
親分、そろそろ又、仏教に戻りませんか。今まで仏教の成り立ちみたいなことをやって来ましたが、今だに解らないことがあるんですよ。
おう、そうか。どんなことなんだ?
仏教は、その時の為政者が国を治めるために普及させたんですよね。じゃあ、今の僕たちには日本という国を治めていく為に必要なことは他にいっぱいありますよね。エネルギー問題とか、安全保障の問題とか、経済問題とかがありますよね。それに比べれば、統一教会事件が問題になっていますけど、宗教がそれ程重要だとは誰も思っていないんじゃないでしょうか?
成程な、お前の言う通りだな。しかしな、今の日本はそれでも良く治まっているから人々は宗教を問題にしないんだよ。時代の流れに流されている状態で満足しているというか、何も考えていないからなんだよ。
でも、今の仏教は葬式仏教で、法事の時くらいしか役に立っていないんじゃないですか。僕が日本の仏教にがっかりしたのは、拉致事件の横田さん夫婦があの事件があってから、救いを求めて最初は奥さんが、そしてご主人までがキリスト教に入信しているんですよ。横田家だって当然何処かの仏教宗派の檀家になっていたはずでしょう。その寺の住職はなにをしているんでしょうか。自分の檀家が大変な目にあった時に救いの手を差し伸べないんですか。法事さえやってれば良いんでしょうか。
そうだな、お前の言う通りだ。警察や病院で解決出来る問題じゃないからな。そんな時こそ、真っ先に助けてやらなきゃいけないと思うな。
そうでしょう。何も北朝鮮まで行って、めぐみさんを連れ戻してこいと言ってる訳じゃないんです。せめて話を聴いて、苦しみを共有してやり、仏教の教えを話してやったら良かったと思うんですよ。
俺もそう思うよ。日本の仏教もこれじゃダメだな。
日本人はそれでも我慢強いというか、すぐには反抗しない国民性だから、こんな仏教でも続いているんじゃないでしょうか。
確かにお前の気持ちには同感なんだが、そうかと言って、仏教に代わるものも、そうあるもんじゃないぞ。だから、もう少し勉強していこうじゃないか。
そうですね。何も解ってもいないのに文句ばかり言ってはいけませんよね。
でも、そうやって疑問に思ったことは言った方がいいよ。さっきお前が言ったように、仏教は国を治める為に、時の為政者が取り入れたもんだ。日本の場合もそうだったし、他の国もそうだ。しかしな、仏教は自分が自分の為に、安心立命の信念を築くためにも適した教えだと思っているんだ。特に禅というのは、まさしく自分が自分のためにやるもんだよ。
解りました。あせらず、ゆっくりやって行きましょうか。日本の仏教ですが、平安時代に最澄が天台宗、空海が真言宗を開くところまでやりましたよね。
そうだったな。両方ともその時代に中国から取り入れた密教だったんだが、真言宗は純粋な密教として発展して行くんだが、天台宗の方は純粋な密教ではなく、様々な教えが入り混じっていたようで、ここから鎌倉時代になって次の新しい宗派が生れる土壌になったんだよ。
時代も貴族の時代から武士の時代へと変貌して行くんですよね。源氏とか平家とかが台頭して来るんですよね。それに伴って仏教も新しくなってくるんですか?
そうだな、それはこの次にしようか。
次ページ:乱世に新しい宗教は生まれる