ごっとさんのブログ

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近赤外線で治療 ガン光免疫療法

2018-01-18 10:41:59 | 健康・医療
近赤外線を使ってガンを治療する「ガン光免疫療法」の国内初の臨床試験が、国立がん研究センター東病院で3月に始まることが決まりました。

このガン光免疫療法については昨年10月にこのブログでも取り上げ、アメリカの臨床試験の結果を紹介していますが、いよいよ日本でも治験が始まることになりました。今回は再発頭頸部ガン患者を対象に実施するようです。

原理としては、ガン細胞表面のタンパク質に結びつく抗体に、近赤外光によって反応を起こす化学物質を付着させ、患者に注射します。患部に近赤外光を当てると化学物質が反応し、ガン細胞の細胞膜を傷つけて死滅させるものです。

近赤外光はテレビのリモコンなどに使われ、人体には無害であり、ガン細胞だけを狙って攻撃できるため副作用が少なく、手術や抗ガン剤などで治らない進行ガン患者の新たな治療の選択肢として注目されています。

臨床試験はアメリカで2015年に始まりました。従来の治療で治らず再発した舌ガン、咽頭ガンなどの頭頚部ガン患者を対象に実施した結果、安全性が確認され、効果を調べる段階に進んでいます。

公表データによると計15人の患者のうち14人のガンが縮小し、そのうち7人はガンが消失しました。残る1人もガンは悪化していないようです。

今回は抗体として上皮細胞増殖因子受容体という、いわばガン増殖のアクセル役になっているタンパク質に結合する抗体を作成し、これにフタロシアニンという化合物を結合させました。

近赤外線は比較的波長の短い赤外線で、ある程度ヒトなどの組織を通過し、体内に届く性質を持っています。またフタロシアニンは、この近赤外線が当たると化学反応を起こし発熱することが知られています。

またガン細胞の細胞膜が破壊されると、細胞の内容物が出てきますが、これは免疫細胞が外敵とみなして攻撃し、この内容物が付着したガン細胞も攻撃の対象となるようです。

日本では昨年12月、厚生労働省にアメリカと同様に頭頸部ガンを対象とした治験計画を届け出ました。今後、倫理審査委員会を経て、安全性を確認するため少人数の患者に実施する予定です。

これで日本でもこの治療の道筋ができ、かなり注目しているのですが問題もありそうです。この治療法は化学物質を結合させた抗体を使うのですが、これがどの程度の価格でできるかは当然触れられていません。すでに抗体医薬は使用されていますが、1回の治療に何千万円という多額の費用が掛かっています。

この辺りは、今後のタンパク質生産技術が進んで、いかに安価にできるかを期待するしかないのかもしれません。