神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

奈良・菅原天満宮。

2013年08月19日 | ◆奈良県
学徳成就・文筆向上


菅原天満宮

(すがわらてんまんぐう)
奈良市菅原町518

通 称
菅原神社



菅公1100年を記念して新調された玉垣が目にまぶしい。


〔御祭神〕
天穂日命
(あめのほひのみこと)
野見宿祢命
(のみのすくねのみこと)
菅原道真公
(すがわらのみちざね)



 垂仁帝の頃、当麻(現在の奈良県葛城市當麻)の地に当麻蹴速というとても強力の勇士がいました。「天下にワシほど強いものはいない。願わくば、生死を懸けてもよいので強き者と手合わせしてみたいものだ」と当麻蹴速がうそぶいている、ということを聞いた垂仁帝は臣下に「当麻蹴速は天下の勇士だと聞いている。誰かこれに匹敵する剛の者はおらぬのか」と尋ねられます。それを聞いた臣下の一人が「出雲の国に野見宿禰という者がおります。たいそう剛の者と聞き及んでおりますので、これを招いて手合わせさせればいかがでしょう」と答えました。垂仁帝は大いに興味を持ち、ただちに出雲より野見宿禰を呼び寄せ、捔力(すまひ)で戦わせました。「捔力」とは現在の相撲の起源とされていますが、足技も含めた荒々しく激しいものでした。二人の対戦は蹴り技の応酬の過酷なものとなり、最後は野見宿禰当麻蹴速の脇骨を蹴り折って絶命させて勝利を収めることとなります。この勝利に対する恩賞として野見宿禰は当麻の地を賜り、大王の傍に仕えるようになったと『日本書紀』は伝えています。この野見宿禰こそがここ菅原天満宮の御祭神であり、平安時代に一時代を築いた悲運の政治家・菅原道真公を輩出した菅原氏の先祖だといわれています。






神門と島津古梅。江戸初期の元和元年に島原藩主自ら手植えした梅だと伝えられています。




 「菅原」という地名は720(養老4)年に完成した『日本書紀』巻六の垂仁天皇の項、巻第十三の允恭天皇の項に「菅原伏見陵」に葬られたという記述があり、巻第廿二の推古天皇の項にも「菅原池」という記述があることから平城京遷都より以前から存在していたと考えられ、しかも大王家との繋がりも深い由緒ある土地だと考えられます。ところで、殉死・殉葬の風習は世界各地でも見られるものですが、日本でも卑弥呼が亡くなって葬られる際に100人近くのが殉葬されたという記述が残されていることから、古くからこの風習があったと考えられます。その風習を止めさせたのが野見宿禰だといわれており、垂仁天皇の皇后である日葉酢媛命が崩御された時に殉死を取り止めさせ、代わりに埴輪を埋めるよう進言した功績により「土師臣」の姓を賜ったといわれています。この功によるものか、それ以前の当麻蹴速との勝負に勝った功によるものかは分かりませんが、野見宿禰および土師一族は大王家と縁の深い菅原の地を賜り、ここを本拠地として勢力を伸ばしていきました。さらには、最近の発掘調査によって埴輪を焼いた窯跡が発見されるなど、「菅原」の地が窯業に適した土地でもあったことが想像できます。






神輿庫と筆塚。


本殿の前には、天満宮でお馴染みの狛牛が鎮座しています。




 菅原天満宮の創建時期は定かではありません。しかしながら、720(延長5)年に纏められた延喜式神名帳に小社として列せられていることから、祖神とされている天穂日命、そして中興の祖ともいうべき野見宿禰を祀る祠が1300年以上も前からこの地にあったことは確かです。垂仁天皇より「土師臣」の姓を賜り、大王家の葬送儀礼に携わってきた土師氏菅原道真公の曽祖父である土師古人公の代の781(天応元)年、地名にちなんで「菅原」への改姓を願い出て勅許を得ています。そこから菅原清公公、菅原是善公を経て悲運の大政治家・菅原道真公を輩出しています。菅原道真公を祀る神社としては太宰府天満宮北野天満宮が双璧ですが、連綿と続く由緒正しき菅原家の本拠地である菅原天満宮も、忘れてはならない菅家ゆかりの神社のひとつです。なお、菅原道真公の誕生した土地だと伝えられている場所はいくつかありますが、ここ菅原天満宮もその一つで、社地の東100mほどのところには産湯に使う水を汲んだといわれている池があります。池の中の島には、この由緒を刻んだ石碑が建てられています。






境内には菅家所縁の渡会春彦翁を祀る春彦神社をはじめ、稲荷神社、市杵島神社が鎮座しています。



アクセス
・近畿日本鉄道橿原線「尼ヶ辻駅」下車、北へ徒歩10分
・近畿日本鉄道奈良線「大和西大寺駅」下車、南へ徒歩15分
菅原天満宮地図 Copyright(C) 2013 NTT Resonant Inc. All Rights Reserved.

拝観料
・境内無料 ※2月から3月にかけて行われる「盆梅展」の入場料は500円

拝観時間
・常時開放

公式サイト





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