高台寺、和の彩り
京都市東山区高台寺下川原町526
和の彩り
庫裏・方丈の北にある茶室。
庭を見たくなった時、自然と京都へ、そして高台寺へと足が向くことがあります。東山の尾根を背に歩く「ねねの道」と名付けられた石畳の道は、おのずと悠揚たる気分にさせてくれる「いのちの道」でもあります。400年前、正しくは高台寿聖禅寺と呼ばれる高台寺で亡き夫・豊臣秀吉公の菩提を弔いながら静かに余生を送られていたねね様が、この道を通り、東山からの同じ眺めを愉しまれていたということに思いを馳せると、とても不思議な気持ちになります。
開山堂の西にある偃月池。
「ねねの道」から高台寺の境内へと導いてくれるのは、石組みの美しい台所坂。楓や椿で彩られた坂を登りきると左手に庫裡が見えます。庫裡の周囲にもさりげなく、しかしながらしっかりと手入れの行き届いた庭園が息づいており、参拝客をあたたかく迎えてくれます。庫裡脇を通り抜けると湖月庵、そして桃山時代の豪商灰屋紹益とその妻で元島原の名妓・2代目吉野太夫が好んだといわれる遺芳庵といった茶室が並び、その奥には小掘遠州の影響が色濃く残る庭園が広がります。手前には偃月池が静かに水を湛え、開山堂へと伸びる楼船廊の中ほどには美しい月を眺めるために設けられた観月台があります。檜皮葺で三方にむけて唐破風屋根を設けた観月台は国指定の重要文化財になっています。
臥龍池より開山堂を望む。
開山堂には高台寺の開山・三江紹益禅師が祀られています。創建当時から今に至るまで京都の町並みを見守り続ける貴重な建造物として、国の重要文化財に指定されている開山堂の中央の彩色天井には北政所の御所車の天井が用いられ、前方にある格子屋根には太閤豊臣秀吉公が使った御船の天井が使われています。また、左右の壇上には北政所の兄・木下家定公とその妻・雲照院の像が安置されています。
瓦葺壮観なる臥龍廊。
開山堂からあたかも龍の背中のように高台へと伸びる臥龍廊。一枚一枚の瓦が龍の鱗の如く息づき、今に蠢動しそうな迫力を感じます。その臥龍廊が結ぶ先にあるのが霊屋(おたまや)です。霊屋もまた、創建当時から残る建造物で、表門と建物自体が国の重要文化財に指定されています。
北政所の亡骸を葬った霊屋(おたまや)。
北政所の亡夫への追慕の念を表すように、阿弥陀ヶ峰に祀られた豊臣秀吉公の廟堂に似せて造られたという霊屋の中央には隨求菩薩像が、そして右側には豊臣秀吉公、左側には北政所の坐像が安置されています。坐像の背景の絵画は狩野永徳の筆によるものと伝えられ、須弥壇や厨子には高台寺蒔絵と称される華麗な蒔絵が施されるなど、安土桃山時代の工芸美術の美しさを堪能することができます。三江紹益和尚が高台寺に入られたのを見届けるように危篤に陥った北政所は、手当ての甲斐なくその2ヵ月後に76年の生涯を閉じられました。その亡骸を収めた棺は甥たちに担がれてこの霊屋まで運ばれ、地下深くに手厚く葬られたそうです。
御霊屋の南東にある傘亭。
霊屋の南東には、北政所が伏見城より移設させたといわれる茅葺きの茶室が2棟並んでいます。北側にある茶室は正式名称を安閑窟といい、放射状に組まれた竹垂木の形状が傘のように見えることから傘亭と呼ばれています。
伏見城から移設した際、小掘遠州によって付設されたといわれる土間廊下で傘亭と繋がっているのが、もう一つの茶室・時雨亭です。「時雨亭」という名前は、傘亭との取り合わせで新しく付けられた名前だといわれています。茶室としては珍しい2階建の茅葺き入母屋造りの建物となっていて、1階を調理スペースに、2階を茶室に使用していたそうです。千利休の好みの建物と伝えられていますが、千利休は1594(文禄3)年の伏見城の築城よりも前の1590(天正18)年に豊臣秀吉公の逆鱗に触れて自害していますので、千利休自らが作ったのではなく、その意匠を汲んだ者の手によって造られたと考えられています。
傘亭と隣接する時雨亭。どちらも重要文化財に指定されています。
アクセス
・JR「京都駅」より京都市バス206・207系統に乗車。「東山安井」にて下車、徒歩10分
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拝観料
・大人600円、中高生250円、小学生以下無料
(隣の圓徳院と掌美術館との共通拝観券は900円)
拝観時間
・9時~17時(17時30分閉門)
※春の特別夜間拝観
2008(平成20)年3月14日(金)~5月6日(火)
日没後ライトアップ~21時30分まで受付(22時閉門)
公式サイト
高台寺はよく行きますが、なかなか見るところが多いですね。機会を見ていってみましょう。
最近なかなか更新できずすみません…
高台寺の中で一番お気に入りなのが、雲居庵の前を流れる曲水の奏でる水音です。
この音も計算しつくされたものだと思うと、日本庭園の奥の深さを痛感します。
ぜひ、ねねの高台寺界隈を訪れて見てください!