キアラを海に流して一年が経つ。
大先輩のIさんと同じ職場だった頃、石に絵を描いてチャリティーバザーに出した。思いの外、評判がよく、完売だった。Iさんはキアラバージョンが欲しかったらしく、随分前に依頼を受けた。Iさんの拾う石は河の石で、描き心地が格別。この度持参してくれた石も素晴らしい。
私が入院したときは、蓮の実などを小包で贈ってくれた。蓮の実ってずっと泥の中で成長して、ながーくながーく時を経て、やっと花を咲かせる・・・という詩が添えてあった。
Iさんが白内障の手術をした時は、遊び気分でヴォーグのサングラスを贈った。普段は棒タイを好むIさんだけど、ヴォーグをかけて運転していたという。
誰に対しても、博愛主義を自ら実行するIさんのメッセージは暖かくて優しい。
キアラが空に昇っていったことはIさんには言っていない。
もうキアラは描けないと思っていた。ところが描ける。
あの苦しそうなキアラも浮かんでくるかも・・・とすっかり脅え、封印していたのだけど、描けた。
優しい気分になった。
沢を降り、災害募金のために採った山菜よりも重い石を、私のためにしょってくるIさんを思い浮かべた。感謝。