E・S・ガードナー/尾坂力訳 1957年 ハヤカワ・ポケット・ミステリ版
自分にとって新しいミステリを読むときは、ついでにひとつ読み返すことにしてる、ペリイ・メイスンシリーズ、1945年の作品。
例によって、飛行機とかで移動中のひまつぶしに持ち運んでるだけなんだけど。
持ってるのは1990年の7版、前回読んだときの記憶は全然ないが。
原題は「THE CASE OF THE HALF-WAKENED WIFE」、そのまんまなんだけど、寝ぼけた夫人は出てこない。
事件直後に、あわてて取り乱してるとこをメイスンと出くわすんだが、しっかり記憶もあるし、真実を言っていると主張する。陪審員にはとても信じられないだろう話なんで、いつものように、弁護には苦労するが。
銀行で並んでるジェーン・ケラーという女性の手にいきなり500ドルのカネを男が押し込んでくるところから物語は始まる。
ジェーン・ケラーはどっかの大きな河のなかにある島の所有者、500ドル出してきたのはその土地で石油採掘権をもってるシェルビイって男の代理人。
ジェーン・ケラーはその島をベントンという金持ちに売る契約をしてしまった、ベントンはそこに家だか別荘だか建てたい。
シェルビイは石油なんか出ないとあきらめてたんだが、金持ちが土地を買うなら権利を主張して売値を吊り上げようってことに気づいた。
ところが土地賃貸料をもう五か月払ってなかったんで、それを遅ればせながら払うことで自分はまだ所有者の権利を保とうとカネを持ってきた。
ジェーンのほうは支払の遅滞によって契約解消してると思ってるから、いまさらそんなこと言われても困るので、有名な弁護士のメイスン先生のところへ相談に行く。
契約書にはたしかに微妙なところがあるんだが、メイスンは負ける気なんかしないのでシェルビイと対決しにいく、当然ものわかれに終わるけど。
シェルビイというのはうさんくさい人物なんだが、つい最近妻と食事したあと自分だけ砒素中毒になったというハプニングがあったらしく、警察も近辺をうろうろしてたりする。
金持ちのベントンさんまでメイスンの前に登場して、関係者一同を自分の船に乗せて、くだんの島のあたりをクルージングして話をしましょうってことになる。
船上で食事を楽しんだあとになれば、和やかに商談もかたづくかと思いきや、シェルビイが退かないので議論は平行線のまま、ここでシェルビイの背後にはエレン・カッシングって土地周旋業の女性がいて、このひとが今回の儲け話に気づいた張本人らしいってことがわかる。
夜の河には深い霧がおりてしまって、危なくて航行ができない状態になり、船客一同は十分な数のある船室にそれぞれ宿泊することになる。
それで真夜中に眠れないでいるメイスンが甲板に出ていると、女の悲鳴と銃声と何かが水に落ちる音がした。
そこへ走ってきてぶつかったのがシェルビイの妻、絹のナイトドレス姿なんだけど手には拳銃を持ってて取り乱している。
誰かが河に落ちたってことで船中が大騒ぎになり、所在がわからないのはシェルビイだけってことになる。
夜の闇のなかで河を見たって人の姿は見当たらない、警察もボートでやってくるけど行方不明のシェルビイは見つからず、一同は一旦解散。
調べが進んで、シェルビイの妻が、夫から船内の電話で呼び出されて、船首にいるから拳銃持ってこいと言われて行ったら、夫が船から落ちるのを見た、って供述するんだけど、おまえが撃ったんだろってことで容疑者になる、なんせ砒素で毒殺未遂の疑いまであるんだから、怪しまれるのはしかたない。
弁護を引き受けたメイスンだけど、調査を依頼しに探偵のドレイクを叩き起こしたところ、「きみの仕事は好きだが、そんな女が潔白だとおれ自身に云いきかせることは出来ないね。もう少し瞞されやすい探偵を雇ってくれ」とまで言われちゃう。
それでもメイスンは、河へ落ちたのは殺人事件ぢゃなく、妻に手切れ金をわたすことなく失踪するための擬装ってセンで捜査にとりかかり、そんなことの共犯は今回のビジネスでも組んでいる美人といわれるエレン・カッシングだろうと見当をつける。
さっさと早朝のうちにエレンの家をつきとめて、ドレイクといっしょに車庫に不法侵入して、濡れた男物の靴と毛布をみつける、河に落ちた人物を引き上げたにちがいない。
張り込みの探偵たちからも、エレンの部屋にはシェルビイくらいの背格好の男がいるという情報も得たもんだから、警察に連絡して「トラッグは、こういう仕事を扱える。彼には頭があるからね。」と信頼をおくトラッグ警部を呼び出して、捜査令状のないまま敵陣に突入する。
しばし押し問答があったすえ、エレンが部屋にいた人物を出してくると、彼女の母親と彼女の婚約者だった、まったく言いがかりもひどいとメイスンにかみつく。
濡れた毛布は昨日婚約者とピクニックに行ったときビールを冷やすための大きな氷を包んだもので、濡れた靴はその湖でふざけてるうちに水に足を突っ込んぢゃった婚約者のものだという。
話の筋は一応とおってるし、第一ひと違いもはなはだしいので、その場は惨敗。さらにエレン・カッシングは追い討ちをかけて、メイスンとドレイクの二人に対して名誉毀損による25万ドルの賠償を求める裁判を起こす。
そんなことしてるうちに、とうとう警察は38口径で撃たれたシェルビイの死体を引き上げることに成功し、いつも以上に圧倒的不利な状況で裁判が始まる。
反対訊問の名手であるメイスンは、検察側の証人のほんのちょっとしたスキから、被害者の首に残された弾傷が通常とはちょっと異なる形であることを明るみに出し、そこから反撃の糸口をつかむ。
メイスンの依頼人が最初のひとから変わっちゃうし、登場人物の関わり合いがいろいろあってややこしいんだけど、意外なとこから真犯人を見つけて、一件落着。
どうでもいいけど、最初の契約書の相談の件で出てくる、メイスンの事務所で助手やってるジャクスンの描写がおもしろい、法律書のなかから前例を見つけることに熱意をもってんだけど、「もし彼が白い右後脚を持った栗毛の馬に関する不当差押え動産取戻し訴訟を扱うとなると、普通の馬について規定した前例なんかは眼中に置かない。白い右後脚を持った馬を見つけるまで、探し続けたがるんだ」とメイスンは笑って評する。
自分にとって新しいミステリを読むときは、ついでにひとつ読み返すことにしてる、ペリイ・メイスンシリーズ、1945年の作品。
例によって、飛行機とかで移動中のひまつぶしに持ち運んでるだけなんだけど。
持ってるのは1990年の7版、前回読んだときの記憶は全然ないが。
原題は「THE CASE OF THE HALF-WAKENED WIFE」、そのまんまなんだけど、寝ぼけた夫人は出てこない。
事件直後に、あわてて取り乱してるとこをメイスンと出くわすんだが、しっかり記憶もあるし、真実を言っていると主張する。陪審員にはとても信じられないだろう話なんで、いつものように、弁護には苦労するが。
銀行で並んでるジェーン・ケラーという女性の手にいきなり500ドルのカネを男が押し込んでくるところから物語は始まる。
ジェーン・ケラーはどっかの大きな河のなかにある島の所有者、500ドル出してきたのはその土地で石油採掘権をもってるシェルビイって男の代理人。
ジェーン・ケラーはその島をベントンという金持ちに売る契約をしてしまった、ベントンはそこに家だか別荘だか建てたい。
シェルビイは石油なんか出ないとあきらめてたんだが、金持ちが土地を買うなら権利を主張して売値を吊り上げようってことに気づいた。
ところが土地賃貸料をもう五か月払ってなかったんで、それを遅ればせながら払うことで自分はまだ所有者の権利を保とうとカネを持ってきた。
ジェーンのほうは支払の遅滞によって契約解消してると思ってるから、いまさらそんなこと言われても困るので、有名な弁護士のメイスン先生のところへ相談に行く。
契約書にはたしかに微妙なところがあるんだが、メイスンは負ける気なんかしないのでシェルビイと対決しにいく、当然ものわかれに終わるけど。
シェルビイというのはうさんくさい人物なんだが、つい最近妻と食事したあと自分だけ砒素中毒になったというハプニングがあったらしく、警察も近辺をうろうろしてたりする。
金持ちのベントンさんまでメイスンの前に登場して、関係者一同を自分の船に乗せて、くだんの島のあたりをクルージングして話をしましょうってことになる。
船上で食事を楽しんだあとになれば、和やかに商談もかたづくかと思いきや、シェルビイが退かないので議論は平行線のまま、ここでシェルビイの背後にはエレン・カッシングって土地周旋業の女性がいて、このひとが今回の儲け話に気づいた張本人らしいってことがわかる。
夜の河には深い霧がおりてしまって、危なくて航行ができない状態になり、船客一同は十分な数のある船室にそれぞれ宿泊することになる。
それで真夜中に眠れないでいるメイスンが甲板に出ていると、女の悲鳴と銃声と何かが水に落ちる音がした。
そこへ走ってきてぶつかったのがシェルビイの妻、絹のナイトドレス姿なんだけど手には拳銃を持ってて取り乱している。
誰かが河に落ちたってことで船中が大騒ぎになり、所在がわからないのはシェルビイだけってことになる。
夜の闇のなかで河を見たって人の姿は見当たらない、警察もボートでやってくるけど行方不明のシェルビイは見つからず、一同は一旦解散。
調べが進んで、シェルビイの妻が、夫から船内の電話で呼び出されて、船首にいるから拳銃持ってこいと言われて行ったら、夫が船から落ちるのを見た、って供述するんだけど、おまえが撃ったんだろってことで容疑者になる、なんせ砒素で毒殺未遂の疑いまであるんだから、怪しまれるのはしかたない。
弁護を引き受けたメイスンだけど、調査を依頼しに探偵のドレイクを叩き起こしたところ、「きみの仕事は好きだが、そんな女が潔白だとおれ自身に云いきかせることは出来ないね。もう少し瞞されやすい探偵を雇ってくれ」とまで言われちゃう。
それでもメイスンは、河へ落ちたのは殺人事件ぢゃなく、妻に手切れ金をわたすことなく失踪するための擬装ってセンで捜査にとりかかり、そんなことの共犯は今回のビジネスでも組んでいる美人といわれるエレン・カッシングだろうと見当をつける。
さっさと早朝のうちにエレンの家をつきとめて、ドレイクといっしょに車庫に不法侵入して、濡れた男物の靴と毛布をみつける、河に落ちた人物を引き上げたにちがいない。
張り込みの探偵たちからも、エレンの部屋にはシェルビイくらいの背格好の男がいるという情報も得たもんだから、警察に連絡して「トラッグは、こういう仕事を扱える。彼には頭があるからね。」と信頼をおくトラッグ警部を呼び出して、捜査令状のないまま敵陣に突入する。
しばし押し問答があったすえ、エレンが部屋にいた人物を出してくると、彼女の母親と彼女の婚約者だった、まったく言いがかりもひどいとメイスンにかみつく。
濡れた毛布は昨日婚約者とピクニックに行ったときビールを冷やすための大きな氷を包んだもので、濡れた靴はその湖でふざけてるうちに水に足を突っ込んぢゃった婚約者のものだという。
話の筋は一応とおってるし、第一ひと違いもはなはだしいので、その場は惨敗。さらにエレン・カッシングは追い討ちをかけて、メイスンとドレイクの二人に対して名誉毀損による25万ドルの賠償を求める裁判を起こす。
そんなことしてるうちに、とうとう警察は38口径で撃たれたシェルビイの死体を引き上げることに成功し、いつも以上に圧倒的不利な状況で裁判が始まる。
反対訊問の名手であるメイスンは、検察側の証人のほんのちょっとしたスキから、被害者の首に残された弾傷が通常とはちょっと異なる形であることを明るみに出し、そこから反撃の糸口をつかむ。
メイスンの依頼人が最初のひとから変わっちゃうし、登場人物の関わり合いがいろいろあってややこしいんだけど、意外なとこから真犯人を見つけて、一件落着。
どうでもいいけど、最初の契約書の相談の件で出てくる、メイスンの事務所で助手やってるジャクスンの描写がおもしろい、法律書のなかから前例を見つけることに熱意をもってんだけど、「もし彼が白い右後脚を持った栗毛の馬に関する不当差押え動産取戻し訴訟を扱うとなると、普通の馬について規定した前例なんかは眼中に置かない。白い右後脚を持った馬を見つけるまで、探し続けたがるんだ」とメイスンは笑って評する。