ごっとさんのブログ

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ラット体内でマウス腎臓作製に成功

2019-03-12 10:07:45 | 自然
ラット受精卵にマウスのES細胞(胚性幹細胞)を入れて子宮で育てることで、生まれてきたラットの体内にマウスの腎臓を作製することに成功したと、自然科学研究機構生理学研究所などのチームが発表しました。

複雑で大きな臓器である腎臓を、異なる種の動物の体内で作ったのは初めてということです。

こうした研究の背景には重篤な腎臓病により、長期的に透析治療を続けている患者数は33万人にも上り、年々増加傾向にあります。このような慢性腎不全の根本的治療には生体腎移植が最も有効とされていますが、腎移植希望患者数は12000人を超え、ドナー数が絶対的に不足しています(わずか1~2%程度)。

この解決に向けて、試験管内で例えばiPS細胞から腎臓を作り出す試みが続けられていますが、現在までに立体的かつ移植に適したサイズの腎臓を作り出すには至っていません。

そこで他種の動物体内でヒトの腎臓を作り出す試みの前段階として、他種の動物の臓器を作り出す研究が盛んに行われています。

今回の研究チームは、ラットの遺伝子を改変し腎臓を作れなくした受精卵を作製しました。これにマウスのES細胞を7個注入して子宮に移すと、ラットの子供の体内にマウスの細胞でできた腎臓が出来上がりました。

このようにラット遺伝子を改変すると、臓器内に本来できるはずの腎臓部分にニッチと呼ばれる「空のある場所」が出てきます。このような個体は、生きていくのに必要な臓器が欠けてしまいますので、出生後生きていくことができません。

そこで着床前の受精卵に多能性幹細胞であるES細胞やiPS細胞を注入することで、その「空き」を補充すると、欠けている臓器が幹細胞由来の細胞でできてくるわけです。

この手法は「胎盤胞補完法」と呼ばれていますが、この研究チームはこの手法によりマウスの体内でラットのiPS細胞由来の膵臓ができることを確認しています。

しかし同様にマウスの体内でラットのiPS細胞由来の腎臓を作るという先行研究は失敗し、その理由すらわかっていませんでした。これをラットの受精卵とマウス由来のES細胞という組み合わせに替えたところ、うまく腎臓が作り出されたようです。

このあたりの微妙な差がどういうメカニズムによるのかは今後の研究を待たないといけませんが、自然の営みに近いところは不思議な現象が起こるものです。今回はラットの体内にできたマウスの腎臓を調べたところ、血管などの一部にラットの細胞も混じっていたようです。

このため研究チームは今後、マウスの細胞だけからなる腎臓の作製方法を確立し、将来的にはブタ等大型哺乳類の体内でヒトの腎臓を作る実験へとつなげたいとしています。