碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

2013年 テレビは何を映してきたか (11月編)

2013年12月31日 | テレビは何を映してきたか 2010年~13年
ハワイ島 2013


「日刊ゲンダイ」に連載している番組時評「TV見るべきものは!!」で
振り返る2013年のテレビ。

11月分です。


2013年 テレビは何を映してきたか (11月編)

「ごちそうさん」 NHK

 NHK朝ドラ「ごちそうさん」、大健闘である。前作「あまちゃん」が国民的ドラマと呼ばれるほどに大化けしたので、後任としてのプレッシャーは相当強かったはずだ。しかし、蓋を開けてみれば週間視聴率は20%半ばをキープし、スタートから4週連続首位と絶好調だ。その理由は何なのか。
 まずはヒロイン・め以子(杏)の人物像だ。子どもの頃から食べることに関しては飛びぬけているが、それ以外は「おいおい、大丈夫か?」と思ってしまうくらい普通の女性。どこにでもいそうだからこそ視聴者は親近感を覚え、構えずに見ることができる。
 次に料理の魅力だ。朝ドラは朝食の時間であり、ご飯を食べるシーンが多いドラマは、見るだけで満腹になるのが欝陶しい。だが、そんな心配も不要だった。料理が美味そうなだけでなく、とにかく美しいのだ。だから“胃もたれ感”もない。これはフードスタイリスト・飯島奈美の手腕だろう。「かもめ食堂」などの映画や、東京ガスのCMなど、料理が重要な役割を果たす映像作品で頼りにされるのも当然だ。
 そして何より、ドラマ全体が丁寧に、ゆったりと作られていることが大きい。「あまちゃん」が剛速球だったとすれば、「ごちそうさん」はほっこりしたスローカーブだ。今週から突入した大阪編で、そこにエグ味が加わるのも期待大である。

(2013.11.05掲載)


「午前零時の岡村隆史」 TBS

 ナインティナインの岡村隆史が単独司会の新番組を始めるというので見てみた。TBS「午前零時の岡村隆史」(水曜夜11時58分)である。
 6日の第1回目は「岡村と99人の仲間たち」。 岡村会の99人が路上に落ちているお金を探す。1日でどれくらいの金額になるかという企画だ。
 その理由が笑える。あの滝川クリステルが「お・も・て・な・し」のプレゼンで語ったように、日本では1年間に3000万ドル(30億円)の現金が警察に届けられる。だが、実際に落としたとされる総額は84億円。ならば残りの54億円を見つけ出そうというのだ。
 「ウオーリーを探せ!」とそっくりな赤いボーダーシャツを着た99人が、渋谷や新宿など15ヵ所の繁華街に散って、自動販売機の下や植え込みの中を探す。一円玉から複数の財布までが出てきて、合計1万1168円也。これを警察に届けた。
 確かにバカバカしい内容だ。しかし、「バカバカしいことをマジでやるバラエティー」としては“買い”かもしれない。それに、岡村が99人に指示を出すだけではなく、自分も自販機の下を覗き込んでいたところがいい。しかも別の番組の収録があって、途中でいなくなる様子まで見せていた。
 この番組を担当するのは「入社10年目以下のディレクター」だ。企画力も含め、彼らがどこまで頑張るかで成否が決まる。

(2013.11.12掲載)


「夫のカノジョ」 TBS

 TBSの連ドラ「夫のカノジョ」(木曜夜9時)が、先週14日に視聴率3.1%を記録した。これはすごい。初回4.7%でスタート。第2話が4.8%、第3話は3.7%、そしてあわや2%台かというところを踏みとどまった状態だ。
 もちろん裏の「ドクターX」が強いことだけが原因ではない。2人のカラダが入れ替わるという設定は映画「転校生」をはじめ、ドラマ「パパとムスメの7日間」、「山田くんと7人の魔女」など前例だらけだ。
また、入れ替わる39歳の主婦(鈴木砂羽)と20歳のOL(川口春奈)の関係が、「妻が夫の愛人だと誤解した」だけという設定も実に弱い。そして一番の欠点は、中途半端なドタバタ劇のようなストーリーが幼稚なこと。ナレーションを子役の鈴木福くんが担当しているのも象徴的だ。
 しかし、この瀕死のドラマにも「見るべきもの」はある。それは鈴木砂羽だ。ホクトの「きのこCM」で見せた“主婦のエロス”は秀逸だった。残念ながら一週間で放送打ち切りになったが、このドラマの行方によっては鈴木に「打ち切り女優」のレッテルが貼られてしまう。それはイカン。
 現状でも打ち切りは十分あり得る。視聴率が2%台まで落ちたら本当に終わるだろう。そうでなくても「ゴールデンの3%ドラマ」自体、貴重な“生ける伝説”である。見るなら早いほうがいい。

(2013.11.19掲載)


「解禁!暴露ナイト」 テレビ東京

 テレビ東京「解禁!暴露ナイト」(木曜夜11時58分)が始まったのは昨年の秋だ。うたい文句は、「職業の裏側、大事件の裏側、ニッポンの裏側、芸能界の裏側、など様々な世界の裏側を知り尽くした人物が大暴露!」。深夜ならではのゲリラ番組として、堂々の2年目に突入している。
 先週も話題は多岐にわたった。冒頭は厚労省の村木厚子さんが逮捕された「大阪地検特捜部・証拠でっち上げ事件」だ。取材を続けてきたジャーナリストが実名で登場し、「逮捕できるよう事実関係を合わせていく」という検察のハウツーを暴露していた。
 次に現役の競馬エージェントが騎手や馬主の表に出ない話を開陳。騎手には酒好きが多く、「その日の1レース前に検問したら全部アウト」などと大胆に発言していた。さらに弁護士が解説する悪質NPOや偽装質屋の手口にも驚かされた。
 番組を見ていると、初回の放送だけで打ち切りとなった、「マツコの日本ボカシ話」(TBS)を思い出す。当事者を登場させようという狙いは悪くなかったが、表現や演出手法でつまずいた。同じ轍を踏まないよう、ぜひ気をつけて欲しい。
 また、それ以上に気になるのが秘密保護法案だ。成立したら、この手の暴露番組も、何がどう抵触したのか分からないまま潰されるだろう。やはり悪法と言わざるを得ない。

(2013.11.26掲載)


この記事についてブログを書く
« 【気まぐれ写真館】 信州へ... | トップ | 2013年 テレビは何を映し... »
最新の画像もっと見る

テレビは何を映してきたか 2010年~13年」カテゴリの最新記事