これより下経三十四卦に入る。上経と下経の内容の違いは、上経は自然や社会の変化を、下経は人間の変化だという説もあるが、そうとも言えない部分もあり、確かなことは解らない。恐らく六十四卦のままだと、余りにも長すぎるので、二つに分けたのではないだろうか。私は下経の方が人間ドラマとしては、より現実的で面白いと思っている。
「天地有りて、然る後に萬物有り。萬物有りて、然る後に男女有り。男女有りて、然る後に夫婦有り。夫婦有りて、然る後に父子有り。父子有りて、然る後に君臣有り。君臣有りて、然る後に上下有り。上下有りて、然る後に礼儀、錯(お)く所有り。」
少し回りくどい説明で、面白くないが、下経は「沢山咸」から始まる。父子、君臣、上下の礼の始まりは夫婦の道であり、男女相感じ、相愛する道を説くものである。卦の形は、沢は少女であり、山は少男である。下にある若い男が、上にある若い女に思いを寄せているのである。
下経が男女の恋愛から始まるというのが人間ドラマである。咸は感動、感激の感と同じと考えて良い。感動、感激がなければ人生は面白くない。
「夫婦の道は、以て久しからざる可からざるなり。故に之を受くるに恒を以てす。恒とは久しきなり。」
恋愛の次には結婚である。夫婦の道は久しく継続することことが大事である。「恒とは久しきなり」で、久しく変わらないことである。雷は長男、風は長女。雷と風は相性が良いのである。上に雷、下に風であるので、夫唱婦随を表している。この形が元々夫婦の安定の姿である。
「沢山咸」は恋愛であったが、恋愛は変わりやすい、一時期燃え上がるような恋愛も久しく続くことはない。そこで、次に久しく変わらない「雷風恒」が来るのである。易の配列には頭が下がる。
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