行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

【日中独創メディア・上海発】果たして今晩の年越し、爆竹・花火は姿を消すか?

2016-02-07 18:59:31 | 日記
昨日、上海に着いた。今晩は春節の大みそかである。出稼ぎの人々が実家に戻り、町中は閑散としている。地下鉄もガラガラだ。毎年繰り返される光景だが、今年はちょっと変わったことが話題になっている。もうすぐ訪れる年越しを前に、人々は「爆竹・花火は果たして本当に姿を消すのか」とささやき合っている。上海市は今年から新たな条例によって、市街区の外環状線以内は爆竹や花火を一律に禁止した。違反者は100~500元の罰金に加え、政府が管理する個人の記録に違反歴が残され、銀行ローンや就職などで不利益を受けることになる。メディアの報道に加え、町を歩けば100メートルおきに禁止を伝える横断幕が掲げられている。





家によっては昨年に使い残した爆竹や花火もある。自治会が気をまわして「残っている爆竹花火は、プレゼントと交換するので供出するように」と呼びかけ、それを信じて持って行ったところ、「感謝状」を手渡されただけだった、という笑い話も聞かれる。市民は「政府も今年は本気のようだ」と感じている。

邪気を払い、家族がつつがなく暮らせるようにと、年越しとともに爆竹を鳴らすのが中国庶民の伝統だ。毎年、大みそかの午後10時を過ぎると、あちこちで爆竹や花火の音が聞こえる。12時をピークに耳をつんざく音が夜空に響き渡り、そのあとに静寂が訪れる。農村も大都市も同じである。火事ややけどはつきものだが、庶民は「新年の雰囲気が出ない」と続けてきた。

今年は、あの戦場に身を置いたような爆音がなくなり、しーんと静まり返った年越しになるのだろうか。にわかには信じがたいが、もしそうなればきっと除夜の鐘が聞こえるかも知れない。伝統的年越しの革命的な変化となる。

横断幕には、市民の安全と健康のためと書かれているが、それは建前だ。わずかな時間、火薬のにおいをかいだところで病気になるわけでもない。習近平の反腐敗運動がすっかり定着し、官僚たちはびくびくしながら仕事をしている。万が一、失策があれば、叩けばホコリの出る身が危ない。来年には大幅な人事異動がある中国共産党第19回全国代表大会が控えている。上海は昨年、外灘のカウントダウンイベントで、警備の失策により群衆が乱れ36人が圧死する事件も起きており、さらに不祥事が起きれば指導者たちの前途は暗くなる。何事も起きないよう手を打つには、とりあえず全面禁止にするのが一番手っ取り早いというわけだ。

公言した以上、実行できなければ指導者の力量が問われる。今晩は町のあちこちに監視員が配置されることだろう。爆竹、花火を「見せない」「聞かせない」「におわせない」の三つがスローガンだ。

昨年は外灘のカウントダウン事故で、大量の人出がある豫園の春節の灯篭祭りが禁止されたが、今年は従来通り行われる。日中、豫園を歩いてみたが、街頭を見回る監視員が目立った。歩行者の邪魔になると言って、出店が歩道に並べた商品の撤去を命じていた。とにかく人の多い中国は、まずは大人数を適正にさばくことが最重要任務となる。個別の事情にかまっている余裕はない。



今年はサル年である。孫悟空の人気からも分かる通り、中国人はサル年を好む。動きが活発で、金銭運もいい。家でじっとしているのはさぞ苦しいだろうが、果たして我慢できるだろうか。あと数時間後には答えが出る。市の指導者たちは天に祈るような気持ちで夜空をながめているに違いない。