かわティブログ 「発達と教育」と「生徒指導概論」

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(授業での)読書レポートの書き方

2007年10月03日 | Weblog
(授業での)読書レポートの書き方

目次
1. 読書レポートは、どんな本かの報告ではありません
2.読書レポート4段階構成法
 1)問題提起
 2)意見の提示
 3)意見の説明
 4)結論
3.内容も文章も,読む人の立場に立って
4.良いレポートとは、どんなレポートか
 1)書くための内容全体を把握している
 2)書き手の判断・分析が含まれている
 3)文章での説得力を増すために
 4)独自の視点があるかどうか
 5)わかりやすい,読みやすい文章で書かれている
5.わかりやすい文章とは、どのようなものか
 1)文章全体のバランスが考慮していること
 2)あたり前のことだけに終わらない
 3)弁解やいいわけは、書かなくても良い
 4)具体性が必要である
 5)反論を予想して書く
 6)できるだけ詳しく書く
6.レポートの多くが持つ問題点

ここから本文です。
1. 読書レポートはどんな本かの報告ではありません
 レポートという言葉を辞書で引くと「報告」と出てきます。しかし、読書レポートは単なる報告ではありません。本を読んだ人の考えた結果が表れていることが必要です。その意味では小・中学校の調べ報告のレポートとは異なります。大学でも調べた結果を報告させるレポートを要求する先生もいます。また,自分の意見を書いてはいけないという先生がいます。しかし、その結果みんなが同じ内容というレポートになってしまうこともあります。
 読書レポートは、本に書いてあることを書き写すことではありません。本に何が書いてあったかなどの情報を書き写すだけでは,要約にしを書いたにしかすぎません。読後レポートで重要なことは、本に書いてある内容を読みとり,自分自身の判断から何が言えるか,どのように対応したらよいかの意見や主張を書くことが必要なのです。すなわち、読後レポートとは、報告や説明ではなく、本の内容についての分析であり、意見なのです。逆に言うと意見や主張の「報告」と言うことになります。
 樋口(2002)によると,杜会現象や人間の問題について論じた2000字程度までの文章を小論文、それを超えた文章をレポートとして分けています。さらに,8000字を超えて内容が学術的である場合、特に論文と呼ぶことが多いとしています。ただし,レポートや論文と、試験として課せられる小論文とは異なります。小論文は、その場で書くことが求められ,事実についてよりも価値観が問われることが多いようです。
 授業での一回のレポートが2000文字という量は、「原稿用紙10枚を書く力」(齋藤孝 大和書房)という本の中で、説明されています。一冊の本を読んで、4000文字くらいの文章に書き慣れると、どんな量の文章もこなすことができると言っています。

2.読書レポート4段階構成法
 論理的な文章を書くためには,起承転結に準じた四部構成で書くと書きやすくなります。ここでは,樋口(2000)に従って,レポートを4つの部分に分けて考えてみます。
1)問題提起
 問題点を整理して、「それは賛成か否か」というような問題提起をする。量としては全体の10パーセント前後が好ましい。自分なりの課題を設定し、課題のメインテーマを説明し、問題の提起をおこなう。
2)意見の説明
 本の意見に,賛成か否か立場を明確にし、その判断の根拠を書く部分。。全体の40パーセント前後がよい。確かに~~。しかし~という書き出しにすると書きやすい。たとえば、「早期教育は必要か」という問いに対して「必要である」という意見を持っているのであれば,「確かに、自由に遊ばせることも必要であるが,~~。しかし、その効果を考えると~~が必要である。」と書く。ここでは,自分の意見と同時に他の意見を示すことで文章の扱う範囲が広くなる。さらに,次に段落を考えて,「それは次のような理由からである」というような説明を予告する部分があってもよい。
3)意見の展開
 意見提示の部分さらにを詳しく述べる。内容は,その意見の根拠や論文、他者の意見、歴史的流れが中心となる。将来への予測や、希望などの意見があれば、ここで書くのがよい。この部分は、全体の40~50パーセントの量になるのが望ましい。
4)結論
 もう一度全体を要約、整理し、賛結論をはっきりする。将来の予測や、細かい説明はせずに、結論として、自分の意見をまとめることが必要。

 この4つの組み合わせは、読後レポートだけでなく小論文,学術論文(①問題,②仮説,③方法,④結果,⑤考察となる場合もある)についても同様です。全体の字数の違いによって多少の違いがありますが、全体の文章量が多い論文の場合はデータの部分と展開から結論の部分が大きくなることになります。卒論などの場合は、問題提起の部分に扱っている課題のレビューが含まれる場合があります。また長い論文の場合は章ごとに4段階があってもいいと思います。


3.内容も文章も,読む人の立場に立って
 毎週のようにレポートを読む立場になると,同じ内容のものや同じ意見のものは飽きてしまいます。良い内容、おもしろい内容というだけでなく,読んでいて楽しい文章という見方もあります。楽しいおしゃべりと同じように,リズムのあるリラックスした文章は読んでいても楽しいと感じます。もちろん,駄洒落や冗談ばかりでは困りますが,内容がおもしろいだけでなく,読みやすさも文章の良し悪しに関連してくると思います。レポートだからと言って,小,中学校の文章の学習ではないのです。

4.良いレポートとは、どんなレポートか
 では,良いレボート・諭文とはどのようなものでしょうか。もちろん,書いている人の年齢だけでなく,文学の授業なのか,物理のレポートなのか,心理学の授業の中なのかによって異なってきます。どの場合も良いレポートの基本となる内容には共通の部分があります。
1)書くための内容全体を把握している
 これは,あるテーマ,ある本についてのレポートが課題であるときには,そのテーマとは何か,その本の言いたいことは何かについて正しく理解していなければなりません。レポートを書くためには,その著者の立場,その本が書かれた背景などの理解も含まれます。もし,基本となる考え方や言葉の定義を間違って理解していた場合,レポートすべてが台無しになってしまいます。また,書いている人が偏った考え方を持っている場合,読み手は読みにくいというより,嫌気がさしてきます。また、漠然としたテーマや曖昧な主張をもとに文章を書くことになってもしまいます。
2)書き手の判断・分析が含まれている
 レポートの内容がいくら詳しいものであっても,表面的な事実だけを述べたものは,読み手にとっても当たり前だとしか受け取られません。レポート・論文では、それを書き手が判断し,何らかの分析をして初めて独自のレポートとなるのです。その判断は表面的なものだけでなく,独自の解釈や分析によって,新しい視点を示してあり,説得力がある場合,おもしろい良いレポートということになります。
3)文章での説得力を増すために
 レポートの内容が適切な分析をしている場合でも,読み手を引きつけるためには,その分析の正当性を示す必要があります。おもしろい分析であったとしても,独断と偏見によるものでは話にならなりません。事実によって裏づけてこそ説得力が生まれます。説得できる根拠があってこそ,仮説のおもしろさが増すのです。
4)独自の視点があるかどうか
 読んでいて,おもしろい,興味がわいたというレポートは,誰でもが書く当たり前のことでなく,独自の判断と内容が含まれています。「そうか,そんな考え方もあったのか。言われてみるとそうだ」とか「なるほど,おもしろい」という気持ちを持たせてくれるレポート・論文は,読んでいてもおもしろいと感じます。そのような独自性は,判断,分析,考察のどの部分であってもいいのです。すなわち、分析の仕方が独自であったり,解釈の仕方が独自であったり,問題の設定がユニークである場合などです。
 しかし,独自性を持つためには,他のいろいろな意見や考え方,さらには一般的な考え方や定説といった知識も必要となります。また、独自の意見を書くためには、本を読む時に,本当にこれで正しいのだろうか,この解釈でいいのだろうかという反論の可能性を考えながら読むことも必要です。課題図書に関するレポートの場合も,その本の内容を理解してまとめるというよりも、批判的に読むという態度も必要になるのです。
5)わかりやすい,読みやすい文章で書かれている
 これは読む側にとって,読む気になるかどうかに大きく影響してきます。文学作品ではないので,おもしろい表現や奇をてらった文章よりも,わかりやすく整理された内容を心がける方がよいと思います。レポート・論文の場合、遠回しな表現や謙遜した言葉は必要がありません。読み手にわかりやすくするためには箇条書きを文章として述べるということも必要です。わかりやすい文章であるためには、文学的とか美しい文章という必要ありません。

5.わかりやすい文章とは、どのようなものか
1)文章全体のバランスが考慮していること
 文章全体が一つのパターンになっていることが大切です。すなわち全体を通して読んだときに、スムーズな流れを持っていることです。前述の1)問題提起、2)意見提示、3)展開、4)結論という流れに当てはまっているかをもう一度確かめる必要があります。まず、全体の流れを読み取るためには、目次の構成や要約を書いてみるとよくわかります。
2)あたり前のことだけに終わらない
 これは、誰でもがかけるあたりまえの文章にならないようにすることです。例えば、「教師としての愛情が大切である」「優しさを持たなければならない」などのあたりまえの内容を繰り返し述べることは意味のないことです。それではレポートではありません。また、個人的に誰でもが感じるようなことに「いらだちを覚える」「涙が流れた」などという形容詞が多く使われていると白々しい感じを与えます。レポートは、事実とその解釈が中心です。解釈の中に多少の感情が含まれることはありますが、感情の表現がレポートの中心となってしまってはいけません。
3)弁解やいいわけは、書かなくても良い
 レポートでは、必要のない、わかりきった言葉は書かない方がいいのです。読む人の立場に立って詳しく説明することはあるかもしれません。しかし、例えば、「私には、そんなことをいう資格はないのだが・・」などというのは、必要がありません。また、「聖書の中で・・」という時、誰でもが知っていることならば良いのですが、それを知らない人が読むことを考えると、それを説明する必要があります。それは書いている人にとっては、当たり前のように考えていても、読み手からすると間違った解釈をしているように見えることがあるからです。マスコミで語られている内容についても同様です。「国際化が進んでいることから・・・」と書いてみても、何が国際化なの共通の理解があるわけでなく、読み手とは異なる理解の仕方であるかもしれないからです。
4)具体性が必要である
 レポートの独自性を高めるために、また説得力を増すために具体的な内容がある方がいいでしょう。しかし、具体性のためにレポートのほとんどが体験で埋まってしまっては、レポートの意味がありません。体験に基づいて、何がいえるのか、また、どう解釈できるのかを述べなくてはなりません。
5)反論を予想して書く
 レポート・論文の中で一つの意見を書くと反対意見が予想される場合があります。そのようなときには、反対意見を予想して論理を運ぶ必要があります。書いている者が、この意見は一般に言われていることなのだから当然だろうと考えても、読み手には気がつかなかったことがあるかもしれません。レポート・論文では、あるテーマにそって説得する部分が含まれます。そのためにはいろいろな様々な意見を考慮して書く必要があります。
6)できるだけ詳しく書く
 レポート・論文は、読み手を説得するのですから、読み手が納得するような理由を述べなくてはなりません。内容的には、結果としては理解できるが理由が納得できないとか、信念としてはわかるが常識的ではないなどと言われないように、その背景となる考え方を詳しく述べる必要があります。特に、政治的な内容や宗教的な内容などを含む場合、どのように考えるのかは人によって異なる部分を持っています。それに対してある主張をするためには、これは正しいのだ、という一方的な主張でなく、反論を考慮しつつ、主張が正しい理由を述べる必要があります。
6.レポートの多くが持つ問題点
 レポートを読んでいると、多くのひとが以下のような問題点を持っていることが多いように思います。
1.なにを伝えようとしているのかハッキリと分からない。
2.「私はこう思う」という書き手の思いだけを書いた言い切りの文章が多い。理由が分からないために説得力に欠ける。
3.意味があいまいな言葉を気軽に使いすぎる。
 以上のような点に気をつけてレポートをかいてみましょう。

参考文献
 やさしい文章術―レポート・論文の書き方  樋口裕一 中公新書
 原稿用紙10枚を書く力 齋藤 孝 大和書房

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