昨日は上海でカウントダウンなど西洋文化が浸透している状況について触れたが、本日は北京の米国大使館は米国人向けのメッセージで、北京の繁華街・三里屯への外出に注意喚起を呼びかけ、話題となっている。通知文書は以下の通りだ。
「米国大使館はクリスマスの当日かその前後、北京三里屯地区で西洋人に対し脅威が及ぼされる可能性があるとの情報を入手した。米国国民は警戒を強めるよう強く求める。米国大使館は米国政府職員にも同じメッセージを送った」
穏やかではない事態だ。三里屯は日本のユニクロが入口にあり、ファッションやグルメの店が集まる若者に人気のスポットだ。映画館もある。夜になるとバーやカラオケがにぎわい、周辺に大使館が多いこともあって外国人が多い。深夜ともなるとあちこちに酔っ払いが千鳥足で歩いている。
三里屯の日中の様子を撮った映像を見ると、武装警察の車がユニクロの前に停まり、数人の武装警官が周囲に目を光らせている。通行人は少ない。若者たちは「今日は三里屯に行かない方がいい」「今日は外出したくない」と携帯のチャットでささやき合っている。客を当て込んでいた飲食店や服飾店にとってはとんだクリスマスイブである。
実は8月、フランス大使館で結婚の手続きを終えたばかりのフランス人男性と中国人女性が三里屯で、突然、 暴漢に襲われ、女性が死亡する事件が起きている。男性は同大使館勤務、女性は山東省出身の刺青師。フランスに移住し、新たな生活を始めようとしていた若者同士だった。暴漢は最初、中国語で「お前は米国人か」などと米国をののしる言葉を吐いたので、フランス人男性が中国語で「私はフランス人だ」と答えて立ち去ろうとした。夫人となったばかりの女性も「うちの夫はフランス人だ」と振り向きざまに言ったが、暴漢は持っていた刀で後ろから女性を突き刺した。続けざま男性にも切り付けけがを負わせた。
今回の米国大使館の警告は、前回の事件を踏まえたものである可能性もある。裏事情はわからないが、それにしてもちょっと過剰な反応に思える。いたずらではないかなり具体的な脅迫だったのだろうか。テロに対する世界的な恐怖がかくも過敏な反応を生んでいるのだとしたら深刻だ。
また、拙著『上海36人圧死事件はなぜ起きたのか』でも「第八章 国際化と西洋化批判の衝突」で指摘したが、急速に広まる西洋化への警戒感から中国共産党が欧米の価値観を否定し、それが社会全体に外国人への敵視感情を生む雰囲気を作っているのだとしたら問題だ。党機関紙などではしばしば不用意に「敵対勢力」の用語が使われているのを見かけるようになった。だが中国各地にはマクドナルドやケンタッキー、スターバックスがあふれ、今年には上海浦東国際空港近くにディズニーランドがオープンする予定だ。今更、米国文化を否定するのは、多くの人の理解を得られない。清朝末のような義和団の再来はあり得ないと思うが、社会不満のはけ口として排外主義が勃興するのはどこの国でもみられる。楽観はできない。
ひるがえって日本を見てみる。クリスマスは西洋化と意識されずに定着し、ここ数年でハロウィーンの仮装もたちどころに広まった。10年間、日本を留守にしていた者にとっては、テレビの低俗化とともに大きな驚きである。町の風景と物価はほとんど変わっていないのに。極端な排斥も困るが、逆になんの違和感もなく異文化を吸収していることがいいのかどうか。町中にクリスマスソングが流れている。そんなことを考えると今晩の赤ワインがまずくなるのでやめておこうか。
Merry Christmas!
「米国大使館はクリスマスの当日かその前後、北京三里屯地区で西洋人に対し脅威が及ぼされる可能性があるとの情報を入手した。米国国民は警戒を強めるよう強く求める。米国大使館は米国政府職員にも同じメッセージを送った」
穏やかではない事態だ。三里屯は日本のユニクロが入口にあり、ファッションやグルメの店が集まる若者に人気のスポットだ。映画館もある。夜になるとバーやカラオケがにぎわい、周辺に大使館が多いこともあって外国人が多い。深夜ともなるとあちこちに酔っ払いが千鳥足で歩いている。
三里屯の日中の様子を撮った映像を見ると、武装警察の車がユニクロの前に停まり、数人の武装警官が周囲に目を光らせている。通行人は少ない。若者たちは「今日は三里屯に行かない方がいい」「今日は外出したくない」と携帯のチャットでささやき合っている。客を当て込んでいた飲食店や服飾店にとってはとんだクリスマスイブである。
実は8月、フランス大使館で結婚の手続きを終えたばかりのフランス人男性と中国人女性が三里屯で、突然、 暴漢に襲われ、女性が死亡する事件が起きている。男性は同大使館勤務、女性は山東省出身の刺青師。フランスに移住し、新たな生活を始めようとしていた若者同士だった。暴漢は最初、中国語で「お前は米国人か」などと米国をののしる言葉を吐いたので、フランス人男性が中国語で「私はフランス人だ」と答えて立ち去ろうとした。夫人となったばかりの女性も「うちの夫はフランス人だ」と振り向きざまに言ったが、暴漢は持っていた刀で後ろから女性を突き刺した。続けざま男性にも切り付けけがを負わせた。
今回の米国大使館の警告は、前回の事件を踏まえたものである可能性もある。裏事情はわからないが、それにしてもちょっと過剰な反応に思える。いたずらではないかなり具体的な脅迫だったのだろうか。テロに対する世界的な恐怖がかくも過敏な反応を生んでいるのだとしたら深刻だ。
また、拙著『上海36人圧死事件はなぜ起きたのか』でも「第八章 国際化と西洋化批判の衝突」で指摘したが、急速に広まる西洋化への警戒感から中国共産党が欧米の価値観を否定し、それが社会全体に外国人への敵視感情を生む雰囲気を作っているのだとしたら問題だ。党機関紙などではしばしば不用意に「敵対勢力」の用語が使われているのを見かけるようになった。だが中国各地にはマクドナルドやケンタッキー、スターバックスがあふれ、今年には上海浦東国際空港近くにディズニーランドがオープンする予定だ。今更、米国文化を否定するのは、多くの人の理解を得られない。清朝末のような義和団の再来はあり得ないと思うが、社会不満のはけ口として排外主義が勃興するのはどこの国でもみられる。楽観はできない。
ひるがえって日本を見てみる。クリスマスは西洋化と意識されずに定着し、ここ数年でハロウィーンの仮装もたちどころに広まった。10年間、日本を留守にしていた者にとっては、テレビの低俗化とともに大きな驚きである。町の風景と物価はほとんど変わっていないのに。極端な排斥も困るが、逆になんの違和感もなく異文化を吸収していることがいいのかどうか。町中にクリスマスソングが流れている。そんなことを考えると今晩の赤ワインがまずくなるのでやめておこうか。
Merry Christmas!