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研究や教育等の記事を書いています。掲載内容は個人的見解であり、群馬県立女子大学の立場や意見を代表するものではありません。

2011-12年度ゼミ生の卒業論文

2013年04月25日 | ゼミナール
昨年度末、私のゼミから7名の学生が国際学科を卒業して、社会にでていきました。ゼミ生たちの進路はそれぞれで、高倍率を勝ち抜いて「在京キー局」に入社した者もいれば、日本語教師を目指して、再度、別の学校に入学した者もいます。

この2011-12年度のゼミ生たちは、自立心を持ちながらも、相互に協力しながら、切磋琢磨していたように、私からは見えました。その結果、卒業論文の指導は、例年になく、スムーズに行うことができました。古き良き「大学のゼミ」らしいゼミだったと思います。

今日は、ゼミ生の卒業論文のタイトルを紹介するととともに、私からの若干のコメントを述べることにします。

山之内健「集団的自衛権はなぜ行使されるようになったのか―日本社会党の盛衰とその影響について―」
日野愛美「なぜ"K-POP"ブームは日本で流行したのか」
谷島はなえ「高税率による福祉の充実と幸福度の関係―デンマークにおける最小不幸社会の実現と日本への教訓―」
佐々木渚「なぜ日本人日本語教師志望者は減少傾向にあるのか」
植田野々香「日本のナショナリズムはなせ希薄なのか―スポーツによるイメージの転換―」
三塚清夏「米軍基地と共存することはできるのか」
佐藤裕介「なぜ内戦はなくならないのか」

それぞれの学生は、自分でテーマを選び、論文において、問題(パズル)を設定し、それに対する自分自身の答えを堂々と述べています。事実の羅列のような「卒業論文」が多い中で、ゼミ生たちは、社会科学の方法論に基づいて、「学術」論文を書き上げました。大学教育の最大の目標の1つが、いわゆる「思考力」、とりわけ「批判的思考力」を養うことだとすれば、この学年のゼミでは、ある程度、目標を達成できたと思います。

2012年度の卒業論文のなかでも、とりわけ秀逸な作品だったのが、山之内論文と日野論文です。山之内論文は、日本が「事実上の集団的自衛権」の行使に踏み切った原因を日本政治の政党勢力の変化に求めています。これは一見すると平凡な結論のようにみえますが、実は、先行研究での主張とは異なる、地に足のついた実証から得た分析結果であり、それを説得的に卒論で述べています。

日野論文は、自らが選んだテーマに関する先行研究や学術的資料が少ない中、地道に資料を集め、コツコツと努力をしながら、K-POPブームが日本で発生した理由をデータに基づいて説明しました。やや稚拙な論述も散見されますが、卒業論文としては、高い評価を与えられる実証研究です。

本年度、これから卒業論文を執筆するゼミ生たちは、先輩たちに続いて、よい論文を書いてほしいと願っています。

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