行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

【日中独創メディア・上海発】習近平のネット管理強化で浮き彫りになった邦人社会の”違法”なテレビ視聴

2015-12-03 15:03:18 | 日記
一昨日、上海に着いてすぐ和風居酒屋で現地の知り合いと食事をした。店内の液晶テレビで日本の民放番組が流されているのを見て、その知り合いは「あれっ、どうしてここでは見られるのか?」と驚いた。実はこういうことである。

日本人駐在員とその家族はこれまで、ネットを通じ日本のテレビを有料で視聴できる現地業者のサービスに加入し、リアルタイムでドラマからお笑い番組、スポーツ中継までを楽しんできた。ところが最近、全く見られなくなってしまったのだ。どうも習近平政権が進めるメディア規制のあおりを受けたらしい。だがネット規制の隙間があるのか、業者によってはまだ見ることができる。それが居酒屋のテレビだった。

メディア規制はけしからん、とすっきり文句を言えるかというと、ちょっと厄介な事情がある。中国のテレビ電波受信に関する法律では、規制当局の許可なく海外のテレビ、ラジオを視聴することは認められていない。アンテナの設置を申請し、日本を含めた海外の衛星放送を受信するのが合法的な手続きとなる。外人用のマンションやホテルにはたいてい、このアンテナによって主要なニュースチャンネルを見ることができる。

だが、ネットの出現によって、ネットを通じたテレビ視聴サービスが登場した。もちろん法に規定のない極めてグレーな領域だ。これまでは当局も見て見ぬ振りだったが、それが今回、とうとう規制の網にひっかかったというわけだ。グレーな商売をしていた業者も困っているが、すでに年間の視聴料金を支払ったユーザーも、そもそも違法性の高いサービスについて正面から損害賠償を求めることもできない。

社会にはある程度の緩さがあったほうが住みやすい面もある。日本にはなかなか隙間がないが、中国に来るとちょっとした隙間の恩恵に与かることがことが少なくない。今後はそんなささいな楽しみもなくなってしまうのかと思うと、喜ぶべきなのか、残念に思うべきなのか。水がきれい過ぎても、魚には住みにくいというが、物事はほどほどの節度があった方がいい。中国語では「分寸をわきまえる」というが、そのさじ加減が難しい。