碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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木村拓哉がキムタクを封印して挑む「アイムホーム」

2015年04月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今週は、木村拓哉主演「アイムホーム」(テレビ朝日系)について書きました。


「アイムホーム」テレビ朝日系
木村拓哉がキムタクを封印して
誠実に演じている

結論から先に言えば、これはいわゆる“キムタク・ドラマ”ではない。

脚本も演出も脇役も、ひたすらキムタクをカッコよく見せることだけに奉仕するのがキムタク・ドラマなら、今回は違う。ここにいるのは“キムタク”ではなく、一人の俳優としての木村拓哉だ。

事故で過去5年の記憶を失った家路久(木村)。なぜか妻(上戸彩)や息子の顔が白い仮面に見えてしまう。彼らへの愛情にも確信がもてない。その一方で、元妻(水野美紀)と娘に強い未練をもつ自分に戸惑っている。

原作は石坂啓の名作漫画で、仮面が邪魔して家族の感情が読み取れないというアイデアが秀逸だ。その不気味さと怖さはドラマで倍化しており、見る側を家路に感情移入させる装置にもなっている。

自分は元々家庭や職場でどんな人間だったのか。なぜ結婚し、離婚し、新たな家族を持ったのか。知りたい。でも、知るのが怖い。そんな不安定な立場と複雑な心境に陥ったフツーの男を、木村拓哉がキムタクを封印して誠実に演じているのが、このドラマなのだ。

もちろん主演は木村だが、いつものような悪目立ちはない。何より、夫であり父でもあるという実年齢相応の役柄に挑戦し、きちんと造形していることを評価したい。

脚本は『医龍』(フジテレビ系)や『ハゲタカ』(NHK)で知られる林宏司。大人が見ていい1本だ。

(日刊ゲンダイ 2015.04.22)


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