昨日の元旦、今学期の成績資料を提出し、仕事納めとなった。いよいよ明日の昆明—成田直行便で一時帰国する予定だが、この間、ドタバタの出来事があった。中国がゼロコロナから大きく舵を切ったため、あちこちで過渡的な混乱が生じているが、一時帰国の準備をする我が身もまた、予想外の困難に直面した。似たような場面に遭う方もおられるかと思うので、参考のため、簡単に貴重な経験を紹介したい。
日本への入国には72時間以内のPCR陰性証明(鼻咽頭ぬぐい液検体など)が必要だが、二つの難題が持ち上がった。まず、多くの医療機関がPCR検査を中止してしまったため、検査場所を探すのが極めて困難になったことだ。
大晦日の31日、朝一番に市内最大の雲南省第一人民医院に行った。ネットの情報では、英文のPCR検査結果証明書を出してくれるということだったが、中国では現場に行かないとわからないことも多い。案の定、「数日前、上からの指示で」報告書の発行は週に1回、木曜日しか受け付けないと断られた。

3日後の出発を前に、一瞬愕然としたが、長くこの国で暮らしていると、不思議な免疫ができている。すぐに気持ちを切り替え、二か所目の延安医院へ移動するが、検査はもう打ち切られたとのことだった。

これでめげてはいけない。三か所目は新華医院。入り口わきに24時間対応の特設検査場所が設けられているのを見て、にわかに元気が湧く。だが窓口で、鼻咽頭ぬぐい液検体は扱っていないと追い払われる。それでもしつこく食い下がると、二階の検疫科に行けばやってもらえるかもしれないとのこと。早速、飛んでいき、恐る恐る尋ねてみると、いとも簡単にOKをもらえた。やっと見つけた!


他に外来者がおらず、手が空いているせいか、応対してくれた女性スタッフは非常に親切だった。報告書作成のシステムは、あくまで国内使用向けで、誕生日やパスポート番号を記入する欄がないが、懇願すると、備考欄に無理やり書き入れてくれた。この情報がないと、本人確認のしようがないので必須の事項だ。とはいえ、実際、受け取ってみないとわからない。
心配になって、今度は四か所目の雲南省第三人民医院に行ってみた。鼻と喉の両検体で検査が可能とのこと。大きな病院なので、PCRの受付も携帯アプリを通さなければならず、よくあることなのだが、外国人は登録ができない。やむなく、通常の診察手続きに従い、まず、病院の受付で予約料を支払い、混雑する院内を歩き回って医者を探す。そこでPCR検査を受けるための証明書を出してもらったうえ、今度はまた窓口で検査料を支払い、ようやくPCRの検査場所にたどり着いた。

以前は連日行列のできていた検査窓口だが、もはや人はまばらだ。鼻と喉の検査を受け、意気揚々としていったん大学に戻った。二つの病院とも夕刻には結果がもらえるということなので、出直すことにした。午前中に四か所の病院を回り、計2回のPCR検査を受け、まあまあの収穫だったと満足した。
が、本当の試練はその後にあった。新華医院の証明書にはちゃんと備考欄に生年月日とパスポート番号が記入されており、まずはひと安心。引き続き第三人民医院に行き、刷り出された証明書を見てびっくり。まず名前の欄が狭く、ローマ字の名前が途中で切れている。しかも、受付の際にあれだけ念を押したにも拘わらず、生年月日もパスポート番号も入っていない。
院内二か所をたらい回しにされた挙句、手書きで名前の後半と生年月日、パスポート番号を書き加え、その上から判を押してもらうことで決着した。
厚労省が定めた証明書の条件によると、原則として言語は日本語または英語に制限されているが、それに応じた翻訳があれば、他の言語も可能である。したがって中国語であることは問題でない。
肝心なのは、標本タイプの表記だ。新華医院は「鼻拭子」と書かれてあり、それに私が赤ペンで「鼻咽頭ぬぐい液」の翻訳を添えた。第三人民医院は、鼻咽頭と喉を合わせた「双采单检」とあり、「鼻ぬぐい液/咽頭ぬぐい液 混合」と翻訳をつけた。


厚労省指定のフォーマットでない任意の様式の場合、携帯アプリ「Visit Japan Web」を通じたファストトラックの事前審査が推奨されており、それに従い申請した。すると、前者について、電子メールで審査通過の通知があり、アプリに「審査完了」の表示が出たが、後者は「採取検体の種類(翻訳していただいた採取検体の有効性が確認できませんでした。改めて、有効な検体の種類のご確認をお願い致します。)」として「無効」の通知を受けた。
「鼻拭子」は〇、「双采单检」は×であることが判明した。


北京や上海、広州など外国人、日本人が多く在住し、医療体制や海外用証明書の発行システムがある程度成熟している都市であれば、そう問題は起きないが、それ以外の中小都市では注意が必要だ。今回の私の経験が、これから日本に渡航しようと思っている方々のお役に立てることができれば幸いである。もっとも、コロナをめぐる状況が改善され、あらゆる審査が撤廃されることが何よりもの朗報である。
2023年は日中間の人的移動が格段に拡大されることが予想される。すべての人が順調に行き来できますように!