ごっとさんのブログ

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日本人の花粉症は「きれい好き」の影響?

2019-03-08 10:07:09 | 自然
日本で最初にスギ花粉症が報告されたのは1963年と言われています。それから半世紀余りで、国民の4割前後が花粉症と言われる国民病になりました。

花粉症患者が爆発的に増えた背景には、日本人の「きれい好き」があると「衛生仮説」は指摘しています。

衛生仮説を最初に唱えたのは、イギリスの疫学者のストラチャンですが、彼はイギリス人約1万7000人を対象に花粉症の有無を調査したところ、兄弟姉妹の場合、長男長女は花粉症の割合が多いのに、末っ子は花粉症の割合が少なかったのです。

その理由として、末っ子は兄や姉から細菌やウイルスをもらうが、長男長女はそうしたことがない清潔な環境で育ったからだとストラチャンは考えました、そして彼は「衛生的であることがアレルギー発症の原因になる」という衛生仮説を1989年に提唱しました。

その後イギリスで牧畜農家など環境中のエンドトキシン(非衛生環境の指標として測定される細菌由来の物質)の量が多い環境で育った人は、花粉症などのアレルギー疾患が最大で5分の1程度に抑制されるという調査結果が報告され、衛生仮説はアレルギーの原因論として認知されました。

私がこの衛生仮説について詳しく聞いたのは、20年ほど前に当時日本の花粉症の大家とされる千葉大学から理化学研究所に移った先生からでした。

この先生によると人間の免疫は2歳ぐらいまでに細菌などと接触すると「細菌免疫」というシステムが構築されます。ところがこの時期にあまりに衛生的な環境にいるとこのシステムができず、免疫が遊んでいる状況になるようです。

これが花粉などのタンパク質を敵とみなし、過剰な免疫反応が起きるためとしていました。そこでこの先生は、無毒な細菌を摂取するワクチンを考えていましたが、さすがにそれは実用化されませんでした。

その後のアレルギー学者の研究で、アレルギーのうち食物アレルギーやアトピー性皮膚炎は衛生仮説が当てはまらないことが指摘されましたが、花粉症や喘息は衛生仮説で説明できることが分かりました。

日本の花粉症の有病率は約40%となっていますが、海外ではそれほど高くないようです。データは乏しいのですが、アメリカが5~10%で、ほとんどがブタクサの花粉とされています。

カナダはオークの木の花粉症が多く20%弱で、トルコやオーストラリアが10~20%と推定されています。いずれも日本より低く、日本の有病率が突出しているのが目立ちます。

衛生仮説によると、乳幼児期に非衛生的な環境で育った子はアレルギー発症を免れるわけですが、現在の日本では抗菌や除菌があらゆるところに蔓延している状況から、非衛生的な環境に替えるのは難しいような気がします。この過剰ともいえる日本人のきれい好きは、治りそうにはないでしょう。