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研究や教育等の記事を書いています。掲載内容は個人的見解であり、群馬県立女子大学の立場や意見を代表するものではありません。

無料オンライン大学における安全保障の授業

2013年10月18日 | 教育活動
とうとう日本でも、無料のオンライン大学授業が本格的に始まることになりました。名称は、JMOOC(ジェー・ムーク)です。国内の著名な大学が、日本語で授業をウェブ上で提供します。コーセラ、エディックス(両方とも英語での授業が大半)の日本語版というところでしょうか。

ところで、オンライン無料大学の本家ともいえるedx(エディックス)では、国際政治関係の授業が充実してきました。たとえば、国際人権論(International Human Rights)とか、グローバリゼーションの勝者と敗者(Globalization's Winners and Losers)などです。とりわけ、私の目を引いたのが「入門・アメリカの安全保障、戦略、報道に対する主な挑戦(Central Callenges of American Security, Strategy and the Press: An Introduction)」です。

この授業を提供する教育機関は、ハーバード大学ジョン・F.ケネディ行政大学院です。講師は、政策決定論の重鎮、グレアム・アリソン氏と『ニューヨーク・タイムズ』紙のエース記者、デーヴィッド・サンガー氏ほか、という豪華な布陣です。

とりあえず、授業の「イントロダクション(ガイダンス)」のビデオを見たのですが、およそ、日本の大学の安全保障関係の授業では、チョッと考えられないような内容でした。授業で取り上げるテーマは、たとえば、「シリアを攻撃するか否か」といった、国家の重大な政策決定に直結する政治外交・軍事問題であり、授業のキーワードも、「戦略的思考(strategic thinkings)」や「アメリカの国益(America's national interests)」といったものです。授業は、事例研究や政策提言が主要な部分を占めており、しかも、そこで戦略や安全保障の概念や理論的枠組み、分析のスキルを修得して、アメリカの対外政策決定の処方箋に活かすという、高度な要求も受講者には課せられています。

要するに、この授業では、たんに政策論争を行うのではなく、具体的な近年の事例を研究することにより、学生は政策決定の分析スキルや複雑な相互作用を学ぶのです。

このような授業内容の善し悪しは、ブログの読者の判断にお任せします。ただ、1つ言えることは、ハーバードもそうですが、多くの世界有数の大学では、日本の大学の学部や大学院では、とても扱えないような安全保障や戦略関連のトピックや分析手法を当然のように学生に教育している事実があるということです。

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