サラリーマン活力再生

対米追従の政治家・官邸・マスコミ等と闘う「民族派」「国益派」を応援し、「安心して暮らせる社会」を目指すブログ

250055 TPP内閣府試算の罠~菅内閣がひた隠す"不都合な真実"②

2011年04月23日 | アメリカ→官邸・電通→マスコミの日本支配
250055 TPP内閣府試算の罠~菅内閣がひた隠す"不都合な真実"②
 
猛獣王S HP ( 不惑 営業 ) 11/04/22 PM11 【印刷用へ
250054の続きです。
高増明:TPP内閣府試算の罠 ── 菅内閣がひた隠す"不都合な真実"』(THE JOURNAL)リンクより転載します。
----------------------------------------------------------------
●政府試算に非関税分野は含まれていない

──TPPでは農業以外にもサービス産業などの非関税分野も含まれていますが、これらも予測できますか?

GTAPモデルは、サービス産業の分析には適していません。サービス産業は関税が問題なのではなく、様々な規制、あるいは目に見えない障壁が問題だからです。TPPに日本が参加することによって、アメリカのGDPはほとんど増えないと思いますし、アメリカの狙いが、金融分野などにあることは明らかだと思います。

しかし、金融については、リーマンショックでも明らかになったように、規制緩和が良い結果をもたらすとは限りません。ヘッジファンドは、利回りの高い住宅ローンを証券化したものを買って、さらにそれを担保に債券を発行して資金を調達し、さらに証券を買うということを繰り返して、手持ちの資金の何十倍もの資金を運用しました。その結果、利益も何十倍になる可能性があります。しかし、それが損失となったときには、それも何十倍になるということです。このような影の金融機関やその取引を規制できなかったのが、リーマンショックの原因でした。

日本や中国などアジアの国が、リーマンショックの影響を直接受けなかったのは、規制や障壁が厳しかったからです。それが、TPPへの参加によって、なしくずしになる可能性は高いと思います。国全体が投資銀行化し、一時は高い経済成長を達成したアイスランドやアイルランドがどうなったのかを忘れてはいけないと思います。所得格差の拡大という面についても問題です。

──内閣、大手メディア、財界らが一体となった「TPP推進」の動きについて経済学者として感じることは?

まず「平成の開国」というキャッチフレーズを聞いて、TPP参加が危ういものだと思わない人は、どうかしていると思います。いったい誰が考えたのですか? 「開国」が関税ゼロという意味なら、どこの国にとっても、そう簡単に認められるものではありません。そもそもFTAが拡大してきたのは、包括的な交渉であるWTOが合意できなかったからです。もし、どこの国でも、どの産業についても、関税引き下げが望ましいのだったらWTOもすぐ合意できたでしょう。

関税の引き下げがいいことだというのも一般には間違っています。競争や自由貿易が経済を望ましい状態に導くというのは、様々な前提が満たされているときだけで、現実にはそれは満たされていないと考えるべきです。収穫逓増、不完全競争、情報の不完全性、公共財、外部性など「市場の失敗」と呼ばれる状況は現実に普通に存在しています。また自由貿易は産業構造の変化を促進させますが、その結果、生じる失業は、失業する人、ひとりひとりにとっては、そんなに簡単な問題ではありません。

日本の自動車産業だって、戦後の長い間、高率の関税で守られてきました。もし1950年代、60年代に自動車の関税を引き下げたら日本の自動車産業は壊滅していたでしょう。実際、当時の経済学者の一部や日銀総裁は、自動車産業不用論を唱えましたが、通産省(現在の経済産業省)が反対して自動車産業を育成したのです。経済産業省は、その時のことを忘れたのでしょうか?競争でいいのなら、経済産業省なんていらないですよね。

一般に、ある経済政策を行うときには、それによって利益を得る人と不利益を被る人がいます。合計して利益になるとしても、不利益を被る人をどのように救済するのかが問題で、その議論なしに経済政策を決めることは考えられません。とくに被害が大きいときは問題で、TPP参加を決めて、被害については後で考えましょうといったやり方は考えられません。最近になって政府も例外となる品目もあるというようなことを言っているらしいですが、例外としてどの商品を設定するのかを明らかにしてから交渉参加を決めるべきです。

●東日本大震災でTPP参加は実質的に不可能

──目の前の事実を正しく認識し、それを科学的に分析する能力を持っていなければならない経済学者や政治家が、なぜTPPのような極端な政策に賛同してしまうのでしょうか?

経済学者のなかには、農業のような生産性の低い分野に投入されている資本や労働をより生産性の高い分野に振り向けるべきだという人もいます。竹中平蔵さんも、構造改革は生産性の低い産業で働いている人が高い産業へ移れるチャンスですと言っていました。しかし、本当にそんなことが可能だと思っているのでしょうか? 昨日まで農業をしていた人が、今日からIT産業で働けることはありえません。最近の経済学者のなかには、現実と経済モデルの違いがわからない人がたくさんいます。TPPのような極端なものに飛びつく経済学者は、そういう人か悪い奴のどちらかだと思います。マスメディアの一部もそういう乱暴な議論が好きですよね。

ようするに、政策を行って生じる様々な問題をうまく全体としてコントロールするということができなくなって、その結果、右か左かという極端な選択を突きつけるようになってきています。しかし、農業を保護しなければならないことはどの国・地域にとっても明らかで、またその一方で、FTAを進める必要があることも明らかです。政府は、バランスのとれた政策を提案し、メディアも全体としてのバランスを検証しなければなりません。それができなくなっているということです。それは、おそらく日本という国、政府、国民、メディアのすべてが追い詰められているなかで、生じてきていることでしょう。

貿易政策をナショナリズムと結びつけるのもやめてもらいたいと思います。貿易は個別の企業や個人が行うもので、どちらの政治体制が好きだから行うものではありませんし、政府が決めるものでもありません。一部のメディアが、東アジア共同体は中国が入るからだめで、TPPはアメリカ主導だからいいといったようなことを言っていますが、とんでもない議論です。それもTPPの議論をゆがめているひとつの要因です。

領土問題も同じで、強硬な主張が利益になることは一般にありえません。相手国が自分の領土だと主張している地域を勝手に開発することはむずかしいでしょうし、もし行ったとしてもそれによって得られる利益はごく小さいものでしょう。一方、友好的に貿易や相互投資を行うことの利益の方がはるかに大きいでしょう。私は「国益」とか言う人を基本的に信用していません。あるのは一人ひとりの利益だけです。ただし、それは利己的になれということではなく、他人の利益や痛みも考慮して、全体としてバランスのとれた社会や経済をつくっていくべきだということです。

 ~後略~
----------------------------------------------------------------