神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

京都・南禅寺。

2008年12月16日 | ◇京都府 -洛東


瑞龍山 太平興国南禅禅寺

(ずいりゅうさん たいへいこうこくなんぜんぜんじ)
京都市左京区南禅寺福地町86





〔宗派〕
臨済宗南禅寺派 大本山

〔御本尊〕
釈迦如来像
(しゃかにょらいぞう)



 錦秋の季節、最寄駅である京都市営地下鉄「蹴上駅」の地下深いホームから地上の陽の光のもとに出ると、赤や黄色に彩られた東山の峯々が目に飛び込んできます。その美景を眺めながら北へ向かうと、傾斜が急なために流れを遡ることが出来ない船舶を台車に載せて運搬したというインクラインのレールが走るレンガ造りのアーチに出会います。その先に、禅寺の最高格式を誇る古刹・南禅寺がそびえ立っています。



 
藤堂高虎公の寄進によって建てられた三門(左)と、三門から眺めた美しい紅葉(右)。



 もともと東山山麓のこの地には、大津にある三井寺の別院・最勝光院が建てられていましたが、その寺勢が衰えたのち、1264(文永元)年には美観を愛した後嵯峨天皇が開き、息子・亀山法皇が愛した離宮・禅林寺殿が営まれました。伝説によると、夜な夜な出没する妖怪変化たちに悩まされていた亀山法皇は、西大寺にいた叡尊上人に悪霊祓いを命じましたが効果がなく、困り果てて東福寺無関普門国師を招きました。国師が弟子たちとともに禅林寺殿に入って坐禅や掃除、勤行など普段通りの修行生活を行った途端、たちまち妖かしの者たちは雲散霧消したため、その法力に感嘆した亀山法皇は国師に深く帰依し、1291(正応4)年にここを寺院に改めて日本初の勅願の禅寺を建立しました。これが南禅寺の始まりです。

 開山として招かれた無関普門国師は、すでに80歳の高齢であったことから入寺して間もなく入寂。その後を継いだ規庵祖円禅師によって伽藍の整備が進められ、1299(永仁7)年には威容が整えられました。開山当初は「龍安山禅林禅寺」と呼ばれていた寺号が「太平興国南禅禅寺」と改められたのも、正安年間(1299~1302年)のこの頃の事です。



 
三門の奥の法堂は豊臣秀頼公が寄進したが1895(明治28)年に失火で焼失。
1909(明治42)年に再建されました(左)。右は、国宝指定の方丈。



 中国の禅寺の格式に倣い、1334(建武元)年に後醍醐天皇によって「五山之第一」とされた南禅寺は、1385(至徳3)年になって自らが創建した相国寺を五山の第1位としたいと欲した室町幕府第3代将軍・足利義満公によって別格に祀り上げられ、「天下五山之上」という格式を与えられ、同時に五山は京都五山鎌倉五山に分けられました。

 その後南禅寺は、1393(明徳4)年と1447(久安4)年に火災によって焼失、1467(応仁元)年の応仁の乱の兵火などで焼かれて衰退しましたが、1605(慶長10)年、かつて南禅寺の第266世住持を務めていた玄圃霊三和尚のもとで修行を積み、徳川家康公のブレーンとして活躍して「黒衣の宰相」の異名で呼ばれた以心崇伝が第270世住職になって以来、復興が進められました。



 
小方丈の大玄関(左)と、大方丈庭園(右)。「虎の子渡し」の石組みで有名です。



 南禅寺といえば、高さ22mを誇り、「天下龍門」の別名を持つ壮大な三門が有名です。1778(安永7)年に初演された歌舞伎「山門五三桐」の劇中、石川五右衛門がこの上から京の街を見渡して「絶景かな、絶景かな。春の宵は値千両とは小せえ、小せえ。この五右衛門の目からは値万両、万々両」と大見得を切ったという名台詞で世に知られる三門は、大阪夏の陣で戦死した一門の冥福を祈るために藤堂高虎公が1628(寛永5)年に寄進したものです。ちなみに、石川五右衛門が釜茹での刑に処されたのは三門が建てられる30年以上前の1594(文禄3)年のことですので、「絶景かな」の一節は完全なフィクションです。



 
小方丈の西にある枯山水庭園「如心庭」(左)と、北にある「六道庭」(右)。



 南禅寺で忘れてならないのは、国宝に指定されている方丈と、それを彩る素晴らしい庭園です。方丈は大方丈と小方丈とに分かれています。大方丈は、天正年間に豊臣秀吉公が寄進した京都御所の清涼殿で、慶長年間に京都御所が新築されるのに伴って1611(慶長16)年に移築されたものです。一方の小方丈は伏見城にあった小書院を移したもので、どちらも狩野探幽をはじめとする狩野派の襖絵で飾られています。

 大方丈庭園は小堀遠州の作庭といわれ、白砂を敷いた広い余白の中に鮮やかな緑苔と様々な大きさの6つの石組みを固めた枯山水庭園で、石組みは親虎と子虎に見立てられて「虎の子渡し」と呼ばれています。小方丈の庭園は如心庭と呼ばれ、白砂の中に「心」の字を表す石組みが目に鮮やかな枯山水庭園となっています。



 
小方丈の東にある「華厳庭」(左)。その南にも植栽に彩られた庭があります(右)。



アクセス
・京都市営地下鉄東西線「蹴上駅」下車、北へ徒歩10分
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拝観料
・境内無料 (方丈庭園500円、三門500円)

拝観時間
・境内は常時開放、方丈庭園と三門は8時30分~17時 (12月~2月は16時30分まで)
※12月28日から31日までは閉園

公式サイト










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