荻窪鮫

元ハングマン。下町で隠遁暮らしのオジサンが躁鬱病になりました。
それでも、望みはミニマリストになる事です。

白川道の巻、ふたたび。

2015年06月30日 | 枯渇した生活に豊潤な読書を


過去の記事。
白川道の巻。

本年4月に逝去された小説家・白川道著【世界で最初の音】を読了しました。

いつもながら良いタイトルですね。

文芸色がプンプンします。

白川道で初めて読んだ作品は【海は涸いていた】でしたが、これもジャケ買いならぬ、タイトル買いでした。

黒川博行も少しは見習って欲しいっす。

【悪果】【煙霞】【螻蛄】【落英】【繚乱】【勁草】…難しい熟語、飽きた。

面白いけど。

過去の記事。
黒川博行の巻。
黒川博行の巻、ふたたび。
黒川博行の巻、みたび。



さて、今回もどっかで読んだプロットであります。

過去を引きずった主人公のオトコ、オトナのオンナ、お金持ちのご息女、友のために命まで投げ出そうとするダチや舎弟、そして主人公を執拗に追う刑事…。

【海は涸いていた】で唸ったプロットは、その後も【天国への階段】【最も遠い銀河】そして今回の【世界で最初の音】と脈々と継承されました。

折角ですので【世界で最初の音】と【海は涸いていた】の登場人物を相対化してみましょう。

赤字…【世界で最初の音】  青字…【海は涸いていた】


桜井達也伊勢孝昭 …過去を引きずった主人公のオトコ

阿部清美藤城千佳子 …オトナのオンナ

広末衣公子馬渕薫 …お金持ちのご息女

矢田京一布田昌志 …友のために命まで投げ出そうとするダチ

荒本明三宅慎二 …友のために命まで投げ出そうとする舎弟

押田学佐古章生 …主人公を執拗に追う刑事



とまぁ、こんなトコですかね。

今回ちょいと不満だったのは

押田警部の描き方がステレオタイプ

矢田の死が唐突過ぎる

ってトコかな。

もちろん白川節炸裂男泣きワンダーランドではありましたけど。

もう、こういった作品が読めなくなったのはホントに残念至極であります。



そういや【海は涸いていた】について

『天童荒太の【永遠の仔】や北方謙三の【ブラディ・ドール】シリーズに似た雰囲気を持つ作品』

というレビューがありましたが、心底『アタマの悪ぃ評価だなぁ』と感じました。

全然違うじゃん。

過去の記事。
天童荒太の巻。
ブラディ・ドールの巻。



【海は涸いていた】の映画版【絆】には押田刑事なるキャラクターが登場しております。

今作の押田学と同一人物なのでしょうか。



『窮境の中でこそ、潔い態度を』アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ(米国の小説家・1899~1961)