1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「戦場でワルツを」(アリ・フォルマン)

2009-12-07 00:22:20 | 映画
 「戦場でワルツを」(アリ・フォルマン)を見ました。パレスチナの人々は、1948年、イスラエルによって生まれ故郷を追われ、難民としてレバノンやヨルダン、ガサへと移り住んでいきました。現在、460万人の人たちが難民キャンプでの困難な生活を強いられています。人間の尊厳さえをも踏みにじられたパレスチナの人々の姿は、このブログでも紹介した「アラブ、祈りとしての文学」や「ガザ通信」、「ハイファに戻って」でも、とてもリアルに描かれています。

 この映画は、アリ・フォルマンが兵役時代の友人に再会し、毎夜見る悪夢に悩まされているという話を聞くことから始まります。友人は、それをレバノンに軍事進攻した時の後遺症であると語ります。その時アリ・フォルマンは、自分自身もレバノン侵攻時代の記憶がまったく失われていることに気づきます。レバノンで何が起こり、自分は何をしたのか。アリ・フォルマン監督は、ともにレバノンに侵攻した知人やジャーナリストを訪ね、失われた自らの記憶を再構築していきます。映画は再構築の過程をアニメーションで追いかけていきます。そして最後に、イスラエル軍の包囲の中で1800人のパレスチナ難民が虐殺された「サブラ・シャティーラの虐殺」の実写フィルムで終わります。嘆き悲しむ女性たちの姿。映画は、アニメ=「失われた記憶」、フィルム=「実際に起こった真実」という鋭い対比を通して、パレスチナ難民の苦難の歴史を私たちにつきつけます。とても重たい映画でした。この映画が、一人のイスラエル人によってつくられたということに、かすかな明かりを見たように思いました。