自燈明

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三十二番 春道列樹

2014年04月04日 | 百人一首
山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり

山の間を流れる川に、風がかけた「しがらみ」は、流れきれないでたまっている紅葉であったよ。

山川に 「やまがは」で、山の中を流れる川。詞書に、「志賀の山ごえにてよめる」とあるので、この山川は、京都から大津へと抜ける山中の川。「に」は、場所を表す格助詞。
風のかけたるしがらみは 「の」は、主格の格助詞。その後に、「かけたるしがらみ」と続くので、「風」が擬人化されている。「たる」は、動詞の連用形に接続しているので、完了の助動詞「たり」の連体形。「しがらみ」は、「柵」で、川の中に杭を打ち、竹や柴を横向きに結び付けて、水の流れをせきとめるもの。
流れもあへぬ 「も」は、強意の係助詞。「あへ」は、「動詞+あへ」で、「完全に~する」の意。多くは、打消の語をともない、「完全に~しきらない・しきれない」となる。「ぬ」は、打消の助動詞の連体形。
紅葉なりけり 「紅葉」が、「しがらみ」に見立てられている。「なり」は、断定の助動詞。「けり」は詠嘆の助動詞で、今まで意識していなかったことに気づいた驚きや感動を表す。

京都の東北から比叡山と如意岳の間を通って滋賀へ抜ける山道(滋賀の山越え)の途中で川を見て詠んだ歌。
「しがらみ」は水をせき止めるための人工的なしかけだが、川に落ちた紅葉の葉が流れに滞って、川の縁にたまっているのを、
風がかけたしがらみであると、ユニークに表現した。
風景を絵のように切り取り、紅葉の紅が目に浮かぶ、屏風絵のような実景歌である。


はるみちのつらき (生年不明-920)
910年に文章生(もんじょうしょう)になり、920年に壱岐守(いきのかみ)に任命されるが、赴任する前に死去。詳しい経歴は不明。
コメント
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