石段を上がった先に白い固まりがゆれる。近づくとそれは西洋ツツジの純白の花の群れ。混じりけのない白。傍らにあるマーガレットの
かすかに黄味を帯びた白ともちがう。その横のコデマリの白ともまたちがう。きぜんとした白だ。前を通ると香り立つ。この花は
いっせいに咲いて花首からポトンと落ちる。厚みがあって湿り気のある花弁は、しばらくの間、道を純白に彩って茶褐色に枯れていく。
何日もこの白に迎えられた。
なぜか、蕪村の『愁いつつ岡にのぼれば花いばら』を思い出す。ツツジの白が、瞬間目に飛び込んで、仕事中に心のなかにたまったものを
吹き飛ばしてくれる。心が晴れるのだ。
蕪村の句は、花いばらから、憂愁がより深まったと解釈するのが一般的のようだが、一瞬の視覚が放つエネルギーを信じたい。
目に飛び込んでくる白はいのちの一杯詰まった白であり、瞬間、いばらから解放されることもある。
WORKS 20×20cm OIL 2015