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二十九番 凡河内躬恒

2014年03月28日 | 百人一首
心あてに 折らば折ら 初霜の 置きまどはせる 白菊の花

折るならば、当て推量で折ってみようか。一面に降りた初霜が見分けにくくしている白菊の花を。


心あてに 六音で字余り。「心あて」は、当てずっぽう・当て推量。「に」は、手段・方法の格助詞。「体言+格助詞“に”」で連用修飾格。「当てずっぽうで(~する)」の意。
折らばや折らむ 「や」と「む」は、係り結び。「折らば」は、「動詞の未然形+接続助詞“ば”」で順接の仮定条件。「折るならば」の意。「や」は、疑問の係助詞。「む」は、意志の助動詞の連体形で「や」の結び。全体で、「もし折るならば、折ってみようか」の意。二句切れ。
初霜の 「初霜」は、その年の最初におりる霜。「の」は、主格の格助詞。
置きまどはせる 「まどはせ」は、動詞「まどはす」の命令形(已然形とする説もある)で、「まぎわらしくする」の意。「る」は、存続の助動詞「り」の連体形。(注)「る」は、動詞の活用語尾ではない。「置きまどはせる」で、白い初霜が白菊の花の上におりたため、初霜なのか白菊なのか区別しにくくなっていることを表す。
※ 倒置法

「心あてに」の歌を写実主義の正岡子規が酷評したのは有名。
「霜が置いたぐらいで菊が見えなくなるなど大げさで、一文半の値打もない」と切り捨てている。


おおしこうちのみつね (生没年不明)
下級官人で、九世紀後半ごろから歌人として活躍し、紀貫之と親交が深かった。
三十六歌仙の一人であり、『古今集』選者の一人でもある。

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