さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

「乾為天」(その1)元亨利貞

2024-08-05 | さわやか易・講座

「乾は元亨利貞」

「乾為天」の卦辞である。たった、これだけの文章である。陽の卦三十二を代表する卦の言葉は「乾は元亨利貞」である。「何だ、それだけか」そう思われる方もいるのではないでしょうか。

しかし、これが十分に理解出来たなら、易の半分は理解出来たことになると、公田連太郎先生は述べています。元は始まるという意味です。春夏秋冬に例えれば、春に当たります。儒教の仁義礼智に例えば、仁に当たります。孔子が作ったとされる彖伝(たんでん)によると、「大なるかな乾元、萬物資(と)りて始まる。乃ち天を統(す)ぶ。」とあります。乾が天地万物を始め、天地万物を創造する徳は、実に広大無辺であるという意味です。

亨は通じる、伸びるです。四季に例えば、萬物が成長する夏です。仁義礼智の中では礼に当たります。彖伝(たんでん)によると、「雲行き雨施し、品物、形を流(し)く。」とあります。雲が沸き起こり、雨が大地を潤す。萬物は形となって、天地間に行き渡るというのである。

利は物事がよろしきを得ることです。四季では萬物が実る秋です。仁義礼智の中では義に当たります。萬物はそれぞれ乾道に従い、天から受けた本性を正しく発揮する。禽獣、草木、あまねく天地に繫栄するのである。

貞は正しく、堅いです。四季では冬です。実ったものが種となって翌年の春をじっと待ちます。仁義礼智の中では智に当たります。是非善悪を間違いなく判断し、正しい道を堅固に守ります。厳しい冬を耐え忍び、やがて来る春に備える如く、生命を繋ぎ、終わりはないのである。

「乾為天」の卦を人間に配当すると、優れた人格者が皇帝になったような陽性の聖人に例えられます。元亨利貞の道は、帝王の道、聖人の道を説いたものです。これを竜という神変不可思議なる動物に例えて、その道を説いてあるのです。孔子は「天行は健なり。君子以て自ら強(つと)めて息(や)まず。」と解説し、天の運行は健そのもの、休むことなく、疲れることもない。君子は天のようであるべきであると述べています。

この「乾は元亨利貞」は「卦辞」、卦全体の言葉であり、周の文王が書かれたものと伝えられています。そして、次回から取り組む初九や九二などの爻についての言葉は「爻辞」といい、息子の周公が書かれたものと伝えられています。爻辞は人生を六つの時期に分け、それぞれの時期に即した言葉がつけられています。そこにも孔子が解説を加えています。

次ページ:「乾為天」(その2)初九、九二

 


コメントを投稿