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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

約束の地

2011-02-25 20:29:24 | 読んだ本
ロバート・B・パーカー/菊池光=訳 昭和62年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
きのうの谷口ジローの短編集にも「約束の地」ってのがあったんで、それつながり。
ってのは偶然で、ひさしぶりに読み返してみたスペンサー・シリーズのひとつ。
なにか文学賞を受賞したらしく、文庫版は3番目に出版されたようですが、オリジナルの発表順としては、「ゴッドウルフの行方」「誘拐」「失投」に次いで第4作。
第2作で知り合ったスーザンと、事件解決方法(っていうかスペンサーの生き方の方法か)について話し合う、ってスタイルは「失投」で本格的に始まったようなんだが、この本でもういきなり極まっちゃってます。
ふたりの仲は急速にヒートアップして、またそれがゆえに派手に喧嘩もしちゃいます。事件のことよりスペンサーとスーザンのディスカッションのほうがメインみたいに。
事件のほうは、家出した妻の捜索を依頼されて、わりと簡単に見つけちゃうんだけど、それで引き渡しておしまい、ってなんないのが、スペンサーらしいとこ。
それより何より、この作には、以降も主要登場人物のひとりとなる、ホークが登場します。
スペンサーの古くからの知り合いで、タフで、派手なカッコして、スペンサー同様口が減らない、フリーで雇われると人も殺しかねない、“筋肉がピンと張っているような感じ、バネをぐっと縮めていて今にも跳躍しそうな感じを発散している”禿頭で頬骨の高い長身の黒人。
今回偶然に同じトラブルで出くわして、敵味方に分かれての立場になるけど、ホークのスペンサー評は、>「自分でわざわざ人生を複雑にしているんだ、スペンサー。おまえは、いろんなことを考えすぎるよ」と的確です。
それに対するスペンサーの答えは、「それが、おれとおまえが違う理由の一つなんだよ、ホーク」なんだけど。
このあたり、そのすぐ後で、スーザンに「今のこの瞬間、わたしは、あなたを愛している、といって、なんらかの答えを待ってるの」と言われて、「問題はそれほどかんたんじゃないんだ、スーズ」と答えてケンカになっちゃうんで、スペンサーはやっぱ自ら人生を複雑にしているとみて間違いないでしょう。
ちなみに、ケンカして彼女が出てっちゃったあと、スペンサーは泣くわけにはいかないって独り言つと、筋トレをガンガン(150ポンドでプルダウン15分、90ポンドで上腕三頭筋プレス15回、ベンチプレス300ポンド、とかを4セット)、パンチングバッグを本格的にバシバシ叩いて、身体をいじめます。いい考えが浮かばないとき料理をするのと同様、このへんがかっこいいですね。
で、そんなこんなで事件解決に危ない橋を渡る段になって、またもやスーザンから、なんでそんなことをするのか、こわくないのか、そういうのが好きなのかとか問われたときに、スペンサーは「おれという人間は、おれのすることによって決まるんだ」という私の好きな科白を吐いてくれます。
ちなみに悪党に雇われてるホークのほうも、スペンサーを叩き出せと命令されたときに、「おれは自分のやりたいことしかやらない。いわれたとおりには、絶対にやらない」ってカッコよく拒絶します。
コメント
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