碓井広義ブログ

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“異色の探偵ドラマ”も終盤へ

2015年09月10日 | ビジネスジャーナル連載のメディア時評



ビジネスジャーナルに連載している、碓井広義「ひとことでは言えない」。

今回は、“異色の探偵ドラマ”について書きました。


いつも厳しい顔の北川景子 
全身に怒り、容易に他人を寄せつけず

9月に入って、今期の連続テレビドラマも終盤に差しかかってきた。“異色の探偵”が活躍する2本の探偵ドラマにも、ラストが近づいている。

彼女、彼らの異能ぶりを見ておくなら、今のうちだ。

● 『探偵の探偵』(フジテレビ系) 

 『万能鑑定士Q』シリーズ(角川文庫)などで知られる、松岡圭祐の同名小説が原作。まず、「探偵の悪事を暴く探偵」という設定がなんともユニークだ。確かに、すべての探偵がシャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロのような人物とは限らない。いや、そんなにレトロでなくても、世の中には悪徳探偵や犯罪に手を染める探偵がいてもおかしくない。

 主人公の紗崎玲奈(北川景子)は、スマ・リサーチ社が運営する探偵スクールを卒業し、そのまま入社した。配属されたのが、まさに探偵を探偵する「対探偵課」だった。

 玲奈が仕事に打ち込むのには理由があった。かつて高校生だった妹(芳根京子)が惨殺され、その事件の背後に、大物探偵として業界に君臨する阿比留佳則(ユースケ・サンタマリアが怪演)の存在があったのだ。警察からも信頼され、捜査に関与する阿比留への復讐こそが、この物語の主軸である。

 普段、玲奈はほとんど笑顔を見せない。いつも厳しい顔をしている。その全身に怒りのオーラをまとい、容易に他人を寄せつけない。また、身の危険を顧みることもない。

 そんなヒロインを、北川はキレのいい本格的なアクションを披露しながら見事に演じている。『HERO』(フジテレビ系)でキムタクをサポートする事務官も結構だが、こちらのほうがよほどハマリ役だ。

 先日、警察の人間でありながら、阿比留への疑念を抱いていた刑事・窪塚悠馬(三浦貴大)が殉職した。この三浦もそうだが、探偵社の社長を演じる井浦新や助手の川口春奈など、脇役たちの好演も、北川とこのドラマを支えている。ラストに向かって楽しみな一本だ。

● 『僕らプレイボーイズ熟年探偵社』(テレビ東京系)

 若者や女性をターゲットとしたドラマが目立つ中で、『三匹のおっさん』に続く、テレビ東京らしい独自路線といえるのが『僕らプレイボーイズ 熟年探偵社』である。

 何しろ主演の高橋克実(54)が最年少だから驚く。共演者も石田純一(61)、笹野高史(67)、角野卓造(67)、伊東四朗(78)というベテランぞろい。まさに熟年の、熟年による、熟年のためのドラマになっている。

 リストラに遭った高橋の再就職先が探偵社だった。元刑事、元五輪選手といった経歴を持つメンバーの仲間になる。毎回読み切りの物語はいわゆるハードボイルドではなく、もちろん殺人など血なまぐさい事件も起きない。迷子のペット探し、初恋の人探し、中高年の引きこもり解消などが依頼の案件だ。とはいえ、その背景には涙や笑いの人間模様がある。

 5人の探偵たちは、それぞれのキャリアを生かして調査を進める。しかも、チームというより個人プレイの集積という雰囲気に好感がもてる。長い間、組織に属して仕事をしてきた男たちにとって、業務命令やノルマはもうたくさんだ。熟年になったら、できるだけ自由に動きたいではないか。このシニア探偵たちの“ゆる~い連帯”が気持ちいい。

 また、このドラマではゲスト出演者も熟年となる。田中美佐子、市毛良枝、秋野暢子、杜けあきなど、往年の美人女優たちによる練達の演技を楽しめるのも、熟年ドラマならではの醍醐味だろう。

(ビジネスジャーナル 2015年9月7日)

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