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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

こころの処方箋

2018-11-03 17:36:35 | 読んだ本
河合隼雄 平成十年 新潮文庫版
ことしの夏に街の古本屋で買った河合隼雄さんの文庫本。
単行本は平成四年で、初出は『新刊ニュース』という月刊誌に1988年から1991年まで連載されたものだという。
連載コラムということもあってか、ひとつあたりの章は文庫で4ページと短い。
著者あとがきには「端的に言えば、ここには「常識」が書いてあるのだ。」とあるように、たしかに突飛なことや専門的な難解なことが書いてあるわけぢゃない。
連載時の読者の反応も、うなずいて納得できるというのが多かったことから、著者は誰もが知ってるはずの常識を書いたものがウケるのは、知識は持ってるけど常識のない人が増えてきた世の中だからぢゃないかと危惧する。
ま、それはいいとして。
私はべつに心理学的なアドバイスみたいなのを直接求めたくて読んだわけぢゃないし、何かを読んで自分を改善しようなんて気持ちはまず起きないくらい、トシとってしまった人間なのだが、やっぱいくつかは、ふむふむ、そうかーと目を開かれるものある。
「100%正しい忠告はまず役に立たない」なんてのは、笑ってしまいそうになるくらい真理だ。
「ヒットを打て」というコーチから打者への言葉は正しいけど役に立たない、ひとの生きるうえでの忠告もそういうものであってはダメと。
>イライラは、自分の何か――多くの場合、何らかの欠点にかかわること――を見出すのを防ぐために、相手に対する攻撃として出てくることが多いのである。(p.47)
なんてのには、さすがにハッとさせられるけどね。
ほかにも、「やりたいことは、まずやってみる」とか「心の新鉱脈を掘り当てよう」なんてのは、ためになりそうな考え方、時間がないとか他にやんなきゃいけないことあるとか言ってないで、好きなことやってみたほうがエネルギーはうまくまわるってのは、なかなかいいスタンスだと思う。
「ものごとは努力によって解決しない」なんてのは、いい言葉だ、「努力とは馬鹿に与えた夢である」って談志家元を思い出してしまったけど。
「マジメも休み休み言え」みたいなのもそうだけど、一方向だけから正攻法でいくんぢゃなくていい、みたいな余裕のあるものの見方がラクにさせてくれるものある。
やっぱ、ときどき自分の都合のいいとこだけ、読み返してみることになるかもしれない、いい本だ。
どうでもいいけど、河合さんの本読んでると、ときどき、人の「心」とは別に「たましい」って表現が出てくる。
これってひとつのキーワードなんだろうけど、私はよくわかってはいない。ひとりひとりだけぢゃなくて人間共通の何か、みたいなものかなあ、謎。
1 人の心などわかるはずがない
2 ふたつよいことさてないものよ
3 100%正しい忠告はまず役に立たない
4 絵に描いた餅は餅より高価なことがある
5 「理解ある親」をもつ子はたまらない
6 言いはじめたのなら話合いを続けよう
7 日本人としての自覚が国際性を高める
8 心のなかの自然破壊を防ごう
9 灯台に近づきすぎると難破する
10 イライラは見とおしのなさを示す
11 己を殺して他人を殺す
12 100点以外はダメなときがある
13 マジメも休み休み言え
14 やりたいことは、まずやってみる
15 一番生じやすいのは一八〇度の変化である
16 心のなかの勝負は51対49のことが多い
17 うそからまことが出てくる
18 説教の効果はその長さと反比例する
19 男女は協力し合えても理解し合うことは難しい
20 人間理解は命がけの仕事である
21 ものごとは努力によって解決しない
22 自立は依存によって裏づけられる
23 心の新鉱脈を掘り当てよう
24 健康病が心身をむしばむ
25 善は微に入り細にわたって行わねばならない
26 「耐える」だけが精神力ではない
27 灯を消す方がよく見えることがある
28 文句を言っているうちが華である
29 生まれ変わるためには死なねばならない
30 同じ「運命」でも演奏次第で値段が違う
31 ソウル・メーキングでもやってみませんか
32 うそは常備薬 真実は劇薬
33 逃げるときはもの惜しみしない
34 どっぴりつかったものがほんとうに離れられる
35 強い者だけが感謝することができる
36 勇気にもハードとソフトがある
37 一人でも二人、二人でも一人で生きるつもり
38 心の支えがたましいの重荷になる
39 「昔はよかった」とは進歩についてゆけぬ人の言葉である
40 道草によってこそ「道」の味がわかる
41 危機の際には生地が出てくる
42 日本的民主主義は創造の芽をつみやすい
43 家族関係の仕事は大事業である
44 物が豊かになると子育てが難しくなる
45 権力を棄てることによって内的権威が磨かれる
46 権力の座は孤独を要求する
47 二つの目で見ると奥行きがわかる
48 羨ましかったら何かやってみる
49 心配も苦しみも楽しみのうち
50 のぼせが終るところに関係がはじまる
51 裏切りによってしか距離がとれないときがある
52 精神的なものが精神を覆い隠す
53 「知る」ことによって二次災害を避ける
54 「幸福」になるためには断念が必要である
55 すべての人が創造性を持っている
巻末解説にかえて、谷川俊太郎さんの「三つの言葉」って文章があるんだが、これがまたいいなあ。
コメント
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