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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

福岡のRKBラジオで、「吉本興行問題」について解説

2019年07月23日 | メディアでのコメント・論評

 

22日の午後、

福岡のRKBラジオ「仲谷一志・下田文代のよなおし堂」に

電話インタビューで生出演しました。

 

テーマは「吉本興行問題」です。

週末の宮迫さんたちの記者会見、

そして22日の岡本社長の記者会見を踏まえ、

話をさせていただきました。

 

生放送でしたが、

ラジコプレミアムのタイムフリー(アーカイブス)で

聴くことができます。

 

 


毎日新聞で、「宮迫さん、田村さん謝罪」について解説

2019年07月22日 | メディアでのコメント・論評

 

 

吉本興業:闇営業問題 

宮迫さん、田村さん謝罪 

ジャーナリスト・大谷昭宏さん、

碓井広義・上智大教授(メディア文化論)

 

◇吉本の体質変わらず ジャーナリストの大谷昭宏さんの話

一般常識からすると、どこかの段階で「この会合はおかしいのではないか」と気付くと思うが、記者会見でもまだそこを曖昧にしていると感じた。ただ、会見は自分たちの責任を認めつつ、吉本興業の実態や芸人の待遇を明らかにすることに重きがあったのではないか。島田紳助さんの問題から約8年たっても、責任を芸人に押し付ける吉本の体質は変わっておらず、危機管理をしっかりしていないが故に、反社会勢力が芸人に接触しやすくなるという悪循環を生んでいる。

◇「法令順守」の意識欠如 碓井広義・上智大教授(メディア文化論)の話

芸人が事務所を通さずに営業する場合、相手が反社会勢力なのかを十分に検証することができない。メディアを通じて名前が売れて社会的影響力が大きく、世間のコンプライアンス(法令順守)意識も高まっているという自覚が芸人側に欠けていたのではないか。ただ記者会見を通じて、芸人を1人の人間として扱っていないかのような吉本興業の旧態依然ぶりが浮き彫りになった感がある。21世紀にエンターテインメントビジネスを行う近代的企業として疑問だ。

(毎日新聞 2019.07.21


積極的に攻めている、日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」

2019年07月21日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評

 

 

日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」

「運命の停止」の瞬間に期待

 

旺盛な書き手だった三島由紀夫は、スポーツについても多くの文章を遺している。ただしボクシングや剣道など、自分が実際にやってきたスポーツを対象にしたものが大半だ。特に球技にはあまり興味がなかったのか、扱ったエッセイなども数少ない。

それでも昭和39年の東京オリンピックで、女子バレーの決勝戦を観戦した時、生まれてはじめて「スポーツを見て涙を流した」と書いている。そして、高く上がったボールがおりてくるまでの「間のびした時間」こそが、この競技のサスペンスの強い要素だと断言する。三島はこの時間を「運命の休止」と呼んだ。

そんな三島が今、ラグビーを見たら何と書くだろう。またラグビーを物語の軸とするドラマ、日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」(TBS系)について、どんな感想を持つだろう。

原作は「半沢直樹」や「下町ロケット」の池井戸潤。左遷によって弱小ラグビー部の責任者となったサラリーマンが、チームと自分自身を再生していく話だ。制作陣はヒットを期待される“チーム半沢”の面々だが、そのプレッシャーは大変なものだと想像する。

しかし立ち上がりを見る限り、まったく委縮していない。むしろ積極的に攻めている。その象徴が主人公の君嶋隼人役に大泉洋を抜擢したことだ。もちろん人気者ではあるが、看板ドラマ枠としては冒険に違いない。役者としての力量だけでなく、計測不能の“突破力”に賭けているのではないか。

また松たか子が演じる隼人の妻、君嶋真希の存在感も強烈だ。トキワ自動車で大きな力を持つ、滝川常務(上川隆也)に歯向かったことで、本社から府中工場に飛ばされた隼人。だが、真希は意気消沈する夫を慰めたりはしない。「勝負するって決めたんでしょ? なら負けたって仕方ないじゃない。工場だろうと、どこだろうと胸張って行きなさいよ!」。愛情に裏打ちされた見事な叱咤激励だ。

実はこの「真希」、池井戸の原作には登場しない。シナリオ段階で作られた人物と言っていい。結果は大正解で、ややもすればドラマ的ヒーローになりがちな「日曜劇場」の主人公に、人間味を含む奥行きを与える効果を生んでいる。しかも松たか子という演技派を投入したおかげで、真希は愛すべき恐妻として、ドラマと視聴者をつなぐインターフェイスの役目を果たしているのだ。

すでに隼人は役員会で優勝宣言までしてしまった。ラグビーにサラリーマン人生を重ねたこのドラマ、隼人同様、後へは引けない。ラグビーにおける「運命の休止」の瞬間を見るのも楽しみだ。

毎日新聞「週刊テレビ評」2019.07.20)

 


毎日新聞で、「公取委ジャニーズ注意」について解説

2019年07月21日 | メディアでのコメント・論評

 

 

<検証>

公取委ジャニーズ注意 芸能界の慣習にメス 

「番組成り立たない」 放送側そんたく背景

 

アイドルグループ「SMAP」の元メンバー3人のテレビ出演を巡り、ジャニーズ事務所がテレビ局に出演させないよう圧力をかけた疑いがあり、公正取引委員会は独占禁止法違反の恐れがあるとして同事務所を注意した。違反行為までは認められなかったが、民放関係者らは、大きな力を持つ同事務所へのそんたくを指摘。公取委の注意が、放送界や芸能界の体質改善につながるか、影響が注目される。【屋代尚則、井上知大、渡辺暢】

「大手の事務所を独立したタレントは、何年かテレビに出られなくなるのは、見ている方も気づいていると思う。ジャニーズ事務所に限らず(芸能界では)周知なんですよ」

公取委によるジャニーズ事務所への注意をマスコミ各社が報じた翌日の18日、日本テレビ系の情報番組「スッキリ」で司会を務めるタレントの加藤浩次さんは、ジャニーズなど大手芸能事務所と放送界との親密な関係の実態を明かした。

元SMAPメンバーのうち稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんの3人は2017年に同事務所から独立後、民放のレギュラー番組がなくなった。公取委は、同事務所がテレビ局に圧力をかけた疑いがあるとして調査し、今回の注意に至った。同事務所は17日夜、ホームページで「圧力」を否定したが、複数の民放関係者は「明確に分かる形での『圧力』はなかっただろうが、テレビ局側に『そんたく』はあったはずだ」と口をそろえる。背景には「ジャニーズのタレントがいないと番組作りが成り立たない」(民放関係者)という実情がある。別の民放幹部は「3人を起用すれば、『嵐』や『V6』を出してくれなくなるリスクがある」と打ち明ける。

「SMAPはなぜ解散したのか」などの著書のある武蔵大非常勤講師の松谷創一郎さん(社会情報学)は「元SMAPの3人だけでなく、芸能界では事務所を辞めて、テレビなどの仕事がなくなる類似の事案はある」と話す。数年前には、別の大手事務所を辞めて芸名を変え、出演機会が減った女優の例もあった。

テレビ局の報道姿勢への批判も上がる。大阪の民放局で番組制作に関わった経歴を持つ同志社女子大の影山貴彦教授(メディアエンターテインメント論)は「公取委のジャニーズへの注意について、民放各局による報道が極端に少ない。視聴者から違和感を持たれても仕方がない」と述べ、大手事務所との近すぎる関係を疑問視する。松谷さんも「放送局自身が今回の問題をきちんと調査すべきだ」と強調する。

芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会」の共同代表理事を務める佐藤大和弁護士は「公取委は事務所だけでなく、テレビ局側も注意すべきだった」と指摘したうえで、「芸能事務所には本来、反社会勢力からタレントを守るなどの役割もある。不当な妨害が是正される、よりよい環境になってほしい」と期待感を示す。

今回の注意を受けて、インターネット上には、元SMAP3人のテレビでの復活を期待する声も上がる。ただ、民放では「今回の件だけで3人を積極的に使おうという動きには、すぐにはならないのではないか」(関係者)との冷ややかな声が強い。一方で、別の民放幹部は「公取委がこうした判断をしたことは無視できない」と述べ、今後の地上波出演が検討される可能性も示唆した。

テレビ制作現場に詳しい碓井広義・上智大教授(メディア文化論)は「才能ある芸能人を出演させなければ、結果的に不利益を被るのは視聴者だ。大手事務所と面倒を起こしたくないというテレビ局の『事なかれ主義』で生じてきた視聴者の不利益が、解消されるきっかけになれば」と話す。

 ◇「自戒」に期待

「ものすごくそんたくが働く業界。証拠も少なく、独禁法違反の認定は難しいのではないか」。公取委のジャニーズへの調査について、関係者からは当初から悲観的な見方が出ていた。結論はそうした見方に沿って「注意」にとどまったが、移籍トラブルを巡り芸能事務所に注意したのは初めてとみられ、業界に切り込んだ意義は大きいとの評価もある。

フリーランスで働く人が増えたことを背景に、公取委の有識者検討会は2018年2月、企業による移籍制限などの不利な条件の押しつけは独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たる恐れがあるとの報告書をまとめた。芸能人やスポーツ選手も保護の対象になり得るとの見解で、ちょうど元SMAPメンバーの独立が話題になっていたこともあり、公取委の動きが注目された。

公取委も独禁法の取り締まり対象となる事例があるかどうか、芸能・スポーツ界を幅広く調べてきた模様だ。しかし、結びつきが強い業界で圧力の存在を立証して違反を認定するのは簡単でなく、ジャニーズ事務所やテレビ局への調査は難航したとみられる。独禁法違反を巡る公取委の措置には3段階あるが、法的措置の排除措置命令や行政指導に当たる警告に続き、注意は最も弱い措置だ。ただ、公取委には調査打ち切りという選択肢もあった。それでも注意としたのは、公取委が、テレビ局と大手芸能事務所の不均衡な関係に疑念を抱き、改善を求める強い姿勢を示した結果だともいえる。

公取委内部では当初、18年の報告書が出たこと自体が「業界の自戒を促すことになる」との見方があった。公取委が業界を監視する過程では、自主的な改善例も確認された。ただ、芸能・スポーツ界の裾野は広く、「育成費用回収の面からも、移籍制限は仕方ない」といった考えは根強い。

そうした中、今回の注意で業界への「一罰百戒」が期待され、公取委関係者は「業界内の自主的な慣習打破が促されている」と解説する。業界への浸透には時間がかかりそうで、公取委は今後も同種の事例については厳しく監視を続けるとみられる。

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 ◇事務所「圧力ない」

ジャニーズ事務所は17日深夜、ホームページで、「弊社がテレビ局に圧力などをかけた事実はなく、公正取引委員会からも独占禁止法違反行為があったとして行政処分や警告を受けたものでもありません。とはいえ、このような当局からの調査を受けたことは重く受け止め、今後は誤解を受けないように留意したいと思います」とのコメントを発表した。

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 ◆独禁法違反を巡る公取委の措置

◇排除措置命令(法的措置)

独禁法違反の認定時、違反の取りやめや再発防止を求める。原則公表

◇警告(行政指導)

違反の恐れがある時、改善措置を求める。原則公表

◇注意

直ちに違反とは認められないが、行為を継続すれば将来的に違反につながる恐れがある時、未然防止の観点から行う。原則非公表

(毎日新聞 2019.07.19)

 

 


実習科目「テレビ制作」撮影快調!

2019年07月20日 | 大学

 

 


言葉の備忘録95 気に入らぬ・・・

2019年07月19日 | 言葉の備忘録

 

 

気に入らぬ

もあろうに

柳かな

 

――仙涯和尚

吉行和子 『そしていま、一人になった



 

そしていま、一人になった
吉行 和子
ホーム社



仲間由紀恵が“不倫妻”演じる配役の妙「偽装不倫」

2019年07月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「偽装不倫」(日本テレビ系) 

仲間由紀恵が不倫妻演じる配役の妙


杏が主演の「偽装不倫」は、独身なのに人妻のフリをするアラサー女子の恋愛物語だ。

派遣で働いている濱鐘子(杏)は、契約切れをきっかけに福岡への一人旅に出る。機内でカメラマンの伴野丈(宮沢氷魚)と出会うが、たまたま姉(仲間由紀恵)の結婚指輪を持っていたため、伴野に「人妻」だと思われてしまう。

過去の婚活で成果が得られなかったこと、伴野が人妻に執着していることなどから、鐘子は誤解を放置する。偽装不倫の始まりである。 

あり得ない設定かもしれないが、そこはドラマとして楽しめばいい。偽装不倫旅行とはいえ、しっかり一夜を共にする展開もあって、まさに大人のラブコメだ。

このドラマ、ヒロインに杏を持ってきたことで成功している。「花咲舞が黙ってない」(日テレ系)や「デート~恋とどんなものかしら~」(フジ系)がそうだったように、生真面目さとちょっと抜けたところが同居したキャラクターを演じさせたら、杏はうまい。 

また姉の葉子役に仲間由紀恵というのも憎いではないか。実は本当に不倫しているのは葉子のほうなのだ。

仲間の夫は俳優の田中哲司だが、2年前、その田中が不倫騒動を引き起こした。当時は冷静に対応した仲間が、役柄とはいえ「不倫妻」になる。リアル夫への復讐にも見えて、いやはや、日テレの商魂も仲間の根性もなかなかのものだ。

 (日刊ゲンダイ 2019.07.17


言葉の備忘録94 この世界は・・・

2019年07月17日 | 言葉の備忘録

 

 

この世界はか細い橋だが

恐れることはない

渡っていけるんだ

 

――地中海沿岸に伝わる古い詩

リャオ・イーウー「銃弾とアヘン」



銃弾とアヘン:「六四天安門」生と死の記憶
土屋 昌明,鳥本まさき,及川 淳子
白水社



デイリー新潮で、『イッテQ』とBPOについて解説

2019年07月16日 | メディアでのコメント・論評

 


日テレ「イッテQ」にBPOのお咎めなし、

ならばフジ「ほこ×たて」はどうなの?

「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)の「ヤラセ疑惑」に対し、7月5日、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が結論(意見書)を公表した。

曰く、〈放送倫理違反があった〉とヤラセを認める結論ではあるのだが、その内容はむしろ日テレに同情的で、〈完成度の高い「祭り」に出会えることを期待する〉などと復活を望む言葉で結んでいる。それゆえ、日テレも問題となった祭り企画の復活を宣言したのだ。

テレビ業界からは、「ならば、かつてBPOに断罪された『ほこ×たて』(フジテレビ)は何だったのか……」との声が上がっている。

日曜夜のバラエティの王者「イッテQ」で、宮川大輔が世界各地の珍しい祭りを訪ねて挑戦する名物企画に、ヤラセがあったと報じられた問題への判決がようやく出た。それがBPOが発表した〈日本テレビ『謎とき冒険バラエティ 世界の果てまでイッテQ!』 2つの「祭り企画」に関する意見〉なのだが、これがどうにも煮え切らない。

問題の「ラオス・橋祭り」(2018年5月20日放送)、「タイ・カリフラワー祭り」(17年2月12日放送)などを対象に、検証委員会は日テレのプロデューサー、総合演出、制作会社のプロデューサー、現地コーディネーターなど12人に対し聴き取りを行ったという。

その上で、〈今回の2つの「祭り」は、番組のために現地で用意したものであった〉と現地で伝統的に行われている祭りはなかったことを認めながら、結論としては〈程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があった〉という、執行猶予付き有罪判決のような中途半端なものだった。

そればかりか「おわりに」と題して、委員会が「イッテQ」を視聴して楽しんだことを紹介。挙げ句に、〈「祭り企画」について日本テレビは、視聴者に自信を持って提供できる態勢を整えたのち再開したい意志があると聞く。(中略)完成度の高い「祭り」に出会えることを期待する。〉などと復活を望む言葉で結んでいるのだ。

でっち上げの祭りであることを認めておきながら、なぜこんな結論になるのだろうか。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)が解説する。

「平たく言うと、ヤラセを行ったのは現地のコーディネート会社だから、ということです。『こんな祭りがあるんですよ』という口車に乗せられた制作会社も、ましてや制作会社が撮ってきた番組を見て気づかなかった日テレも、お咎めなしというわけです。ただしBPOは、意見書では“ヤラセ”という言葉を使用していません。これに疑問を持った記者の方も少なくなかったようで、会見では『なぜ“ヤラセ”などの言葉を使わなかったのか』という質問が出ていましたね。これに対して、BPOの升味佐江子委員長代理は『“お約束”として視聴者が納得している演出には、誰も“ヤラセ”とは言わない』と答えています。でも、視聴者の皆さんは“お約束”として見ていたでしょうか。年に一度の海外の伝統ある祭りに、日本から宮川さんが参加して、挑戦し、頑張ったというドキュメント・バラエティを信じて見ていたわけです。それが伝統ある祭りでも何でもなかったということになれば、演出でも誇張でもなく、でっち上げ、ヤラセですよ。随分、BPOも寛容になりましたね。かつては、ヤラセの事実があれば、たとえ制作会社の撮った番組であっても〈重大な放送倫理違反があった〉となったはずですが」

「ほこ×たて」と何が違うのか?

〈重大な倫理違反〉第1号と言えば、やはりヤラセを問われたバラエティ番組「ほこ×たて」(フジテレビ)である。タカアンドトシの司会で、“矛盾”の故事にちなみ、「絶対に穴の開かない金属」と「どんな金属にも穴を開けられるドリル」を対決させるなどして、人気となった真剣勝負バラエティだ。

ところが、13年10月20日に放送された「どんな物でも捕えるスナイパーVS絶対に捕えられないラジコン」という企画で、出演者から真剣勝負ではなかったという指摘がインターネットでなされて発覚したものだ。

「『ほこ×たて』では『ない対決を、ある』としたことが〈重大な放送倫理違反〉に当たるとされました。『イッテQ』と同じはずですよ。しかも、あの時は〈フジテレビの放送局としての存在感の希薄さ〉が問題とされました。『ほこ×たて』も制作会社が作った番組でしたが、BPOはフジが丸投げしていたことも断罪したのです」(前出・碓井教授)

具体的には14年4月1日に公表された〈フジテレビ『ほこ×たて』 「ラジコンカー対決」に関する意見〉で、「結論」の最後にこう記している。〈局の制作会社への丸投げや、その結果生じた番組の基本コンセプトについても合意形成の不在と、局内チェックの実効性低下にも、この放送倫理違反をもたらした深刻な問題があったと考える。〉

ちなみにフジは、BPOの意見を待つことなく、ヤラセの指摘を受けた翌11月には、番組打ち切りを決定。社長が謝罪し、取締役を減俸、編成制作局編成部長、バラエティー制作部長、チーフプロデューサーを減給すると発表した。

同じような事例にもかかわらず、どうしてこうも結論が違うのだろうか。BPOはいつから日テレ応援団になったのだろう。

「そう思われても仕方がないほど、『イッテQ』の意見書の内容は、ヤラセが報じられたときに日テレが出した弁解と似ています。そもそもBPOは、放送が言論と表現の自由を確保しつつ、為政者にコントロールされないように、自浄作用を促すために作った団体であり、なくてはならないものです。初代委員長を務めた川端和治さんはじめ、是枝裕和監督など以前のBPOの放送倫理検証委員は、そう思われないために、非常に厳格な審議をしていました。しかし視聴者に、BPOってNHKと民放で作った身内に優しい団体なのね、と思われてしまったら、存在意義が問われかねません。心配ですね」(同・碓井教授)

ここまで甘ければ、日テレだって本当に反省しているのか疑わしくもなる。業界内では、さっそく「イッテQ」にお咎めなしなら、フジは「ほこ×たて」を復活させてもいいのでは、という声まで囁かれているとか。民放プロデューサーは言う。

「ちょうど『イッテQ』のウラで放送されているのが、『でんじろうのTHE実験』(フジ)という実験バラエティです。いくら米村でんじろう先生でもネタ切れになってきたのか、科学と実験の名のもとに“対決”企画が放送されるようになっています。これが“新旧滑らない靴摩擦対決”として、最新の作業靴とわらじを対決させるなど、明らかに『ほこ×たて』を彷彿させるような内容で、なかなか面白い。視聴率はまだまだのようですが。ならばいっそのこと、『イッテQ』のウラで『ほこ×たて』を復活させても問題ないんじゃないの?なんて言っているんですけどね」

ヤラセの汚名を着せられたままの「ほこ×たて」ではあるが、斬新な企画であったために、ギャラクシー賞第48回奨励賞やATP賞テレビグランプリ2011 情報バラエティ部門最優秀賞、日本民間放送連盟賞テレビエンターテインメント部門最優秀賞などにも輝いた。番組打ち切りと入れ替わるように始まった、よく似た番組「超絶 凄ワザ!」(NHK)は昨年、終了している。ひょっとするとチャンスかもよ、フジテレビ。<週刊新潮WEB取材班>

(デイリー新潮 2019年7月14日)


「サマーウオーズ」10周年タイアップCMの傳谷英里香さん

2019年07月16日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

明治安田生命

「サマーウオーズ」10周年タイアップCM

「やさしさ」学び  未来へ前向きに

 

そのCMは、「拝啓、陣内栄様」とい う呼びかけで始まり、「おばあちゃんは 私に本当のやさしさを教えてくれまし た」と続く。

栄おばあちゃんは、公開か ら年になるアニメ映画『サマーウォー ズ』(細田守監督)に登場した、信州の 旧家を率いるゴッドグランドマザー。新 人の「MYライフプランアドバイザー」 である主人公にとっては〝心の師〟だ。

画面では、師匠から「やさしさ」を学 ぼうとする彼女と、懐かしい映画のシーンが交差していく。でも、師匠と同じで ある必要はない。「私は、私のやさしさ を、がんばる」・・それでいいのだ。  

演じているのは女性アイドルグループ 「ベイビーレイズJAPAN」の元リー ダー、傳谷英里香(でんやえりか)さん。

『世界ふしぎ発見!』のミステリーハン ターに加えて、この7月からは『ランウ エイエイ24』で連ドラ初出演にも挑戦している。明るい笑顔と前向きな姿勢が、未来 へと向かうヒロインにぴったりだ。

(日経MJ 2019.07.15


「サンデーモーニング」で、テレビとアイドルについて解説

2019年07月15日 | メディアでのコメント・論評

2019.07.14


週刊朝日で、「おしん」と「なつぞら」について解説

2019年07月14日 | メディアでのコメント・論評

 

 

「おしん」令和に再注目

「『なつぞら』のヒロインよりスゲー」

「面白すぎる」



現在NHK BSプレミアムで午前7時15分から再放送中の連続テレビ小説「おしん」が、巷の声やSNS上などで再び注目を集めている。

1983年から84年にかけ放送された。山形県の貧しい農家に生まれたおしんがさまざまな経験を重ねながら成長、やがて大成功を収める一代記。「おしんの“しん”は辛抱の“しん”」という名ぜりふも話題になり、平均視聴率52.6%と、テレビドラマ史上最高視聴率記録を持つ作品だ(ビデオリサーチ調べ)。

「橋田壽賀子さんの脚本による密度の濃さがとにかくすごい。常に正面から闘っているおしんの強さも、魅力の一つです」

と、ドラマ評論家の田幸和歌子さんは言う。

一方、朝ドラ最新作の「なつぞら」は地上波版の視聴率は20%前後を維持しているものの、昭和の名作の再放送に思わぬ余波を受けている。

BSでの放送は「おしん」の直後、7時30分から。幼いころに戦争を体験し北海道へ連れてこられて育ったヒロインが東京に戻り、アニメーターとして活躍する物語だ。

「朝ドラ100作目ということもあり、それこそ『おしん』の小林綾子さんや『純ちゃんの応援歌』の山口智子さんら歴代ヒロインが続々と出演していることでも話題。『おしん』をセット放送しているのも、100作目を盛り上げるためだったと思います」(田幸さん)

しかし、「おしん」の迫力が災いしているのか、BS派の視聴者にとっては「なつぞら」がどうにも「ぬるく」映ってしまうようなのだ。

「おしんは関東大震災も戦争も、もろにかぶり、少女時代から常に敵役と呼べる存在がいて、しかも、そのリアリティーも見事。綿菓子的な作品に慣れた現代の視聴者にとって、かみごたえのあるドラマが突然現れた。若い世代にとっては新発見であり、一度見た人もいろんな体験を重ねたことで、より深く感じられる」

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)はそう指摘する。

「ドラマというものは基本的には葛藤の連続で構成されているのですが、『なつぞら』はその葛藤さえも、どこか緩い雰囲気がある。東京大空襲にもあまり緊迫感を感じられず、周りもいい人ばかりです」

「おしん」の再放送は、「なつぞら」が終了した後も続く。101作目の戸田恵梨香主演「スカーレット」も、昭和の名作の陰影をかえって深く映しだすのか。(本誌・太田サトル)

(週刊朝日 2019年7月19日号)

 


「ジャニー喜多川」とは何者だったのか!?

2019年07月12日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

「ジャニー喜多川」とは何者だったのか!?

 

ジャニー喜多川さんが亡くなりました。たくさんの記事が一挙に発信され、それらを読んでいると、この国の芸能界にとって、いかに大きな存在だったのか、再認識させられます。

あらためて、「ジャニー喜多川」とは何者だったのだろうと思い、とりあえず2冊の本を読み直してみました。

「教師」としてのジャニー喜多川

一冊目は、批評家・矢野利裕さんの『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)です。この本で最も興味深いのは、ジャニーズ事務所の創設者である、ジャニー喜多川さんの人物像です。
 
まず、終戦後のアメリカで学生時代を過ごした、「日系二世のアメリカ人」であること。これはジャニーさんについて考える際の、いわば原点と言えるでしょう。
 
次に、ジャニーさんの根底にあるのは、アメリカ文化やアメリカの価値観を、日本人に「教える」というスタンスであり姿勢です。日本人は「生徒」だったのです。
 
そんなジャニーさんにとって、所属するアイドルたちもまた「生徒」です。彼らは、「教師」としてのジャニーさんが求める姿を、ストレートに体現化することが必然となります。
 
ただし、そこにはアイドル自身の「自我」はいらないんですね。なぜなら、「自我や自己を遠ざけたところにこそ、(中略)ジャニーズのアイドル性や華やかさは見出される」からです。
 
たとえばSMAP。活動を始めた90年代初頭、テレビの歌番組は激減し、CDもかつてほどの売れ行きが望めなくなっていました。
 
彼らは飯島三智マネージャーの戦略もあり、それまでのアイドルが見向きもしなかった、お笑いの世界やバラエティに参入することで活路を見出していきます。しかし、それはジャニーさんが目指す、「ショーアップされたスター性」からの逸脱でもあったのです。

「義理と人情」とジャニー喜多川

「ジャニー喜多川」について考えるための、もう一冊。ポピュラー文化に詳しい、松谷創一郎さんの『SMAPはなぜ解散したのか』(SB新書)です。
 
松谷さんは、ジャニーさんが率いていたジャニーズ事務所について、会社の「存在感の大きさ」と、「義理と人情の社風」とのギャップを指摘します。
 
所属タレントや社員との一種異様な関係も、またマスコミ操縦や世論誘導も、それが前時代的で硬直化した振る舞いだという自覚を持たない(持てない)ことの表れだとしています。そしてマスコミ、特にテレビ局の忖度(そんたく)と保身がそれを助長したのだと。
 
ジャニーズ事務所が持つ、骨がらみの体質である“義理と人情”。そして飯島三智マネージャーに対して、メンバーが抱えていた“義理と人情”。2つの“義理と人情”の衝突の結果がSMAPの解散だった。そう松谷さんは言うのです。読んでいて、十分に納得感のある考察でした。

通信社の取材に答えて・・・

ジャニーさんの訃報が伝えられた夜、地方紙などに記事を配信する、通信社からの取材を受けました。
思うところを、あれこれ、お話しさせていただきましたが、最後に、記者さんには以下のようなことをお伝えしました。
 
ジャニー喜多川さんは、アメリカ型エンターテインメントの「伝道師」として、日本にないものを作り出し、女性アイドル中心の芸能界に、「男性アイドルグループ」という枠組みを創出しました。
また、ファンとアイドルを「ファミリー」という形でくくり、そこに価値を生み出すビジネスモデルを確立したのもジャニーさんです。
 
自身の精神を伝えるため、最後まで現場に足を運ぶ、徹底した「現場主義」を貫きました。育ててもらったタレントはもちろん、日本の芸能界は、唯一無二の存在を失ったのだと思います。
 
ジャニー喜多川さん 享年87。
 
合掌。

「あなたの番です」 田中圭の復讐はどう果たされる?

2019年07月11日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

日テレ「あなたの番です」

田中圭の復讐がどう果たされるか


いや、驚いた。ヒロインだったはずの登場人物が物語半ばで死んでしまうとは! 第2章「反撃編」に突入した、「あなたの番です」。その第1章の終わりで、原田知世が演じる手塚菜奈が殺されたのだ。

菜奈が夫の翔太(田中圭)と共に入居したマンションで、住民たちが次々と命を落としてきた。発端は住民集会の座興だ。「殺したい人」の名前を紙に書き、それをランダムに配布する交換殺人ゲームだった。ところが、何者かによって殺人が実行されていく。

SNSで「誰々が怪しい」「こいつも変だ」と推理合戦が盛り上がっているのは、制作側にとって「してやったり!」だろう。このドラマ枠では、前作「3年A組」もネットの反響をバックにブレークしていった。しかも今回の放送は2クール。途中で視聴者が簡単に犯人を特定できるようでは失敗作だ。それでいて、フェアなミステリーであるためには、真相につながる材料も提供しなくてはならない。


舞台は「3年A組」が学校だったように、マンションという限定された場所だ。見る側を飽きさせないストーリー展開と、多くの登場人物をさばいていく演出、そして「狂気をはらんだ主婦」木村多江をはじめとする役者たちの技量が支えとなる。


原田知世が見られないのは寂しいが、田中圭の復讐がいかに果たされるのか、目が離せない。

(日刊ゲンダイ 2019.07.10)


新潟日報で、「NGT48」問題について解説

2019年07月10日 | メディアでのコメント・論評

 

 

NGT活動再開、道険しく
暴行発覚から半年、公演日程公表されず

新潟県を拠点とするアイドルグループ「NGT48」の元メンバー山口真帆さん(23)の暴行被害が発覚してから8日で半年となった。運営会社「AKS」(東京)は暴行に端を発した騒動により、劇場公演の中止など1億円以上の損害を受けたとして、暴行で逮捕された男性2人に賠償を請求。民事訴訟は10日に新潟地裁で始まる。一方、現在もなお公演再開の日程は公表されておらず、グループの先行きも不透明なままだ。

新潟市中央区のNGT専用劇場では、5月18日に山口さんらが卒業して以降、公演は開かれていない。1月に山口さんが被害を訴えるまでは月平均13回の公演があったが、現在は土日を中心にロビーでグッズが販売されるのみだ。

東京からの出張のついでに劇場に寄り、グッズを購入したという会社員、小出三郎さん(45)は「劇場施設は素晴らしい。だがNGTの活動再開は難しいのだろうか」と残念がる。

AKSは訴状に損害額を記載した。劇場公演中止で1カ月当たり1188万円、ツアーコンサート中止で3994万円に上るとした。

影響は劇場外にも波及した。地域密着を掲げ、県内企業や行政とも積極的に連携していたが、騒動の後、有力スポンサーがCMを休止。9月開幕の「国民文化祭」「全国障害者芸術・文化祭」も県はスペシャルサポーターの再契約を見送った。花角英世知事は6月の会見で、NGTとの契約について「(県民から歓迎されるとは)思えない」と述べている。

地元放送局で持っていたテレビやラジオの番組も終了、休止し、現在、メンバーたちが日常的に県民の目に触れる機会はなくなった。

AKSは8日時点で、NGTの劇場公演の見通しについては「今お答えできる状況にない」とする。一方で今月1日にはメンバーのセキュリティー強化などの対策をホームページで公表しており、活動再開に向けた布石と見ることもできる。

しかし、騒動の収束は容易ではないとみられる。

山口さんの卒業公演直後には、他のメンバーが会員制交流サイトで、山口さんを取り上げたテレビ番組について不適切な投稿をし、処分される事態となった。インターネット上ではメンバーへの誹謗(ひぼう)中傷が拡散。批判コメントが殺到する“炎上”がたびたび起き、メンバーがファクスで「殺す」と脅迫されたこともあった。

再生を願うファンの声は切実だ。劇場を訪れた新潟市北区のフリーター男性(40)は「グループのイメージが悪くなり、残ったメンバーがかわいそうだ」と嘆いた。

◎見守り育てる視点、AKSに欠如

NGT48を巡る一連の騒動の背景について、上智大文学部の碓井広義教授(64)=メディア文化論=は、AKBグループの拡大路線による「限界」を指摘した上で「若いメンバー一人一人を見守り育てる視点がAKSに欠如していたのではないか」と分析する。

NGTの現状については「新潟の元気を発信するために発足したはずのグループ。アイドルは人を元気にするのが仕事だが、今は新潟の元気を奪っている」と断じる。

活動再開については「アイドルにとってイメージは大きい。疑念を持たれたままでは再開は難しいだろう」と強調。「セキュリティー面だけでなく、衣装や楽曲なども含めて一新し、新生NGTとして出直すべきでは。対応は早ければ早いほうがいい」と述べた。

(新潟日報 2019.07.09)