序卦伝は六十四卦の配列を説いているものだが、下経は実に現実的なドラマのような配列になっている。特に「雷火豊」、「火山旅」、「巽為風」あたりは、実に面白いし、頭が下がる。
「旅にして容(い)るる所無し、故に之を受くるに巽(そん)を以てす。巽とは入るなり。」
国を追われ、家を追われて、放浪の旅に出た者は、どこか自分を受け入れてくれる場所を求めて歩く。以前のように、威張っていられる立場ではない。そこで、放浪の旅人は、身を低くして、ヘリ下った態度で頭を下げている。そうすると、同情を寄せてくれる人もいて、どうにか受け入れて貰えた。
卦の形は、巽(風)が上下に重なったもので、巽(風)の性質がそのまま発揮されている。巽(風)は従順、素直、ヘリ下るである。「郷に入っては郷に従え」が最も出来るのは、巽(風)である。風は、ちょっとした隙間があれば、すっと入ることが出来る。
「入りて而して後に之を説(よろこ)ぶ、故に之を受くるに兌(だ)を以てす。兌とは説ぶなり。」
幸いにして旅人は然るべき所に受け入れて貰えた。命拾いしたのだから、これ以上の喜びはない。「兌」は喜ぶである。卦の形は、兌(沢)が上下に重なっている。兌(沢)の性質がそのまま発揮される。兌(沢)は二つの陽爻の上にある陰爻がある。ちょうど上を向いて口を開け、笑っている形である。
家族では少女であり、箸が転んでも可笑しい、いつも笑顔の少女である。少し騒がしいところもあるのが、兌(沢)の特徴でもある。心配なところは、無防備で、開放的なところである。
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