ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

まんが 1998.7.1

1998-07-01 15:16:13 | 嫩葉
まんが
わたしが一心不乱に本を読んでいると、その本をのぞき込んで「なんだ、勉強しているのかと思ったら漫画じゃない」と言われてしまった。確かにわたしはその時漫画を読んでいた。わたしが漫画を読むということは普通ではない。だいたい、わたしは漫画というものに興味が持てないし、あっちを読んだり、こっちを読んだりで面倒で仕方がない。この本にしても、字は小さいし、文章は断片的で流れるように読むというわけにはいかない。しかし、書かれている内容に惹かれて一気に読んでしまった。 この本との出会いは偶然である。いつものように散歩の途中、近くの本屋に立ち寄り、新刊書のコーナーを何気なく見ていると、「家族の中の迷子たち」(集英社)という書名に引きつけられて手に取ってみると、それが漫画だった。その意外性に驚き、ぱらぱらと頁をめくると、「児童精神科」という言葉が飛び込んできた。その言葉に惹かれて思わずお金を払ってしまった、という次第である。 内容はしっかりしている。問題意識も明白であり、表現も危なげない。本書は、もともと『家族「外」家族』(椎名篤子著、大和書房)という一般向きの専門書を漫画化したものとのことであるが、随所に挿入されている「解説」はまさに専門書を読む際に抜き書きするノートそのもので、この本の真価を際だたせる文章である。たとえばこうだ。「子どもは3歳くらいになると、生まれてから母親と続けてきた共生関係から離れて心理的に独立する時期を迎える。その自立を支えるのは母親と子どもの間に培われた信頼感だ。」この言葉一つでも、親子不安におびえる人々にとってかけがえのない光となる。この本の中にはこのような言葉が星のようにちりばめられている。 現代の悩める子どもたちの、声なき声を読みとり、その解決のために献身的になっている児童精神科医たちの仕事には頭が下がる。その現場にある一人の精神科医の述懐の言葉は、含蓄に富んでいる。「子どもの時代、母親や近所のおばさんたちが私をかわいがってくれたことの延長をやっているに過ぎないんです。」(牧師・園長 文屋善明)

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