「雷水解ようやく難問が解決した。安心して、そこに気の緩みが生じてしまった。
「緩(ゆるや)かなれば必ず失ふ所有り、故に之を受くるに損を以てす。」
心が緩やかになる時は、とかく油断してしまうものである。油断すれば、必ず間違い、失敗をしてしまう。大事なものを失うこともある。そこで、「雷水解」の次に「山沢損」が置いてある。損は失うことである。気を付けねばならない。
しかし、この「山沢損」は単に損をするという意味だけではなく、損得を忘れて、何かに奉仕するという意味もある。卦の形は、上の山は少男、下の沢は少女であり、少女が少男に尽くしている象である。人に限らず、何かその人にとって重要なものに尽くすこと、奉仕することである。
「損して已(や)まざれば、必ず益す、故に之を受くるに益を以てす。」
「損して得取れ」損をすると、これは大変とばかりに、気を引き締める。気が引き締まってくると、今度は益に転じて来る。商売で成功した人の多くが、損をした後に、心を入れ替え、本気になって商売に取り組んだという人たちである。何の苦労もなく、商売で成功することはないのである。損のあとに益があるのは、実に妙である。
又、損得を忘れて何かに奉仕する者も、必ず報われる。それは形ではなく、心の豊かさになっている場合もあるだろう。この「山沢損」の次に「風雷益」が来ることには、孔子が感心して弟子に語ったという話が残っている。
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