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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

小説 中華そば「江ぐち」

2012-12-28 17:18:50 | 読んだ本
久住昌之 2001年 新潮OH!文庫版
どうにも『ひとり家飲み通い呑み』とか読んでから、久住昌之の書くもんが気になっちゃってしょうがないので、古本を探して、これを読んでみた。
この文庫の元になった単行本は『近くへ行きたい。秘境としての近所―舞台は“江ぐち”というラーメン屋』という、1985年のものだそうで、かなり古い。著者26歳のときの作品。
(そのもとはといえば『ガロ』のエッセイらしく、「面白いから本にしたら?」ってプロデュースしたのは糸井重里だそうな。)
近所にあるラーメン屋をネタにした、“近所のお店”に対する思い―大げさに言えば“愛”だな―をつづったもの。
たとえば、店員さんに勝手にあだ名つけちゃったりして、仲間うちではその名前で呼んでたりしてね。
メニューが、「チャーシュー」ぢゃなくて「『チャシュー』メン」って表記だってとこにツッコミ入れたり、「竹の子そば」は何故“そば”の呼称で「五目ラーメン」は何故“五目そば”ぢゃないんだろってとこにこだわったりと、細かいことを楽しんでる。
カウンターにすわって、調理してるとこが見えるラーメン屋はいい、とか、夏に“冷しラーメン”もいいけど暑いの承知で食う熱いラーメンのほうがいい、なんて『ダンドリくん』につながるとこもあるし、店主が従業員を客の前で怒ったりして険悪な雰囲気の店はいちばんいただけない、なんて『孤独のグルメ』に通じるとこもある。
年代が古いってこともあるんだけど、やっぱ、これって久住作品のルーツなんでは、と思わされた。
行きつけというか馴染みをおぼえる店に対する、こだわりというか愛着のようなものは、強く共感するとこがあるんだけど、
>以前ボクの隣に座った、大学の体育会に入っていそうな体格のいい男性客は、「五目竹の子チャーシューワンタンメンを大盛りでください」と、キングギドラのようなラーメンを頼んでいた。もちろん半分はフザケているんだろう。
とか、
>エグビーというのは言うまでもなく、江ぐちでビールを飲んで(当然ツマミでチャシュー食べて)ラーメンを食べるという意味です。これはさらに発展し「エグル」という動詞にまでなった。「そろそろエグリに行こうぜ」なんて、(略)
って箇所は、読んでて、電車のなかだったんだけど、吹いた。
なにが面白いんだって訊かれても解説不能だけど、こういうやりとりはツボにはまるものがある。
んで、大事なことは、こういう近所のお店について「謎」とか「秘密」とか「不思議」ってのは、あったほうが面白いし、魅力を感じるってスタンスですね。
店員さんの名前なんて、取材ですって言って、訊けば教えてくれるんだろうけど、そういうことしないでアダ名つけて自分たちだけで呼んでるほうが、よっぽど面白いってこと。
そういう遊びの精神が、読んでて楽しい。
あと、話が脱線して、とりとめもない方向に行くのも、本書のおもしろいところ。
あとがきで、規定の原稿量こなすための苦心なんて、言い訳してるけど、それはそれでアドリブギャグ的で、おもしろいと私は思った。

…あしたから年末の休み。年末年始はブログなんか書くもんか、と思ってるんだけど、なんかの拍子で(たとえば古本の衝動買いとかして)書かないとも限らない。自分で自分の行動予定がよくわからん。

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