もんろーの部屋

音楽について自分について哲学しちゃうページ・・・美味しいものもちょっと

怪談

2005-04-17 | 音楽
先月末、ゴッホ展へ行った話は書いた。
評判はいいらしい。
連日おばちゃんたちがたくさん訪れている。
ゴッホも良いのだが、実はあの日、もっとも印象深かったのは、中村正義という画家の絵だった。

もちろん、ゴッホを見に行った私達だったが、せっかくだし常設展も見ようということになって。ちょうど、金成(かなり)さんという、初老のなんとも上品で知的なお感じのボランティア(多分)さんが、時間になり、ご案内をしてくれるらしかったので、ホクホクとその後をついて行った。
そこには中村正義の「源平海戦絵巻」5部という絵があった。
金成さんは想像どうり、大変に美しく雅な日本語で、金魚のウン○状態の私達に絵の解説をした。そして、金成さんは適度に自分自身の感想なども述べた。それが、とても説得力があり、かつ押し付けがましくない、実に知的で彼らしい雰囲気を醸し出していたので、こちらも柔らかく、その絵を鑑賞することが出来たのだった。絵そのものは、金成さんのそれとは真逆に、荒々しく不気味ささえ感じるもので、金成さんの存在が無ければ、我々はそそくさと前を通り過ぎたかも知れない(個人的な趣味として)。

さて、その5枚の絵を鑑賞し終わって、金成さんは
「あと2点・・・」と、もう2つほど我々に話題を提供した。
1つ目は、中村正義が、いかに反逆の天才画家であったか(彼のプロフィール)ということ。
病弱だった彼は、学校も中退し絵を書き始め、めきめきと才能を現した。しかし、若くして、師匠と合わなくなり、新しい風を興す。結局52歳の若さで亡くなる。
2つ目は、この5枚の絵は「怪談」という小林正樹監督の映画のために書かれたらしいこと。そして、その映画の「耳なし芳一」の段で、フラッシュバックのように、この5枚の絵が映し出されるということを話してくれた。

「怪談」・・・コレは音楽を武満が書いた。そして、私の先生達が、その演奏を担当したのだった。
私は、その録音で入魂の演奏をした話を、何度か思い出話として伺ったことがあったのだ。
ほーん・・・。再度、まじまじと絵を見る。
映画と絵と、音と演奏。才能のコラボレート。
そして、映画や絵と違い、音や演奏は残らないことを痛感する。瞬間の芸術なんだということ。その一瞬に掛けるということ。その一瞬が、これから先の未来に続くのだということ。

先週、ボボーっとTVを見ていたら、岸恵子がトーク番組に出演していた。この人、かなりのお歳だと思うのだが、何とも知的でお考えが明らか、非常にしなやかな感じなのだ(←ただ、日本語の発音に特徴がありすぎて、聞きづらいんだけど)。その、代表出演作がづらづら並んだボードに「怪談」があった。
ふーん、この人も出ていたのね
三春堂で、武満の文を読んでいたら「怪談」の時の懐古話があった。
ふむふむ・・・。

昔はステキだったと思うのは、現代人の無くならない癖なのか?
未来人も、昔はステキだったと、現代のことを思うのか?
必ずしも、そうじゃないような・・・。わからないけど