☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『日本の悲劇』(1953)

2014年12月05日 | 邦画(クラシック)
『日本の悲劇』(1953)

監督:木下惠介
出演者:望月優子
桂木洋子
佐田啓二
高橋貞二
上原謙

【作品概要】
望月優子が熱海の旅館の女中として働く戦争未亡人を演じ、社会派女優としての第一歩を踏み出した記念碑的作品。木下恵介監督にとっても、リアリズムやドキュメンタリー性を追求した挑戦的な作品となり、女子大学の学園紛争を描いた1954年の『女の園』や1958年『楢山節考』に向うステップとなった。1953年『キネマ旬報』ベストテン第6位。
冒頭にニュース映画を挿入するなど、1946年の亀井文夫の同名記録映画を意識したと思わせる部分もうかがわれる。(Wikipediaより)

【感想レビュー】
細々と木下恵介監督作品を観る旅を久しぶりに実行

昨年、小林政広監督の同名タイトル(2012)を観て、色々と思うところがあったので、それならば木下恵介監督や
亀井文夫監督の作品も観なければ…!と思っていたのでした

望月優子さんの存在感…!
戦争未亡人になりながら娘と息子を女手一つで育てあげる母。とにかく泣く…嘆く母。金銭的に苦しい事から足元を見られ、男にいいように扱われてしまったり…。平手打ちや罵詈雑言の酷い扱いを同僚から受けたり…。親戚に土地を乗っ取られてしまったり…。挙げ句の果てには、娘や息子からも邪険にされてしまう…。

娘や息子に嫌われてしまうのには訳がある。とにかく勉強して偉くなれば、貧しさから脱却できる、自分達を馬鹿にした連中を見返す事ができる、と子ども達に言い聞かせ、自分は生活費の為に温泉街の宿で客にお酌をする日々を送る。

仕事の為なのに、母は男にだらしない、と思っている娘と息子。そんな母がいる以上、いくら勉強を頑張っても、軽視されて就職も結婚も良縁には恵まれないだろうっと娘が言うのですが…。
このような価値観はもちろん今でもありますし、分かるのですが、なんというか…もっともっとシビアです

そして、娘や息子達は、気付いているのです。自分達の為と言いながら、それは母自身のエゴだという事に。
そういう指摘を描いた映画はたくさんあるけれど、この作品は鮮やかだったな…。

戦後、人それぞれ事情があって、多様な状況があったのだろうと想像しますが、価値観の多様性は乏しくて、生きにくい時代だったのかなぁと。
そのぶん、社会の構造がシンプルで、人の価値観もシンプルだったのかもしれない。そこからはみ出した者の『悲劇』を描いているのだけども、酷なのに、どこかアッサリしている切り口が心地良かった。

バイオレンスシーンの突発的なエネルギーにびっくりしつつ…。
ラストは本当に息を呑みます…。

木下恵介監督作品、まだ数本観ただけですが、力強いのにどこか清々しい。
清々しいのにハッと胸を突かれるエッジが効いていて、なんだか癖になります