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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「視聴覚教育」春学期の終了

2014年07月18日 | 大学

放送論の基礎などの座学に始まり、企画立案からスタジオ収録までを行ってきた「視聴覚教育」。

こちらもまた春学期終了です。



「架空の公共広告」という“お題”で、いわば生放送に近い形での
本番でした。

自分たちの作品を客観的に見るのも、発表会でのことになります。

1本ずつプレビューしながら講評。

4月には、影も形もなかった6本の映像作品が誕生しました。

おつかれさま!


「テレビ制作 2」春学期の終了

2014年07月18日 | 大学

学外に出て取材を行い、ドキュメンタリーを制作するこの授業も、
春学期終了です。

NHKの新人研修と同様、地域限定でテーマを見つけ、番組にしてきました。

途中でテーマの変更を行ったチームも何とか間に合って、労作3本の発表会。

今月末のオープンキャンパスで、高校生たちに見てもらおうと思っています。

おつかれさま!



【気まぐれ写真館】 梅雨明けはいつ?

2014年07月18日 | 気まぐれ写真館

週刊ポストで、NHK「花子とアン」の"今後"について解説

2014年07月17日 | メディアでのコメント・論評

発売中の「週刊ポスト」最新号に、NHK朝ドラ「花子とアン」に関する特集記事が掲載されました。

この中で解説をしており、以下、一昨日の続きです。


『花子とアン』今後のストーリーの行方 
キーマンは伝助か

吉高由里子主演の連続テレビ小説『花子とアン』(NHK総合、月~土、午前8時~8時15分ほか)のブームがますます過熱している。

7月5日には放送開始以来、最高視聴率となる25.9%を記録。週間視聴率は放送開始から14週連続で21%を超えている。

明治、大正、昭和の激動の時代を描いた物語は、はや後半戦に突入。『花子とアン』を欠かさず見ている識者に、気になるストーリーの行方や注目ポイントはどこにあるのか。

上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏は意外な人物に注目している。

「明治の無骨な男・伝助は横暴な大富豪ですが、最近では蓮子に彼なりの愛情を表現してファンの間で好感度がアップしています。

駆け落ちで絶縁状を突きつけられる伝助は体面を傷つけられ、怒り狂うと思いますが、蓮子の幸福を願う気持ちもどこかで持ち始めるのではないでしょうか。伝助が蓮子との関係をどう終わらせるのかが気になりますね」


『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版刊)の著者で、ライターの田幸和歌子氏も同じく伝助に目を向ける。

「伝助は蓮子に初めて会った時から“この世のもんとは思えんたい”と一目惚れしています。大富豪ですが、都会の令嬢である彼女にバカにされまいと、お金でしかうまく愛情を表現できない切なさが女性には健気に映るんです。

一方、蓮子も仲間さんのオーラを感じさせる演技で人気が高い。“蓮子人気”を損なわないために、あまり手酷く伝助を捨てるというような演出にはならないでしょう。どこかで伝助なりの愛にも気づく場面が用意されるのではないでしょうか」

伝助役の吉田鋼太郎も『花子とアン』公式ガイドブックのインタビューで、「伝助は蓮子を相当に愛していたような気がしています。そんな彼の思いをどう演じていくかが課題です」と語っている。

(週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号)




ドラマ「HERO」の大学生視聴率は10%!?

2014年07月17日 | テレビ・ラジオ・メディア

シナリオを軸にドラマの構造について考察してきた春学期の授業
「メディアと文化(表象文化論)」が、ついに最終回を迎えました。

山田太一:脚本 「それぞれの秋」 「岸辺のアルバム」

倉本 聰:脚本 「北の国から」

宮藤官九郎:脚本 「あまちゃん」


などを取り上げてきたのですが、毎回、自分でも発見や再発見があって、面白かったです。

「やはりドラマは脚本なんだよなあ」と、あらためて実感。


そうそう、今週、フジテレビ「HERO」の初回が、視聴率26.5%をゲットして話題になっています。

教室にいる120名の学生たち(学部学科、学年もバラバラ)に、
「この初回を見た人は?」と聞いてみました。

すると、意外や、手を挙げたのが12~13名。

教室内視聴率は10%でした。

20歳前後の若い衆がコレだとすると、26.5%-10%=16.5%は、どんな年代が見たのか?(笑)

実に興味深いです。





昭和テイストも悪くない、フジテレビ「若者たち2014」

2014年07月16日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!! 」。

今週、取り上げたのは、フジテレビの新しい連ドラ「若者たち2014」です。


フジテレビ「若者たち2014」
48年後の今、リメークする意味は何か

今クールの「HERO」や「GTO」もそうだが、続編やリメークは最近のフジテレビのお家芸だ。

ヒットドラマは貴重な資産であり、それを上手く生かそうとするのもまた商売ではある。とはいえ、よもや「若者たち」を引っ張り出してくるとは思わなかった。

田中邦衛や山本圭が出演したオリジナルが放送されたのは1966(昭和41)年。高度経済成長の陰に隠れた社会問題や矛盾を物語に取り込んだ社会派ドラマだった。48年後の今、これをリメークする意味は何なのか。

「若者たち2014」の初回を見て、あらためて驚いたのは豪華キャストだ。妻夫木聡、瑛太、満島ひかり、蒼井優、長澤まさみ、橋本愛、吉岡秀隆と主演級をこれだけ揃えたドラマも珍しい。

彼らを通じて学歴、就職、家族、恋愛、結婚など、いつの時代にも共通する若者たちの課題や悩みを、現代社会という背景の中で描いていこうとする意志が垣間見えた。

そして、ドラマ全体に漂う昭和テイストも悪くない。家族同士が自分の感情をむき出しにして、気持ちを直接ぶつけ合うドラマは久しぶりだ。メール万能の時代に鬱陶しいと言われそうだが、ほっとするような人間らしさがそこにある。

演出陣の中軸は「北の国から」のベテラン・杉田成道だ。その職人技が、昭和と現在を見事につないでいた。

(日刊ゲンダイ 2014.07.15)


実習授業「テレビ制作」鋭意編集中

2014年07月16日 | 大学













週刊ポストで、NHK「花子とアン」人気の理由を解説

2014年07月15日 | メディアでのコメント・論評

発売中の「週刊ポスト」最新号に、NHK朝ドラ「花子とアン」に関する特集記事が掲載されました。

この中で解説をしています。


『花子とアン』人気の理由 
正統派ながら冒険加えているから

NHK連続テレビ小説で人気の『花子とアン』(脚本・中園ミホ)は、『赤毛のアン』の翻訳家、村岡花子の明治から昭和にかけた激動の半生を描いた、花子の孫の村岡恵理氏の著書『アンのゆりかご』(新潮文庫)が原案である。

7月5日には放送開始以来、最高視聴率となる25.9%を記録。週間視聴率は放送開始から14週連続で21%を超えている。

縁の地をめぐる“聖地巡り”も盛んで、例えば幼少期の花子が通う教会として登場する山梨県韮崎市の「蔵座敷」には、放送開始から6月までの時点で、すでに昨年の年間入場者数を上回る約2000人が訪れた。

作中で繰り返される、「しっかり」を意味する「こぴっと」や、驚いた時に発する「てっ!」という山梨の方言も、『あまちゃん』の「じぇじぇじぇ」と同じく流行語になりつつある。

吉高演じるはなが明るく健気に頑張る「ヒロイン一代記」という一見オーソドックスな朝ドラでありながら、なぜ、ここまで人気が出たのか。

毎朝欠かさず見ているという上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏はこう指摘する。

「当初は『赤毛のアン』の翻訳家・村岡花子って誰? という印象だった主人公を、演技に定評のある吉高さんがうまく味付けして、非常に魅力的に作り上げた。それによって、村岡花子という実在の女性への関心が掘り起こされました。

また本作は、はなだけでなく、歌人・柳原白蓮をモデルとした仲間由紀恵さん演じる葉山蓮子とのダブルヒロインとして描いた点も良い。白蓮の人生は波瀾万丈で、史実でも『白蓮事件』という大正期を代表する不倫スキャンダルを起こしました。

これまでの朝ドラの爽やかなヒロイン像を守りながら、不倫という通俗性も盛り込んでいる。朝ドラとしては結構な冒険もしているから面白いんです」


(週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号)

季刊誌「考える人」の “文庫本” 特集

2014年07月14日 | 書評した本たち

当たり前ですが、週刊誌は毎週、月刊誌は毎月、新しい号が出ます。

しかし、季刊誌となると年に4回。

新しいものは、3ヶ月待たないといけません。

大好きな「考える人」(新潮社)も季刊で、2014年夏号がようやく出ました。

特集が「文庫 小さな本の大きな世界」。

やはり、本をめぐる特集は嬉しいですねえ、

今年は新潮文庫の100周年に当たるそうだし。



それから、坪内祐三さん、角田光代さん、ブックデザイナーの祖父江眞さんによる鼎談もいいですね。

話の中に出てくる文庫で、未読のもの(安藤更生「銀座細見」、大庭みな子「三匹の蟹」など)が気になります。

さっそく探してみよう。




今週の「読んで書評を書いた本」は次の通りです。

大木晴子・鈴木一誌:編著 『1969 新宿西口広場』 新宿書館

角田光代 『ポケットに物語を入れて』 小学館

宮城谷昌光『三国志読本』 文藝春秋

三冨 圭 『会社があなたを選ぶ理由の作り方』 
幻冬舎ルネッサンス

* これらの書評は、
  発売中の『週刊新潮』(7月17日号)
  読書欄に掲載されています。


【気まぐれ写真館】 NHK雪上車「スノータイガー」

2014年07月13日 | 気まぐれ写真館

フライデーの記事: NHK「クローズアップ現代」と菅官房長官

2014年07月13日 | メディアでのコメント・論評

発売中の「フライデー」最新号に、菅官房長官が出演したNHK
「クローズアップ現代」に関する記事が掲載されました。

この中で、コメントしています。


『クローズアップ現代』で
集団的自衛権について突っ込まれた菅官房長官側が激怒
国谷キャスターは涙した…
 

安倍官邸がNHKを ”土下座”させた一部始終

「政府が『右』と言っているものを、『左』と言うわけにはいかない」

今年1月、安倍政権のゴリ押しでNHKの会長に就任した籾井勝人氏(71)が、就任会見で力強くこう発言したことを覚えているだろうか。あれから半年、会長の言葉通り、NHKは政府の意向に逆らえない放送局になり下がったようだ。7月3日に生放送された

『クローズアップ現代』について、安倍官邸がNHKに猛抗議し、上層部が右往左往しているというのだ。
 
この日の『クロ現』は、菅義偉官房長官(65)をスタジオに招き、「日朝協議」と「集団的自衛権の行使容認」について詳しく聞くというものだった。官房長官がNHKにやって来る--局には緊張感が漂っていたという。

「菅さんは秘書官を数人引き連れて、局の貴賓室に入りました。籾井会長も貴賓室を訪れ『今日はよろしくお願いします』と菅さんに頭を下げていました。その日の副調整室には理事がスタンバイ。どちらも普段は考えられないことです」
(NHK関係者)

放送開始から7分ほどは日朝協議の話題。そして集団的自衛権に話が移る。政治部の原聖樹記者が、菅氏に集団的自衛権の概念などを尋ね、菅氏が答える。キヤスターの国谷裕子氏(57)がさらに突っ込む、という流れで番組は進んだ。

「他国の戦争に巻き込まれるのでは」「憲法の解釈を簡単に変えていいのか」官房長官が相手でも物怖じしない国谷氏の姿勢は、さすがだった。

番組は滞りなく終了した。だが、直後に異変は起こった。近くに待機していた秘書官が内容にクレームをつけたというのだ。前出・NHK関係者が明かす。

「『いったいどうなっているんだ』とつっかかったそうです。官邸には事前に『こんなことを聞きます』と伝えていたのですが、彼らが思っていたより国谷さんの質問が鋭かったうえ、国谷さんが菅さんの発言をさえぎって『しかしですね』『本当にそうでしょうか』と食い下がったことが気に食わなかったとか。局のお偉方も平身低頭になり、その後、籾井会長が菅さんに詫びを入れたと聞いています」

その数時間後、再び官邸サイドからNHK上層部に「君たちは現場のコントロールもできないのか」と抗議が入ったという。局上層部は『クロ現』制作部署に対して「誰が中心となってこんな番組作りをしたのか」「誰が国谷に『こんな質問をしろ』と指示を出したのか」という”犯人捜し”まで行ったというのだ。

◆「私が悪かったのかな」

さらに、別のNHK関係者からは驚きの証言が飛び出す。

「放送が終わった後、国谷さんや番組スタッフは居室(控え室)に戻るのですが、この日、国谷さんは居室に戻ると人目もはばからずに涙を流したのです」

国谷キャスターは、ただただ、「すみません」と言うばかり。本人は涙のワケを語らなかったが、理由は明白だった。

「官房長官がゲストに来るうえ、集団的自衛権という、扱いが難しいテーマだということで、国谷さんは前日からスタッフと綿密な打ち合わせをしていました。

そのうえで、『この内容なら大丈夫。視聴者の疑問も代弁できるし、官邸を刺激することもないだろう』と確認していたのです。ところが、結果的に官邸を怒らせることになった。責任感の強い国谷さんは、『私か悪かったのかな』とショックを受けたのでしょう」(同)

本誌は『クロ現』を録画で観直したが、国谷キャスターに非礼な言動はなかった。この程度のことにいちいちイチャモンをつける官邸にも呆れるが、パニックになってあわてふためくNHKも情けない。公共放送失格ではないか(NHK広報局は本誌取材に対して「ご指摘のような事実はありません。NHKは放送法の公平・公正、不偏不党などの原則に基づいて放送しております」と回答)。

メディア論が専門の上智大学・碓井広義教授は「籾井氏が会長に就任して以降のNHKの報道姿勢には、疑問を持たざるをえない」と指摘する。

「集団的自衛権の行使を認める閣議決定がなされた7月1日、『ニュースウォッチ9』で大越健介キャスターが『集団的自衛権というカードを持つことで、日本への脅威を抑止するという性格が強まる』と結論づけましたが、課題や問題点に言及しないでいいのか、と疑問に思いました。『クロ現』の一件が事実なら、NHKは政府の広報機関化しているのでは、と心配になります」


一方、NHKのコールセンターには、この放送を観た視聴者から「聞いてほしいことを聞いてくれた」「今後も期待している」との声が多数寄せられたという。どちらが正しいか、国民はよく知っているのだ。

(フライデー 2014年7月25日号)


・・・・当日の国谷さんのインタビューは、キャスターとして聞くべきことを聞こうとした、ごく真っ当なものでした。


「金曜オトナイト」は、金融トレーダー・村田美夏さんと・・・

2014年07月12日 | 金曜オトナイト

昨夜(11日)の「金曜オトナイト」。

ゲストは金融トレーダーの村田美夏さんでした。

金融トレーダーという職業の人物にお会いするのは初めて。

この番組を通じて、いろんな方から直接話が聞けるのは、ありがたいことです。




さて村田さんですが、キャリアがユニーク。

東大経済学部主席卒業→日本興業銀行→破たん後、退職→キャバ嬢→金融トレーダーという流れなんですね。

平日は、朝からずっと自宅でPCの前に座り、所有する株の上がった、下がったの間隙に、ササッと利益を得る。



取材の日も、4時間で300万円ゲットしてました。

確かにすごいのですが、自宅トレーダーで、破産する人は多いですからね。

良い子は真似しないでください(笑)。




ちなみに村田さんは、稼いだお金の一部を、エンジェルとして、若い起業家たちに投資していると、おっしゃっていました。

そうそう、「もしも、自分が破産するくらい、ひどい状態に陥ったら、どうしますか?」という質問に、「働いて1000万円くらいの元手を作れば、そこからまた復活する自信はあります」と断言していました。

いい根性してます(笑)。

聞けば、番組の繁田美貴アナウンサーとは、桜蔭中学校・高等学校の先輩・後輩にあたるそうで、担任の先生も同じだったそうです。世間は狭い。



今週の「繁田美貴アナウンサー」

2014年上半期 「オトナの男」にオススメの本(その2)

2014年07月11日 | 書評した本 2010年~14年

この12年間、ほぼ1日1冊のペースで本を読み、毎週、雑誌に書評を書くという、修行僧のような(笑)生活を続けています。

今年の上半期(1月から6月)に「読んで書評を書いた本」の中から、オトナの男にオススメしたいものを選んでみました。

その「パート2」。

閲覧していただき、一冊でも、気になる本が見つかれば幸いです。


2014年上半期 
「オトナの男」にオススメの本
(その2)

八木圭一 『一千兆円の身代金』 宝島社

第12回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作。描かれるのは誘拐事件だが、要求額は前代未聞の1085兆円である。

被害者は元閣僚の孫で、叔父も現職議員という小学生・篠田雄真だ。事件発生と同時にマスコミ各社に犯人「革命係」からの声明文が届く。そこには政府の財政政策への鋭い批判と、国の財政赤字と同額を身代金とすることが記されていた。

捜査に当たるのはベテラン刑事・片岡と若手の今村だ。このコンビも財政危機に対する謝罪や再建案を求めるという犯人側の異例の要求に戸惑いを隠せない。しかし、人質の命のリミットは刻々と迫ってくる。

物語は刑事たち、記者、学生、保育士、そして革命家Nを名乗る男など複数の関係者の視点で語られる。そのジグソーパズルのような構成は見事で、読む者を最後まで牽引していく。


外山滋比古 『人生複線の思想~ひとつでは多すぎる』 
みすず書房


副題はアメリカの女流作家の言葉で、「ひとつではダメ」という意味。本書は複眼の思考と復路のある人生のためのヒント集だ。

若い頃から知識信仰の人だった著者はふと考えた。知識は過去の集積であり、そこから新しいものを生み出せるのかと。以後、自力で前へ進むための思考や想像力を大事にしてきた。

そして今、人間は前を見たり後ろをふりかえったりしながら生きるものだと分かったと言う。知識を大切にし、自己責任の思考も大事にすること。これを「知的開眼」とまで呼んでいる。90歳を超える碩学の柔軟さに驚くばかりだ。

本書は「新潮45」など雑誌での連載をまとめたもの。学生の就職難を貴重な失敗体験として捉える新経験主義で語り、「我が道を往く」という猪突猛進型の人生に対しては、志の在りどころとその行き先を問いかける。


小林信彦・萩本欽一 
『小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑(ショウ)タイム』 
集英社


テレビ黄金時代を内部から見ていた作家と、元祖・視聴率100%男のコメディアン。40年の交流がある2人だが、意外や本格的対談は初となる。クレイジー・キャッツ、渥美清から森繁久彌まで。語られるのは生きた喜劇史であり、本書全体が一級の資料でもある。


永 六輔 
『むずかしいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを面白く』 
毎日新聞社


書名は作家・井上ひさしの座右の銘だ。著者もまたこの言葉を大切にしてきた。毎日新聞に連載したコラム集だが、本拠地であるラジオの活字版ともいえる。カタカナ語と日本語、テレビとラジオ、そして自身のパーキンソン病のこと。遊び心とユーモアも健在だ。


野上照代 『もう一度 天気待ち~監督・黒澤明とともに』 草思社

著者は黒澤明監督作品には不可欠だったスクリプター。身近で見てきた監督と俳優、制作現場の秘話までを開陳している。13年前に出た回想記に新たな書き下ろしを加えた復刊だ。三船敏郎や仲代達矢はいかに黒澤と切り結んだか。監督の執念の凄さもリアルに描かれる。


月村了衛 『機龍警察 未亡旅団』 早川書房

本書で第4弾となるシリーズをひとことで言えば“至近未来警察小説”だ。この時代、大量破壊兵器は衰退し、機甲兵装と呼ばれる近接戦用兵器が普及していた。

強力な「龍機兵」を駆使する警視庁特捜部にとって、未曾有ともいえる敵がやって来る。その名は「黒い未亡人」。チェチェン紛争で夫や家族を失った女だけの武装組織だ。日本に潜入した彼女たちが仕掛けるのは決死の自爆テロである。

最初の事件は相模原で起きた。工業製品密売の外国人グループを逮捕する際、容疑者たちが仲間を逃がすために次々と自爆したのだ。しかも死んだのは未成年の少女ばかりである。

現場にいた特捜部の由起谷警部補は一人の少女の顔を思い浮かべた。また同じ特捜部の城木理事官は国会議員である実の兄に対し、ある疑念をもつ。それは悪夢のような戦いの始まりだった。


猪野健治 『やくざ・右翼取材事始め』 平凡社

何というスリリングな人生だろう。著者は、やくざや右翼といった、いわゆる“危ない”人たちと向き合い続けてきた数少ないジャーナリストだ。なぜこの道を選び、いかに歩んできたのかが明かされるだけでなく、彼らに関する格好の入門・解説書となっている。

1933年生まれの著者が、やくざや右翼を足掛かりとして、社会の見えざる深層に迫り始めたのは60年代のことだ。

本書には三浦義一、笹川良一、田岡一雄など、その世界のビッグネームが並んでいる。生い立ち、人柄から力の源泉のあり処まで、“パラレルな戦後史”とも言うべき男たちの軌跡が語られる。

著者の原点にあるのは、あらゆる差別に対する憤りだ。また貧困を抱えた在日韓国・朝鮮人や被差別出身者と裏社会の関係も探った本書は、猪野ノンフィクションの集大成である。


重金敦之 『食彩の文学事典』 講談社

文士たちの描いた食べ物が一堂に会する、画期的な文学辞典だ。たとえば大根。池波正太郎「剣客商売」には猪の脂身と大根だけの鍋が登場する。水上勉は「皮をむくな」と寺での小僧時代に教えられたと書く。250冊から抽出された和食のエッセンスが味わえる。


丸山圭子 『どうぞこのまま』 小径社

書名から28年前のヒット曲を思い浮かべる人も多いはずだ。本書は元祖女性シンガーソングライターである著者の回想記。16歳で経験した最愛の父との別れ。音楽の世界での葛藤。許されぬ恋に悩んだ日々。そして、あの名曲の誕生。行間から70年代の風が吹いてくる。


久住昌之:著 和泉晴紀:画 『ふらっと朝湯酒』 KANZEN

著者はドラマ『孤独のグルメ』の原作者。罰当たりな“朝の贅沢”エッセイだ。都内のスーパー銭湯で男の夢である朝湯・朝酒を堪能する。ただしそこでの楽しみは風呂や酒だけではない。同席の客たちの生態がすこぶる可笑しい。読後、手ぶらで足を運んでみたくなる。


姜尚中 『心の力』 集英社新書

人はよく「過去をふり返らず、未来に向けて前向きに生きろ」と言う。だが、未来そのものが不安定な時代だ。著者は人生に意味を与える物語に注目し、心に力をつけようとする。選ばれたのは夏目漱石の『こころ』と、トーマス・マンの『魔の山』である。

グローバリゼーションによって価値観が画一化され、生き方に「代替案」がないのが現代だ。生きづらい時代と心の関係を描いた漱石とマンを読むことの意味がそこにある。キーワードは「心の実質」。両作品の“その後”を描いた実験的小説も大いに刺激的だ。


緒川 怜 『迷宮捜査』 光文社

世田谷区で発生した母子殺害事件から物語は始まる。注目すべきは、現場にあった遺留品が一年前に目黒区で起きた一家惨殺事件に関係していたことだ。捜査員たちは同一犯を思ったが、なぜか上層部は両者を切り離すことを決定する。

捜査に当たるのは一課の名波と上司の鷹栖警部だ。被害者である沢村優子は通信社の外信部デスク。24歳の息子・直純は引きこもりだった。二人の周辺を探る名波たちだが、背後では公安部も動いており、捜査は混迷の度を深めていく。

しかも思わぬ証言者が現れる。同じ現職刑事が、自分が何者かに操られて犯行に及んだと言い出しのだ。

殺された優子と直純には隠された過去がある。いや、それだけではない。鷹栖や名波自身も他人に知られたくない事情を抱えていた。緊迫のラストまで一瞬も気を緩めることはできない。


適菜 収 『箸の持ち方~人間の価値はどこで決まるのか?』 
フォレスト出版


「箸使いに人間性のすべてが表れる」と著者は言う。内面は姿勢、表情、立ち居振る舞いなど外面の集積。それを端的に示すのが箸使いであり、人物を見極める際の指標となる。なぜなら、あらゆるものは型でできており、型が身についている人を教養人と呼ぶからだ。


坂崎重盛 『ぼくのおかしなおかしなステッキ生活』 求龍堂

編集者であり随筆家である著者が開陳する愛杖生活。もちろん遊び心のステッキだ。暇つぶしの収集家としてスタートし、漱石や花袋などの作品に描かれたそれを味わい、やがて自身も使用して愉しむようになる。仕込み物、頂戴物、掘り出し物と、この世界も奥深い。


【気まぐれ写真館】 台風接近中の多摩川 2014.07.10 

2014年07月11日 | 気まぐれ写真館

「視聴覚教育」での収録続く

2014年07月11日 | 大学