそうなんで、しょうがない。マスクしてビニールの上っ張りを着て、手袋をして準備OKしてると、さっきの事務的にニコニコ笑う女の人がマスクと上っ張りと手袋をして、へんな事に神妙な顔をして強面の2人の男の警官と一緒に私のトコにやってきて、その片方の強面の警官が、こう言ったんだ。

「だめですよ、偽名使っちゃ。この名前は御遺体リストに載ってるんです。はい、関係ない人は出てってください!親戚の方なら、ちゃんと本名を書いてくれないと、ちゃんと、こっちは調べますからね。」だってぇーー!

 えー!そりゃないよー!キャプテン!それで引き下がるわけにはいかないので、私も意地だ。

「偽名じゃありません!親戚でもありません!本人です!娘です!私は生きてます!そのリストが間違ってるんです!」

 って言うと、もう片方の強面の警官が、ちょっと待ってなさいって、また待たされたよ。弟が戸口の方で不安そうに震えてるじゃん!早くしてくれよ!私は、ここで、こうして肉肉肉肉して、心臓どっくんどっくん、ちゃんと生きてるでしょーに!その事実は御遺体リストに載っていようと、書類がなんだろーと絶対に!絶対に!誰にも否定なんかできやしないんだから!

 しばらく待っても、その警官はちっとも帰って来ないので、そばでポカンとしながらも事務的にニコニコ笑う女の人に、私は生きてるんだ!ほら、ここに思いっきり、生命力ブッチギリで生きてるんだ!って思いをぶちまけたわよ!そしたら、その女の人、一瞬、笑いを止めて遠くを見るような目をすると、いきなり私の腕をグイって握って、警官を振り切って戸口から外に出たんで、私は引き摺られるようなカッコになって、おっとっとっとな感じだ。残された一人の警官がポカンとして止まってんの!やるじゃん!ニコニコ!ニコニコって愛称で呼んであげるわ!

 それからニコニコは、私の腕をぐんぐん引っ張って公民館の敷地の中を、ずんずん進んで行くんだけど、黒っぽいいかにも霊安室って感じの建物が近づいてくるにつれて握る手が弱々しくなり、こう言ったよ。

「いい?私は、あなたを信じるけど、何があっても取り乱しちゃ駄目よ。それからマスクは絶対に外さない事!喉がおかしくなって咳が止まらなくなって吐いちゃうから。でもね、このリストは、かなり正確なのよ。まさか間違って生きてる人間を載せてたりなんか有り得ないの!数も合ってるし、いくらひどい焼死をしたからって、あそこは基本的に住宅地でしょ、全部確認してるのよ。1人1人、いい?あなたとあなたの御両親の遺体を確認したのは弟さんなのよ。この書類に署名してあるでしょ。これ、弟さんよね。それに、もし何だったらDNA鑑定や復元って作業も出きるの。爆発自体以外には、事件性は確認されていないの。だから誰か他の人の死体が、あなたの代わりに何らかの理由で火事現場に遺棄されたなんて可能性も、まずないの。」

 って、ニコニコは、又、立て続けに喋ってるよ。イー加減にうんざり。もー見れば分かるよ。見ればさ。だって私だよ。いくら燃えて黒焦げになっちゃってたって自分くらい見分けられるって!って言うか自分の訳ないじゃん!ニコニコは、そうは言うけど世の中には訳の分からない事だっていっぱいあるんだ。どっかの変態が午後7時前に私の部屋に入って来て私を殴って気絶させて、新幹線に乗せてった、そんで私の代わりに誰かの死体を部屋に置いて、私はバカで、記憶が飛んじゃって夢でも見てて、名古屋で正気に戻った・・・く・苦しいか!

 とか考えてるうちに霊安室に入ったよ。あちこちに警官がいて、遺族らしきマスクにビニールの上っ張りに手袋の人たちがうろうろしてるよ。大惨事じゃん!全然知らなかった、ケータイもNETも捨ててたわけだし、TVも見なかった。でも知ったらどうだっての?さすらいの一人旅のせいじゃないよ。起こったものは起こったんだ、知ってたら戻るか。生き返るか。

 って、うぇ!見る前から気持ち悪くなってきた!まさか床にシーツかなんか被せて置いてあるんじゃないでしょーね!って、そうじゃなかったよ、霊安室って1階は事務室と待合所になってて、遺体は地下に安置してあるそうで、すぐにニコニコが手続きを済ませてくれて、階段を下って行くと、地下は幾つかの部屋に分かれてて202ってボードが貼ってある部屋に入ったよ、もちろんニコニコに案内されてね。

 ニコニコはリストを見ながら202の部屋の中の壁一面に幾つもの大きな洋服箪笥が埋め込まれたみたいにズラズラと並んでる銀色の冷たそうな引出しみたいなのを、いちいち確認して、その中から私の苗字が書かれた引出しみたいのに手をかけて思いっきり引っ張ったよ。おいおい、市役所の職員がこんなことしていいのかい!って思ったけど、どーもニコニコはけっこう偉い人みたいで、実はテロ対策員死体処理班だったりして、ってケッコウあたってたりするんだ、こういうの。





KIPPLE


さすらい少女2004夏 9

2021-08-05 06:31:03 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-9-


 私は別に身体がどうって事も無いので、って言うより身体はバリバリ元気で、あれからすぐに弟を引っ叩いて正気にさせて、病院の医師や公民館から来てる人に色々聞いてみると、お父さんと、お母さんは、やっぱり、火事で死んじゃったらしい。何故か、弟は無傷で、火事になった時、コンビニか、どっかに行っていて助かったらしい。でも、何だか変な気がするんで、って、だいたい何で私の名前が遺体のリストに堂々殿堂入りしてるのよ!で、弟に、

「何?これ、お姉ちゃんの名前が何で載ってるの?」

 って聞いても弟は何だかブルブル震えておかしくなっちゃってるんで、おそらく、あれだ、例のPTSDとかいうやつだな、で、埒があかないので、公民館の職員の一番親切そうな男の人に聞いてみた。

「あのー、これなんですけど、遺体ってどこにあるんですか?私、遺族なもので一応確認したいんです」って。

 ペコリって可愛くお辞儀なんかすると、プンって自分の臭いがして、あ、あ、やべぇ、かなり臭いぞ、汗だくばっかなのに、洗濯してないもんなぁ、なんて呑気なこと自分は考えてたんだけど、その男の人は、外見と違ってけっこう無愛想で、あーとか、うーとか、言って要領を得ないんだよ。あー助けてよ、キャプテン!

 それでも懸命に私は3日前の大火事で焼け死んだ家族の生き残りで、お父さんとお母さんの遺体は、どこにあるのか?いったい誰がどうやって処理をしたのか、それと、何故、私の名前が入ってるのか、などなど、しつこくしつこく尋ね続けてると、その男の人の後ろにいた、例の市役所の事務的にニコニコ笑う感じの悪い女の人が、割って入ってきたよ。

「あっ!あなた、この間は、私も動転していたものだから、ごめんね。私が代わりに説明するわ。あの夜はね、午後7時頃に、あなたの隣りのアパートから突然、爆発音がして出火して、あっという間に付近一帯に火が燃え広がったのよ。物凄い勢いだったから、おそらく何かの特殊な爆薬が原因じゃないかって警視庁のテロ特捜班までやってきて、今も念入りに調べてるみたいだけど、どうもテロ関連らしいの。アパートが自称アルカイダ系を名乗る日本人のアジトだったらしいの、インターネットに彼らのホームページがあって、そこに犯行声明みたいなのが書いてあって、調べたら、そのホームページが置いてあったプロバイダにそのアパートの住人が加入していて、間抜けな事に本人がそのアパートからNETに接続して・・・通信記録に・・・IDもパスワードも・・・判明して・・・爆発は事故だったみたいで・・・犯行声明によるとアメリカ大使館を・・・」

 って、この人、意外と良い人?へぇ~人は見掛けによらないってね。いやいや、なんだ、それ。ピンと来ないけど、何でウチの隣りのアパートにテロリストがいて、爆弾を爆発させるのよ!わけわかんないっーーーつぅの!げげげげぇだ!うが!うが!それで、巻き添えクラってウチが焼けてお父さんもお母さんも焼け死んじゃったってーーーーのぉ~!あー納得いかないよっ!焼け跡には警視庁のテロ特捜班どころか近所のオバさんくらいしかいなかったじゃんー!って弟がブルブル震えてるんで、ギュッとだきしめたよ。何て不憫なんだー!ああ、あったしも、どーしよー!ねー!どーしよーーーー!危機一髪、越えちゃってるよ!

 で?え?ちょちょいまって!この人、ペラペラまだ喋っているけど、その懸命さは、よしよし良い子だ、でも最初に午後7時って言ったよね!ね!ががががーーーん!!午後7時だってぇーーーー!?うっそー!うっそー!だってぇ、あったしぃ~、その時間なら、、まだ家にいたよー!待ったー!ちょっと待ったぁーー!そんな時間に、さすがに早寝のお父さんとお母さんだって起きてたし、私が1度、ケータイ持って弟がTVゲームやってて、お父さんとお母さんが寝たのを確認して抜け出したのが、確か・・・午後11時頃だよ。アホアホで、もう1度戻ってケータイ置いてきたのが、せいぜい11時15分か20分頃だよ。どーいうことだ?隣りが爆発したのが午後7時なら気づかないはずが無い!ましてや、そんな凶悪な火災が、あっという間に広がったんなら、絶対に、私も燃えてるね。・・・って、燃えてる・・・。う、嫌な気がして来たよ。ちょっと、しがみ付いて震えてる弟にニカッて笑顔でグッと顔を寄せて、聞いてみたよ。

「午後7時に、あなた、どこに行ってたの?ゲームしてたんじゃない?それと!その時、あたしは、いた?」

 ニカッの効力のせいか、弟は震える声で、けっこうハッキリと答えたよ。

「僕、コンビニにジュース買いに行ってたんだ。おねえちゃん、自分の部屋で何かゴソゴソやってたじゃん!」

 だってさ。

 そうよ、午後7時頃なら、私は自分の部屋で「プチ・イージーライダー作戦」の主に心の準備ってやつをしてたんだよ。お金の心配とね、で、緊張してバックにそれ以外入れるの忘れて飛び出たアホだったんだけど、そうか弟にはちゃんとアリバイがあるんだ、爆発時間に外出していればねぇ。あーあー、ついに私は齢、15で美人薄命の法則に従って死んじゃったのかー!思えば短い人生だったな、何一つ充実したことなんかありゃしなかったっていうか、これからだろ!って時に、死んでやんの、ドジ。どーりで家出てから名古屋まで夢の中にいたみたいで、記憶がハッキリしないわけだー!あーそうか、そうか、私は死んでたのか!

 んな!バカな!私はシックスセンスか!ほら見ろ、このお肉で満ち満ちた張り裂けんばかりの黄金のピッカピカの活力に溢れかえったこの身体を、ほら見ろ、この太もも、このお尻、この胸はちょっとちっちゃいけど、ピッチピチだぞ、ほら見ろ、この腕、真っ黒に日焼けしてエネルギー充填完了のチョー健康娘じゃん!ここにいる私は肉体派の幽霊かい!全身に自然の黄金エナジーを蓄えて歩くウルトラ生命力になって帰ってきた、この私が実は死んでた?きゃははは!そんなバナナーー!って思ったけど、今度は縦線が顔いっぱいに入ったよ。実に納得がいかないので、やっと一気に喋り終わってぜいぜい言ってる市役所の事務的にニコニコ笑う女の人に、グワッと向かい合って、じっと見つめて大声で言ったよ。

「じゃあ、遺体は、どこにあるんですか?私に見せてください!自分で確認してって言ってたじゃないですか!遺族にちゃんと確認させてください!」





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さすらい少女2004夏 8

2021-08-04 06:13:30 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-8-


 あっと言う間に「柳本駅」に着いて、おっとー!気前良く電車が来たので飛び乗って、そのまま帰ったんです。

 え?帰ったって?当然でしょ、私のウチ、東京よ。え?さすらいの一人旅は、もう終わりか?ですって?あったりまえじゃーん!もう充分さ!エネルギーは満ち足りたの。って言うか究極を超えた感じがするよ。マジ、キューティーハニー、敵じゃないね。

 何て、格好良く、ちゃっちゃと帰宅できたらねー、結局、名古屋までガタゴト各駅で、眠っちゃってさぁー、起きたら夜中なの、で、名古屋でカツ丼3杯食べてたら遅くなっちゃって、そっから新幹線で東京駅に直帰したけどさ、東京駅から中央線に乗って自宅のある武蔵小金井に着いたのは、朝ですよー!午前7時の御帰宅でーっすぅ!

 私の家は武蔵小金井の駅を北口から降りて、歩いて15分位のトコにあるんだけどさ、なんだかねぇー朝陽をバックに勤め人と逆方向に歩きながら変だな?って気づいたのは、景色がおかしいのよ。

 ええーー!って感じ。何?これ?何?って。。。

 無いの。私の家のあったあたりが黒くなって凹んで見えるんだわ。げ!って青くなってダッシュしたけど思ったとおり、火事だよ、火事。って言っても、もう鎮火して辺りは倒壊した黒焦げの残骸だらけなんだけど。じょ・じょーだんじゃないわよ!あたしんち!あたしんちは!ダッシュもいいとこ、冷や汗ダクダク。

 で、そ・そんなーーーーーーーーーーぁ!ですぅーーーー!私の家がないの。綺麗に焼けて黒い墨みたいのが黒焦げの原っぱを埋めてるの。って言うか墨が私のウチを埋めてるの。あー違う!だからぁーもーう、屋根とか柱とか家具とか全部、焼けちゃって崩れちゃって、その上に黒い墨が降り積もって、黒い原っぱみたいになっちゃってーーー!訳わかんないよぉー!私の家は、どうなったの?って、え?焼けたんだ、よ、ね。じゃなくて!私の両親は?弟は?いったい、何があったの?どうすればいいのよ!

 もう私は、パニックになったね。絶叫しちゃったみたい。ぎゃぁぁっぁぁぁーー、かな?ぎょぇぇぇぇーーー、かな?それで、わんわん泣いてるところへ、顔見知りのオバさんが、やってきたの。それでね、余計にパニくって、そのオバさんに、うわぁぁぁっぁ~んって泣きつこうとしたら、何故?オバさん、避けるんだよ。私を。って言うか青い顔して行っちゃったよ。おーい、何よー!私は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら燃え尽きた我が家の上で、朝陽を背に絶叫したわよ!

 うぎゃぁぁぁっぁあ!うぇぇぇぇぇ~ん!ふんぎゃぁぁっぁっ!もう正常でいられますか!っと、

「あのぅ」

 ってチャリに乗った御巡りさんが声をかけてくれたんで、私は、

「いったい、なにがあったんですかー!」

 って泣きながら尋ねると、

「ここの家の人?ここ3日前に全焼しちゃってね、原因は調査中だけど、大丈夫?じゃ御遺族って事になるかな。」

 って言うんだ。御遺族って!冗談じゃないわよ!3日前って私が夜に、さすらいの一人旅のために抜け出した日じゃん!そんなのないよー!火事なんかなかったじゃんかー!げ!あたしが出たあと、燃えちゃったの?

 もう私は何が何だか分からなくなって、とにかく御巡りさんに聞いて市役所に行くことになった。もう考えたく無いけど、とにかくウチの辺り一帯は物凄い火事になって全焼して、住人も半分以上は焼け死んじゃって、生き残った人も重体が多いって、信じられるかよー。

 あー全く、不親切な人間ばかりだ東京は!私は、ひょっとしたら可哀想な遺族のいたいけな女の子なのに、送ってくれもせず、泣きながら市役所まで歩いたわよ!さらによ!さらに!市役所で火事の事を聞くと事務的にニコニコ笑う女の人が出てきて、コピー用紙を持ってきて、そこに御遺体の名前が書いてあるんで確認してくれって!ふざけてる!それで、もし御家族の名前が見つかったら近くの公民館の霊安室に行って確認して欲しいって!何て冷たい言い方なのよ!

 私は真っ赤になって頭に来ちゃって、その女の人からコピー用紙をひったくると、

「ふざんけんな!」

 とか毒づいてザッと目を通したんだけど、、、え?最初に飛び込んできたのが、信じられないことに私の名前。ウソ。私の名前だ。ウソー。だって、じゃ、ここにいる、このスーパーパワーの生命力バリバリの美少女はいったい誰だっていうのよ!これは何かの間違いだとしても、次々と私の目に入ってきた名前は、私を失神させるのに充分で、そこで、私は、私は、この神経ダイヤモンドの、この私が、ドタッと倒れたわけで。人生いきなり、ズンドコ、真っ暗。目の前、真っ暗。

 目が覚めた時は、病院で、何と弟がベッドの横に澄ました顔しているじゃん!なんだー、生きてるじゃん!って思ったら弟の顔がマジ青いんで大丈夫かよって起きあがって近づくと、弟の奴め、ブルブル震えだして、こう言ったよ、信じられる?

「お・お化けーーーーーーー!」

 ど・どうなっちゃったの?キャプテン!?





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さすらい少女2004夏 7

2021-08-03 06:55:07 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-7-

「元気ですかぁーーー!だぁーーーー!」

 はっ、ってな事やってたら、誰か来るよ。旅行者だろうか?変な感じ、、嫌な予感がするよ。え?って気づくと、無いじゃん、金色の光もなにもない、ただの空間。私は、夢でも見てたの?何て考えてる場合じゃないよ、やっぱ変な人だ。180cmくらいあるかな、でっかい身体した中年のオッサンだ、しかも両手にラジオを持って短パンはいて野球帽をかぶって、変な音をビビビビビイイイイイイイイイイって響かせてるよ。ラジオわざと雑音にしてるんだ。あっ、来た来た、やば、どーしよ、どーしよ。あれ、そうは思うけど全然平気な私を感じるよ。えっへん。なんだろー?実は全然、怖く無いじゃん。どすんと地に足を生やしてる感じだよ、私ってば。

「ぶぉぉぉぉおおおおおおっ!ぞごぉの、お前ェェェェ!オレの名はキップルってんだぁぁっぁぁっ!オレの名前をオマエの身体に刻んでおけェェェ!ぶごぉぉぉぉぉっ!」

 って、やだ、やっぱ変な人じゃん。たち悪そー。ぶん殴っちゃおうか?なんて考えてる、このハイパー・パワーの私。今の私は無敵なのよ!

「ぶひぃぃいぃいぃぃ、ぶぅぅぅううぉおぉおおおおおおお!電波がぁあああああ!ほらぁぁっぁぁ聞こえるかぁぁああああ!お前ェェェェェラジオからぁ電波がぁぁあああああああっ!オレの名はキップルだぁぁぁぁああっ!宇宙に刻まれた無秩序化の法則だぁあぁぁっぁぁっ!エントロピーは拡散し続けてるんだぁぁぁぁっ!お前は、お前は、そぉれぇをぉぉぉ妨害しぃぃぃてぇぇるぅぅぞぉぉぉぉって電波が言ってるぅぅぅぅ、オレはお前を、喰っちまうぅぅうぅぅうううううううううう!ぎゃはぎゃはぎゃはぁ!ぶぇぇぅえぇええええっ!」

 私は、その時、キューティーハニーになったね、さっと、サトエリ・ハニーみたいなポーズを決めて、そのオッサンをビッ!と指差して、考える間もなく、こう言ったよ。

「お黙り!おっさん、ちゃんと生きろよ!ね、ちゃんと真面目に生きな!まっとうに人生を生きるんだよ!お母さんが泣いてるぞ!」

 そしたら、ちょっと参ったのよねー。そのオッサンたら、

「おかぁさーん、ごめんなさーい」

 ってビービー泣き出しちゃってさ、でっかい図体をゴロゴロころがして、鼻水垂らして涎垂らして、

「おかあさーーーーん、オイラ、悪かったぁぁー、ごめんなさーい」

 って、もーう汚いったらありゃしないんで、何だかちょっと可哀想になったんで、そのオッサンの頭をペンペン叩いて、

「ほら、行くよ、あたしは。真面目に生きるんだよ、ね。そしたらお母さんも喜ぶってもんだよ。」

 って言って、あーもう付き合ってらんないから、そのまま亀石の建物を降りて行って、さっきの休憩所を通り抜けて、気づくと横にお婆さんがベンチに座って、ニカッて笑ってバイバイしてるんで、あらま、私、また、うれしくなっちゃって、ニカッて笑って私も、バイバイ。

「バイバ―イ!お婆さん、アリガトウねー!いつか、またねー!」

 なんて言いながら、私は「山の辺の道」に着地、本当に、着地って感じで、戻ったわけ。それから何だかウルトラ少女になったんだか、そんな気がするだけで、たんにストレスが綺麗に抜けたのか、自然のエネルギーを充填し終わってしまったのか、何だか分からないが、さすらいの一人旅、完了って思って、っつうか実に完了しちゃったの。

 本当に。本当よ。たったのこれだけの、さすらい一人旅で、ね。言えるの。もう、私には、キッパリとケータイなんか、いらないし、インターネットなんか関係ない。あんなものは本当に必要に迫られた時に利用すればいいだけ、他に私にとってなんの意味も無いわ。だって私は自然だし、自然である私が産まれたのは、自然に生きるためだよ、ちゃんと生きるためだもん。ちゃんと生きるには、ちゃんと、この手で触って掴めるものを信じて付き合って楽しんで自然の生物の役目を果たせば良いの。さっきの変なオッサンに言った通りだわ。ただ、自然にちゃんと生きればいいのよ。おかあさんに恥じないように、ね。

 歩く。歩く。私は、何だか身も心もシャキっとした気分で歩いたよ。しばらく行って振りかえると、さっきの変なオッサンが私と同じ様に亀石の上で、相変らず両手にラジオを持って(たぶん、また雑音電波を響かせてるんだわ)、黄金じゃなくて、暗黒の光の帯に包まれていたわよ!しかも絶叫してるのが分かるのよー!げ!見ない、見ない、私は、もう、あーいうの気にしない気にしない。

 さらにしばらく歩いて、私は何となく神社でやすんだの、そしたら、また、「ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」とか言って、あのオッサンが通りすぎて行った。なんなの?あれ。あー気にしない。気にしない。もーう絶対に、あのオッサンが見えなくなるまで気配がなくなるまで私は、じっと再び空気と光の音に包まれていたわ。知ってる?光には音があるのよ。さっきの金色の光は音がした。そして今、包まれてる光も音がする。きゃーオカルト。えへへ、もう、いいの、オカルトだろうが何でも、女が1度、心に決めたら強いんだぞー!決心はついたんだ!そーなると、あーなんて幸福な気分。この瞬間がずっと続けば、いや、続かせてみせましょう!

 私はカンカン照りのピカピカ「山の辺の道」を胸を張って大股で再び歩いたよ、えっへん。やっぱ、古墳やら村落のあとが多いね。さっきのだけじゃないんだよ。2~3度、道に迷い、途中、何人かの人と擦れ違い、あっと言う間に喉はカラカラ、汗みずく。と思う間もなく、視界に異様な景色が出現したよ。それはね、立ち並ぶ墓石の群れよ、一面を白い煙がおおっているわ。墓、墓、墓。しかもゴージャスなのが!こんな野っ原みたいなとこにスンゲーゴージャスな墓が無数に集まってるよ。衾田陵ってーのかな?そんで、そーいう墓の群れの中を「山の辺の道」は横切って行って出口のところに来ると、今度は無数の石仏が立ち並んでいたよ。

 まー、その時は、私は、もう何もかも済んだ感じでね、もう帰ろーって思ってたんだけど、せっかくだから、この道を全部、歩いてやろってさ、たったか元気に闊歩ってんだね、闊歩して出口から出るとさ、パン屋さんが、あったの。そーいえば、モーニング食べていらい、あったしさーイチゴジュースしか飲んでないじゃん!げげげげ、このパワーはちきれんばかりの完全体美少女に、そりゃーないじゃないですかぁ!

 ってな訳で、玉子パン5個とアンパン7個を買って、ベンチで、むしゃむしゃ大口開けて牛乳で流し込んで、ふぅ、少しは腹のたしになりましたかしら。そんなことしてたら店のオバさんが、暑いやろ、疲れたやろ、と店の中で休みなさいと、ううっ親切に涙ちょちょぎれっ!じゃー牛乳もう1本!もう1本!さらにーアンパンあと3個って、まあ、そんなもんで許したろって、

「オバさん、ここらヘンに駅ないですか?」

 って聞くと、オバさん、犬と遊んでて、またまたニカッね。またまた私は、うれしくなっちゃって、さらにド元気が出てきて、近くに柳本という駅があるってのを確認すると、御礼を言って猛ダッシュ!





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さすらい少女2004夏 6

2021-08-02 06:09:50 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-6-


 てこてこ、てこてこ、歩き始めると、ふぅわぁ~とにかく暑い!暑すぎる!缶ジュースはないかぁー!もぉ~すぐに汗ダクダクぅ~。と、まてよ、この看板、あらま、「山の辺の道」ってちゃんと書いてあるよ、何だ、やっぱ、これなのか、想像より遥かにちっちゃい道じゃん、これじゃ観光客来ないぞー!いっくら宣伝しても来ないわよーーーー!でも、この道のせいじゃないわよね、観光で儲けようとするからよねー、やーね。

 って私の知ったこっちゃないわいな。でも、こんだけ、あっちこっちで看板たてて宣伝してるんだから、もっと広く歩きやすい道路なのかと思ってたけど、こりゃ変な道だ。神の道ってやつだ。下手にいじるとバチが当たるって?そーいうことなのかなぁ。って、そんでもタッタカ歩いて行くにつれて、整備のあとが伺えるわねぇ。見うけられましたわ。あはは。チュートハンパァーーーーーーー!!

 もーお!石を埋め込んだり、コンクリートだったり、土、砂利、だよ。でも、しばらく歩いてて気づいたんだけど、ここってさ、なんちゅーか超常現象地帯?何か感じるのよね。なんだろー?殆ど人なんて通ってないし、この変な道に何かの力が宿ってんだか何だか、シュールっつうか、こりゃ人間がフツーに生きてて感じるものと絶対に違うよ。何だか私は白く光った異世界へ続く道をゼリーの中を掻き分けて歩いてるような気分で、白い光の粉みたいなものが私の身体の中に入ってくるみたいで、いや、確かに入ってくるんだよ、私、頭へんになったけ?相変らず太陽は頭の上でカンカンに照ってて、ジリジリすんだけど、私自身はゼリー状の空気の中を水かきして進んでいるような感じで懐かしいような、いんや、太古に人間の持ってたパワーが私の身体の中に降り注いで来るみたいで、なんとも、チョー非現実的。

 そんなこんなで何だか、ちっともこの道を進んで無いような気がしてたんだけど、なんだ、ずいぶん歩いてきちゃったみたいだな、って思ってひょいって見上げると、おおー!峠のような古墳があって、その頂上らしき場所に休憩所が見えるよ。ごくり。ええーい!こんなゼリーの太古の神様の空気だか何だか得体のしれない変な感じからチョーダッシュだ!

 ってズンズンズンって、古墳を一気に駆けあがると、着いたよ休憩所。ちゃんとした、お店だよ。ガラガラガラってガラス戸開けて入ってみると、うぅぅぅ目の前に『イチゴジュース、100円』ってのがあるよ。あっと、手が出た、勝手に出たよ。ゴクゴクゴク、ごっくん。マズーーーーーー!!って、えへへ、これ、喉がチョー乾いてない時に飲んだら、さぞかーし!まずかろうってことね。だからチョー乾いてたから、本当は、ウメぇーーーーーーー!!なのよ!そんなジュースでした、一気に飲み終わって、ガラス棚の上に100円をちゃんと置くと、奥の襖が開いて、お婆ちゃんが出てきて、金歯を覗かせて、あららら、又、ニカッだ!ニカッ攻撃だ!物凄く親切そうにニカッて笑うもんだから、もーう私は凝りもせずにチョーうれしくなっちゃってお婆さんに抱きつきたくなっちゃったよ。でへへ。

「おいで、こっちに眺めのいい建物があるよ」

 って、またまた金歯をニカッてさせてお婆さんが言うんで、

「はい!行きます!行きます!連れてってください!」

 って大声で言っちゃったぁ。私は何て綺麗な目をしたお婆ちゃんだろうって感動しながら、その眺めのいい建物の中にお婆ちゃんは私をニコニコ優しく笑いながら連れてってくれた。

「ここはねぇ、古墳の天辺で神様の家なんだよ。ほぉら形が亀みたい。亀さま、神様、わはははははー」

 だってさ、私、お婆さんが、あんまり可愛く笑うもんで、そのくだらないダジャレに付き合って良いものかなんて悩む隙もなく、

「えへへへへへへーーーーーー!!あははははははーーーー!」って大笑いしちゃったよ。なんだ、そりゃ?

 ここで休んでいくと御利益がありますよとか何とか言って、お婆さんは、ゆっくり帰って行って私が1人残されたよ。へぇ~、よくよく見ると奇怪奇怪キキカイカイかもねー。こうして石のようなものに座ってる私だけど、この建物自体が亀だ。亀石ってやつか?何だか日本オカルト全集に出てたようなやつだ。本当にあったよ。

 私は、その亀石の建物の天辺に、今、こうして座ってるわけだけどさ、いいのかなぁー。こーいうのって巫女とか神降ろしとか何か、そーいうシャーマンだとか特殊な世界の人の座るとこなんじゃないかねぇ。何てチラリと思ったけど、喉は潤い、空はピカピカに晴れてて、気分スッキリで、見下ろすと、ほぉぉぉ~ぉなんちゅー眺めの良さかねぇ、絶景かなぁ、これが大和の景色ってやつだー!

 あーーーいーーい気持ちーって両腕を思いっきり広げて空気を吸い込むと、私ね、ね、信じてね、フワって浮かんだの。そしてね、そして、え?っと思って周りを見ると金色の光りに包まれてんのよ、そんでそんで、何?って上を見ると、空の物凄いチョー上空から金色の筒みたいな光の束が私に向かって降りていて、よーするに私は、その光の中にいるの。それからバッバッってフラッシュして視界が真っ白になってね、私、私、身体がクルクル回ってるような感覚になって、一瞬シュって真っ暗になったかと思うと、何事もなかったように、さっきの亀石の天辺で、これまた呑気な顔をして鎮座ましましてるんだなぁー私。

 今のは何だったんだろう?幻覚?つ・ついに旅の疲れとテクノストレスで、あたしゃおかしくなっちゃったのーーー?って言うか、全然、逆だ、こりゃ、何だか生まれ変わったような、私の身体の肉と骨が全部、細胞がぜーんぶ、強力にパワーアップされて本当に再生っつうか、ハイパー・ブースト装着完了!エネルギー完全充填!ダイヤモンドの神経を持つ女!って感じ?この漲る元気は何?

 うがーーーー!これがさすらいの一人旅の力なのー?キャプテン、凄すぎない?こりゃ私の肉と骨の芯から神経細胞隅々まで本物の生命力で満ち溢れ、自然児として生まれ変わったっていうか、野生児って、げ、い・いやだ、そこまで行くと嫌だ。私は、これでも都会の洗練された乙女でございますのよ、おほほほ。なんて言っても、このミナギルるパワーは否定できないのだーーー!よっしゃーーー!私は、すっくと立ちあがり、黄金の光の帯の中でピカピカ青空の金色の光発射点に向かって、いっちにぃさん、

「だぁっぁぁっぁぁあーーーーー!」

 って猪木になったのでした。





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さすらい少女2004夏 5

2021-08-01 06:16:39 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-5-


 歩く、歩く。眩しい日光に照らされた広い道路と緑の木々が、すんごくシャープな感じで現実じゃないみたいだよ。人気もなんだか少ないし、私はアリス、不思議の夏の国に迷い込んでしまいました。何故って?ケータイも掲示板も無くなったからでした。みんなと違うから。みんなと違うとそこは不思議な世界。そして私は不思議な世界の住人ってとこね。

 何てアホな事考えて歩いてると、妙に外人が多いんだ。なるほど、ここは観光地、奈良だもんな。ふぅぅぅ~さすがに汗だくで、公園のベンチに座って一休みだ。うわぉー、セミの声が凄まじいー!耳がつんざけそーだ!おー!そこらじゅうに!木、芝、光、鹿、白い砂道、夏があふれ返ってるじゃん!げげげげげげー!1本の木に何十匹もセミが群がってるよ、ってキモいっていうか驚いた。全部、丸ごと夏で、みんな生きてるんだねぇ。今まで、こんな事って感じたっけ?うっし!行くぞ!

 って私は「となりのトトロ」のノリになって、♪歩こーう歩こーうワタシはー元気ぃ~♪なんて口づさんで足を高く上げながら本社に向かって、どんどん歩いてったら、またまた、どんどん汗がダクダクしてきて、さすがに足が痛くなってきたよ。あー、調子に乗り過ぎだってぇ、ってあんまり元気に足上げて歩くのは止め。フツーにね、フツーに歩けばいいんだよって、フツーに歩いてくと、道の両側には灯篭が立ち並んでいて、よく見ると、寄付者の名前が書かれた白い紙が貼ってあるのを発見!ほら、フツーに歩いてると、こーいう発見がある。あんまり飛ばしてると見逃しちゃうぞ!人生、フツーに歩こうよ、なーんちゃって!でも、たまには飛ばさなきゃねぇ、じゃなきゃ私は、こんなことしてまへんて。

 何だか1人で騒がしく、やっと本社というトコに辿り着くと、おお?そこの庭で、鳥打帽をかむったアルバイトらしき人たちが何かやってるぞ?なに?なに?なんか芸やるの?と思って見てたんだけど、何かやってんだけどね、それが何だか、何の意味があるんだか、私にゃ、さっぱり分かりませ~んので、いつまで見てても延々と妙な動きをしてるんで、暑いし、アホらしくなって飽きてきたんで炎天下を再び歩き始めた私なのでした。取り合えず、駅に向かうかぁ~って思って、ひょいって横の川を見ると、ふんぎゃー!蛇だ!蛇が泳いでるよ~!蛇も暑いか。

 駅に着いたは良いけども、どこへいこうか決めて無い、ので、テキトーに切符を買って電車に乗って、テキトーに降りると、天理というとこだよ。ひょっとして私、ぜんぜん頭使ってない?いーじゃん、ねぇ、キャプテン。身体使ってんだよ、心と。

 さて私は、どうしようか?と駅の周りにある看板に地図が書いてあって「山の辺の道」ってのが詳しく道順と由来など、宣伝してあるんで、じゃぁその「山の辺の道」ってとこに行きますか、うんうんと、別に今、自由だしどこへ行こうと私の勝手。決めるのは私!この私ただ一人!な訳で、いい加減に決めたんだけれども、ウキウキうれしくなって、とっても自由で開放的な快感に満たされてダッシュ!後ろからギラギラ太陽が私を押してる感じがするよぅ。最初のダッシュは良かったけど、歩けど歩けど「山の辺の道」ってのに行きつかないのよねー!おまけにひたすら御日様を頭に受けるかたちで歩いてたもんだから、日射病かなんかになるんじゃないかとクラっとして頭を触って見ると、げげげげげーーー!あちぃあちぃ。やば、帽子売ってないかなって見まわしましたけど、そんなお店ありませーん!でも自分の身体をよく感じてみると全然、痛いとこも苦しいとこもないじゃん、足だってもう痛くないし。じゃ大丈夫じゃんって思って、どっかの大学らしき前を抜けてく自転車のオバちゃんに、

「山の辺の道って!どこですかぁー!」

 って両手で拡声機作って聞いてみると、またオバちゃんのニカッだ!

「この道よー!」

 って何だ私、あってんじゃん。

「有難う御座いましたぁー!」ニカッ

 何回目のニカッだろ?どんどん心が暖まって元気に楽しくなっていく気がするの。ニカッパワーあなどれぬ。

 そいで、そのままGOGO進んで行くと、何てことない、すぐに「山の辺の道」らしき入り口に辿りついちった。でもカンカン照りは相変らずで、さすがの私も喉が乾いちゃって、そこの神社に座って一休みだ。どっかにジュースの販売機は無いか?キョロキョロ、キョロキョロ、してると、ヒュゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥウ~って通り風、おおーーーー!気持ちいいーーー!神社の石段には葉の影がゆらゆらしてるよ。遠くを見ると人々の白い帽子が波のようにゆれてるよ。夏の情緒だねー。日本の風情だねー。心が和むねー。

 ってババア臭いか?全然、これ自然だよ。自然エネルギー充填ってやつに違いないよ。人間って自然だもんね。思えば機械って、どうよ。エネルギー吸いとってんじゃないの?人間の。ケータイ猛スピードで打ってキーボード猛スピードで打って何やってんだろ?エネルギー浪費してやしませんかぁ?そんで神経すり減らしてたら悪循環ってやつじゃないかね。どこで自然の生き物の人間は、自然のエネルギーを補給すんのよ。変だなー、私も哲学者になったもんだ。自分が偉くなった気がするから、これまたズーズーしい。どうやらケータイやパソコンから離れると人間ってのは、けっこう元気になるみたいだ、そんだけでもメッケもんだ。神経が楽になって血の循環が良くなるのかな、女は血の道ってね。大事なことのような気がするような、しないような。考えるな水になれ!って訳で出発といきますか。





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さすらい少女2004夏 4

2021-07-31 07:34:37 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-4-


 起きると、あたたたたたぁ、身体中が痛いんだ。でも、ぐっすり寝ちゃったよ。えへへ、メール入ってるかなぁ、掲示板に書き込みあるかなぁ、なぁんて気にしないでバタンキュー(死語!)って夢も見ないでグッスリ眠ったのって、いったい何年ぶりだろう?

 おもわばウチラの世代ってやっぱ重症だわ。思い出せないくらい子供の頃に何にも気にしないでオ気楽に眠った記憶があることはある。でも物心ついてからは、いつだってメールや書き込み気にしてて、出会い系に悪戯ゴゴロで書き込んだエッチな内容に誰かがどう反応してくるかケラケラ笑って、それでいてかなり神経ダメージ感じてるし、いつも誰かが自分にアクセスしてないと怖いから自分からアクセスして、またアクセスされて、どんどんどんどん、それが広がって行くのがクラスの英雄みたいな感じになって、そうじゃないと、イライラして相手が自分のことをバカにしてんじゃないかとか勝手な憶測して、メールの内容や掲示板の書き込み見て、微妙なニュアンスでレスしたり返信したりして、探り合いの中でこそこそ生きてて息苦しくて頭に黒い綿がつまったようになるのに止められなくて知ってる人だったら、じかに正直に聞けばよいのに、又、ちょっと乱暴な言葉かまして探って思い込みを膨らませて、結局、実は全然、違ってたりして、あっけに取られたり、って、あー何やってんだ!子供の頃はケータイなんて無かったし、ましてインターネットで同じクラスの子とホームページで競い合ったり、書き込みし合って相手の本心をウジウジウジウジ気にしたりなんて、あー疲れるわぁ。

 いつから世の中はこんなに疲れるようになったんかしら?実際、人間、楽しく生きてゆくのに、こんなの必要なの?いらないんじゃない?って、げぇーそんな事、考えたことも無かったよ。進歩なのか、旅で浮かれてるだけ?あーもう、又、そんな事考えてるだけで、気分が沈んでくるじゃん!止め止め!今日はどこに行くか、それを私自身が決めて実行するのが現在最大問題じゃんか!ダッと布団から跳ね起き!!

 おお!身体は痛いが何だか私のお肉が元気一杯だぞ。何だか、さすらい2日目にして、もう神経が2~3倍太くなった気がするわ。うっしゃー!今日は、さあてどこ行こう?うわ!自由!うわ!開放感!メールなんて掲示板なんて・・・どうでも・・・って、まだちょっと気になるわ。そうよね、たっぷり、その中で生きてきたんだし、ちょっとケータイ捨てて家出して名古屋いって奈良に来て、はい、もう気にならない、もう、そんなのいりませんわ、うふふふって訳にいくか!人間再生、1日2日にしてならず!あーでもお母さんやお父さん心配してるかなぁ、って、プルップルッ!また甘えが顔出したよ、今は考えないのだーー!絶対に強くなってやるのよ!

 何だか1人で朝から興奮しちゃって部屋の時計見ると、げぇ~まだ朝早いじゃん。でも身体がバタバタさすらいを欲するんでハートマークのバック担いで、いざいざゆかん!って勢いあまって部屋から廊下をフロントにダッシュしてゆくと、昨日のここの旅館のお爺さんが朝も早よから1人で椅子に下着のまんま座り込んでTVをじっと見ているよ。

 私はちょっと面食らってストップしたせいでつんのめりそうになっちったよ、おいおい嫁入り前の乙女の前で下着でTVか!って、うぅ、感じるわ、感じるわ、これが生活ってものだわ。そうよね、私は何だか元気バリバリにテンション・ブースターかかっちゃってるけど、回りの人は、皆、日常の中で生活してるんだよ。やべ、あったし、バカに見えるよね。ちょっと頭を引き締めておしとやかな旅の学生さんにならなくっちゃ。何だか変な娘だ、こりゃきっと素行不良の家出娘に違いないなんて思われて警察に突き出されたら、せっかくのさすらい一人旅が台無しだっちゅーの!大人しく気品を持って、普通の可愛い女の子が夏休みにお爺さんの家に遊びに行く途中なんだぞ、なぁんて感じで振る舞わなきゃぁいけません。しずしずと歩いて、かすかな可愛い微笑を浮かべて、

「おっはようございまぁーーーーっす!」って大声だしちったよ、ひー。

 自分で自分のバカでかい声にビビってると、お爺さん、

「おはよう」って言って、例の必殺のニカッだ。このお爺さん、なんて優しい顔をして笑うんだろう。参った参った。私も、つい大口開けてニカッだ!うれしー!お爺さんも、またニカッと笑い返してきたよ!こんな気持ち、昨日から何度目だ?とにかく、これだけでも旅に出てよかったと思うよ。えへへへー!とか思いながら、ふと横の待ち合わせソファーの方をチラッと見ると昨日のイケメンの男の子がいて、白い帽子を被って出かける支度をしてるの。あらあら、きゅんって胸が鳴ったわ。く・苦しい、恋ね恋だわ!なんて、よしなさい!昨日、反省したばっかじゃん、うぬ、まだまだ修行が足りないのぅ、そっち方面じゃ。何たって女子高だもんなー私。出会い無いもんね。あはは、あはは、見てろよー!そのうち必ず、チョーイイ男をGETしてやるんだ、ケータイ・メールなんかに惑わされず、ホームページに我を忘れて掲示板を気にしまくるようなことの絶対に無い!逞しい神経の太い優しいタフでワイルドな奴をGETしてやるんだ!ねぇキャプテン!って、おいおい私の理想の男は、キャプテンかい!ありゃりゃわたしゃ、人生観変わってきちゃったのかしらねぇ。

 ま、そんなこんなで、「えんらく旅館」にバイバイして、お爺さんのニカッに見送られ私もニカッと手を振って、おーおーお腹がキュゥゥと鳴るんで見回すと旅館の隣に喫茶店があってモーニングやってんじゃん、また旅館の方に引き返して、お爺さんと出くわすのもバツが悪いので、低姿勢でこそこそと(何やってんだ!)戻って、たらふくモーニングを食べてやった。カツ・サンド・セットを3つにチョコパフェだ。げ、またカツだ。う、ひょっとしてカツってエネルギーいっぱい?って食べたは、いいけど、どこいこう?

 とりあえず、喫茶店をお爺さんに出くわさないように匍匐前進(なわけないよ、比喩ってやつだよ)で抜け出して、春日大社ってトコに向かったんだけど、うげー、暑いわ暑いわ、いったい今年の夏は世界を溶かす気なの?あはは、でも、暑すぎて笑いが出てくるのは何故?何故?
 





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