今は「ベビーカー」という。
「乳母車」は大正、昭和の匂いがする。
でも「乳」「母」という字が入っているのでこちらの呼び方のが好きだ。
娘が選んだ乳母車は黒い頑丈な実質本位の物。
乳母車という甘いそれとはかけ離れている。
ぐずる孫に「お散歩行こうか」と声をかけ乳母車に乗せ外に出ると、ピタリとやむ。
車中の人となった彼は、いつもご機嫌な様子。
乳母車夏の怒涛によこむきに 橋本多佳子
大海原を前に、健やかに眠る赤ちゃんを載せた一台の乳母車が砂浜にぽつんとある。
寄せては返す波がしらを見ながら、母親は本能で乳母車を横向きに位置づける。
大いなる大自然の勢いに、人は無力に等しい。
「母性」が乳母車を止めている。
大好きな句です。