
いきなり作り方の説明に入ります。牛蒡子(ごぼうし)と読みます。
1.約一握り(15gから20gくらいかな)を鍋にいれて、600㏄ほどの水から煮出します。薬草やお茶を煮出すことをさして「煎じる」といいます。
2.一度沸騰させて、弱火にして20分から30分煎じます。だいたい、600㏄が300㏄から400㏄になればよろしいです。
3.煮だしたら、すぐに茶こしなどで、汁の部分だけ分けてしまいます、出がらしの牛蒡子は捨ててください。こしだしておかないと、せっかく煮だした成分が、また牛蒡子の中に戻ってしまいます。
4.この汁を3つに分けて取っておいて、一日3回服用するのです。
できるだけ1日分を作って飲み切るのがよろしいのですが、毎日これを作るお時間のない方は、2日分くらいの作り置きをしておいてもかまいません。冷蔵庫に保管しておきましょう。
5.厳密にいえば食間に服用ということなのですが、あまりこだわらなくて結構です。一日分の量がしっかりと飲めていれば、よいのです。
私は別に乳房に問題があるわけではないのですが、患者さんにお出ししている漢方薬は、必ず味わってみるのが大切だと考えています。
今回は、久しぶりに、この牛蒡子を煎じて飲んでみました。
漢方薬は、本来「方剤」と呼ばれる幾つかの漢方薬の単品を混ぜて作られた形で出されています。例えばカゼや肩こりに著効する「葛根湯」は葛根、麻黄、桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草の7薬が絶妙な割合で配合されています。
漢方医といたしましては、基本的にこのような、「方剤」として処方することが中心です。
単品の漢方薬は、人によって強すぎたり、方剤特有の「合せの妙」が発揮できずに、全然効かなかったりするので、単品の漢方薬を出すことは稀です。
しかし、この単品漢方薬の「牛蒡子」だけは、どなたにも非常によく効いて、しかも強すぎて困ることはありません。乳腺炎、乳頭炎、お乳の出が悪い場合、そして繊維腫などの乳房にしこりがある場合に、本当によく効きます。乳房関連の病全般に効くと思ってよろしいとでしょう。別に病気でなくとも、「なんか乳房にしこりがあるなあ、左右の柔らかさが一定していないなあ。」という場合でも効果があります。
乳房の手術の後にも、予後がよくなります。
効能としては疏散風熱、去痰止咳、清熱解毒、利尿解熱、抗菌とありますので、のどに痛みや、風邪薬の漢方薬に配合されることも多いのです。
牛蒡子は苦いです。まずいです。。しかし、わたくしが処方する「苦さ最強の方剤」である、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)に比べれば、なんてことはありません。
乳腺炎の患者さんは、むしろこの苦さが気持ちよく感じるとおっしゃっています。
牛蒡子が乳腺炎に著効するということは、多くの中医学の先生方は知りません。
わたくしが所属しているAACMA(美國中醫公會、元CCAA)はカリフォルニアの中国系の東洋医師協会なのですが、ここでの会議でも「牛蒡子が乳腺炎に効く?きいたことないねえ。私なら蒲公英根を使うがねえ。。」と誰も知りませんでした。
和漢薬的な処方といえるのかもしれませんね。もちろん蒲公英根(ほこうえいこん、タンポポの根))も化膿性疾患の薬なので、乳腺炎などにも効果があります。しかし、牛蒡子の効果にはかなわないと感じます。
私(男性)がこれを飲んでも、乳房に何か変化が起きることはありません。
少なくとも、これを服用していらっしゃる女性の気持ちはわかったような気がします。
でも、乳頭や乳頭におできなどができている場合は、男性でも牛蒡子の出番です。
苦げ~~。。。