碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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NHK経営委員会の迷走

2011年01月12日 | テレビ・ラジオ・メディア
(朝日新聞夕刊 2011.01.11)


これは一体どういう事態なのだろう。

NHKの次期会長人事である。


NHK会長人事、白紙に 安西氏、異論受け辞退

24日に任期満了を迎えるNHKの会長人事で、次期会長への就任を受諾していた前慶応義塾塾長の安西祐一郎氏(64)が11日、会長就任を辞退した。任命権をもち、就任を要請していたNHKの経営委員会が態度を一転させ、辞退を迫ったためだ。

いったん経営委の総意で決めた人事が、経営委側の意向で白紙に戻る異例の事態となった。
記者会見した安西氏は「経営委員会に対する不信は頂点に達した。会長就任を不本意ながら拒絶する」と語った。

辞退の理由については「いわれなき中傷を含む風評に依存して動く経営委員会であれば、会長に就任してもNHKをさらによいものにするのは困難であると判断した」と語った。

経営委は昨年12月の委員会で、小丸委員長が推薦した安西氏に会長就任を求めることを決めた。

ところが、12月27日に安西氏が受諾したあと、会長就任にあたって「交際費の使用」「副会長を連れて行く」「都内に部屋を用意する」の3条件がついたという話がNHK関係者の間に広まり、一部の委員が安西氏の起用に難色を示し始めた。

安西氏は5日に開かれた経営委の非公式会合に出席し、3条件を全面的に否定したが、委員との溝は埋まらなかった。

安西氏は記者会見で3条件について「条件を提示した事実は一切ない。仕事の環境について説明を求めたことはあるが、そのことが条件として曲解されたのであれば、曲解されること自体が問われるべきだ」と話した。
(朝日新聞 2011.01.11)



年末に、「慶應の安西先生でほぼ決まり」という報道に接した時、私は驚くと共に高く評価した。

政界や財界、官界とも一定の距離を保てるという意味で、アカデミズムからの起用、そして安西先生という選択は、今後のNHKにとってベターなものだと思ったからだ。

ところが、どこからか「就任の3条件」なるものが現出し、安西先生に対するネガティブ・キャンペーンが開始された。

「経営委員の中に、これを問題視するメンバーがいる」といった情報が流れたが、結局、当人への確認は最近まできちんと行われていなかったのだ。

そうこうするうちに、経営委員会は安西先生への「受諾撤回」を求める。

実に失礼なやり方だ。

依頼してくる時は「全会一致」と言いながら、内部はまとまっていなかったわけだし、“風評”で判断を覆した上に、本人に「受諾撤回」させようとするとは。

これでは、安西先生が「就任しても、まともな仕事など出来ない」と考えるのも無理はない。

NHKにとっても、視聴者にとっても、実に残念な展開となってしまった。

新聞では「一部の委員から異論が出た」というが、実際、誰が、どんな異議を唱えたのか、知りたいものだ。

ちなみに、NHK経営委員会の構成員は以下の方々である。


委員長
小丸 成洋
福山通運(株)代表取締役社長

委員長職務代行者
安田 喜憲
国際日本文化研究センター教授

委 員
石島 辰太郎
産業技術大学院大学学長

石原 進
九州旅客鉄道(株)代表取締役会長

井原 理代
NHK経営委員会委員(常勤)、香川大学名誉教授

大滝 精一
東北大学大学院経済学研究科教授

勝又 英子
(財)日本国際交流センター常務理事・事務局長

北原 健児
元(社)日本民間放送連盟専務理事

倉田 真由美
漫画家

幸田 真音
作家

竹中 ナミ
社会福祉法人プロップ・ステーション理事長

浜田 健一郎
(株)ANA総合研究所代表取締役社長



<参考>
このブログでの関連記事
「慶應義塾・安西先生、NHK会長に」(2010.12.30)
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/753f006088149520024a2d12c753783a



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