notation




大停電の夜に
2005
源孝志


正直、好きです。
ロマンチックな話しではあるけれども、ベタベタなラブロマンスではありません。


映画として優れているかどうかは別として、こういうのが好きで悪いか。
純粋なエンターテイメントですが、こないだ「マッチポイント」で触れたような本来的な意味の「予定調和」に沿ったお話で、カタルシスのためだけではないお話。良くできています。
疑ってかかれば、いくらでも突っ込みようのあるお話ですが、そういうのはナシにして素直に楽しんだら良いのだと思います。
自宅を間接照明にしている方はこういう作品好きだと思うんですが。

シナリオが「有頂天ホテル」みたいに辻褄合わせの為の映画にならなくて良かった。ある程度バラバラにストーリーが進んで、それぞれ勝手なエンディングで正解だったと思います。


何が良かったって、Bill Evans Trioの"Waltz of Debby"の一曲目「My Foolish Heart」が、ド頭でかかる。全部コレのせいと言っても過言では無いくらい好きな曲。
うちにあるこのレコードは友人から借りているモノですが、半端じゃなく聴いています。このアルバムはやっぱりCDじゃなくてレコードですね。
一手間かけて盤に針を落とし、余計なことをしないで酒でも飲みながら聴くのが正しいと思います。何かしていても手が止まってしまう。
もったいなかったのがDVDのメニュー画面ですでにこの曲がかかってしまったことでしょうか。
おかげでド頭のこの曲の響きが少し霞んでしまった。
ビシッとこのアルバムのジャケットをキメて見せるカットも、できればターンテーブルの抜けにちらっと見える程度が良かったなぁ。

豊川悦司のジャズバーの名前がそのままってのはちょっとやり過ぎかと思いましたが、まぁヨシです。
サントラ用のオリジナルアレンジのベースがリーダーでストリングス入りのバージョンもなかなかです。エンドロールの菊地成孔のオリジナルも好きだなぁ。
ちなみに、エンドロールの美術協力にはもちろんJBLのロゴが。
やっぱり、そうでなくちゃイカンよ。


話は変わりますが、両手で大事なモノを抱えるようにグラスを持ってビールを飲む女が鬱陶しそうで嫌いです。
ということで田畑智子が鬱陶しかった。まぁ、こういう映画なのでそういうキャラも必要なんでしょう。他のキャラクターが割と殺伐としているので、そのハブとしてでしょうか。

とはいうものの、ロウソクも良いですね。
停電後のバーはロウソクが店内外照明になっているんですが、綺麗ですね。素直にそう思います。
反面、コレ全部に火を付ける制作さんの苦労も気になるところですが。気まぐれな炎に一喜一憂する現場も楽しそうです。

以前、蜜蝋を炊いていたことがあったのですが、狭い部屋で炊いていたらやたら空気が乾燥して大変でした。少しは広くなった部屋なので、たまには良いかもしれません。
と、思ってうちに一つだけあった小さなロウソク、2年ほど前の友人の結婚パーティで頂いたものに火を付けてみました。
風にあおられて歌う様に揺れる小さく伸びる炎は、見ているとだんだん愛おしくなるもんですね。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )