碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

言葉の備忘録248 1回きり・・・

2021年11月19日 | 言葉の備忘録

 Nov. 2021

 

 

1回きりしかない人生なんだから、

自分の好きなように、

自分に正直に生きようよ。

 

 

志村けん『変なおじさん 完全版』

 

 

 


「スナック キズツキ」は独特の“浮世離れ”感を持った原田知世のなせるワザ!

2021年11月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「スナック キズツキ」は

独特の“浮世離れ”感を持った

原田知世のなせるワザ!

 

こんなスナックがあったら、一度立ち寄ってみたい。そう思いながら毎回見てしまう。ドラマ24「スナック キズツキ」(テレビ東京系)だ。

地下にあるその店は、ママのトウコ(原田知世)が一人でやっている。昭和の喫茶店を思わせるレトロな雰囲気。アルコールは置いていない。丁寧に作るコーヒー、ココア、アップルジュースなどがおいしい。それを飲みながら、客はふと自分の話をしてしまう。

別に大きな出来事があったわけじゃない。職場や家庭、日常生活で感じる、ささいなストレス。でも、どこか疲れがたまっている。心がちょっと傷ついている。問われぬままの小さな告白。それだけで少し救われるのだ。

さらにママは異空間を現出させる。部下とのコミュニケーションが苦手な佐藤(塚地武雅)と「エアギター」の競演。再就職がうまくいかない冨田(徳永えり)と、抱えた鬱屈を言葉にする「しりとり」。そして自分を見失い、若い頃が恋しくなった香保(西田尚美)とは、懐かしのユーロビートに乗ってダンスだ。

店を出るとき、客は来る前より心が軽くなっていることに気づく。しかも、その効果は日常に戻っても続くのだ。

トウコママのマジック? いや、原田知世という、独特の“浮世離れ”感を持った女優のなせるワザだろう。このドラマ、原田のテレ東系連続ドラマ初出演にして初主演である。

(日刊ゲンダイ 2021.11.17)


【書評した本】 春日太一『やくざ映画入門』

2021年11月17日 | 書評した本たち

 

 

『半沢直樹』もやくざ映画?!

 春日太一『やくざ映画入門』

 小学館新書 902円


【気まぐれ写真館】 小さな「美術館」

2021年11月16日 | 気まぐれ写真館


名バイプレーヤー女優 「伊藤沙莉」が魅せる3つの「み」

2021年11月15日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

『これは経費で落ちません!』での伊藤沙莉さん

 

 

名バイプレーヤー女優

「伊藤沙莉」が魅せる3つの「み」

 
 
若き日の樹木希林さんを彷彿(ほうふつ)とさせる、テレビドラマの「名バイプレーヤー女優」。
 
前回までに挙げた、江口のりこさんや市川実日子さんに続く3人目は、少し下の世代から選んでみました。
 
それが、伊藤沙莉(いとう さいり)さんです。
 
「朝ドラ銘柄女優」の飛躍
 
NHKの連続テレビ小説、通称「朝ドラ」は新人女優の登竜門であると、昔からよく言われます。
 
確かに、新人時代に「朝ドラ」の主役に抜擢され、その後、大きく成長していった女優さんは大変な数になるでしょう。
 
しかし、最近の傾向として面白いのは、朝ドラの主役だけでなく、ナンバー2、ナンバー3と呼ばれていた面々が注目されること。
 
朝ドラで人気を集め、その後は主演女優に負けない活躍を見せるケースも多いのです。
 
そうした人たちを、たとえばですが、「朝ドラ銘柄女優」と呼んでみます。
 
「朝ドラ女優」というと、やはり朝ドラのヒロイン、主役を担った女優だけを指してしまう。
 
そこで、「朝ドラで印象を残した女優」という意味を込めての「朝ドラ銘柄女優」。
 
近年、この「朝ドラ銘柄女優」を最も多く輩出したのが、有村架純主演の『ひよっこ』(17年)でした。
 
ヒロイン・谷田部みね子の親友、助川時子が佐久間由衣さん。
 
みね子が集団就職で入社した向島電機の同期、青天目(なばため)澄子は松本穂香さん。同じく兼平豊子が藤野涼子さん。
 
そして、みね子の同級生・角谷三男(泉澤祐希)が就職した東京の米屋、そこの“お嬢さん” 安部さおりを演じていたのが、伊藤沙莉さんです。
 
群を抜く、3つの「み」の表現
 
さおりは三男を好きになり、積極的に迫っていきました。
 
しかも、なかなか自分を見てくれない三男が、時子のことを忘れられないのだと知って、“身もだえ”するんですね。
 
伊藤さんは、女性が抱え持つ「生々しい感情」をリアルに、しかもさらっと演じることが出来る、貴重な若手女優と言えるでしょう。
 
リアルに、さらっと。これが凄い。
 
特に、3つの「み」を表現する時、その才能がひときわ輝きます。
 
伊藤さんが魅せる3つの「み」とは、
 
妬(ねた)み。
嫉(そね)み。
僻(ひが)み。
 
他人の幸福や長所をうらやみ、かなわないと憎み、何事も素直に受け取れない。
 
そんな複雑で切ない女性の心情が演じられてこその、名バイプレーヤー女優です。
 
さらに伊藤さんは、それが単なる「イヤな女」ではなく、コントロール不能なほど情感豊かな「愛すべき女」なのだと、見る側に伝えてくれる。
 
次世代型「名バイプレーヤー女優」へ
 
『ひよっこ』のあとの出演作は、日曜劇場『この世界の片隅に』(TBS系、18年)でした。
 
「すずさん」こと北條すず(松本穂香)の嫁ぎ先の隣の娘で、幼馴染であるすずの夫・周作(松坂桃李)に憧れていた、刈谷幸子を好演します。
 
さらに『これは経費で落ちません!』(NHK、19年)では、経理部員の佐々木真夕になりました。
 
ヒロインである森若沙名子(多部未華子)の仕事を助けたり、上司の課長(吹越満)をからかったりと、自在な演技を披露しています。
 
そして21年は、市川さんも出ていた『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ・フジテレビ系)。
 
ここでは、何ともクセになるナレーションを聞かせてくれました。
 
ドラマの冒頭で、「今週あった出来事」としてその回の説明をする趣向が話題となった、アレです。
 
最近は少なくなってしまいましたが、かつての「火曜サスペンス劇場」といった2時間ドラマなどで使われていた、「アバンタイトル」に当たる部分です。
 
一般的に「アバン」は、最初に見どころなどをダイジェスト的に紹介して、視聴意欲をかき立てるためのものです。
 
しかし、このドラマでは、それを見て展開を予想しても、いい意味で裏切られてしまう。
 
そんなトリッキーな仕掛けを、伊藤さんのハスキーボイスが際立たせました。
 
姿は見せないけれど、声と口調だけで伊藤さんと分かり、視聴者をニヤリとさせる存在感。次世代を代表する、名バイプレーヤー女優の面目躍如です。
 
ドラマをより面白いものに
 
トルストイの小説『アンナ・カレーニナ』の中に、「幸福な家庭は似ているが、不幸な家庭はそれぞれだ」という意味の一文があります。
 
それに倣(なら)えば、「凡庸な脇役は似ているが、優れた脇役はそれぞれに個性的だ」ということかもしれません。
 
江口さん、市川さん、そして伊藤さんといった個性的な「名バイプレーヤー女優」の活躍が、これからもドラマをより面白いものにしてくれるはずです。

【気まぐれ写真館】 協和紙工「ジャパニーズスタイル」

2021年11月14日 | 気まぐれ写真館

最近、お気に入りのシリーズなり。


名バイプレーヤー女優「市川実日子」という生き方

2021年11月13日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

『大豆田とわ子と三人の元夫』綿来かごめ役の市川実日子さん

 

 

名バイプレーヤー女優

「市川実日子」という生き方

 

30年前、樹木希林さんは俳優仲間との座談会で、こんなことを言っていました。
 
「女優になるっていうのは自分の存在そのものが魅力的だと思いこんでいいはずでしょ。でも、そこのところへは私は絶対にいけないんですよ。(中略)
だから演技をするのよ。これで、もしわたしがそこそこ器量がよかったら自分に酔ってしまって、きっと仕事なんてこなかったと思うもの」(草野大悟・著『俳優論』)
 
脇役としての「覚悟」と「プライド」を感じさせる言葉です。
 
「埋没」せず、「悪目立ち」もしない
 
そんな若き日の希林さんを継承する、テレビドラマの「名バイプレーヤー女優」。
 
前回の江口のりこさんに続いて、順不同で挙げたいのが、市川実日子(いちかわ みかこ)さんです。
 
ただし、上記の希林さんの言葉を受けるなら、市川さんは器量よしです。
 
そして、この女優さんには、なぜかリケジョ(理系女子)がよく似合う。
 
映画『シン・ゴジラ』(16年)では、ゴジラの生態を探る、環境省課長補佐・尾頭ヒロミを演じていました。
 
冷静沈着で無表情。しかもその情報処理能力と解析力は抜群です。
 
また、野木亜紀子脚本『アンナチュラル』(TBS系、18年)では、法医学者の三澄(みすみ)ミコト(石原さとみ)と一緒に働く臨床検査技師、東海林(しょうじ)夕子。
 
プライベート優先で合コンの常連ですが、仕事は着実でミコトの信頼も厚いものがありました。
 
どちらの作品でも、市川さんは主人公をサポートするメンバーの一人です。
 
しかし、チームに溶け込みながらも、決して埋没していない。
 
それでいて、「私はここにいますよ!」といった悪目立ちもしない。その絶妙なバランスのうえで、静かに自らを主張するのです。
 
難役だった『大豆田』
 
最近では、『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ・フジテレビ系、21年)で演じた、主人公の親友「綿来(わたらい)かごめ」が出色でした。
 
大豆田という珍しい名字のヒロイン・とわ子(松たか子)と、彼女の元夫で平凡な名字の田中(松田龍平)、佐藤(角田晃広)、中村(岡田将生)。
 
この4人の「日常」と「微妙な関係」が淡々と描かれていきます。
 
ただし、ぼんやりと見ているわけにはいきません。なぜなら、一つのセリフも聞き漏らすことができないからです。
 
とわ子が、かごめに元夫との関係が「面倒くさい」と愚痴(ぐち)ります。すると、かごめはこう答えました。
 
「面倒くさいって気持ちは好きと嫌いの間にあって、どっちかっていうと好きに近い」 
 
また、かごめは男性からアプローチされた時も……
 
「恋愛が邪魔。女と男の関係がめんどくさいの。私の人生にはいらないの。そういう考えがね、寂しいことは知ってるよ。実際たまに寂しい。でもやっぱり、ただ、ただ、それが、私なんだよ」
 
坂元裕二さんが脚本を手掛けたこのドラマは、全体がまるでアフォリズム(警句・格言)を集めた一冊の本のようであり、鋭いセリフを語る、演者の力量が問われました。
 
さらに、とわ子の元夫の一人である田中(松田)が、かごめに秘めたる思いを寄せていたんですよね。
 
でも、かごめはそれを知りながら応じることはなかった。なぜなら、彼女が愛していたのは、とわ子だったから。
 
名バイプレーヤー女優「市川実日子」以外に、こんな難役を誰が演じられたでしょう。
 
究極の「親友」
 
思えば、『アンナチュラル』も、次の黒木華主演『凪のお暇(なぎのおいとま)』(TBS系、19年)も、そして『大豆田』でも、市川さんは「主人公の親友」でした。
 
どこか屈折していながら、一本筋が通った生き方をしている親友は、ヒロインたちの精神的な支えです。
 
そこには役柄を超えた、「市川実日子」という名バイプレーヤー女優に対する信頼感も見てとれるのです。
 
今後ですが、市川さんはNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』に出演する予定です。ただし、すぐじゃありません。
 
上白石萌音さんが演じる初代ヒロインの後の大阪編で、深津絵里さんの2代目ヒロインにからむらしい。ガンガンからんで欲しいですね。その登場を楽しみに待つことにします。
 

【気まぐれ写真館】 光葉(こうよう)

2021年11月12日 | 気まぐれ写真館


上白石萌音「カムカムエヴリバディ」で無敵の明るさ

2021年11月11日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

上白石萌音がNHK朝ドラ

「カムカムエヴリバディ」で見せる

無敵の明るさ

 

NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が始まった。3人の女性で描く100年の物語。ヒロインの第1走者、橘安子(上白石萌音)の登場だ。モネから萌音への「もね」つながりだが、雰囲気は一変した。まずは、その「スピード感」と「明るさ」に拍手だ。

主演女優が3人いて、放送は半年間。1人当たり2カ月となれば、のんびりしてはいられないのだろう。初日に生まれた赤ちゃんが、2日目でもう14歳になっていた。3日目に運命の人(松村北斗)と出会い、ドラマのテーマである「ラジオ英語講座」も聴き始める。

4日目は2人で自転車の練習をして、喫茶店でコーヒーだ。5日目のお祭りデートで急接近するが、突然破局の危機。そして最後は遠距離恋愛の始まりを予感させて第1週が幕を閉じた。驚きのスピード展開だったのだ。

この“超高速仕様”への戸惑いを振り払ってくれるのが、上白石が見せる無敵の明るさだ。思えば、「おちょやん」「おかえりモネ」と、重いものを背負ったヒロインが続いた。安子の少女らしい喜怒哀楽や“フツーの人”感にホッとする。

先週、ラジオが昭和14年の「ノモンハン事件」を伝えていた。今週は日中戦争が泥沼化する一方で、太平洋戦争への傾斜も進むはずだ。そんな時代を、安子一家をはじめ市井の人たちはどう生きたのか。戦争とラジオと英語の関係にも注目だ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.11.10)


名バイプレーヤー女優「江口のりこ」はこうして生まれた

2021年11月10日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

民放ドラマ初主演『ソロ活女子のススメ』での江口のりこさん

 

名バイプレーヤー女優

「江口のりこ」は

こうして生まれた

 

 
「名バイプレーヤー女優」の条件
 
女優の樹木希林さんを初めて見たのは、森繁久彌主演七人の孫(TBS系、1964年)でした。当時の芸名は「悠木千帆」です。
 
役柄は大家族の「お手伝いさん」。時々、森繁ジイサンをやり込めたりする彼女が、主人公を“愛すべき人物”として際立たせていました。
 
70年代の時間ですよ(TBS系)や寺内貫太郎一家(同)でも、一癖も二癖もある脇役を演じ続けた希林さん。
 
長い芸歴の前半で、すでにテレビドラマの「名バイプレーヤー女優」だったことが分かります。
 
名バイプレーヤー女優に必要なのは、演技力だけではありません。自身を客観視し、全体を俯瞰(ふかん)する力です。
 
そのうえで、脇役への期待に応えつつ、期待以上の演技を披露してくれる。
 
では、現在の「ドラマ界」で、往時の希林さんに当たる女優は誰だろう。そう考えた時、真っ先に思い浮かぶのが、江口のりこさんです。
 
「江口のりこ」の出現
 
気になり始めたのは、オダギリジョー主演『時効警察』(テレビ朝日系、2006年)あたりでしょうか。時効管理課のサネイエ。画面の中にいるだけで笑えました。
 
少し経って、朝ドラ『マッサン』(NHK、14年)の主人公、亀山政春(玉山鉄二)が勤めていた酒造会社の事務員。
 
また、綾野剛主演『コウノドリ』(TBS系、15年)でのメディカル・ソーシャルワーカーも目が離せませんでした。
 
やがて、石原さとみ主演『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系、16年)で、強い印象を残すことになります。
 
出版社の校閲部で、ヒロインと机を並べる先輩、藤岩りおん。仕事は完璧ですが、超が付く堅物で融通が利きません。
 
若い女性社員たちは、陰で「鉄パン(鉄のパンツをはいていそうな女)」とからかっていました。
 
悦子(石原)はそれに怒り、校閲で得た知識を援用して彼女たちを撃退していきます。
 
江口さんは、ヒロインとは全く異なるタイプでありながら、まるで合わせ鏡のように機能して主役を輝かせ、同時に自身も輝いてみせました。名バイプレーイヤー女優の真骨頂です。
 
さらに、吉高由里子主演『わたし、定時で帰ります。』(TBS系、19年)で演じた、主人公が仕事帰りに立ち寄る「上海飯店」の店主も秀逸でした。
 
真似できない「怒りの表現」
 
そして、多部未華子主演『これは経費で落ちません!』(NHK、同)で完全にブレークします。
 
舞台は中堅のせっけん会社で、ヒロインの森若沙名子(多部)は経理部員。毎回、沙名子が何らかの不正や疑惑に気づくことで物語が動き出します。
 
中でも、小ズルイ社長秘書(ベッキー)と経理部の麻吹美華(江口)との、ハブとマングースのような壮絶バトルは見ものでした。
 
麻吹を動かしていたのは単なる正義感ではありません。「女性であること」を武器にして社内で優越的な地位に立ち、裏では不当な利益を得ている秘書への反発、いや強烈な怒りでした。
 
この「怒りの表現」こそ、主演女優たちも真似できない、江口さんの専売特許であり、名バイプレーイヤー女優の証左と言えるものです。
 
このドラマで確実に演技の幅を広げた江口さんは、日曜劇場『半沢直樹』(TBS系、20年)で、半沢直樹(堺雅人)と敵対する国土交通大臣、白井亜希子になります。
 
次の『俺の家の話』(TBS系、21年)で、主人公の観山寿一(長瀬智也)もタジタジの強烈な姉、舞(まい)。
 
さらに、『ドラゴン桜』(同)では舞台となる学園の理事長・龍野久美子といった具合に、重要な役を担い続けます。
 
主人公に直接、しかも深く関わること。そして物語自体を動かしていくこと。この2つが、名バイプレーヤー女優に託された使命です。江口さんは、その役割を十二分に果たしてきました。
 
「主演女優」の先へ
 
今年の4月、深夜の『ソロ活女子のススメ』(テレビ東京系)で、民放ドラマ初主演を果たした江口さん。
 
この秋は、『SUPER RICH(スーパーリッチ)』(木曜よる10時、フジテレビ系)で、ゴールデン・プライム帯の連ドラ初主演を務めています。
 
演じる人間にとって、主演はゴールや到達点というわけではありません。
 
しかし、座長としてドラマ全体を引っ張る経験は、名バイプレーイヤー女優「江口のりこ」の大きな財産となるに違いありません。

【気まぐれ写真館】 月と金星が接近した夜

2021年11月09日 | 気まぐれ写真館

2021.11.08 撮影

 


『日本沈没』の主人公は、なぜ「原作小説」と違うのか?

2021年11月08日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

日曜劇場『日本沈没』の主人公は、

なぜ小松左京の「原作小説」と違うのか?

 

日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」(TBS系)は、かなり挑戦的なドラマです。
 
何より驚いたのは、主人公が環境省の役人「天海啓示」(小栗旬)であること。深海潜水艇の操縦士「小野寺俊夫」ではないのです。
 
1973年に出た、小松左京さんの原作小説「日本沈没」はもちろん、過去の映画やドラマも、主人公は当然のように小野寺でした。
 
ちなみに小野寺役は、73年の映画が藤岡弘(当時)さん。74年のドラマ(TBS系)は村野武範さん。さらに2006年の2度目の映画化では、草なぎ剛さんが演じています。
 
原作のある映画やドラマが、ストーリーや登場人物について、さまざまなアレンジを行うのは珍しくないかもしれません。
 
しかし、主人公を原作とは全く別の人物にしてしまうのは、異例の処置と言っていい。なぜなら、主人公の人物像は「物語全体の構造」に関わるからです。
 
つまり、主人公の大幅な変更は、原作通りでは描けない物語に挑む決断だということになる。
 
見えてくるのは、国家的危機に際して「誰が国民を守るのか?」というテーマです。
 
ドラマの設定は、小説から約50年後の2023年。
 
田所博士(香川照之)はいるものの、映画で丹波哲郎さんが演じた篤実な首相も、島田正吾さんが扮(ふん)した政財界の黒幕もいません。
 
脅威のタイプは異なりますが、同様のテーマを描いた作品に映画「シン・ゴジラ」(16年)があります。
 
主人公は政権党の衆議院議員で、内閣官房副長官だった矢口蘭堂(長谷川博己)。抜群の統率力を発揮して、ゴジラに対処していきました。
 
一方、天海は環境省所属の一官僚です。矢口のように直接、国を動かすことはできません。
 
可能な限りの手段を使って為政者たちに働きかけていきますが、そこに「もどかしさ」を感じるのは天海だけではないでしょう。
 
見る側も同じで、このドラマ独特の現実感がそこにあります。
 
国と国民の間に立つ者としての天海。未曽有の危機の到来を隠そうとする人たちに向かって言います。
 
「確かに関東沈没はこの国にとって不都合極まりない話だ。だからといって、その議論に蓋(ふた)をしていいわけがない!」
 
また、そんな天海を抑え込もうとする権力者に対しても、「私は今、日本の未来の話をしてるんです!」と一歩も引きません。
 
そして直近の第3話では、盟友である経産省官僚・常盤紘一(松山ケンイチ)に、こうも言っていました。
 
「俺たちは誰のために仕事をしているんだ? 政権のためじゃなく、国民のためだろう」
 
この場面を見ていて思い出したのが、18年3月に森友学園問題の公文書改ざんを苦に自死した、近畿財務局職員・赤木俊夫さんの言葉です。
 
妻・雅子さんの手記によれば、生前の俊夫さんは、
 
「私の雇用主は日本国民なんですよ。その国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています」
 
と、知人に語っていたそうです。
 
守るべきは「国」ではなく「国民」。そう信じて動こうとする天海を、徐々に応援したくなってくるのです。

寄稿した『現代用語の基礎知識2022』の発売!

2021年11月07日 | 本・新聞・雑誌・活字

情報・社会「メディアと放送」を担当させていただきました。

 

 

 

 

 


未知の物語との出会い オリジナルドラマの楽しみ

2021年11月06日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

 

 

碓井広義の放送時評>

未知の物語との出会い 

オリジナルドラマの楽しみ

 

ドラマには2種類ある。小説や漫画などを原作にしたものと、原作のないものだ。原作がある場合、その気になれば結末まで分かってしまう。一方、未知の物語への期待感はオリジナル作品ならではのものだ。

今期のドラマにも原作を持たない注目作がある。1本目は「最愛」(TBS-HBC)だ。主人公の女性実業家、真田(吉高由里子)は殺人事件の重要参考人。しかも15年前には真田の故郷で失踪事件があり、二つの事件の当事者は親子だ。

刑事の宮崎(松下洸平)は高校で陸上選手だった。寝起きしていた合宿所で世話になったのが真田の父親である。互いに淡い恋心を持っていた二人が、15年後に対立する立場で再会したのだ。そこに企業弁護士の加瀬(井浦新)がからむ。

プロデューサーは新井順子、演出が塚原あゆ子。「アンナチュラル」(18年)や「MIU404」(20年)の名コンビだ。昨年の東野圭吾原作「危険なビーナス」も吉高主演のサスペンスだったが、物語の緊迫度は今回が勝る。脚本は奥寺佐渡子と清水友佳子だ。

次は「アバランチ」(関西テレビ-UHB)。タイトルは雪崩を意味する英語だが、ドラマでは正義を訴える謎の集団の名称だ。

主演は「MIU-」で好演した綾野剛。今年公開された映画「ヤクザと家族 The Family」も話題を呼んだ。同作を監督したのは秀作映画「新聞記者」の藤井道人で、今作でも監督の一人として再び綾野と組んだ。

警視庁特別犯罪対策企画室の山守(木村佳乃)が集めたのは、訳ありの警察官(福士蒼汰)やハッカー(千葉雄大)など。「バレるな、殺すな、裏切るな」を信条に、警察が手を出せない巨悪に挑んでいく。先の読めない展開を支えるのは丸茂周と酒井雅秋の脚本だ。

3本目が「和田家の男たち」(テレビ朝日-HTB)。登場するのは一つ屋根の下で暮らす、男ばかりの家族だ。和田寛(段田安則)は新聞社の元社長。息子の秀平(佐々木蔵之介)は報道番組のプロデューサー。そして秀平とは血のつながらない親子である優(相葉雅紀)がネットニュースの記者。

新聞、テレビ、ネットと、和田家の男たちのキャリアは報道の歴史そのものだ。同じ事象に対する視点も考え方も違ってくる。脚本はベテランの大石静ら。ホームドラマに織り込んだ社会戯評が見る者を刺激する。

新刊小説のページをめくっていくようなワクワク感。そこでしか出会えない人物たちと物語こそ、オリジナルドラマの醍醐(だいご)味だ。

(北海道新聞 2021.11.06)


言葉の備忘録247 自然の・・・

2021年11月06日 | 言葉の備忘録

庭のもみじ 2021秋

 

 

 

自然の一部として

生まれてきただけ、

と思えば

気負いがなくなる。

 

 

篠田桃紅

『一〇三歳になってわかったこと』