東京の浅草という賑やかな街で生まれ育った私は、正直山奥には住めない。
どこかに都会の匂いがないと生活できない。
鎌倉は東京駅から55分というアクセス。20代の頃、北鎌倉の東慶寺で知人と
お墓めぐりをしたとき、墓地の入口から振り返った「鎌倉」の強烈な印象が今も鮮やか
によみがえる。
遅い桜の季節だった。手入れの行き届いたお庭から1段2段上がった墓地に足を踏み
入れた瞬間、何気なく円覚寺の方向を望み、息をのんだ。
町並みが、現代という事象がかき消え、里山と寺だけがひっそりと存在していたのだ。
何百年も昔に一瞬でワープしたような、そんな気がした。40年も前の話だ。
丁度1ヶ月ほど前、同じ場所から同じように円覚寺の方向を眺めてみた。
鎌倉は、鎌倉の里山の美しさは、人の手の入った美しさなのだ。観光客に愛でられる
花々も、樹木も手入れが行き届いている。
小町通りは相変わらず人があふれ、紫陽花の季節はさらにふくれあがる。
山があり、海があり「人の手の入った自然」がある鎌倉が、私は好きなのだ。